『ホームズからの挑戦状』
著者:草野唯雄・川辺豊三
(草野唯雄:1915年福岡県生まれ。1961年、本名名義の短編「報酬は一割」が第2回宝石賞佳作。1969年、乱歩賞最終候補作『抹殺の意志』を刊行。1971年、専業作家に。数多くの著書がある)
(川辺豊三:1913年神奈川県生まれ。船員、貿易商、工場主などを経て東京電力に勤務。1936年頃から短編を発表。1961年から推理小説雑誌や大衆小説雑誌に短編を発表。後に長編も書く)
発行:学習研究社 ユアコースシリーズ
発売:1973年12月1日
定価:480円(1980年6月、第15刷時)
仲のいい友だちと、夜の街を散歩している。例えばそれが東京・渋谷区の高台だったとする。
友人が言う。
「ほう、こんな所に鶯谷町があったのか。おれは鶯谷といえば上野とばかり思い込んでいたが……。」
その瞬間、頭の中に一つのトリックが浮かぶ。
ある誘拐犯人が、幼児をこの鶯谷町のどこかにとじこめて、時限爆弾をしかける。追われて逃走中車にはねられ、子供の監禁場所を「鶯谷」とだけ言い残して死ぬ。警察はてっきり上野の鶯谷と思って、そこに大捜査網を展開する。刻々と迫る爆発時刻のサスペンス、という設定だ。
われわれが推理小説を書くときの発想は、だいたいこんなふうのスタートが多い。普通の人ならばぼんやりと何気なく聞き逃してしまうようなことから、ヒントがひらめくのである。
といってもそれは、決して特別な才能があるからではない。日常生活の中でコツコツと絶えず観察し、推理し、調査し、研究する習慣を身につけているからにすぎない。
ポーもドイルも乱歩も、皆そうであったに違いない。
諸君にでもすぐできることである。
このように、まずトリックが推理小説に必要不可欠な骨であり、従ってその数も多い。密室とアリバイものだけでも、数えきれぬほどである。
この本にはそうした選り抜きの、謎ときトリックの傑作群が、かみくだかれ、配合し直され、生まれ変わって、宝石のようにちりばめられている。
おもしろくないはずがないではないか。
さて、いまからこの本を読もうとしている読者諸君に、願わくば、いつまでもいまの旺盛な好奇心をもちつづけたまえ、と……。
【もくじ】
入門編
観察力テスト
推理力テスト
常識推理テスト
専門編
観察力テスト
推理力テスト
常識推理テスト
筆者は草野唯雄・川辺豊三となっているが、本文ではさらに紀田順一郎が加わっている。
問題文に対し、ホームズがヒントを出すという形になっている。入門編ではヒントが一つ、専門編ではヒントが二つついている。
クイズそのものに使われているトリックは、既存のミステリからの引用が多いが、どちらかといえばあまりクイズに使われないトリックが用いられているので、推理クイズに慣れている人でも初めて見る問題が多いだろう。それに本書の特徴は、問題文が面白いこと。独特の調子と、どことなくユーモアにあふれた文章が、クイズ以外の面白さを引き出している。
まえがきにもあるとおり、「選り抜きの、謎ときトリックの傑作群が、かみくだかれ、配合し直され、生まれ変わって、宝石のようにちりばめられている」のだ。
推理クイズ本に興味がある方は、ぜひとも一度、手にとってもらいたいものだ。
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