山根青鬼『名探偵カゲマンの推理クイズ』


山根青鬼 『名探偵カゲマンの推理クイズ』
(小学館 新書版)




『名探偵カゲマンの推理クイズ』


 『名探偵カゲマンの推理クイズ』

 著者:山根青鬼

 山根青鬼:1935年、東京に一卵性双生児の兄として生まれる。1949年、一卵性双生児の弟山根あかおに(赤鬼)と交代執筆による『北日坊や』でデビュー。田河水泡の門下生となり子供まんが界で活躍。1979年『ゆかいなふたり』で第8回日本漫画家協会賞受賞。1988年第9回読売国際漫画大賞優秀賞受賞。『でこちん』など作品多数がある。弟山根あかおに、永田竹丸とともに田河水泡に愛され、後に『のらくろ』の漫画継承権を受け取り、交代で雑誌に執筆していた。寺田ヒロオや藤子不二雄と同世代であり、藤子不二雄A『まんが道』『トキワ荘青春日記』にもよく出てくる。
 
 発行:小学館 てんとう虫ブックス798

 発売:1990年6月20日初版

 定価:460円




 「ひひひ、つかまえられるものならつかまえてごらん。」−怪盗シルクハットやゴキブリこぞうたちが、次つぎと難事件をひきおこして挑戦してくる。負けるものか。カゲマンと一緒に、きみの名推理で事件を解決し、悪者たちをつかまえよう!
(裏表紙より引用)

 『名探偵カゲマン』は昭和50年代、60年代に小学館の学習雑誌や「コロコロコミック」で連載されていた漫画である。てんとう虫コミックスから全11巻が発売されていたが、現在は絶版である。
 名探偵カゲマンは本名影 万太郎。超高層ビルのうえ……じゃなくてうらに事務所がある。坊ちゃん刈りに牛乳瓶の底のようなぐりぐり眼鏡。極度の近眼で眼鏡を取るとほとんど見えない。常にトレンチコートを着ており、虫眼鏡をひもで肩からぶら下げている。コートのポケットには拳銃とカゲマン電池(ただの懐中電灯)が入っている。助手はシャドーマン。カゲマンの影だが、普通の人間同様に言葉をしゃべり、動くことが出来る。いや、影なので大きさも自由に変えられ、どこにも入ることが出来、まさに無敵なのだが、影なので、光がないと消えてしまうのが弱点。警察の協力者にポリスマンがいる。目は帽子で隠れ、でかいだんご鼻、つねにピストルをパンパンと撃ちまくっている。後にミーコちゃんというキャラクターも誕生している。
 ライバルは怪人十九面相。片眼鏡にシルクハットが特徴。よく葉巻をくわえている。怪人二十面相との関連は不明だが、二十面相と同様変装の達人。また、決して人殺しはしない。しかしかなりのドジでよくミスを犯し、カゲマンにつかまっている(もっとも、その後すぐに逃げているが)。著作権に触れたかどうかわからないが、後の連載では怪盗シルクハットと名前が変わっている。子分にオオカミマン、ゴキブリこぞう、ミイラマンがいる。一時ミスターXという怪人十九面相の親玉も出ていたが、あっさりと消えてしまった。

 思い出された方もいるだろうか。かなり長期間の間小学館の学習雑誌に連載されていたため、一度は見たことがあるキャラクターだと思う。小学生にとって、最初に目に触れる「名探偵」という存在だろう。

 昭和50年代の小学館の学習雑誌には、必ずと言っていいほど推理クイズの別冊付録が付いていたことがあった。その中には『名探偵カゲマン』ものもあり、本書はそれらのうち71問を纏めたものである。<初級編><中級編><上級編>とあるが、小学生向けということもあり、問題の難易度は低い。また、推理というよりはパズル問題も結構多い。それでも、推理をする楽しさを与えてくれる本である。キャラクターに頼った部分もあるが、小学生向けのクイズ本としての完成度は高い。


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