藤原宰太郎 『謎の怪事件 探偵トリック入門』
(KKベストセラーズ ワニの豆本)
『謎の怪事件
探偵トリック入門
』
著者:藤原宰太郎
(藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)
発行:KKベストセラーズ ワニの豆本
発売:1975年初版(発売日不明)
定価:380円(ただし、1979年、24版時)
62連続!謎の怪事件がキミの脳ミソに一撃!さて、読者諸君!キミは冷静にして沈着、頭脳明晰なる名探偵になりうるだろうか?逆転また逆転!推理小説の10倍は楽しめる探偵トリックの決定版。
(折り返しの言葉より)
62問の推理クイズに、「MYSTERY ANGLE」と題した実在事件のコラムが5編、「犯罪捜査ノート」と題した科学捜査及び岡っ引きのコラムが10編、「名探偵ハンドブック」と題した名探偵のテクニックが7編、「ミステリー小説入門」と題したミステリコラムが16編収録されている。
1975年頃からブームになった豆本ものの一冊。おそらくワニの豆本がその嚆矢である。推理クイズ本ではこれが最初ではないだろうか。推理クイズ62問の他に、実在の事件を紹介した「MYSTERY ANGLE」、科学捜査などを紹介した「犯罪捜査ノート」、探偵のテクニックを紹介した「名探偵ハンドブック」、様々なトリック、変わった推理小説などを紹介した「ミステリー小説入門」、「推理作家こぼれ話」のコラムがあり、ミステリ入門書として悪くない出来である。
推理クイズは海外・国内ミステリからの借用とオリジナルが半々である。ただ、借用したクイズでも元ネタを紹介しているわけではないので、その辺は安心してもよい。ただし、「ミステリー小説入門」では、様々なトリック、ミステリの種明かしをしており、藤原宰太郎が書く推理クイズ本が一部(多く?)のミステリファンから敬遠される大きな理由となっている。もちろん、トリックを知っていたとしても、それはミステリの楽しみの一部分であるから、そのミステリの面白さを大きく損ねたわけではない。だからといって、先にトリックを知ってしまうのは、やはり興醒めである。トリックもしくは犯人を知ってしまったからと言う理由で、その小説を読む気力が失せたという読者も多いだろう。そういう意味で、藤原宰太郎は罪作りなことをしている。
ただ、トリックを知って、このミステリは面白そうだな、と思ってくれる読者がいてほしい。藤原宰太郎の意図はそこにあると思うし、それが年少の読者をミステリ好きにさせる手法であると信じ切っているのだろう。一度、確認してみたいところである。
かなり話題がそれたが、本書はシンプルに推理クイズ本に徹しており、その意味で好感が持てる。大きさも手軽であるし、頭の体操という点では好著であるといえよう。
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