ミステリー事件調査室編『怪奇事件捜査官〜第1の挑戦〜』
著者:ミステリー事件調査室編
(古今東西すべてのミステリーをコンピュータにインプットし、そのトリックや動機、犯人像をパターン化。そうして得られたデータを徹底分析し、今まで誰も考えつかなかった新たなミステリーの可能性を、日々、追求している集団である。)
発行:青春出版社 青春BEST文庫
発売:1995年12月25日
定価:466円(初版時)
本書はミステリーファンに捧げる挑戦状である。
ここには女子高生、ミュージシャン、テレビレポーター、雑誌記者という、4人の探偵が登場する。彼らはいずれも、ふだんはごく平凡な日常生活を送っているが、いったん事件が発生すると、その人並み外れた推理力をフルに発揮し、複雑怪奇な事件を見事に解き明かしてしまうのだ。
とはいえ、そうした頭脳は彼らの専売特許ではない。読者のみなさんにも当然あるはずである。そのことを推理の達人たちと頭脳競争をして、証明してもらいたい。
本書では、とても人間の仕業とは思えぬ怪事件が次々と巻き起こる。バラバラ殺人、密室犯罪、亡霊現象……そんな怪異のカゲに潜む真犯人の巧みなトリックを、死者のダイイング・メッセージを、決して見落とさないでほしい。
事件の謎を解くカギは、意外なところに転がっているのだ。それを。はたして見つけることができるであろうか……。
【もくじ】
第1章■女子高生探偵 宮崎亜衣 5つの事件簿
第2章■レポーター探偵 坂内奈々 4つの事件簿
第3章■ライター探偵 当山功 5つの事件簿
第4章■ロッカー探偵 志度薫 4つの事件簿
そのネーミングとプロフィールに思わず笑ってしまいたくなる、ミステリー事件調査室が著した推理クイズの第2弾。とはいえ、その中身は笑ってしまうどころかどうしてどうして、なかなかよくできた推理クイズ集である。仰々しい舞台設定と裏腹にクイズそのものは単純なものが多いが、逆に言えば読者にとって解きやすい推理クイズということができるわけであり、読者は謎解きの快感を得られるに違いない。またトリックそのものは既存のものが使われているケースが多いが、クイズそのものはオリジナル度が高く、わりと考えられて作られているといえるだろう。とくに本書が興味深いのは、新本格ファンがにやりとするようなクイズが幾つか使用されていること。純粋にクイズを楽しもうとしている人にとっては、怒り出しそうな問題もあるのだが(例えばFILE14の「くらやみ坂惨殺事件」)、著者のその試みには拍手を送ってもいいと思う。
収録されているコラムも、ミステリの知識を得るだけという単純なコラムから一歩踏み出したものが多く、とても興味深い。「茶の葉」を実際に試したというコラムには思わず笑ってしまった。普通ならミステリベストのコラムを載せるケースが多いが、本書では「涙が止まらない感動のミステリーベスト3」として土屋隆夫『危険な童話』、山田正紀『ブラックスワン』、中井英夫『虚無への供物』を挙げている。ただネタバレしているのは困りものなのだが。
本書に「第1の挑戦」と付けられていたこと、また巻末では読者から推理トリックを募集していたことから、第二弾、第三弾を準備していたものと思われる。ただ残念なことに、本書を最後として青春出版社から推理クイズ本は出版されていない。
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