山小屋怪死事件の謎


【問題】

 吹雪の山小屋で、スキーに来た若い会社員が、ストーブの火掻棒で頭を殴られて殺されていた。
 犯人の姿は見あたらなかった。ただ、ストーブの火が燃え尽きかけているので、逃走後、数時間近く経過していることは間違いなかった。
 麓から登ってきた駐在所の巡査が調べてみると、小屋の窓という窓には鍵が掛けられているうえに、板が厳重に打ちつけてある。また戸口の厚い扉は、落とし金式の簡単な錠前が取りつけてあるが、これも掛け金がちゃんとはまっていた。つまり、山小屋全体が、完全な密室状態にあったのである。
 扉はわずかな隙間もないし、空気抜きの小窓や郵便受けの口などもなかった。したがって、糸や針金を使い、施錠の細工をしたのでないことは明らかである。
 いったい犯人は、どのような方法で、密室殺人を行い得たのであろうか?

【解答】

※解答部分は、反転させて見てください。

 犯人は、小屋の外に降り積もっていた雪をすくってまるめ、雪つぶてを作って、扉の錠前の受け金のところに投げつけた。そして、その雪つぶてで、掛け金を斜めに支えて固定した。それから、ドアをそっと閉めて逃走した。
 やがて、雪はストーブの熱で溶け始める。すると、掛け金は自然に受け金に落ちて、密室が構成された。戸口の床に崩れ落ちた雪も、時間がたてば熱で蒸発してしまうから、あとには何の痕跡も残らない。

【覚書】

 推理クイズにでる密室ものの定番ネタ。『ミステリ百科事典』に出ていたと思ったのだが、手元にないのでわからない。
 雪や氷などを使った密室トリックは数多い。そのうちでもこのトリックは、基本中の基本。

 おーかわ様からご教授頂きました。楠田匡介「雪の犯罪」と川島郁夫「残雪」でこのトリックを使用しているとのことです。有り難うございました。


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