夜走る
【問 題】
彼の名前は銀大地浩介。誰も知らないだろうが名探偵だ。「天使が酔ってくだを巻く」「玉門塔」などの大事件を解決してきた名探偵なのだ。しかし誰も知らないから、彼は3年間収入がない。そのため、彼は知人を訪ね歩き、恩恵を受けている。ここ2ヶ月泊まっている豪邸は、幼稚園時代の同級生、F君だ。F君は「そろそろ出ていってほしい」と言うのだが、それは恐妻家であるF君が建前上言っているものと推理し、あと1ヶ月は大丈夫と浩介は確信していた。
そんなある日、F君の豪邸に運転手のKが慌てて入ってきた。「た、大変だ、奥様が!」
F君と浩介はKが運転していた車を覗くと、胸から血を一筋垂らしているF君の奥さんが後部座席に礼儀正しく座っている姿があった。
「ま、窓を開けて走っていたら、いきなりパン!と言う音がして。慌てて急ブレーキを掛けると、奥様が血を流していたのです。私はびっくりしたのと、もしかしたら私が撃たれるのではないかと思い、慌ててこちらに戻ってきました!」
F君が警察に電話をすると、やってきたのは浩介の知人である驚木警部であった。
「これはこれは、銀大地君。君のいるところには必ず事件が起きるようだね」
「バカなことを言わないでくれたまえ、驚木警部。ところで、奥さんの死因は?」
「ピストルで一発、見事なものだ」
浩介は頭をボリボリとかいた後に、素晴らしい推理を述べた。
「驚木警部。これは、国際密輸団の仕業だよ。F君は貿易商だ。貿易の途中で、きっと密輸団と何かトラブルがあったに違いない。密輸団はF君を脅す目的で、奥さんを殺害したのだ」
「銀大地君、それはテレビの見過ぎだよ」
作者である私は、これ以上書くべきかどうか迷っている。誰も知らないだろうが、名探偵である銀大地浩介にも解けない謎があったということを書くべきなのだろうか。驚木警部はこの後、5分もしないうちに犯人を捕まえたのだ。
さて、犯人は誰だろうか。
【解 答】
犯人は運転手のKに決まっている。車が急ブレーキを掛けたのに、後部座席に奥さんが礼儀正しく座っているはずがない。Kと奥さんは、F君の知らないうちに深い間柄となっていたのだ。
【覚 書】
加納一朗の推理クイズ本にはよく出てくる問題ですね。
元ネタが判明。オースティン・リプレイ『続推理試験』(荒地出版社)の推理クイズ「十字路で」でした。
※解答部分は、反転させて見てください。
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