What's New! 7月7日、水戸地裁は赤間恵美被告に殺人1件について無罪としたうえで、一審懲役20年判決(求刑無期懲役)を言い渡した。
What's New! 7月3日、東京地裁は佐々木光被告と平山綾拳被告に一審懲役30年判決(求刑無期懲役)を言い渡した。
| 氏名 | 赤間恵美(40) |
| 逮捕 | 2024年2月9日 |
| 殺害人数 | 1名 |
| 罪状 | 殺人、窃盗 |
| 事件概要 | (後日記載) |
| 裁判所 | 水戸地裁 山崎威裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年7月7日 懲役20年 |
| 裁判焦点 |
裁判員裁判。 2025年12月10日の初公判で、赤間被告は「私は2人を殺害しておりません」と述べた。窃盗罪については認めた。 (後日記載) |
| 備考 | 初公判から判決までの期間は210日間で、最高裁によると、2026年6月までに判決が言い渡された裁判員裁判で過去2番目の長さである。 |
| 氏名 | 佐々木光(30)/平山綾拳(27) |
| 逮捕 | 佐々木被告:2024年4月29日/平山被告:2024年4月21日 |
| 殺害人数 | 2名 |
| 罪状 | 殺人、死体遺棄・損壊 |
| 事件概要 | (後日記載) |
| 裁判所 | 東京地裁 中川正隆裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年7月3日 懲役30年 |
| 裁判焦点 | (後日記載) |
| 備考 |
| 氏名 | 須藤早貴(30) |
| 逮捕 | 2021年4月28日 |
| 殺害人数 | 1名 |
| 罪状 | 殺人、覚せい剤取締法違反(使用) |
| 事件概要 |
須藤早貴被告は2018年5月24日午後4時50分~午後8時ごろまでの間、和歌山県田辺市の自宅で、夫で資産家の野崎幸助氏(当時77)に致死量の覚せい剤を何らかの方法で口から摂取させ、同日午後8時~10時ごろに急性覚せい剤中毒で死亡させたとされた。 野崎幸助氏は地元の中学校を卒業後、酒類販売業や不動産業など多くの商売を手がけ、資産は数十億円とも言われている。多くの女性と交際し、交際クラブなどで女性と出会っていることを公言。艶福家としてメディアに取り上げられ、17世紀スペインの伝説上の放蕩児になぞらえて「紀州のドン・ファン」とも呼ばれ、『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』(講談社+α文庫)を出版し、週刊誌やテレビなどにも登場していた。 野崎氏と須藤被告は2017年12月に知り合い、2018年2月8日に当時21歳の須藤被告と三度目の結婚をした。早貴被告はその後も東京で生活していたが、5月以降は野崎氏宅で生活していた。 事件当日の午後10時半過ぎ、野崎氏が2階の寝室のソファで動かなくなっていると被告が家政婦に知らせ、119番通報。救急隊員が死亡を確認した。司法解剖を担当した医師らによると、死因は致死量を超える覚せい剤を飲んだことによる急性覚せい剤中毒で、摂取量は少なくとも1.8グラムである。野崎氏が普段から覚せい剤を使用していた形跡が見つかっていないことから、県警は殺人容疑で捜査を始めた。 2020年2月、早貴被告は旧姓の須藤に戻した。 和歌山県警は2021年4月28日、殺人と覚せい剤取締法違反の容疑で東京都品川区のマンションに居た須藤被告を逮捕した。5月19日、和歌山地検は同罪で起訴した。 |
| 裁判所 | 大阪高裁 村越一浩裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年3月23日 無罪(検察側控訴棄却) |
| 裁判焦点 |
2025年12月8日の控訴審初公判で、検察側は、須崎被告が野崎さんと財産目的で結婚したのに離婚の意思を示されていたことなど「犯行動機」があったと述べた。そして「間接証拠を掛け合わせて評価すべきなのに個別的・分断的に評価した。被告が犯行に及んだことは優に認められる」とした。また無罪とした一審判決について、被告が事件前に「覚醒剤 過剰摂取」「遺産相続」などと検索していたことを犯人性の説明として採用しなかった一審判決を「明らかに不合理」と強調。「誤って1.8グラムの覚醒剤を摂取するという極めて不可解な事実関係を認めている。重大な事実誤認に基づき、到底破棄を免れず、適正な判決を求める」と一審判決の破棄を求めた。 これに対し弁護側は、「自分たちが暮らす社会がこの程度の立証をもって有罪とされるべきではないという一審のメッセージをないがしろにすべきではない」と主張して控訴の棄却を求めた。 控訴審には被告の出廷義務はないが、須藤被告は出廷した。 検察側はこの日の裁判で新たに証人尋問を請求したが、裁判所はこれを認めず、即日結審した。 判決で村越一浩裁判長は、裁判冒頭で「本件控訴を棄却する」と伝えた。 被告には殺害の動機となり得る事情があり、自分で使うわけでもないのに覚醒剤を入手しようと考えて密売人と接触し、野崎さんが亡くなった当日も野崎さんと二人きりで、普段より多く1階と野崎さんの部屋がある2階を行き来する不審な動きをしていたと指摘。一審と同様に、被告が犯人であることを疑わせる事情があったことまでは認めた。一方で、野崎さんに不信感や違和感を持たれることなく致死量を超える覚醒剤を摂取させるのは容易ではないと指摘。野崎さん自身が覚醒剤を入手したことも考え難いとは言えず、被告が密売人から入手した物が覚醒剤ではなかった疑いがあるとした一審判断が誤りであるとは言えないとした。その上で、被告が明確な殺害計画を立てていたとまでは認定できず、「被告が犯人であることの証明がないとした一審の認定判断は、論理則、経験則に照らして不合理で許容できないものではない」と結論付けた。 |
| 備考 |
須藤早貴被告は札幌市のキャバクラでアルバイトとして働いていた2015年3月~16年1月、別の男性(当時61)から3回、計約2,980万円をだまし取ったとして、2021年5月19日、詐欺罪で逮捕された。2024年9月2日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)で懲役3年6月(求刑懲役4年6月)判決。須藤被告の無罪主張を退けたが、事件当時未成年であることが考慮された。控訴せず、確定。判決が出るまでに勾留されていた未決勾留日数が860日あり、その分が差し引かれて控訴審初公判までに既に出所している。 野崎さんは生前、遺言状を残しており、死後にその存在がわかった。遺言書は《いごん》《個人の全財産を田辺市にキフする》などと赤色サインペンで書かれており、署名と押印、2013年2月8日の日付があった。野崎さんが経営していた会社の元幹部が保管していた。田辺市によると、遺産は預貯金や有価証券などで総額13億円以上ともされた。ほかに評価額未定の土地、建物、絵画などもあるという。 和歌山家裁田辺支部は2018年9月、この遺言書が形式的な要件を満たしていると判断。2019年10月、田辺市は相続を申し立て、受け入れ準備を進めていた。 野崎氏には子供がいないため、民法上、遺産は妻である須藤被告が半分を受け取れる。市は遺産額が具体的に確定した後、洲崎被告と分割のための協議をするとしていたが、評価額が確定していない土地や建物があるため、額の確定に時間がかかっていた。 野崎氏の実兄ら親族4人は2020年4月、手書きの遺言状は無効だと訴え和歌山地裁に提訴。遺言書はコピー用紙1枚に赤ペンで手書きされ、熟慮の末に作成したとはみられないなどと主張。2024年6月21日、和歌山地裁(高橋綾子裁判長)は「有効」とする判決を言い渡した。親族側は控訴した。 須藤被告も最低限保障された遺留分を請求する権利がある。ただし、殺人罪で有罪の判決が確定すると、欠格事由に該当しその権利を失う。 須藤被告は野崎さんの死亡後、経営していた会社の代表取締役を引き継いだ。野崎さんの会社の元監査役は2020年7月、全財産を田辺市に寄付するとした野崎さんの遺言書の存在を知りながら、金融機関に告げずに2018年9月、会社名義の口座から約3,830万円を自身の口座に送金するなどした、また代表取締役の就任時に法的手続きを取らずに代表取締役に就任したと詐欺容疑で告発。和歌山県警は告発を受理した。 野崎幸助さんが生前に経営していた会社2社について、和歌山地裁は2021年9月21日付で破産手続きを開始した。21年8月に債権者から破産を申し立てられていた。 和歌山県警は2022年3月4日付で須藤早貴被告、須藤被告と報道対応や遺産相続で契約を結んでいた弁護士3人、経営会社と契約関係にあった公認会計士の計5人について、野崎さんが経営していた会社の資金約5,000万円を共謀して搾取したとして、詐欺容疑で書類送検した。和歌山地検は4月6日付で不起訴処分とした。地検は「事実を認定するに足る十分な証拠が認められなかった」と説明した。 2024年12月12日、和歌山地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審無罪判決。検察側は上告した。 |
| 氏名 | 山田悠太郎(26) |
| 逮捕 | 2022年3月9日 |
| 殺害人数 | 1名 |
| 罪状 | 住居侵入、建造物侵入、窃盗、詐欺他 |
| 事件概要 |
2022年3月8日午後7時13分~9時30分、浜松市の無職男性(当時79)方で、同居する孫であり静岡県警の元警察官で無職、山田悠太郎被告が男性、美容師である男性の妻(当時76)、近所に住む会社員の長兄(当時26)をハンマーで多数回殴るなどして殺害した。 自宅兼美容室になっており、母屋に男性夫婦と40代の息子、別棟に美容師の娘夫婦と孫の山田被告が住んでいた。山田被告は2018年に県警の警察官になったが、虐待によるフラッシュバックの症状が出るようになり、1年後に警察官をやめている。事件当時は殺害された兄と山田被告の双子の兄を含め8人いた。 同日午後9時35分ごろ、双子の兄が110番通報。警察官が駆けつけたところ、3人が倒れており、いずれも死亡が確認された。静岡県警は9日、祖父に対する殺人容疑で山田被告を逮捕した。 静岡地検浜松支部は4月28日から鑑定留置を実施。2023年3月3日、殺人罪で起訴した。 |
| 裁判所 | 最高裁第二小法廷 三浦守裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年4月10日 懲役30年(被告側上告棄却、確定) |
| 裁判焦点 | 最高裁は「上告趣意は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない」とした。 |
| 備考 | 2025年1月15日、静岡地裁浜松支部の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役30年判決。2025年10月30日、東京高裁で被告側控訴棄却。 |
| 氏名 | 川村葉音(21) |
| 逮捕 | 2024年10月29日 |
| 殺害人数 | 1名 |
| 罪状 | 強盗致死、詐欺、詐欺未遂、窃盗 |
| 事件概要 |
北海道江別市の大学生・川村葉音(はおと)被告と高校生・瀧澤海裕被告(事件当時18)、江別市のアルバイト従業員・少年B被告(事件当時16)は江別市の大学生・八木原亜麻被告、札幌市白石区のアルバイト従業員・川口侑斗被告(事件当時18)、江別市のアルバイト従業員・少年A被告(事件当時17)と共謀。八木原被告の交際相手だった千歳市の大学生の男性(当時21)が別れ話を持ち出したのに腹を立て、八木原被告は友人の川村被告に相談。2024年10月25日、男性は八木原被告へ預かっていた荷物を引き渡しに家へ向かったが、男性はそのまま公園に呼び出された。川村被告は友人である川口被告ら4人と合流して2人の元に向かい、江別市の公園で2024年10月25日午後11時20分ごろから2時間以上にわたり、6人がかりで男性を暴行。「全部出せ。全額」などと言いながら男性の頭や腹を足で踏みつけて財布などを奪い、男性からキャッシュカードなどを奪うカードを使いコンビニでたばこ30箱以上と食料品を購入したほか、奪ったキャッシュカードで現金現金12万7000円をを引き出すとともに、男性に外傷性くも膜下出血、硬膜下出血、腰椎の骨折などの重傷を負わせ、全裸で放置。男性を外傷性ショックで死亡させた。 八木原被告と川村被告はともに釧路市出身で、中学時代に通っていた塾の同級生だった。二人は江別市の別々の大学に通うも、同じコンビニエンスストアでアルバイトしていた。川村被告と少年A被告は交際中だった。少年A被告の高校の友人が瀧澤被告で、瀧澤被告と川口被告は中学の同級生だった。少年B被告は川口被告の中学の後輩。八木原被告を除く5人は事件の1か月前頃から一緒に遊ぶようになっていた。 26日午前6時15分ごろ、散歩中の男性が公園の遊歩道で、全裸で倒れている男性を見つけ、通行人を通じて110番通報。同日夕方、八木原被告が「知っている人かもしれない」と江別署に通報した。同署が詳細を聴き取ったところ、事件への関与が疑われたため、27日に傷害容疑で八木原被告を逮捕。容疑を傷害致死に切り替え、28日に送検した。 川村葉音被告、瀧澤海裕被告、少年A被告は同日、厚別警察署に一緒に出頭。江別署は29日、傷害致死容疑で逮捕した。30日、同容疑で送検。江別警察署に同日、川口侑斗被告と少年B被告を傷害致死容疑で逮捕。 11月16日、北海道警は八木原被告と川村被告を強盗・詐欺・詐欺未遂・窃盗容疑で再逮捕。19日、瀧澤被告と少年A被告を同容疑で再逮捕。20日、 川口被告と少年B被告を同容疑で再逮捕。 12月6日、札幌地検は八木原被告と川村被告を強盗致死・詐欺・詐欺未遂・窃盗罪で起訴。 10日、札幌地検は同容疑で瀧澤被告と少年A被告を札幌家裁に送致。12日、川口被告と少年B被告を同容疑で札幌家裁に送致。 2025年1月6日、札幌家裁は瀧澤被告と少年A被告を検察官送致(逆送)することを決定。7日、川口被告と少年B被告を検察官送致(逆送)することを決定。特に川口被告について主犯格」と認定し、犯行を厳しく非難した。他3人も「結果は取り返しのつかない極めて重大なもの」として刑事処分が相当と結論付けた。 1月15日、札幌地検は4人を札幌地裁に起訴した。そして川口被告と瀧澤被告を特定少年として実名を公表した。 |
| 裁判所 | 札幌地裁 高杉昌希裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年6月25日 懲役30年 |
| 裁判焦点 |
裁判員裁判。裁判は川村葉音被告と瀧澤海裕被告(事件当時18)、少年B被告(事件当時16)の三人と、川口侑斗被告(事件当時18)と少年A被告(事件当時17)の二人、それと八木原亜麻被告単独に分かれた。 2026年5月25日の初公判で、川村葉音被告と瀧澤海裕被告、少年B被告は起訴事実を認めた。 検察側は冒頭陳述で、交際相手との別れ話を巡り、八木原被告が立腹したことが事件の発端と説明。相談を受けた川村被告やその遊び仲間の計6人で男性を呼び出し、暴行。腎臓の損傷などで全身の約30%の血液を失わせて死亡させたとした。暴行は当初、制裁や謝罪を求める目的だったが、途中から金品を奪うことも加わり、「金品目的が生じてからの暴行は2時間以上と執拗」と指摘した。 川村被告の弁護人は、川村被告に計画性がなく、また川口被告が突如暴行を始めることを予知することもできなかった事件であると主張。川村被告自身も複数暴行や、焚きつけるような発言をしているが、その場の流れで安易に同調してしまったに過ぎないとした。金銭の強取もそれにより川口被告がその場を収めると思ったまでで、自身の利得は考えていなかったと主張した。 瀧澤被告の弁護人は、事件のきっかけも、暴行を継続した理由も、川口被告や八木原被告によるものと主張。自らは積極的に暴行には関与せず、動画として残っている「ライダーキック」の掛け声とともに行われた飛び蹴りは、暴力的な場の雰囲気を変えて、暴行を止める意図であったなどと主張した。 少年B被告の弁護人は、まず事件に関与し重大な結果となった後悔、反省について唯一述べ、行ったことへの相応の責任を考えているとした。その中で、B被告は川口被告に過去に暴力を受けた経験があり抗えない関係性であった点や、被告人らの中で最年少であることを述べた。また被告人の資質、特性に課題がある点や、置かれている環境などを総合考慮してほしいなどとした。 この日の午後の証拠調べで、6被告が男性に暴行を振るう様子を収めた動画や音声データが証拠採用され、一部が法廷で流された。検察側は被告人らの『LINE』のやりとりを証拠として提出した。 26日の第2回公判で、川口侑斗被告が検察側の証人として出廷した。しかし、川口被告は「宣誓しません」と宣誓せず、証言することを拒否した。「もう少しで自分の裁判があるので、その時に証言します。ただ、やってしまったことは申し訳ありませんでした」と述べた。 その後、検察側から川口被告の供述調書が読み上げられた。 27日の第3回公判で、川村葉音被告への被告人質問があり、川村被告は「何も考えていなかった」「いらついて行動にでてしまいました」「川口被告がキレていて怖く、そこまで暴力がエスカレートするとは思わなかった」などと供述した。また検察側から遺族への謝罪がないことを問われ、「被害者遺族に対して…痛い思いや苦しい思いをさせ大切な1人の命を奪ってしまい本当に申し訳ありませんでした。事件の時は何も考えず人の気持ちを考えず行動してしまいました」などと初めて謝罪した。 同日、瀧澤被告への被告人質問も行われ、男性へ飛び蹴りした理由について「暴力を振るっていなかったのは自分だけでやらないと悪い雰囲気になると思った」「置いていかれるのが怖かった」、男性に金品を要求した場面については「お金も取るんだと思ったが僕はそのつもりはなかった」などなどと証言した。 28日の第4回公判で、瀧澤被告の被告人質問が行われた。瀧澤被告が「ライダーキック」と言って暴行を加えたことについて、「(川口被告が)怖い雰囲気で、本気で暴力をふるっていたので、それをなくすためだった」と話した。また、事件の翌日に川口被告に自首することを相談したところ、「うるせえ自分だけ自首しろ」と言われたと説明した。 同日、男性と面識のなかった少年B被告への被告人質問が行われ、「知らないカップルの喧嘩に興味があったか」問われると、「まったくなかったです」と話した。暴行に加わった経緯については「自分のサンダルに男性の血がついて怒りだけで蹴った」と説明した。 6月1日の第5回公判で、少年B被告への被告人質問が行われた。少年B被告は暴行などについて、川口被告に恩があり、「裏切りたくないと思ってやりました。逆らえなかった」などと話した。 同日、男性の遺体を司法解剖した医師への証人尋問が行われた。医師は、男性の死因は外傷性ショックとしたうえで「頭と顔の出血が顕著」「腎臓は一部が裂けるような状態で、腰椎の一部が骨折していた」と話した。そして金品を要求した後の暴行が「死に関わっていると考えられる」と証言した。 2日の第6回公判における中間論告で、検察側は3人の被告に強盗致死罪が成立すると改めて主張した。弁護側は成立する罪状については争わないとし、あくまで川口被告に同調したもので従属的だったと情状酌量を求めた。 3日の第7回公判で川村葉音被告の父親が出廷し、「できるだけの賠償行為をしたい」と述べた。また、川村被告が高校時代にいじめにあっていた時のことを弁護人から聞かれ、「殴られたら殴り返せ」と指導したと証言した。また母親も出廷し、「親として見捨てることはできない」と涙ながらに述べた。 またこの日は裁判所の中間判断が行われ、高杉裁判長は「詳細は終局で話すが、解剖医の証言や被害者の遺体の状況から金品を要求したあとの暴行で死亡したと認定できる」と3人の被告に強盗致死罪が成立するとした。 ここから3被告の公判は、情状や量刑について分離して審理が進められた。 6月5日の川村葉音被告への公判で、川村被告への被告人質問が行われた。事件当日の様子について、「主犯格の男が勝手に暴力を始めたので関係ないと思っていた」など述べた。さらに「強盗致死罪は死刑か無期懲役、原則的には2つしかない、あなたはどうなると思っているのか」と問われ、「社会に出られる確率は少ないと思ってます。少ないというかほぼないと思ってます」と答えた。 同日、殺害された男性の両親の意見書が読み上げられ、「無念を晴らすためにも極刑を望みます」「死刑か無期懲役しかないと思っています」などと述べた。出廷した姉も極刑を訴えた。 夕方から行われた論告求刑で、検察側は「被害者に極めて強い肉体的、精神的苦痛があった」「自発的に暴行に加わり、金品を要求した」「著しく悪質で重すぎる犯情。情状に酌量すべき事情が見出せず、厳罰が不可欠」と厳しく指摘し、川村被告に無期懲役を求刑した。 同日行われた最終弁論で弁護側は、川村被告による暴行は比較的少なく従属的な立場であり、積極的な加害目的や利得目的がない、などとして13年の有期懲役が妥当とした。 最終意見陳述で川村被告は、「本当に事件を起こしてしまい、多くの人に辛い思いや毎日苦しい思いをさせ、本当に申し訳ありませんでした。被害者遺族のみなさまには、大切な家族1人の命を奪ってしまい、本当に申し訳ございませんでした。以上です」と謝罪した。 6月10日の瀧澤海裕被告への公判で検察は、当時18歳だったが分別のつく年齢であり、酌量の余地はないなどと指摘。弁護側は「両親らが被害弁償への取り組みを行っている」「反省を深めている」などとして情状酌量を求めた。 午後からの被告人質問で、過去の経験から孤独を避けるため、自分の判断よりも周りに合わせるようになったと話した。当日の犯行についても「被害者より自分を優先してしまった、嫌われたくない、安心したい気持ちを優先した結果だった」などと述べた。 また瀧澤被告の母も出廷。被害者遺族に謝罪した上で、今後については「一緒に罪を背負い、支えていく」と話した。 11日の論告で検察側は、瀧澤被告は主導したとは認められず、暴行の程度は他より劣るとした一方、「ライダーキック」と叫びながら跳び蹴りするなどし、共犯者がふざけて激しい暴行を加えることを助長したと指摘。犯行当時18歳であること、酌量減軽があり得ない事案でもないなどとして懲役20年を求刑した。 同日の最終弁論で弁護側は従属的立場で関与は限定的、少年段階で未熟さがある、家族の支援がある、家族が1,000万円の弁償をする意思がある、自首をしたなどとして、懲役15年が相当と訴えた。 最終意見陳述で瀧澤被告は、「被害者さんはこれからも生きれたはずで、幸せな日々を送れるはずでした。それなのに勝手な行動で命を奪ったこと、申し訳ございませんでした」と頭を下げ、「遺族の方々は、これから楽しいこととかいろんなこととか沢山あったと思います。大学どうなのなど話すことをできなくさせてしまいました。自分の勝手な行動で会うこと、話すことができなくなり、苦しい気持ちを一生させてしまったこと、申し訳ございませんでした」と謝罪した。 6月18日の少年B被告への公判で検察は、川口被告による男性への暴行が始まった後も、暴行を止めることなく、「普通に笑いが止まらない」などと被害者を嘲笑し、暴行に同調したと指摘した。また少年本人も、自身のサンダルに血が付いたことに腹を立て、男性の腹部を蹴り、責任が軽微とは言えないと指摘した。そして「結果の重大性から動機に酌量の余地はない」と述べた。 弁護側は、少年B被告が「周囲に判断をゆだねる傾向がある」と主張。生育環境などから、「格上と判断した人物には反抗することなく従う傾向がある」とした。その上で、置かれた環境を考慮し犯行に及んだ要因を考えるべき、などと主張。「被告人は16歳で人格形成の途中段階であった。感情コントロールの点においてもまだ成長途中である」「(川口被告)との関係性維持のために犯行を助長してしまった」などとして、更生の余地があると主張した。 6月19日の公判における被告人質問で少年は、検察から川口被告との関係を問われ「助けてくれる人が欲しかったので男と付き合っていた」などと述べ、川口被告に依存しがちだった状況を説明した。弁護士から自分が一番だめだったところはどこだと思うかと聞かれ、少年は「ばれなきゃいいや、少しだったらいいやと思ったこと」と述べた。 また被害者の姉が出廷し、「法律の許す最大限の刑に処していただきたい」「弟を見殺しにして食べたラーメンは美味しかったですか」などと述べた。 この日の論告で検察側は「被害者の血液がサンダルについたから腹を立てて腹部を蹴っているが、川口被告に迫られて恩義や裏切らない気持ちから苛烈な暴行で、多量な出血は、理不尽な逆恨みで身勝手な考えである。自己の意思で暴行したと言える。相当に長期間の矯正教育が必要だ」と批難したが、「暴行は他の共犯者より劣る」ことから少年法を踏まえた減軽は「やむを得ない」として懲役10~15年の不定期刑を求刑した。 この日の最終弁論で弁護側は「事件の重大性、被害者の生命が失われたことは重い。相応の刑事罰は免れない」としたものの、少年には精神的未熟さが見られ、一連の行動は他の被告への従属的なものだったなどとして、更生が期待できることなどから懲役5~10年の不定期刑を求めた。 最終意見陳述で少年B被告は、「これから自分が裁判中に指摘されてきたことをしっかり考えて、被害者や被害者遺族にしたことを考えていきます。今の自分には謝る……謝罪をしていきたいと思っています。これから具体的にどういう償いをするかはわからないので、考えていきたいと思っています。本当に申し訳ございませんでした」と述べた。 高杉裁判長は判決で、男性と八木原被告の交際トラブルが事件の契機になったと指摘。「本来は話し合いで解決すべきだったのに、当事者でもない者が乗り込んで暴力に発展しており、その経緯に酌量すべきところは何もない」「生命や尊厳に対する配慮は全くうかがえない。最も悪質な部類に近い事件だ」と非難した。 川村葉音被告については、暴行や金品を奪う流れをつくり、「犯行をけん引した」と判断。しかし「被害者の死亡への直接的な寄与は限定的である」として、有期刑の上限となる懲役30年を選択した。瀧澤海裕被告は「ライダーキック」と言って飛び蹴りしたなどとし、少年B被告は犯行を助長するような言動を取ったと指摘した。その上で、瀧澤被告と少年B被告は従属的な立場にあったとして、瀧澤被告には求刑通り懲役20年判決、少年B被告には懲役9年以上13年以下の不定期刑(求刑懲役10年以上15年以下の不定期刑)を言い渡した。 判決言い渡し後、高杉昌希裁判長は被告らに対し、「3名は起立してください。内容は分かりましたね」と語りかけた。3被告が立ち上がった後、高杉裁判長は「どうしてこんなことになってしまって、どうして止められなかったのか。法廷の中でも何度も問いかけられましたね。あなたたちなりに答えようとはしていたけれども、十分なものとは言えませんでした。答えのない質問なのかもしれませんが、ずっとこのことを問い続けてください」と説諭した。 |
| 備考 |
川口侑斗被告と少年A被告の公判は7月13日から。八木原亜麻被告の公判は未定。 検察・被告側は控訴した。 |
| 氏名 | 佐藤忍(64) |
| 逮捕 | 2024年1月29日 |
| 殺害人数 | 3名 |
| 罪状 | 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火 |
| 事件概要 |
弥富市の会社員佐藤忍被告は2024年1月3日午後8時過ぎ、弥富市の木造2階建てアパートの通路に積まれた衣類などに火をつけて建物の一部約100平方メートルを損傷。1階の1室に住むパートの男性(当時68)と同居していた無職女性(当時57)、2階の1室に住む無職男性(当時66)が一酸化炭素中毒で死亡した。屋外に避難した派遣社員の男性(当時47)が煙を吸ってのどにやけどをした軽傷、パートの男性(当時63)は逃げて無事だった。 佐藤被告と亡くなった3人は、弥富市内の喫茶店の常連であった。無職女性は佐藤被告に借金があった。 1月29日、県警は佐藤被告を殺人、殺人未遂、現住建造物等放火の容疑で逮捕した。 鑑定留置の結果、名古屋地検は刑事責任能力があると判断。7月5日、佐藤被告を起訴した。 |
| 裁判所 | 名古屋地裁 大村陽一裁判長 |
| 求刑 | 無期懲役 |
| 判決 | 2026年6月29日 懲役30年 |
| 裁判焦点 |
裁判員裁判。 2026年6月8日の初公判で、佐藤忍被告は「(間違っているところは)ないです」と起訴事実を認めた。 冒頭陳述で検察側は、被告は住人の女性5万円を貸したが返済されず、相手が「借りていない」などと主張していると聞いていら立ちを募らせ、たばこの不始末に見せかけて同居の男性ともども殺害しようと考えたと主張。事件前日に火のついたたばこで放火を試したが燃えず、当日は紙片に火をつけて置いたとして「一定の計画性があった」と指摘し、事件当時、完全責任能力があったと主張した。 弁護側は放火した行為などの事実関係は争わないとした上で、「ごみを燃やして仕返ししてやろうと考えただけであり、被告は知的障害のため想像力が乏しく、アパートを燃やす意図も、人を殺す意図もなかった」と無罪を主張。さらに「事件当時、知的障害の影響で自制がきかず、心神耗弱状態にあった」と指摘した。 17日の論告で検察側は「無関係の住人を含めて3人の生命を奪った結果は重大で、被害者に殺されるような落ち度はなかった」と指摘。金を返してもらえずにいらだちを募らせたという動機も身勝手だと非難した。被告が事件前日、たばこの不始末に見せ掛けて放火する方法を検討していたなどと主張し、「一定の計画性が認められる」と訴えた。死刑求刑も考えられたが、佐藤被告の知的障害が、犯行に一定の影響を及ぼしたことは否定できず、遺族らに慰謝料を払ったことを踏まえ、無期懲役を求刑した。 18日の最終弁論で弁護側は、被害者の1人に貸した金が返ってこない仕返しでアパート通路のごみを燃やそうと考えたと指摘。被告には中度の知的障害があるとして「建物や人への被害までは想像できず、失火に当たる」と主張した。捜査機関の取り調べや法廷での供述で殺意を認める場面があったことについては「質問に同調しやすい傾向があり、供述は信用できない」と訴えた。 最終意見陳述で佐藤被告は「自分のやったことを反省します」と述べた。 判決で大村陽一裁判長は、「金銭トラブルの怒りから、2人が死ぬかもしれないと認識しながら放火した短絡的な犯行」として責任能力を認めた。また「被告は30年以上就労しており、日常的に料理をするなど火の危険性も学習していた」として知的障害の影響は一定程度にとどまると指摘した。そして「3人の命が奪われる結果は重大で、被害者の逃げ道となる玄関先に火を放つなど極めて悪質な犯行」と指摘。そのうえで、被告は中等度の知的障害があり、「強固な殺意があったとは認められず、知的障害が動機形成過程に相当程度、影響を及ぼしたことは否定できない」などとした。 |
| 備考 | 被告側は控訴した。 |
※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。
【参考資料】新聞記事各種