ぺしゃんこのタイヤ


【問題】

 ある朝、とある社長の家のガレージで、運転手が倒れていた。猛毒の青酸ガスによって死んでいたのだ。だがその朝は、誰もガレージに近づいたものはいなかったし、青酸ガスが発生するような薬品、容器などは一切置いていなかった。ではいったい、どんなトリックを使って運転手を殺したのだろうか。警察は、車のタイヤの一つがぺしゃんこになっているのを見て、たちどころにトリックを見抜いた。

【解答】

※解答部分は、反転させて見てください。

 犯人は、前の晩にガレージに忍び込み、タイヤの一つに高圧の青酸ガスをたっぷりと詰め込んだのだ。翌朝、運転手は車を点検しているうちにタイヤの一つがふくらみすぎているのに気付き、少し空気を抜こうとしてチューブの栓を外した。その瞬間に猛毒の青酸ガスが吹き出し、運転手は死んだのだ。

【覚書】

 多分、警察が調べたら一発で分かるでしょうね。トリックというよりは、むしろ殺人手段の一つと考えた方がいいかも知れません。

 情報をいただきました。青酸ガスの物性では実行不可能とのことです。以下、頂いた情報をそのまま転記します。ネタバレなので、反転させて見てください。

「ぺしゃんこのタイヤ」は青酸ガスの物性では実行不可能です。
 シアン化水素の沸点は26度で、気温によっては液体のままですし、タイヤのような高圧な容器に入れられていると気温が高くてもガスにはなりません。ですので青酸ガスでタイヤを膨らませることは不可能です。
 ただし沸点以下でも揮発はするので、「少し青酸ガスを混ぜた空気を高圧で入れて、揮発した青酸ガスも混ざっている」というトリックであれば可能です(致死量に達するかが問題ですが)。
 アルシンのような沸点の低い毒ガスならば、それ自体でタイヤを膨らませることも可能だと思いますが、青酸の場合は「ガス」というイメージがあって、作家たちには常に気体だと思われたのでしょう。
 どちらかといえば「お馬鹿な推理クイズ」に入りそうです。

 情報ご提供、有り難うございました。

 草野唯雄『支笏湖殺人事件』(徳間書店)で、このトリックが使われているそうです。ただ、この作品は1980年の発表で、クイズ本は1970年代に出ているので、残念ながら元ネタではなさそうです。
 情報ご提供、有り難うございました。

 元ネタが判明しました。アーサー・ポージスの短編「」です。


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