『真夜中のミステリー読本』
古今東西、名&珍作ガイド
著者:藤原宰太郎
(藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)
発行:KKベストセラーズ ワニ文庫
発売:1990年7月5日初版
定価:460円(税込み、初版時)
毎年、五月一日になると、高額納税者リストが発表される。長者番付である。作家の部では、いつも上位10位に、推理作家が四人くらいは名をつらねている。最近は赤川次郎と西村京太郎が、断然、他を引きはなして、トップと二位の座を独占しつづけている。まさにミステリー界は花ざかりである。
書店では、ミステリーが、大洪水のようにあふれて、発売されている。読者はどの本を買おうかと、しばし書店の棚を眺めて、ため息まじりに迷ってしまう。
そんな読者のために、手軽なガイド・ブックとして、この本を書いてみた。とはいっても、かた苦しい評論でもなければ、研究書でもない。ミステリーはあくまでエンターテイメントであるから、読んで楽しいことが一番である。
ミステリーに関する意外な話や珍トリック、名探偵のゴシップなどを、雑学ふうに集めてみた。どのページからでも、手あたり次第に読んでいただいて結構だ。ミステリーにも、こんな愉快なことがあったのかと、くすくす笑って楽しんでいただけたら、満足である。
【もくじ】
読むためにも知りたい推理小説これだけのルール
1 ミステリーを10倍楽しく読む方法―推理小説に関する雑学知識
2 事実は小説よりもミステリー―古今無双の推理作家列伝
3 こんな名&珍ミステリーがあった―知られざる推理小説ガイド
4 奇想天外 トリックを見破れるか―難事件の謎に挑戦せよ
5 世界のユニーク探偵カタログ―格好よさだけが条件じゃない
6 名探偵の推理は間違いだらけ―ホームズ、十津川警部、神津恭介……
「気楽に、寝転んで」が最良のミステリー読書法
前書きにもあるとおり、推理クイズ本ではなく、ミステリーガイドブック。といっても書き下ろしではなく、過去の推理クイズ本に書いたコラムやエッセイを中心にまとめたもの。書き下ろしたのはごく一部と思われる。
過去の本からそのまま引用しているから、おかしな記述も目立つ。たとえば「空前の大ロングラン推理劇」というコラム。この題だけで、クリスティーの「ねずみ取り」だな、というのはミステリファンならすぐにわかると思う。今現在でも演じられており、既に観光名所と化している。ところが1990年出版のこの本での記述はこうなっているのだ。「ちょっと古い話だが、1980年の時点で、(以下略)」。おいおい、それぐらいちょっと調べればわかるだろう、と突っ込みたくなる。多分本人がまとめたのではなく、助手か誰かが過去の推理クイズ本から引き写し、矛盾する部分をちょっと訂正してできたのがこの本ではないかと思われる。
まあ、なにも知らないファンが読む分には面白いかもしれないが、有名作品、無名作品問わずネタバレが山ほど出てくるので、そういうのを気にしないファン向けの一冊である。
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