義歯を盗む


【問 題】
 老人ばかりが4人、次々に襲われる事件が起きた。3人はいずれも市内の一流ホテルで襲われた。老人たちは、睡眠中にむせかえるような香気を覚えているだけで、猛烈な吐き気または頭痛がして目を覚ますのだった。室内にはエーテルかクロロホルムの匂いが漂っているだけで、何も盗まれていなかった。
 もう1人はタクシーの中だった。暗い場所でタイヤがパンクしたと言って、運転手が舌を鳴らしながら客席の底から修繕道具を出すと見せかけて、突然客の顔面にエーテルを沁みこませた布片を押し当てて眠らせ、そのまま行方をくらませた。こちらの事件も、何も盗まれていなかった。
 いや、正確に言うと、4人の老人は、共通に盗まれていたものがあった。それは彼らの上顎の義歯だった。
 この4人は、パリでヤードウェイ博士というアメリカ人の歯医者にかかっていることがわかった。被害者の4人はパリを出発するまで、その義歯を完成させていなかった。ヤードウェイ博士は、ニューヨークにいる友人の名前を告げ、その人が完成してくれるだろうと言っていた。他にもヤードウェイ博士にかかっている老人が数人いて、彼らは指示通りに義歯を完成したのだが、今回襲われた4人はそのままにしていた。
 以上のことを調べた警察は、ヤードウェイ博士やニューヨークの友人、その他関係者を捕まえた。さて、この事件の真相はいったい何だったのか。


【解 答】
 ヤードウェイ博士とその一味は、未完成の義歯に大きな穴を開けて、その中に宝石を忍ばせて、密輸入していた。患者で、ニューヨークへ帰ってからヤードウェイ指名の歯医者へ行かない者の義歯の宝石を回収するために、老人を襲って義歯を奪っていた。

【覚 書】

 密輸入トリックとしてよくあるネタ。他にもダチョウの胃袋にひそませて宝石を密輸入するネタもよく推理クイズで見ますね。これは、現実の事件でも使用可能なトリック。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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