『おもしろ推理パズル 名探偵世界一周』
著者:藤原宰太郎
(藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)
発行:光文社文庫
発売:1984年9月10日
定価:380円(初版時 税別)
推理小説を読む楽しみの一つは、その作品の舞台になった土地を紙上で観光旅行できることだ。そこが珍しい国や特別な名所であればあるほど、エキゾチックな旅情をかきたてられ、怪事件の謎の渦中にまきこまれる。
書店の棚にずらりと並んでいる推理小説のタイトルを眺めながら、さて、こんどはどこの国へミステリー旅行に出かけようかと、ちょっと思案して選ぶのも、また楽しいものである。
そこで今回は、世界各地の風物や名産、固有の習俗などをトリックに使った推理クイズを集めてみた。とはいっても、まだまだ見聞不足で、世界中の国を全部とりあげることができなかったのは残念だが、旅行ミステリーの愛好家にすこしでも満足してもらえれば幸いである。
では、頭のコンディションをよく調整してから、早速世界一周トリック旅行に出発してください。七一問ぜんぶ正解して、めでたく帰国されたら、それこそあなたは名探偵になれますよ。
【目 次】
第一章 日本篇
第二章 アジア・オーストラリア篇
第三章 中近東・アフリカ篇
第四章 ヨーロッパ・ソ連篇
第五章 南・北アメリカ篇
光文社文庫創刊第1回配本にラインナップされた一冊。文庫書き下ろしで出版されたこの本は、後にシリーズ化され、合計8冊も出版されることになる。この本をきっかけに、藤原宰太郎の推理クイズ文庫本が数多く出版されたことを考えると、記念碑的な一冊といえよう。
ただ名探偵世界一周というアイディアや構成は『名探偵世界一周』とほとんど変わらない。クイズそのものもいくつか新作(といっても作品からのトリック引用は一緒なんだが)はあるようだが、大部分は過去の推理クイズ本からの流用である。推理メモに記された、世界各地を舞台にしたミステリの紹介の方が、マニアにとって便利なものになるかもしれない。
本作の中に、転送電話をアリバイトリックに使ったクイズがあるけれど、これも今では骨董品的な扱いしかされないんだろうな。時代の進歩とともに、機械を使ったトリックは古びていく。仕方のないことなのだが、寂しいところでもある。
本書は売れて増刷されたが、以後のシリーズ本は一度も増刷されず絶版になったとのことである。
増刷の経緯については『藤原宰太郎探偵小説選』(論創ミステリ叢書113)よりより引用しました。有難うございました。
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