新保博久『推理の達人』(KKベストセラーズ ワニ文庫)


『推理の達人』

 『推理の達人』

著者:新保博久
 (新保博久:1953年京都市生まれ。早稲田大学第二文学部美術専修卒。在学時はワセダミステリクラブに所属。ミステリの書評、文庫解説、アンソロジーの編纂などで多忙な日々を送る。著書多数。2001年、『日本ミステリー事典』(権田萬治との共同監修)で第1回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)受賞。2003年、『幻影の蔵』(山前譲との共著)で第56回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)受賞。2025年、『死体置き場で待ち合わせ 新保博久 法月綸太郎 往復書簡』(法月綸太郎との共著)で第25回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)受賞)

 イラスト:野間美由紀

 発行:KKベストセラーズ ワニ文庫
 発売:1991年4月5日
 定価:466円(初版時)


 推理小説のエッセンスは作者と読者の知恵比べ、あるいはトリックの面白さにある-とは、私はぜんぜん思っていない。それらは魅力の大きな一部分には違いないが、本質はやはり他の小説と同じく、主人公はじめ登場人物の魅力、そこに
ている世界(文章の味を含む)の魅力だろう。
 ところが本書のような、読者に挑戦するパズル形式のコントでは、枚数が短いせいもあって、トリック中心に構成せざるを得ない。いきおい、読み物としてはどうも薄っぺらになってしまう。そこで、一篇ずつ古今東西のミステリーに登場する有名探偵のパロディ仕立てにすることを思い立った。原作のもつ設定やキャラクターの面白さを借りて、少しでも奥行きを持たせたいと考えたのだ。個々のタイトルも大半、もとになった名探偵の活躍する作品名のもじりになっている。推理小説の詳しい読者は、もとの何という作品をもじったのか、当ててみてほしい。そして、それほどでない人にとっては-ミステリーの本道はやはり小説にあるのだから-本書に拙いパロディが、原典にまで手を延ばすきっかけになればと幸いと思う。

(「使用上の注意-はじめに」より)

 本書は角川びっくり文庫から1981年に出版された3分間探偵ゲーム』を解体、改稿したものである。数篇は書き直している。またコラムなども追加されている。
 「推理小説のエッセンスは作者と読者の知恵比べ、あるいはトリックの面白さにある-とは、私はぜんぜん思っていない」とあるのは、やはり藤原宰太郎あたりの推理クイズ作家に対する反発だろう。既出のトリックが多く使用されているのだが。
 既成の推理クイズ本には負けない、という心意気で書かれているため、面白い仕上がりになっている。とはいえ、下ネタが多いのは少々いただけない。パロディが鼻につくところもあるが、それはパロディの宿命かもしれない。
 イラストは野間美由紀。確かにこのイラストで、本の魅力は数段アップしている。

 出てくる名探偵の本家は以下。ニッキーと仁木、アプルビイ警部とドルリイ・レーンは一つの問題で二人の探偵がパロディ化されている。キンジー・ミルホーン、V・I・ウォーショースキー、十津川警部、スペンサーは新たに追加された探偵。巨勢博士、ファイロ・ヴァンスの事件はトリックが前著と変わっている。

 ジョセフ・ルレタビーユ、リュー・アーチャー、南郷次郎、ブラウン神父、明智小五郎、ネロ・ウルフ、コンチネンタル・オプ、エルキュール・ポワロ、赤かぶ検事、キリオン・スレイ、フレンチ警部、サイモン・テンプラー、マルティン・ベック、ドーヴァー警部、伊達邦彦、刑事コロンボ、藤枝真太郎、エラリー・クイーン、マイク・ハマー、メグレ警視、ピーター・ウィムジー卿、87分署、ヘンリー・メリヴェール卿、ジェイムズ・ボンド、ニッキー・ウェルト、仁木雄太郎、フェル博士、法水麟太郎、神津恭介、キンジー・ミルホーン、V・I・ウォーショースキー、フィリップ・マーロウ、ミス・マープル、ナイジェル・ストレンジ・ウェイズ、ペリー・メイスン、十津川警部、隅の老人、金田一耕助、ヴァン・ドゥーゼン教授、ソーンダイク博士、スペンサー、アルセーヌ・ルパン、シャーロック・ホームズ、ハニー・ウェスト、チャーリー・張、オーギュスト・デュパン、アプルビイ警部、ドルリイ・レーン、鬼貫警部、巨勢博士、ファイロ・ヴァンス、アブナー伯父。

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