船室の殺人


【問題】

 山田警部は休みを取り、妻と船の旅を続けていた。しかし船が揺れて酔った妻は自室で休んでおり、山田警部は一人で船内を歩いていた。そこへ船員が駆け込んできた。
「警部、大変です。お客様がピストルで撃たれて、亡くなられました」
 かつて、船長が巻き込まれた事件を解決したこともあり、船員も山田警部のことを知っていた。
「亡くなられた智子夫人は、連れの沢田様と別々の船室を取られていました」
 船員の説明に頷きながら一等船室に入ると、太った智子夫人がピストルを手にしたまま血に染まって倒れ、その横に黒メガネの男が船の揺れに連れて、よろよろしながら立っていた。
「私は智子夫人の秘書です。ずっと隣の船室で、智子夫人の会社の契約書類を書いていました。すると突然、銃声が聞こえてきました。驚いてドアを開けて出た途端、黒い人影が夫人の部屋から逃げて行きました」
「夫人は何故ピストルを持っていたのかね」
「船に乗る前から何か怯えていたようではありますが、ピストルを持っていたことは知りませんでした」
 隣の船室には秘書の言う通り、物音が伝わってくる。デスクには、きれいな字で書かれた書類が、いかにも途中で中止されたという風に、書きかけのまま散らばっていた。
「ところで、君はなぜ夫人を殺したのかね」
 山田警部がズバッというと、秘書の男の顔色が青ざめた。
 山田警部は何故、秘書が嘘をついていると分かったのだろう。

【解答】

※解答部分は、反転させて見てください。

 秘書の男自身、よろよろするぐらい船が揺れているのである。今書いている書類の字がきれいなわけがない。

【覚書】

 加納一朗の推理クイズで時々見るもの。この書き方だと、わかりやすすぎたか。
 元ネタはH・A・リプリーの推理クイズ「船上での殺人」です。加納一朗は、この人のクイズを移植したクイズが本当に多い。


【「このクイズの元ネタを探せ」に戻る】