藤原宰太郎『動物トリック大全集 おもしろ推理パズルPART.7』


藤原宰太郎 『動物トリック大全集 おもしろ推理パズルPART.7』
(光文社文庫)




『動物トリック大全集 おもしろ推理パズルPART.7』


 『動物トリック大全集 おもしろ推理パズルPART.7』

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 発行:光文社文庫

 発売:1992年6月20日

 定価:440円(初版時 税込)




 世界で最初の推理小説は、アメリカの詩人E・A・ポーが一八四一年に発表した短編『モルグ街の殺人』です。この奇妙な密室殺人事件の犯人は、なんと、東南アジア産のオランウータンであった。ミステリー史上、犯人の第一号が動物であったということは、その後のミステリーの発展に、たいへん暗示的なことです。
 私たち人間は、家畜やペットはもちろんのこと、いろんな動物と共存して生活しています。猛獣や珍獣だって、動物園へいけば見ることができます。これらの動物は、ごく小さい昆虫や魚でさえ、みなそれぞれ人間とはちがった特殊な能力や習性をもっているので、その特異性をトリックに利用すれば、意表をついたおもしろいミステリーができます。トリックが豊富になります。
 たとえば、犬を使った作品には、C・ドイルの名作『パスカヴィル家の犬』があり、馬なら、E・クイーンの長編『アメリカ銃の謎』、猫なら、江戸川乱歩賞を受賞した仁木悦子の『猫は知っていた』、ネズミなら、J・フットレルの短編『十三号独房の問題』、鳥なら、A・モリスンの短編『レントン館盗難事件』など、代表作を一つひとつ数え上げたら、きりがありません。
 またペットは探偵役のアシスタントとしても活躍して、ミステリーの世界に楽しい彩りをそえています。その好例が赤川次郎の『三毛猫ホームズ』や、辻真先の『迷犬ルパン』のシリーズです。三毛猫ホームズも、迷犬ルパンも、人間の五感よりすぐれた感覚、つまり動物的なカンを働かせて、捜査に協力し、事件解決のヒントをつかんでは、飼い主の主人公に手柄を立てさせるのです。
 このように動物が登場する作品を列挙したら、たちどころにミステリー動物園ができるほどです。そこで、本書では、とくに奇抜でおもしろいトリック六十一ほど選んで、クイズ形式にして集めてみました。どれもみなトリックの謎をとく手がかりは動物にありますから、どんな動物がどのように使われているか推理して、クイズに挑戦してください。
 六十一編のなかには、私がこれまで書いてきた推理クイズ本と重複するものがいくつかありますが、『動物トリック大全集』として一冊にまとめるには、どうしても欠かせないので、あえてここに再録しました。ミステリーの愛読者ばかりでなく、動物好きな人にも楽しく読んでいただければ幸いです。
 では、ミステリー動物園の謎の迷宮へ、ご案内します。

(「まえがき」より)


【目 次】
 I ミステリー動物園の秘密
 II 迷宮サバンナの推理
 III 不思議なトリック標本室
 IV 密室ジャングルの旅


 まえがきから犯人をばらしてしまうというミステイクを犯しているが、動物を使ったトリックを集めたというのは本書が初である。例によって“いくつか”ではなく、“大部分”のクイズが再録ではあるが、こういうまとめ方も面白いとは思う。どんな動物トリックがあるかという点に興味がある方、過去の動物トリックを調べたい方にはそれなりに重宝する一冊だと思う。

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