What's New! 3月23日、大阪高裁は須藤早貴被告の一審無罪判決(求刑無期懲役)に対する検察側控訴を棄却した。
| 氏名 | 須藤早貴(30) |
| 逮捕 | 2021年4月28日 |
| 殺害人数 | 1名 |
| 罪状 | 殺人、覚せい剤取締法違反(使用) |
| 事件概要 |
須藤早貴被告は2018年5月24日午後4時50分~午後8時ごろまでの間、和歌山県田辺市の自宅で、夫で資産家の野崎幸助氏(当時77)に致死量の覚せい剤を何らかの方法で口から摂取させ、同日午後8時~10時ごろに急性覚せい剤中毒で死亡させたとされた。 野崎幸助氏は地元の中学校を卒業後、酒類販売業や不動産業など多くの商売を手がけ、資産は数十億円とも言われている。多くの女性と交際し、交際クラブなどで女性と出会っていることを公言。艶福家としてメディアに取り上げられ、17世紀スペインの伝説上の放蕩児になぞらえて「紀州のドン・ファン」とも呼ばれ、『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』(講談社+α文庫)を出版し、週刊誌やテレビなどにも登場していた。 野崎氏と須藤被告は2017年12月に知り合い、2018年2月8日に当時21歳の須藤被告と三度目の結婚をした。早貴被告はその後も東京で生活していたが、5月以降は野崎氏宅で生活していた。 事件当日の午後10時半過ぎ、野崎氏が2階の寝室のソファで動かなくなっていると被告が家政婦に知らせ、119番通報。救急隊員が死亡を確認した。司法解剖を担当した医師らによると、死因は致死量を超える覚せい剤を飲んだことによる急性覚せい剤中毒で、摂取量は少なくとも1.8グラムである。野崎氏が普段から覚せい剤を使用していた形跡が見つかっていないことから、県警は殺人容疑で捜査を始めた。 2020年2月、早貴被告は旧姓の須藤に戻した。 和歌山県警は2021年4月28日、殺人と覚せい剤取締法違反の容疑で東京都品川区のマンションに居た須藤被告を逮捕した。5月19日、和歌山地検は同罪で起訴した。 |
| 裁判所 | 大阪高裁 村越一浩裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年3月23日 無罪(検察側控訴棄却) |
| 裁判焦点 |
2025年12月8日の控訴審初公判で、検察側は、須崎被告が野崎さんと財産目的で結婚したのに離婚の意思を示されていたことなど「犯行動機」があったと述べた。そして「間接証拠を掛け合わせて評価すべきなのに個別的・分断的に評価した。被告が犯行に及んだことは優に認められる」とした。また無罪とした一審判決について、被告が事件前に「覚醒剤 過剰摂取」「遺産相続」などと検索していたことを犯人性の説明として採用しなかった一審判決を「明らかに不合理」と強調。「誤って1.8グラムの覚醒剤を摂取するという極めて不可解な事実関係を認めている。重大な事実誤認に基づき、到底破棄を免れず、適正な判決を求める」と一審判決の破棄を求めた。 これに対し弁護側は、「自分たちが暮らす社会がこの程度の立証をもって有罪とされるべきではないという一審のメッセージをないがしろにすべきではない」と主張して控訴の棄却を求めた。 控訴審には被告の出廷義務はないが、須藤被告は出廷した。 検察側はこの日の裁判で新たに証人尋問を請求したが、裁判所はこれを認めず、即日結審した。 判決で村越一浩裁判長は、裁判冒頭で「本件控訴を棄却する」と伝えた。 被告には殺害の動機となり得る事情があり、自分で使うわけでもないのに覚醒剤を入手しようと考えて密売人と接触し、野崎さんが亡くなった当日も野崎さんと二人きりで、普段より多く1階と野崎さんの部屋がある2階を行き来する不審な動きをしていたと指摘。一審と同様に、被告が犯人であることを疑わせる事情があったことまでは認めた。一方で、野崎さんに不信感や違和感を持たれることなく致死量を超える覚醒剤を摂取させるのは容易ではないと指摘。野崎さん自身が覚醒剤を入手したことも考え難いとは言えず、被告が密売人から入手した物が覚醒剤ではなかった疑いがあるとした一審判断が誤りであるとは言えないとした。その上で、被告が明確な殺害計画を立てていたとまでは認定できず、「被告が犯人であることの証明がないとした一審の認定判断は、論理則、経験則に照らして不合理で許容できないものではない」と結論付けた。 |
| 備考 |
須藤早貴被告は札幌市のキャバクラでアルバイトとして働いていた2015年3月~16年1月、別の男性(当時61)から3回、計約2,980万円をだまし取ったとして、2021年5月19日、詐欺罪で逮捕された。2024年9月2日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)で懲役3年6月(求刑懲役4年6月)判決。須藤被告の無罪主張を退けたが、事件当時未成年であることが考慮された。控訴せず、確定。判決が出るまでに勾留されていた未決勾留日数が860日あり、その分が差し引かれて控訴審初公判までに既に出所している。 野崎さんは生前、遺言状を残しており、死後にその存在がわかった。遺言書は《いごん》《個人の全財産を田辺市にキフする》などと赤色サインペンで書かれており、署名と押印、2013年2月8日の日付があった。野崎さんが経営していた会社の元幹部が保管していた。田辺市によると、遺産は預貯金や有価証券などで総額13億円以上ともされた。ほかに評価額未定の土地、建物、絵画などもあるという。 和歌山家裁田辺支部は2018年9月、この遺言書が形式的な要件を満たしていると判断。2019年10月、田辺市は相続を申し立て、受け入れ準備を進めていた。 野崎氏には子供がいないため、民法上、遺産は妻である須藤被告が半分を受け取れる。市は遺産額が具体的に確定した後、洲崎被告と分割のための協議をするとしていたが、評価額が確定していない土地や建物があるため、額の確定に時間がかかっていた。 野崎氏の実兄ら親族4人は2020年4月、手書きの遺言状は無効だと訴え和歌山地裁に提訴。遺言書はコピー用紙1枚に赤ペンで手書きされ、熟慮の末に作成したとはみられないなどと主張。2024年6月21日、和歌山地裁(高橋綾子裁判長)は「有効」とする判決を言い渡した。親族側は控訴した。 須藤被告も最低限保障された遺留分を請求する権利がある。ただし、殺人罪で有罪の判決が確定すると、欠格事由に該当しその権利を失う。 須藤被告は野崎さんの死亡後、経営していた会社の代表取締役を引き継いだ。野崎さんの会社の元監査役は2020年7月、全財産を田辺市に寄付するとした野崎さんの遺言書の存在を知りながら、金融機関に告げずに2018年9月、会社名義の口座から約3,830万円を自身の口座に送金するなどした、また代表取締役の就任時に法的手続きを取らずに代表取締役に就任したと詐欺容疑で告発。和歌山県警は告発を受理した。 野崎幸助さんが生前に経営していた会社2社について、和歌山地裁は2021年9月21日付で破産手続きを開始した。21年8月に債権者から破産を申し立てられていた。 和歌山県警は2022年3月4日付で須藤早貴被告、須藤被告と報道対応や遺産相続で契約を結んでいた弁護士3人、経営会社と契約関係にあった公認会計士の計5人について、野崎さんが経営していた会社の資金約5,000万円を共謀して搾取したとして、詐欺容疑で書類送検した。和歌山地検は4月6日付で不起訴処分とした。地検は「事実を認定するに足る十分な証拠が認められなかった」と説明した。 2024年12月12日、和歌山地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審無罪判決。検察側は上告した。 |
※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。
【参考資料】新聞記事各種