『推理劇場 マジカル探偵の挑戦』
著者:新保 博久
(新保博久:1953年京都市生まれ。早稲田大学文学部美術科卒。ミステリの書評、文庫解説、アンソロジーの編纂などで多忙な日々を送る。著書も多い。)
発行:KKベストセラーズ ワニの本
発売:1992年8月5日初版
定価:820円
テレビ番組「マジカル頭脳パワー!!」の中のミステリー劇場のために考案したトリックをもとに、探偵役を替え、新たに書下ろして、この本は生まれた。既成のトリックからのイタダキ、同じネタの三番煎じ四番煎じ、単に百科事典知識を問うもの…… そんな犯人当てパズル集はたくさんあるが、トリックの水準で本書に及ぶものはちょっとない、と言ってしまおう。この本の中のアイデアのいくつかは、才能ある作家の手にかかれば、それぞれ長編推理小説に仕立てることも可能だ。そして、普通の推理作家にとっては、いわば企業秘密に属するトリックの発想法も克明に公開した。ミステリのトリック作りのノウハウを伝える実用書でもある。世にも珍しい本なので、さあ、どうぞ。
ミッション系の名門女子校の同級生、今は広告代理店に勤めるマジ=桐原由紀子と、探偵志望でフリーターのカル=篠崎冬実のマジ軽コンビが、14の難事件に挑む。他にも探偵事務所を営む名探偵(名字が名)および助手である少年探偵団(名前が団)も時々登場。
各問題にはそれぞれ「推理指数」があり、難問ほど点数が高い。合計で1000点。各問題にはヒントの章が設けられており、そこを読むと推理指数がやや低くなる仕組みである。
かなり鼻息の荒い「著者自身の広告」である。確かに今までの推理クイズものは、“既成のトリックからのイタダキ、同じネタの三番煎じ四番煎じ、単に百科事典知識を問うもの”がほとんどであった。が、それらの本が本書のトリックの水準に及ばないものかどうか、は疑問。タイトルは思い出せないけれど、どこかで見たトリックだぞ、というものは結構ある。ただ、筆者なりにアレンジ(というと語弊があるかもしれないが)してあるので、(裏話も含めて)読み応えはある。
各問題にあとがきがあり、番組の裏話やトリックの発想法が記されている。ここで紹介されたトリックの発想法は、あくまで作者の発想法であるが、これから本格ミステリ作家を目指す人にとっては、参考になるだろう。トリックのタネはどこにでも転がっており、あとは作者がいかに料理するかにかかっているのである。
イラストは野間美由紀。イラストのおかげで、この本の魅力が数割アップしている気がするのだが……。
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