松原秀行『銀河寮ミステリー合宿』


松原秀行 『銀河寮ミステリー合宿 レイの青春事件簿番外編』
(講談社 YA!ENTERTAINMENT)




『銀河寮ミステリー合宿』
 『銀河寮ミステリー合宿 レイの青春事件簿番外編』

 著者:松原秀行
(1949年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、フリーライターに。様々なジャンルで執筆する一方、児童文学を書き続ける。著作に「パスワードシリーズ」、『竜太と青い薔薇』(講談社青い鳥文庫)等。)
 監修:佳多山大地
 問題原案:笛吹太郎、三品秀徳、押山萌香
 画:梶山直美

 発行:講談社 YA!ENTERTAINMENT

 発売:2010年8月20日

 定価:1100円(税別 初版時)


【目 次】
 序 章 推理(ミステリー)合宿はこうしてはじまった
 第一章 推理(ミステリー)合宿はどんどん白熱化する
 第二章 推理(ミステリー)合宿は暗号モードに突入する
 第三章 推理(ミステリー)合宿は予想外の展開をむかえる
 第四章 推理(ミステリー)合宿は対抗戦で盛りあがる
 第五章 推理(ミステリー)合宿はエンドレス模様に
 第六章 推理(ミステリー)合宿で事件発生!


 風浜市にある中間一貫校・私立天の川学園の現代アート研究会に所属する高三の今泉純、高二の森下のぞみ、高一の野沢レイ、中三の古木信吾と、マジック研究会に所属する高一の石田洋平、中三の秋山鈴鈴・蘭蘭姉妹は、「現代アート研究会&マジック研究会の今後の活動の在り方を考える秋季合同合宿」として、秋尾岬に近い茂呂磯の入り江に建てられた、学園の海の家「銀河寮」で合宿を始めた。ところが着いた早々テレビの2時間ドラマを見始める始末。1本目は我慢できたが、2本目に突入しようした皆を見て、さすがに勘弁してほしいと思ったレイは、とっさに推理パズルを出した。それが好評だったのか、次から次へと各自がパズルを出題することに。
 そして次の日の朝食後、銀河寮を訪ねてきたのは、「金曜ミステリー劇場」の撮影チーム。「こちら花小金井探偵事務所」シリーズのロケのために秋尾岬へ来たはいいが、天気予報が外れて大雨に。ロケバスに閉じ込められて息苦しかったため、休憩できそうな施設を捜していたという。その申し出を受けて現れたのは、監督や主演、共演者やスタッフなど合計11名。そしていつしか、推理パズル合戦に撮影チームの面々も参加することに。しかし最後、ロケバスの運転手が殺害された。

 過去に三作(この本出版当時)出版されている「レイの青春事件簿」シリーズの面々による推理クイズ合戦。小説仕立てになっており、途中で出題される推理クイズは全部で41問収録されている。推理クイズそのものはワセダミステリクラブの現役大学生が作成し、評論家の佳多山大地が監修している。もともとは2005年に推理クイズBOOKとして企画され、作者も一問出題するという話で書き上げた(最後に収録されている「暗号大家」)はよかったが、いつしか企画はストップ。そして2010年になり、シリーズ番外編として刊行という経緯をたどっている。
 クイズそのものはそれほど難しいものではないが、現役のミス研面々が考えただけあって、よくある推理クイズのトリックでも、見せ方を工夫し、新味を出すことに成功している。小説シリーズの番外編ということもあり、登場人物の把握にはちょっと苦労するが、推理クイズそのものには影響はしない。また、所々で石田洋平によるミステリー講座が、皆の呆れ顔にもかかわらず語られているのも、シリーズファンであってミステリファンではない読者にもわかりやすい説明になっている。
 単純な推理クイズにはしないという作者の考えが、小説としても面白く読めるように仕上がっている。もちろん、推理クイズファンにも薦められる一冊である。

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