小森豪人『あなたは名探偵』


小森豪人『あなたは名探偵』
(二見書房 WAi-WAi文庫)




『あなたは名探偵』 『あなたは名探偵』

 著者:小森豪人
 (小森豪人(こもりごうじん):1944年大阪府生まれ。関西学院大学卒業。CFディレクター、ディスクジョッキーを経て作家活動にはいる。クイズ本など著書は多い。本名馬場祥弘名義で作詞作曲も行っている。推理クイズ集出版後は推理作家としても活動。作品に「武蔵野線殺人事件」「哀しみ日本海・殺人旅情」などがある)

 二見書房 WAi-WAi文庫

 発売:1992年6月25日初版

 定価:466円(初版時 税抜き)





 ミステリーは、究極のエンターテイメントである。――いつも私はそう思っていましたし、現にいまも思っています。
 いまから三十五年ほど前、テレビで「サンセット77」という番組を放映していました。舞台は、アメリカ・ロサンゼルスのダウンタウン。ベイリーとスペンサーという二人の私立探偵が活躍する、ミステリードラマでした。
 当時の私はまだ十二歳でしたから、画面に登場する車のカッコよさや助手・クーキーのひょうきんさに目を奪われていましたが、それでも五回に一回ぐらいは渋い中年探偵・ベイリーの見事な謎解きに感心していました。
 それからさらに年がたつにつれ、コナン・ドイルの“ホームズもの”、アガサ・クリスティーの“ポワロもの”、シムノンやレイ・チャンドラーなどはかなり読みましたが、いうところのマニアではありませんでした。
 ただ、ときどきジャック・ニコルソン主演「郵便配達は二度ベルを鳴らす」やジョディー・フォスター主演「羊たちの沈黙」をビデオなどで見た夜は、そのおもしろさに興奮して一晩中眠れませんでした。
(いつかは、自分もあんなミステリーを書いてみたい……)
 それで「中2、中3コース」をはじめ、いくつかの少年少女雑誌に、ポツポツと書いていました。もちろんクイズ作家としての仕事は順調で、気がついてみればこの五月で、いろんなペンネームで八十冊以上の本を書いていました。
 さて今回、二見書房の多田勝利編集局長よりこのチャンスをいただいたとき、その謎解きの部分にポイントをおいて“究極のエンターテインメント・クイズ”としての「ミステリークイズ」にしようと考えました。
 そこで本数を増やすため、動機づけや人間葛藤といったディテールは最低限度に抑え、ストーリー進行を速くしました。また素朴にできるだけ新鮮さを増すため、ヒントとなった現実事件は追加取材することなく、ほとんど架空の事件として自分の頭の中で熟成、発酵させました。
 それでも、3月の時刻表をもとにつくった「12 溺死体偽装殺人事件」では、「鈍行に抜かれる急行」とマスコミで話題になったために五月の時刻表では快速に格下げされ、米沢から山形までは、なんと鈍行になってしまうという“悲劇の主人公”のような「急行・べにばな4号」が登場します。
 五十二の作品を執筆中にも、世のなかは刻々と変化します。昨日の常識が、今日の奇異、ということもありえます。
 あたたかい読者諸氏には、そのへんの時間的な推移はご理解いただけるものと確信しております。
 さて、そこで、校了を終えてあらためて全文を読み返してみると、読者との知的勝負において、作家の私を驚愕させる諸氏があわられるのではないか!? という不安にかられます。そんな諸氏は、編集部気付でお手紙をください。
 なお最後に、これらの作品はいずれもフィクションであり、登場人物や会社名などすべは現実のものではありません。また同時に、全作品はすべてオリジナルであり、他の作品を参考にしていないことを附記しておきます。

(「はじめに」より)


【目 次】
 第1章 トリックを見破れ!
 第2章 アリバイをくずせ!
 第3章 真犯人を探せ!
 第4章 現場に残された謎を解け!
 第5章 ダイイング・メッセージ
 第6章 毒殺事件のホシをあげろ!
 第7章 密室のカラクリを暴け!


 クイズ作家として多くの著書を書いている(らしい、私は知らなかった)作者初の推理クイズ集。日本テレビ「マジカル頭脳パワー」内のミステリー劇場が人気だったことからか、この頃は色々な推理クイズ集が出版されているが、本書もそんな便乗本のひとつ。ちなみに作者は二見文庫から「頭脳パワーおもしろクイズ」という便乗本を5冊出している。
 「はじめに」では、「全作品はすべてオリジナルであり、他の作品を参考にしていないことを附記しておきます」と書いているのだが、一問目から他の推理クイズ集でさんざん使われているトリックを使用しているという情けなさである。ほとんどがトリック流用ものであり、読むに耐えない。しかも一部のクイズでは、実在の人物が誰かすぐにわかるような人物が登場しており、悪趣味としか言い様がない。
 推理クイズ集としては「ダメ」と烙印を押しても仕方のない一冊である。


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