『推理ゲーム』
魔術団がタネ明かしを公開するような本
著者:井上元衛
(一九三一年 満州安東生まれ。立命館大学中退 大映京都宣伝部、各種劇団文芸部員を経て独立。ラジオドラマ、時代劇の脚本を書く。朱鳥同人、鍵の会に所属。著書に「踊子」「病葉の歌」がある。現在、ルポライター、推理作家として活躍中。(1972年当時) )
発行:日本文芸社 TEST SERIES
発売:1970年
定価:350円(1972年当時)
ベッドの中や、喫茶店で、あなたが恋人を待ってるときには、読まないでください。
あなたは、きっと、恋人なんか来ない方がいい、と思うようになるでしょう。
出勤の電車のなかでも、どうか読まないでください。あなたの降りる駅が近づいてくるのが、とてもユーウツになり、このまま一日中、電車に乗りつづけていたくなります。この本は、そういう本なのです。推理力を働かすことのできるのは、もちろん、人間だけです。いくらコンピュータ革命時代でも、あの機械じゃ駄目なようです。あの機械が推理力をもっていて、
「あいつはホシ(犯人)だ!」
なんて指摘してくれたら、おまわりさんたちは大助かり。いや、まるで犯罪がなくなって、警察の人たちは失業しちゃいます。とにかく、そういうわけで、あなたは、もっと冴えた推理力やすぐれたカンをもちたいと、いつも望んでいるはず。警視庁もネをあげている難事件を、
「突如、ボクが現われて、ズバリズバリと解決してみせたら、世間はたまげるだろうな」
と思っているはずです。最近の犯罪は、ますますデカくなっていきます。それに、凶悪犯罪です。知能犯です。複雑化しています。迷宮入りも多いようです。
だからこそ、あなたは思う。ホームズのようになりたい。ポワロのようになりたい。明智小五郎になりたい。メーグレ警部みたいに、すばらしい推理力をもちたい―と。ところが、この一冊で、あなたは<名探偵>になれるのです。
この本には、あらゆる知能的犯人が、アタマをしぼって考え出したトリックや、奇想天外なアイデアが紹介されています。あなたをアッ! といわせる解決の意外性、さらに、ハードボイルド的なキビキビしたスピード感、しゃれたユーモア、ウッシシ笑い、どのページを開いても、あなたは退屈することなく、くりかえし読みたくなるでしょう。
そして、あなたは、この本を一ページ読むごとに頭脳明晰、自分でも信じられないくらい、すばらしい推理力の持ち主になっているでしょう。推理こそは、人間だけに与えられた、最高級の知的ゲームです。さあ、どのページからでもお読みください。
【目 次】
第一章・犯罪の陰に女あり
第二章・アツアツの密室
第三章・悪魔の青春
第四章・よろめきのアクション
第五章・事件のからくり
第六章・成功と失敗の岐路
第七章・意外な助け船と意外な悪魔
第八章・哀れな人間たち
知的ゲームとあるが、目次の表題を見てもわかるとおり、ほとんどはアダルト系な問題ばかり。観察力は少々要求されるかもしれないが、“知能的犯人が、アタマをしぼって考え出したトリック”はほとんどない。トリックを用いた少ない問題も、既存の推理クイズからの引用がほとんど。中年おじさんが読んでニヤッと笑う程度の推理クイズ本でしかない。
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