アラン・ドムーゾン『ミステリー・ゲーム 13の謎』


アラン・ドムーゾン『ミステリー・ゲーム 13の謎』
(晶文社)




『ミステリー・ゲーム 13の謎』 『ミステリー・ゲーム 13の謎』

 アラン・ドムーゾン
(1945年、パリ郊外に生まれる。ソルボンヌ大学卒業後、教師をしたり、映画界で働いたりした。75年、処女作『ガブリエルと桜草』を発表。79年、『わたしの不完全犯罪』で批評家大賞を受賞。最近、ボアロー・ナルスジャックとならんで「フランス推理小説大賞」の選考委員に選ばれた。邦訳された作品に『マドモアゼル・ムーシュの殺人』『ぐうたら探偵苦戦中』(講談社文庫)がある)(著者紹介より引用)
 松村喜雄訳

 晶文社

 発売:1987年1月20日初版

 定価:1300円(初版時)





 本書には、謎解きミステリーを十三篇集めてある。
 謎を解くのはあなたひとりではなく、ブクラール警部とその部下のルトロック刑事もいっしょで、この二人が犯罪現場に案内する。
 要するに、謎解きを楽しんでいただければいいのだ。あなたは、証人であり、野次馬であり、群衆のなかの好奇心の強い見物人でもある。けれど、犯罪の経過は、すべて知りうる立場にいる。なにもかも、必要な手掛りは、すべて明らかにされる。謎が提出され、結論を発見することができるのである。
 では、どのようにして、捜査に参加するのか。
 手続きは簡単である。万年筆と小さなノート、辞書、パリの地図とフランス全土の地図、そのほか必要なときは、ブラクール警部が教えてくれるだろう。まず、テキストを読むことだ。それも注意深く。細心に注意深く。真相は、テキストのなかに隠されている。ゲームはフェアプレイの精神にもとづいている。けれど……、慎重かつ用心が肝要。緻密にして鋭敏な直感力が要求される。手掛り、疑惑者、被害者の名前、住所、行動などを注意深くノートする。さりげなく書きこまれた手掛りを、注意深く摘出しなければならない。言葉遊び、判じ絵、いかに論理づけるかに気を配らなければならない。どれも謎解きゲームで、肝要が弄せられている。
 けれど、あなたには、灰色の脳細胞が欠けているとは思えないから、これを大いに駆使していただきたい。
 かくして、冒険の渦中に突き進む。進むに従って、だんだんと狡猾な犯罪、抜け目のないミステリーに出会い、驚嘆すべき警察の捜査を追うことになろう。ブラクール警部の服の背中にしがみつき、どのような捜査が行われたか、まさにスパイさながらに、すべてを知ることができる。犯罪科学、法医学、犯罪に対する論理的な考察の経過はすべてあなたの前にさらけだされる。けれど、事実にそむく勝手な想像は語られないから、間違ったデータを提示することはなく、情熱をかきたてる犯罪事件に対して、大いに腕をふるうことができるのである。あなたは、名探偵になって、謎に挑戦する。
 捜査の末尾で、質問を設定し、読者に挑戦する。それまでに、読者は正しい解答を用意しなければならない。次いで、解答が提示される。あなたの解答が正しいかどうか、たしかめることができる。果して、ブラクール警部との知恵くらべに、勝利をかちとることができるかどうか。
 願わくば、勝利をかちとりたまえ!

(「読者に挑戦する」より引用)


 原題は“Alain Demouzon,LE COMPLOT DU CAFE ROUGE――13 enifmes a resoudre vousmeme”で1984年にRamasayより刊行されている。訳者あとがきによると、作者はミシェル・ルブランとならんで、現在のフランスミステリー界を代表する人気作家であるらしい。
 ドラクール警部シリーズは、月刊誌QI『ゲームとテスト』に、1980年11月号から83年10月号まで発表された36篇と、『科学と未来』誌に掲載された1篇を加えた37篇ある。本書はそのなかから、13篇を選んで一冊にまとめられたものである。特に発表順に並べたということはない。残りの作品も、LE CRIME DE LA PORTE JAUNE(1984)、LE MYSTERE DU DRAGON NOIRにまとめられている。
 まえがきである「読者に挑戦する」を読めばわかるとおり、本書は事件がおきて、ドラクール警部による捜査の結果、犯人が分かるシステムになっている。すべてのデータがそろったとき、「読者への挑戦」が掲示される。そして「解答篇」が掲示される。
 内容としては、フランス語を初めとするフランスの知識が必要なものがほとんどであるので、残念ながらフランスのことをさっぱり知らない当方としては全くわからなかった。特にことばによるトリックが多いため、フランス語のわかる方は挑戦してもらいたい。
 唯一面白かったのは、第6話の「夢見る人」。閉ざされた状態の博物館から名画が消失するのだが、このトリックは様々な推理クイズや『パタリロ!!』第1話で使われたあのトリックである。フランスでもこのトリックは知られていたのかと思うと、とても興味深いものがある。

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