無期懲役判決リスト 2018年度





 2018年に地裁、高裁、最高裁で無期懲役の判決が出た事件のリストです。目的は死刑判決との差を見るためです。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントなどでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。



地裁判決(うち求刑死刑)
高裁判決(うち求刑死刑)
最高裁判決(うち求刑死刑)
15(4)
12(0)
16(1)

 司法統計年報によると、一審:15件、控訴審12件(棄却11件、破棄自判1件。上告9件)、上告審17件。



【2018年度の無期懲役判決】

氏 名
高橋克也(59)
逮 捕
 2012年6月15日
殺害人数
 15名(逮捕監禁致死1名含む)
罪 状
 殺人、殺人未遂、逮捕監禁致死、死体損壊、爆発物取締罰則違反
事件概要
●VX殺人事件及び同未遂2事件
 麻原彰晃(本名松本智津夫)被告は、教団信者の知人だった大阪市の会社員(当時28)を「警察のスパイ」と決めつけ、新実智光、中川智正らに「ポアしろ。サリンより強力なアレを使え」などと、VXガスによる殺害を指示。新実らは1994年12月12日、出勤途中の会社員にVXガスを吹き掛け、殺害した。他にオウム真理教家族の会会長の男性にも吹きかけ、殺害しようとしたが失敗した。
 高橋克也被告はVXガスをかけた実行役に運転手役などで付き添った。また現場で被害者の視界を傘で遮った。

●目黒公証役場事務長拉致監禁事件  1995年2月28日、逃亡した女性信者の所在を聞き出すために信者の実兄である目黒公証役場事務長の男性(当時68)を逮捕監禁、死亡させ、遺体を焼却した。
 高橋被告は拉致の指示を受け男性を車に押し込むとともに、遺体焼却の見張り役も務めた実行メンバーだった。

●地下鉄サリン事件
 目黒公証役場事務長(当時68)拉致事件などでオウム真理教への強制捜査が迫っていることに危機感を抱いた教祖麻原彰晃(本名松本智津夫 当時40)は、首都中心部を大混乱に陥れて警察の目先を変えさせるとともに、警察組織に打撃を与える目的で、事件の二日前にサリン散布を村井秀夫(当時36)に発案。遠藤誠一(当時34)、土谷正実(当時30)、中川智正(当時32)らが生成したサリンを使用し、村井が選んだ林泰男(当時37)、広瀬健一(当時30)、横山真人(当時31)、豊田亨(当時27)と麻原被告が指名した林郁夫(当時48)の5人の実行メンバーに、連絡調整役の井上嘉浩(当時25)、運転手の新実智光(当時31)、杉本繁郎(当時35)、北村浩一(当時27)、外崎清隆(当時31)、高橋克也(当時37)を加えた総勢11人でチームを編成。1995年3月20日午前8時頃、東京の営団地下鉄日比谷線築地駅に到着した電車など計5台の電車でサリンを散布し、死者12人、重軽傷者5500人の被害者を出した。
 高橋克也被告はサリン散布役を車で送迎した。

●都知事爆破物郵送事件
 1995年5月、東京都知事に爆発物を郵送し、都職員に重傷を負わせた。
 高橋被告は爆発物の製造に携わった。

 高橋克也被告は1987年に出家した古参信者の一人。柔道経験を買われ麻原彰晃死刑囚の身辺警護を担当した。後に教団の諜報活動を担当する「諜報省」次官として、井上嘉浩死刑囚のもとで非合法活動に携わった。
 1995年5月に特別手配され逃亡し、1997年以降は菊地直子被告と川崎市内に住み建設会社などに勤務。2007年に菊地被告がアパートを出た後は1人で暮らしていた。オウム関連で起訴された189人の裁判は2011年12月にすべて確定。2011年12月31日夜、特別手配されていた平田信被告が警視庁丸の内署に出頭し、翌日逮捕された。菊地直子被告は2012年6月3日、相模原市の潜伏先で逮捕された。高橋克也被告は菊地被告の供述から川崎市内に潜伏していることが判明。高橋被告は菊地被告の逮捕を知り、4日午後2時40分に勤務先の社員寮から逃亡。その4時間後に警察は社員寮に踏み込んだが間に合わなかった。警視庁は6日以降、公開捜査に踏み切る。高橋被告は6月15日、東京都大田区西蒲田の漫画喫茶を出たところを逮捕された。所持品からは教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の写真や著書が見つかった。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年1月18日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告審で弁護側は「地下鉄サリン事件や都庁事件で被告に殺意はなく、一、二審判決には重大な事実誤認がある」などと主張したが、小法廷は「上告理由に当たらない」と退けた。裁判官3人全員一致の意見。
備 考
 2015年4月30日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2016年9月7日、東京高裁で被告側控訴棄却。
 オウム関連の裁判では計192人が起訴され、有罪判決の確定は高橋被告で190人目。オウム関連の裁判はこれで終結した。

氏 名
木村博(64)
逮 捕
 2015年9月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反
事件概要
 特定危険指定暴力団工藤会系組長の木村博被告は組の幹部らと共謀。部下に命じ、2008年9月10日午前2時50分頃、福岡県中間市に住む同会系組幹部(当時66)宅に侵入。拳銃で頭や胸などを撃って殺害した。木村被告が組長を務める2次団体に所属する幹部とは、深刻な対立があった。
 2009年9月、木村被告ら5人が逮捕されたが、木村被告を含む3人が不起訴。2人が起訴され、そのうち実行犯の1人については求刑通り無期懲役判決が確定。連絡役の1人は無罪判決が確定した。
 福岡県警は「再捜査の結果、関与を裏付ける新たな証拠が得られた」として、2015年9月23日、木村博被告ら不起訴になっていた3人を含む計4人を逮捕した。
 逮捕当時、木村博被告は特定危険指定暴力団工藤会のナンバー5で、広報を担当。2014年9月以降の福岡県警による工藤会壊滅に向けた一斉捜査以降で、トップで総裁の野村悟被告らが逮捕されたのちは、理事長代行として実質的なトップを務めていた。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年1月22日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 被告側は一・二審で無罪を主張している。
備 考
 実行犯の工藤会系組幹部、坂本敏之元被告は、2011年2月7日、福岡地裁小倉支部(重富朗裁判長)で求刑無期懲役に対し、一審無罪判決。「携帯電話の電波状況から、犯行時間帯に現場付近にいたことは推認される」としたが、犯行を認めた捜査段階の調書について、供述内容が住民の証言などと矛盾しているとして「秘密の暴露がなく、(暴力団関係者の)だれかをかばって虚偽の自白をした可能性が高く、実行犯と認定できない」と指摘した。この裁判は、裁判員制度が始まって以降、裁判員や親族に危害が加えられる恐れがあるとして、全国で初めて裁判員裁判の対象から除外された。2012年9月21日、福岡高裁(川口宰護裁判長)で一審破棄、無期懲役判決。一審判決は証拠の評価を誤った」とし、坂本被告の捜査段階での自白については、「共犯者をかばうために不自然な供述をしたが、射殺を認めた部分は信用できる」とした。そして「間接事実を総合評価すると、坂本被告は殺害に深く関与したと認められる」として無罪判決を破棄した。2013年4月8日、被告側上告棄却、確定。
 連絡役だった組員I被告は、2011年2月7日、福岡地裁小倉支部(重富朗裁判長)で求刑懲役20年に対し、一審無罪判決。「関与は疑われるが、自白は信用できず、犯人と認定することはできない」などとした。2012年9月21日、福岡高裁(川口宰護裁判長)で検察側控訴棄却。上告せず、確定。
 木村被告からの指示を実行役などに伝えたとして殺人罪で起訴された工藤会系組幹部M被告は、2016年3月30日、福岡地裁(松藤和博裁判長)で求刑通り一審懲役20年判決。検察側は、「本来は無期懲役などの求刑が相当だが、首謀者の関与を含め詳細に供述し、真相解明に大きく寄与した」として有期刑を求刑していた。2016年10月20日、福岡高裁(鈴木浩美裁判長)で被告側控訴棄却。
 被害者の居場所を探し、実行役に連絡するなどしたとして起訴された工藤会系組幹部W被告は2016年10月31日、福岡地裁で懲役15年(求刑懲役18年)判決。被害者の所在を探すなど重要な役割を果たしたものの、「従属的な立場だった」と判断した。2017年7月10日、福岡高裁で被告側控訴棄却。2018年1月22日、被告側上告棄却、確定。

 木村博被告は、自らが組長を務める工藤会2次団体の組事務所が入居している北九州市八幡西区のビル所有者の親族に対し、2009年6月、「事務所を売れ」などと脅迫。2014年7、8月には「ただでくれ」などと言って、ビルを取得しようとしたとして、恐喝未遂などの罪で2015年1月26日、逮捕された。この2次団体は、2015年6月22日までに、ビルから事務所を撤去している。
 2015年5月26日、福岡地裁(岡部豪裁判長)は木村被告に一審懲役3年(求刑懲役4年)を言い渡した。10月21日、福岡高裁(鈴木浩美裁判長)は被告側控訴を棄却した。上告せず、確定か。
 2016年10月31日、福岡地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年7月10日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
廣保雄一(39)
逮 捕
 2016年3月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 広島県福山市の風俗店店長、廣保(ひろやす)雄一被告は、福山市に住む知人の無職女性(当時39)から預かり金名目で受け取っていた約250万円の返済を免れようと、2016年1月6日、福山市の自宅で女性の首をロープで絞めて窒息死させた。さらに13日頃までの間に、手足をロープで縛って布団袋などに入れた遺体を車に乗せて尾道市の雑木林まで運び、遺棄した。
 女性が「お金を取り戻しに行く」などと家族に告げて外出した1月5日夜以降、2人は一緒に行動していたとみられる。
 2月17日、女性の兄から「妹が1月6日から子供を残したまま行方不明になっている」と相談があり、数年前からの知り合いだった広保被告が浮上した。広島県警捜査1課は3月2日、死体遺棄容疑で広保被告を逮捕した。3月23日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 鬼丸かおる裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年2月5日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2017年5月26日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年10月24日、広島高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
山本勝博(45)
逮 捕
 2016年2月7日(詐欺容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、詐欺
事件概要
 広島県安芸高田市の無職、山本勝博被告は、2010年に三次市内の同じ入院先で知り合い、たまに連絡を取り合う程度の中であった、広島市安佐南区に住む広島修道大4年の男性(当時24)が、親族から多額の金を受け取ったことを聞きつけ2015年5月ごろから接近し、「一緒に事業をやろう」と提案した。2016年5月21日頃、架空の投資話を持ちかけ、現金100万円をだまし取った。
 しかし山本被告は配当の支払いを約束していたが期日を守らず、男性は配当の支払いか全額返済を求めた、山本被告は返済を免れようと、6月21日から23日にかけ、過去の転落事故の後遺症から体の痛みを訴えていた男性に対し、痛み止めとだまして複数回にわたり抗うつ剤・睡眠薬・殺そ剤を飲ませたり、知人から入手したインスリン製剤を注射したりし、23日にインスリン注射後ぐったりとした男性の顔を、湯をためた浴槽につけて殺害。借金返済を免れるとともに、現金9万円を奪って逃走した。
 山本被告は約15年前に病気で右足を切断し、その後も入退院を繰り返していた。農業を営む両親と同居し、職には就かず普段は松葉づえ暮らしで、1カ月約10万円の障害者年金で生活していた。しかし、消費者金融から多額の借金があった。
 男性と連絡を取れないことを不審に思った家族が、男性のワンルームマンションを訪れ、裸で浴槽にうつぶせになって死亡している男性を見つけた。遺体に目立った外傷がなく、司法解剖でも死因が特定できなかったため、広島県警は事故と事件の両面で捜査。その後、遺体から抗うつ剤や殺そ剤などの成分が検出され、交友関係から山本被告が浮上した。
 広島県警は2016年2月7日、山本被告を詐欺容疑で逮捕。18日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 広島高裁 多和田隆史裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年2月27日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年2月5日の控訴審初公判で、弁護側は「初めから殺意はなかった」と主張し、減刑を求めた。控訴審は即日結審した。
 判決で多和田隆史裁判長は、「多量の薬物の投与を開始した時点で死んでも構わないという未必の殺意があり、一定の計画性が認められる。一審判決に不合理な点はなく、減刑すべき事案ではない」とした。
備 考
 2017年9月26日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2018年6月15日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
井出裕輝(23)
逮 捕
 2015年4月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、逮捕監禁、強盗強姦
事件概要
 住所不定、無職の井出裕輝被告は、千葉県船橋市のアルバイトの少女(当時18)、住所不定、無職の中野翔太被告、東京都葛飾区の鉄筋工の少年(当時16)と共謀。2015年4月19日夜、千葉市中央区の路上を歩いている船橋市の被害少女(当時18)に少女が声をかけ、井出被告が運転する車に乗せた。その後、井出被告、中野被告、少女は被害少女に車内で手足を縛るなどの暴行を加え、現金数万円が入った財布やバッグを奪った。さらに20日午前0時ごろ、芝山町の畑に連れて行き、中野被告が井出被告の指示で事前に掘っていた穴に被害少女を入れ、中野被告が土砂で生き埋めにして、窒息死させた。少女の顔には顔全体に粘着テープが巻かれ、手足は結束バンドで縛られていた。
 被害少女と少女は高校時代の同級生。被害少女は高校中退後に家を出て、アルバイトをしながら暮らしており、飲食費などを複数回、逮捕された少女に借りたことがあった。少女は友人から借りた洋服などを返さなかった被害少女に腹を立て、井出被告に相談し、事件を計画。少女は少年にも声をかけ、参加させた。井出被告は中野被告に協力をもちかけ、犯行に及んだ。井出、中野被告は被害少女と面識はなかった。また少年も、井出、中野被告と面識はなかった。
 21日になって船橋東署に「女性が埋められたという話がある」との情報が寄せられたため、事件に巻き込まれた可能性が高いとみて捜査を開始。24日未明までに、車に乗っていた東京都葛飾区の少年と船橋市の少女、中野翔太被告を監禁容疑で逮捕し、井出裕輝被告の逮捕状を取った。そして供述に基づき芝山町内の畑を捜索し、女性の遺体を発見した。同日、井出被告が出頭し逮捕された。5月13日、強盗殺人容疑で4人を再逮捕。
 6月4日、千葉地検は井出被告、中野被告を強盗殺人罪などで起訴。少女を強盗殺人などの非行内容で千葉家裁に送致した。地検は少女に「刑事処分相当」の意見を付けた。少年は共謀関係がなかったとして強盗殺人では嫌疑不十分として不起訴にし、逮捕監禁の非行内容で家裁送致した。千葉家裁は7月17日、少女について、「刑事処分を選択して成人と同様の手続きを取り、責任を自覚させることが適切」として検察官送致(逆送)した。千葉地検は24日、少女を強盗殺人などの罪で千葉地裁に起訴した。
裁判所
 東京高裁 大熊一之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月1日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年1月23日の控訴審初公判で、弁護側は「共犯者が生き埋めにしたのは想定外で、殺意はなかった。殺害は井出被告の指示ではなく刑が重過ぎる」と主張し、検察側は控訴棄却を求めた。大熊一之裁判長は弁護側の証拠調べ請求を全て却下した。女性の母親が、ついたての内側で意見陳述し「何度話せば娘の苦しみや絶望感が分かるのですか」と涙ながらに語った。控訴審は即日結審した。
 判決で大熊裁判長は、「埋めたと言う共犯者を非難せず、追及もしていない。殺害を計画し主導して具体化させた」と認定した。そして「犯行は極めて残虐で、結果も重大」と述べた。
備 考
 中野翔太被告は2016年11月30日、千葉地裁(吉井隆平裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年6月8日、東京高裁で被告側控訴棄却。2017年10月10日、最高裁第一小法廷で被告側上告棄却、確定。
 少女は2017年2月3日、千葉地裁(松本圭史裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側控訴中。

 2017年3月10日、千葉地裁(吉井隆平裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2018年12月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
李正則(43)
逮 捕
 2012年11月7日
殺害人数
 3名(他に傷害致死1名)
罪 状
 殺人、傷害致死、詐欺、死体遺棄、逮捕監禁、監禁、生命身体加害略取
事件概要
 尼崎の無職李正則被告は、同居していた戸籍上のいとこである無職角田美代子元被告らと共謀。以下の事件を起こした。
  • 角田元被告らと共謀し、2005年7月1日、旅行先の沖縄県万座網の崖から角田元被告の義妹の夫(当時51)を自殺に見せ掛けて転落死させて殺害し、生命保険金計5000万円をだまし取った。
  • 角田元被告らと共謀し、2008年12月、角田元被告の息子の妻の姉(当時26)を、角田元被告のマンションベランダ物置に監禁して暴行を加えるなどして衰弱死させた。遺体は女性の祖母の家の床下に埋められた(この死体遺棄では起訴されていない)。
  • 角田元被告らと共謀し、2011年7月、角田元被告の義妹の夫の弟(当時54)を角田元被告のマンションベランダ物置に監禁して暴行を加えるなどして衰弱死させた。遺体は上と同じ家の床下に埋めた。その後、岡山県の日生漁港に遺棄した。
  • 角田元被告らと共謀し、2008年3月1日夜、大阪府内のパチンコ店駐車場に止めた車の中で角田元被告の息子の妻の姉の母(当時59)の頭を激しく振るなど暴行して意識不明にした。女性は2009年6月に死亡した。
  • 角田元被告らと共謀し、角田元被告の兄の交際相手で同居していた女性(当時67)を監禁した。後に女性は2008年11月ごろに死亡し、角田美代子元被告が傷害致死で書類送検され、被疑者死亡で不起訴となっている。遺体は上と同じ家の床下に埋められた。李被告も傷害致死容疑で逮捕されるが、嫌疑不十分で不起訴となっている。
 そのほか、2003年に死亡した角田元被告の息子の妻の姉の祖母(当時88)に対する傷害致死で書類送検されたが、時効(当時7年)が成立して不起訴となっている。

 李正則被告は、2011年11月、女性(当時66)の遺体をドラム缶にコンクリート詰めにし、尼崎市の貸倉庫に遺棄した事件で2011年11月26日に死体遺棄罪で逮捕され(傷害致死には関わっていない)、他の強要罪も含め2012年9月3日、神戸地裁尼崎支部(森田亮裁判官)で懲役2年6月(求刑懲役3年6月)が言い渡され、控訴せず確定し、服役した。
 その後、角田元被告の義妹の自供から2012年10月14日に女性の祖母の家の床下から3人の遺体が発見され、一連の事件が発覚した。2012年11月7日、3番目の事件における死体遺棄容疑で、角田美代子元被告らとともに李正則被告も逮捕され、以後再逮捕を繰り返した。
 李被告は2002年頃から実母の再婚相手(義父)の知り合いだった角田元被告の自宅に出入りするようになる。義父の借金について話し合うとして、尼崎市の元被告宅に呼びつけられるようになり、拒否すると、自宅マンションにどなり込まれ朝まで居座られた。当時同居していた妻子を気遣って、仕方なく出向いたが、「出たり入ったりするな」と脅されて帰れなくなった。2004年には角田元被告の叔父と養子縁組していとことなるも、集団生活での立場は低く、『汚れ役』担当だった。
 一連の事件では、角田元被告を除くと最も多い5件10罪に問われている。
裁判所
 最高裁第二小法廷 鬼丸かおる裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月6日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 一連の事件の首謀者である角田美代子元被告は2012年12月12日早朝、兵庫県警本部の留置場で、布団の中で首に衣類を巻いて自殺した。64歳没。
 一連の事件では、5人の有期懲役判決が確定し、1人が上告中である。
 2015年11月13日、神戸地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。2017年3月17日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
戸倉高広(39)
逮 捕
 2016年3月12日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、住居侵入
事件概要
 戸倉高広被告は2015年8月25日午前0時50分ごろ、東京都中野区のマンションに帰宅途中だった、アルバイト店員で劇団員の女性(当時25)を見かけ、女性の部屋に侵入。女性を乱暴しようと口を塞いで床に押し倒したところ抵抗されたため、扇風機のコードで首を絞めて殺害した。
 アルバイトを無断欠席したことを不審に思った同僚が中野署に相談し、26日午後10時頃、署員が遺体を発見した。
 捜査本部は顔見知りの犯行との疑いを強めて捜査したが、被害者の爪の中に残っていた微物などから検出された男のDNA型は、生前に交流のあった人物とは一致しなかった。捜査本部は被害者宅から半径500m圏内に住む75歳以下の成人男性に対し、任意のDNA鑑定を実施。さらに、事件直後に現場マンション周辺から引っ越しをするなどしていた複数の人物の転居先を探った。その中の1人が、戸倉被告だった。
 戸倉被告は高校卒業後に上京し、職を転々。事件当時は被害者のマンションから約400m離れたマンションに住んでいたが、被害者との面識はなかった。事件直後の8月末から福島県矢吹町の実家に戻っていた。
 警視庁中野署捜査本部はDNA型が一致したことや、防犯カメラの映像などから2016年3月12日、戸倉被告を殺人容疑で逮捕した。
 東京地検は鑑定留置の結果、刑事責任能力に問題はないと判断し、6月に起訴した。
裁判所
 東京地裁 任介辰哉裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月7日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年2月16日の初公判で、戸倉高広被告は殺人罪と住居侵入については起訴事実を認めた。一方、強制わいせつ致死罪については「わいせつ行為をしようとは思っていません」と否認した。
 検察側は冒頭陳述で、戸倉被告は被害者と面識はなかったと指摘。「深夜に1人暮らしの若い女性宅に侵入し、着衣のない状態にして乳房などをなめた」として、わいせつ行為の目的があったと主張。被告は犯行後、証拠隠滅のため、現場から女性の衣服などを持ち去ったと主張した。
 弁護側は、戸倉被告は被害者とラインのID交換をしたくてマンションまで追ったが、「悪魔だよ。倒さないとうつるよ」などの男の声が聞こえ、騒がれたため首を絞めたと主張。殺害後、「嫌がることをすれば息を吹き返すと思い、胸のあたりを軽く舌で触れた」などと主張し、犯行時は解離性人格障害などの影響で合理的判断ができず、幻覚、幻聴があって行動制御が困難だったとして情状酌量を求めた。
 26日、被害者参加人として被害者の父が意見陳述し、「娘は役者を目指し、演じることに生きがいを感じて生きていた。絞殺された(娘の)恐怖や苦しみを被告にも思い知らせたい」と死刑を求めた。
 同日の論告で建設側は、「被告はわいせつ目的で被害者の部屋に侵入し、強固な殺意で3分以上にわたって首を絞め続けた」と指摘。「面識のない若い女性の家に侵入した通り魔的犯行で、極めて悪質」と断じた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「被告は被害者と連絡先を交換したいと(マンションの部屋の前で)声をかけたところ、大きな声を出されたため、慌てて口を塞いだ」と説明。精神障害の影響で事件前から幻聴があったとして「『倒せ』との声に従って殺害に及んだが、わいせつ目的はなかった」として懲役17年が相当と主張した。
 判決で任介(とうすけ)辰哉裁判長は、被害者が服を脱がされていたことなどから、「わいせつ目的を否定する被告の供述は到底信用できず、被害者宅への侵入時にはわいせつ目的があった」と認定した。さらに捜査段階で精神鑑定を担当した医師の証言などから「幻聴はなかった」と判断し、弁護側の主張を退けた。その上で、被害者が役者を目指していたことに触れ、「たまたま通りかかった被害者に目をつけた通り魔的犯行で、極めて悪質だ。将来の夢や希望を持って歩んでいた人生を理不尽に絶たれた無念は察するに余りある。戸倉被告の責任は非常に重大だ」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2018年12月6日、東京高裁で被告側控訴棄却。2019年4月15日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
喜納尚吾(34)
逮 捕
 2014年5月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強姦致死、強姦、監禁、わいせつ目的略取、わいせつ目的略取未遂、単純逃走
事件概要
 新潟県新発田市の電気工事作業員、喜納尚吾被告は以下の事件を引き起こした。
  • 2013年8月2日午後9時半ごろ、喜納被告は新発田市内の大型商業施設の駐車場で、30歳代女性の車に突然乗り込み、刃物を突き付けて脅迫。約1km離れた道路脇まで移動させ、午後10時半ごろまで女性を監禁し、強姦した。
  • 8月3日午後10時ごろ、喜納被告は新発田市内の大型商業施設の駐車場で、10歳代女性の車に突然乗り込み、刃物を突き付けて脅迫。約1km離れた道路脇まで移動させ、午後11時ごろまで女性を監禁し、強姦した。
  • 11月22日夜、路上を歩いていた新発田市内のパート女性(当時22)刃物で脅して車で連れ去り乱暴。さらに、車外へ出た女性の顎を手や足で強打するなどして死亡させた。翌年4月7日、同市内のやぶで山菜採りの男性がパート女性の白骨化した遺体を発見した。
  • 12月6日、喜納被告は新発田市内の駐車場において強姦目的で女性の車に乗り込み、女性の首を両手で絞めるなどして脅迫。喜納被告が運転して車を発進させようとしたが女性に抵抗され、未遂に終わった。
  • 2014年6月27日午後3時15分ごろ、4番目の事件についての勾留質問中に新潟地裁1階の勾留質問室のそばの窓の鍵を開け、逃走防止柵を乗り越えて逃走。約5分後、約350m離れた新聞販売店に逃げ込んだところを駆け付けた警察官が取り押さえ、単純逃走容疑で現行犯逮捕される
 防犯カメラの映像から喜納被告が浮上し、2014年5月9日、1番目の事件で喜納被告を逮捕。5月29日、2番目の事件で喜納被告を再逮捕。6月25日、4番目の事件で再逮捕。6月27日、5番目の事件で現行犯逮捕。7月31日、3番目の事件で殺人などの容疑で再逮捕。
 喜納被告は沖縄県石垣市出身。2013年5月から新発田市内に住み、電気工事会社で作業員として勤務していた。
 2014年8月20日、新潟地検は3番目の事件について、強姦致死とわいせつ略取の罪で新潟地裁に起訴した。殺人罪適用を見送った理由について、同地検は「確実に有罪を得るのは難しいと判断した」と説明した。

 他に2013年9月21日、新発田市内の駐車場で車両4台が燃える火災があり、うち1台から同市の女性(当時24)が遺体で見つかった。また、強姦致死事件の遺体が見つかる4日前の2014年4月3日には、市内の小川で1月から行方が分からなくなっていた会社員女性(当時20)が遺体となって見つかっており、捜査本部は状況から喜納被告によるなんらかの関与があったとみて、捜査を続けている。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月8日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一審新潟地裁判決を支持した東京高裁判決は、「原判決に事実の誤認はない」と判断。これに対し、上告趣意書には一審判決で認定した喜納被告が鋭利なもので刺したとみられる女性の肋骨について、二審判決が「喜納被告が傷つけたとは断定できない」とした点に触れ、「最後に被害者の身体を動かした第三者の存在があるとすれば、高裁判決は矛盾した結論を導いている」などと反論した。
備 考
 喜納被告は沖縄県内で起こした強姦致傷事件などで2004年10月から約8年間服役した。
 2015年12月10日、新潟地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2016年11月11日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
三原賢志(44)
逮 捕
 2016年6月13日(覚せい剤取締法違反(使用)容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、死体損壊、覚せい剤取締法違反(使用)他
事件概要
 北九州市八幡西区の市営住宅に住む無職三原賢志被告は、2015年5月から冬までの間に自室にて、北九州市の無職女性Mさん(当時43〜44)を刃物で刺して殺害し、遺体の一部を切り取った。また2016年6月5日ごろ、北九州市の職業不詳の女性Sさん(当時45)を刃物で刺して殺害し、胸を切りつけた。
 Mさんは2015年6月に、Sさんは2016年6月7日に、それぞれ行方不明者届が出されていた。
 2016年6月13日午後2時15分ごろ、Sさんと連絡が取れないことを不審に思った男性が部屋を訪ね、Sさんの遺体を発見した。駆け付けた福岡県警の警察官が約2時間後、同じ部屋でさらに別の性別不明の遺体を見つけた。県警は同日、覚せい剤取締法違反(使用)容疑で部屋にいた三原被告を緊急逮捕した。7月24日、Sさんへの死体損壊容疑で再逮捕。8月4日、Sさんへの殺人容疑で再逮捕。
 8月14日より2ヶ月の鑑定留置が実施され、10月、Sさんへの殺人ならびに死体損壊容疑で起訴。11月10日、Mさんへの殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 福岡地裁小倉支部 鈴嶋晋一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月19日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年2月19日の初公判で、三原被告は「2人を刺したのは死亡した後だ」などと殺人の罪については否認した。死体損壊罪については認めた。
 検察側は冒頭陳述で「落ち度のない女性2人を殺害し傷つけたのは残忍かつ悪質」と述べた。一方、弁護側は殺人の罪について「すでに死亡していた」と無罪を主張。死体損壊の罪についても「覚醒剤による影響で錯乱状態にあり刑事責任は問えない」と無罪を主張した。
 3月6日の論告で検察側は、鑑定結果を踏まえて「猟奇性がうかがえる残忍な犯行。被害者の体の枢要部を刺しており殺意も明確」と主張。「生命軽視の度合いが甚だしい。犯行は残忍で悪質」と断じた。その一方で「覚せい剤の影響もあった」とした。
 同日の最終弁論で弁護側は殺人については否定した上で、「被告は当時、覚醒剤を使用しており、通常では考えられない精神状態。刑事責任能力はなかった」と覚せい剤取締法違反以外は無罪を主張した。
 判決で鈴嶋裁判長は、「ささいなことに立腹し、2人を殺害した。いずれも体の重要部分を強い殺意を持って一突きした」と指摘した。争点の責任能力については、意識障害などはなく覚醒剤使用の影響も一定程度だったとして責任能力を認定し、弁護側の主張を退けた。そして、「犯行は強い殺意に基づき残忍で悪質。落ち度のない2人の生命が奪われた結果は極めて重大」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2018年9月13日、福岡高裁で被告側控訴棄却。2019年6月5日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
上川傑(21)
逮 捕
 2016年9月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗
事件概要
 愛媛県松野町出身で、自動車メーカー・マツダ社員の上川傑(すぐる)被告は2016年9月14日午後3時35分ごろ、広島市の社員寮で同僚の男性(当時19)の頭と背中を消火器で殴り付けるなどして失血死させ、現金約120万円を奪った。事件数日後、現金を自分の口座に入れていた。
 上川被告はブランド品好きで夜勤明けにパチンコに通うなどギャンブルに目がなく、車のローンなどで借金があった。寮内で金が無くなるなどのトラブルが続いており、本人は認めなかったが、2016年からは一人部屋に移っていた。
 男性は午後4時15分ごろ、非常階段の2階踊り場で頭から血を流して倒れているのを発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。上川被告は事件後も通常通り出勤していた。
 上川被告と男性は同期入社で、いずれも同じ寮建物の7階に住んでいた。事件当日は2人も夜勤明けだった。ただし勤務する部署は異なり、両者の接点はほとんどない。
 午後2〜3時ごろ、寮近くで男性が上川被告の車から降り、コンビニエンスストアの現金自動受払機(ATM)に向かう姿が防犯カメラに映っていたため、捜査本部が23日朝から任意で事情を聴いたところ、男性を殺害して現金や携帯電話を奪ったことを認めたため、24日未明、強盗殺人容疑で逮捕した。

 他に上川被告は、2015年7月、広島市南区のコンビニエンスストアの駐車場で同僚の車の中から現金5万円を盗んだ。
裁判所
 広島高裁 多和田隆史裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月22日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年3月8日の控訴審初公判で、弁護側は「原判決には、強盗の意思の認定などに事実誤認がある。殺意は無く、金を奪うつもりもなかった」と強盗殺人ではなく殺人と窃盗罪の適用を訴え、検察側は控訴の棄却を主張、即日結審した。
 判決で多和田隆史裁判長は、「被告は被害者が現金を持っていることを犯行前に認識していた。被告人の供述は信用できず、一審判決に誤りはない」と弁護側の主張を退けた。
備 考
 2017年12月6日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず、確定。

氏 名
O・M(22)
逮 捕
 2015年1月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火未遂、器物損壊、火炎びん処罰法違反(製造)
事件概要
 宮城県仙台市出身で2014年当時名古屋大学在学中の女子学生O・M(当時19)は、子供のころから殺人願望が強く、中学の頃から刃物を持ち歩き、友人宅で猫にはさみを突きつけた。高校では、風邪薬を大量に服用し薬の効き目を自ら試して体調を崩したり、複数の化学物質をカードで購入していた。大学入学後には、ツイッターで殺人願望を想起させる投稿を始めていた。
 2012年5月ごろ、Mが複数の化学物質を購入していることを不審に感じた父親が、Mを連れて警察署を訪れていた。Mは水酸化ナトリウムなど3種類の化学物質を持参し、「実験のため」と説明。署員は事件性はないと判断し、「危険な用途に使わないように」と注意して帰していた。
 Mは2012年以降、以下の事件を起こした。
  1.  2012年5月27日ごろ、高校2年だったMは仙台市のカラオケ店で、中学時代の同級生だった女性のソフトドリンクに硫酸タリウムを混ぜて飲ませた。女性は当時、末梢神経障害のほか、腹痛や脱毛などの症状があり、約9か月間治療を受けた。
  2.  2012年5月28日と7月19日の2回、通っていた私立高校の教室で、同じクラスの生徒だった男性が持参したペットボトルに耳かきで硫酸タリウムをそれぞれ0.8g、0.4g混入して飲ませた。教室に誰もいない時、たまたまペットボトルがあったので混ぜたものだった。男性は、手足の痛みなどを伴う末梢神経障害のほか、両目視力が急激に低下するなどして10月に入院。2013年7月に男子性は復学したものの視力障害が残り、2014年3月、特別支援学校に転校を余儀なくされた。
     男子生徒は2013年2月、地元警察に被害届を提出。不審人物としてMの名前を挙げ、「他の生徒に白い粉をなめさせていたのを見たことがある」と捜査員に話した。この情報は署の課長(当時)まで把握していたが、タリウムの購入履歴の捜査や高校への聞き取りで女子学生の名前が浮上しなかったことから、女子学生の聴取は行われなかった。
     私立高校でMは「危険な白い粉」と校内で見せびらかしており、一部の教職員や生徒の間では当時から「(Mが)毒物を持っているのではないか」との噂があった。高校側はMに厳重注意をしていた。しかし高校側はタリウム混入事件後、在校生への聞き取りや情報提供を求めることをせず、消極的な姿勢に終始した。校長は2013年7月ごろ、「男子生徒が復学します。彼は原因を言いたがっていますが、取り合ってはいけません」と教職員に指示し、Mの件について事実を伏せていた。
  3.  2014年8月30日、宮城県内の実家でペットボトルに灯油を入れて新聞紙を差し込み、火炎瓶1本を製造、同日午前2時50分ごろ、宮城県に住むパート女性(当時66)宅の縁台に点火した火炎瓶を置き、炎が窓を損壊した。近所の人が気付き、住人が消し止めた。Mは妹の同級生である知人を殺そうとしたが、パート女性は名字が同じだったため、家を間違えた。ただしその知人とはほとんど接点はなかった。
  4.  M(事件当時19)は、2014年12月7日午後3時ごろ、昭和区にあるアパートの1階の自室で、千種区に住む女性(当時77)の頭を手おので数回殴り、マフラーで首を絞めて殺害した。手おのは中学生の時に購入したもので、大学入学後は名古屋市の自宅アパートに持ち込んでいた。
     女性は宗教の勧誘で10月中旬から下旬ごろにMと知り合い、事件当日午前、女性は昭和区での宗教団体の勉強会に、Mを連れて参加。勉強会は昼ごろに終了したが、Mが「いろいろ質問したいことがある」と話し、女性と昼食に行った。午後3時ごろ、Mは女性を自室に連れて行き、事件を起こした。
  5.  2014年12月13日午前3時25分ごろ、3の事件の被害者の女性宅の玄関ドアの郵便受けから可燃性の高い液体「ジエチルエーテル」と、着火したマッチを投げ入れて放火、屋内の3人を殺そうとした。女性が物音に気付き、すぐ消火したため、玄関の一部を焼いただけだった。けが人はなかった。ジエチルエーテルは大学入学後、インターネットで購入していた。
 4の事件の被害者は毎週日曜に外出し午後3時半ごろ帰宅する習慣だったが、帰宅しなかったため、不審に思った夫(当時80)が夜に千種署に届け出た。Mは翌日から宮城県の実家に帰省していたが、2015年1月26日夜に名古屋に戻ってきた。この日は遺体のある自室で寝ている。捜査本部は27日朝から千種署で事情聴取。その際、部屋を見せることを拒んだため、署員らがアパートまで同行し、午前9時40分ごろ、女性の遺体を発見した。Mが殺害を認めたため、殺人の疑いで緊急逮捕した。
 Mはこの後、名古屋大学を退学した。
 名古屋地検は2月10日付で刑事責任能力の有無を調べるための鑑定留置を名古屋簡裁に請求し、認められた。期間は2月12日から5月12日まで。
 愛知、宮城両県警合同捜査本部は5月15日、宮城県の私立高校在学時、中学時代や高校での同級生の男女2人に劇薬「硫酸タリウム」を飲ませて殺そうとしたとして、Mを殺人未遂容疑で再逮捕した。
 合同捜査本部は6月5日、Mが事件後に帰省した際、宮城県内で住宅に放火したとして殺人未遂と現住建造物等放火の疑いで再逮捕した(起訴時、放火未遂に変更)。6月11日には別の放火における器物損壊等で追送致した。
 名古屋地検は6月16日、殺人や殺人未遂、現住建造物等放火などの非行事実でMを名古屋家裁に送致した。地検は検察官送致(逆送)を求める「刑事処分相当」の意見を付けた。家裁は同日、2週間の観護措置を決定した。後に2週間、延長された。
 6月19日、宮城県警の横内泉本部長は記者懇話会で、「やるべき捜査はやった」と話し、当時の捜査に問題はなかったとの認識を示した。
 7月3日、名古屋家裁は観護措置を取り消して8月31日まで鑑定留置し、精神鑑定することを決めた。家裁は8月31日、鑑定留置を解き、改めて9月9日までの観護措置とした。後に23日、さらに10月7日まで延長された。
 名古屋家裁は9月29日、少年審判を開き、六つの非行内容を認定し、検察官送致(逆送)すると決定した。岩井隆義裁判長は決定理由で、Mが殺害の動機について「人が死ぬ過程を観察したかった」などと供述したことに対し「自らの好奇心を満たすための実験として行われ、酌量の余地はなく、犯行態様は極めて残虐」などと指摘。また、殺人以外の非行内容は「一連の流れの中で行われた犯行で、殺人と切り離して扱うことは相当でない」とした。その上で、精神鑑定結果を踏まえ、「他者の気持ちを理解することができない、特定の物事に異常に執着するという精神発達上の障害があった」と認定。しかし「責任能力に問題はなく、障害の影響は限定的で、原則通り逆送の決定が相当」と判断した。
 名古屋地検は10月8日、Mを殺人や殺人未遂などの罪で名古屋地裁に起訴した。
 2016年3月29日、名古屋地裁で公判前整理手続きが始まった。夏以降、名古屋地裁が弁護側請求で裁判員法に基づく鑑定実施。検察側請求で補充鑑定も実施。2017年1月10日、手続きが終了した。
裁判所
 名古屋高裁 高橋徹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月23日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2017年8月24日の控訴審初公判で、弁護側は地裁判決を「鑑定の過誤に目をつぶり、障害を理解せず、公平、公正さを欠く誤った事実認定と責任能力に関する判断を重ねた」と批判。さらに元学生の責任能力を否定した精神鑑定医(弁護側証人)の証言の評価を誤っていると訴えた。また、「人を殺してみたい」などの特異な動機で事件を起こしたのは、興味が集中する発達障害の特性と双極性障害(そううつ病)のそう状態が重大な影響を与えていると述べた。タリウム混入事件では一審で認定された殺意を否定し、「障害により結果を想像できなかった」と主張。そして、「人の死や焼死体、硫酸タリウムに興味が著しく集中し、行動を制御できない精神状態だった」として、心神喪失による無罪を改めて訴えた。処遇について「単に長期間、社会から隔離したり、障害を深刻化させたりする刑罰は無意味」とし、医療観察法による専門的治療を求めた。
 検察側は、発達障害による興味の集中が動機に直接影響しているとしながらも、各事件の際に計画的で状況に応じた行動を取っていたことなどから「自分の行動を選択、抑制できない精神状態だったとは評価できない」と指摘。完全責任能力を認定した一審判決に誤りはないと主張した。
 弁護側は、一審で出廷した3人の精神科医とは別の医師に対する証人尋問を行いたい考えを示した。これに対し検察側は「一審で十分審理されている。責任能力に関する新たな立証を認めるべきではない」として反対した。弁護側は一審前に鑑定医が作成した膨大な精神鑑定書も証拠請求したが、高裁は「一審の証人尋問で十分」と却下した。
 弁護側は一審後の精神状態の変化や情状を立証するため被告人質問を求め、高裁は実施を認めた。
 10月27日の第2回公判で、被告人質問が行われた。被告は控訴した理由について、「刑務所でも療育が可能というのは根拠がないと弁護人に説明された。母にも控訴を勧められた。一審判決の内容だと、人を殺さない自分になりたいという目的の達成が難しいと思った」と述べた。ただ、「根拠があれば(一審判決の)主文通りの刑でも構わない」と語った。現在の心情を「一審判決のあとも人を殺したいという考えが1日に5、6回、多いときで10回以上浮かぶ。弁護士を殺したくなることもある。判決のときタリウムが没収されるのが嫌だなと思った。タリウムを欲しいと思うこともある」と明かした。一方で、一審公判前から続けている拘置所での投薬治療に加え、差し入れられたストレス軽減法の本を見ながら腹式呼吸や瞑想などをしているとして「殺意が和らぎ、(殺人衝動の)頻度や持続する時間が減った」と話した。殺害した女性に対しては「夢に何回も出てきたが亡くなったという実感がなく、まだどこかで生きているような気がする。苦しい」と語った。検察官からどのような判決を望むか尋ねられると「量刑というより、刑務所の中で治療ができて人を殺さない自分になれる根拠があれば受け入れられる」と答えた。
 11月9日の第3回公判で、弁護側が請求した京都大医学部の十一元三(といちもとみ)教授(児童青年期精神医学)の証人尋問が行われた。十一氏は被告の広汎性発達障害に関し「先天的な脳の組織異常や血流低下が原因で、他者への共感性の欠如や特定の物事への執着が症状として現れる」と説明。発達障害のある人は自然科学に興味を抱く傾向があると指摘し、「劇物や死体に執着した犯行態様と一致する」と強調。「中高生時に学校が(障害の)特性に気付いて介入していれば、状況は違った」と述べた。そして、「被告は罪の意識がないなど、障害の重さは顕著。併発していた重度の双極性障害が偏った思考や衝動を強く後押しし、結果的に犯行を自制できなかった」との見解を示し、完全責任能力を認めた一審判決について、「障害を軽度と評価しており、専門医の見方と異なる」と話した。一方で正式に精神鑑定をしたわけではなく、「一審判決や鑑定書を検討した印象にとどまる」とした。
 12月7日の第4回公判で検察側が請求した国立病院機構東尾張病院(名古屋市)名誉院長の舟橋龍秀氏の証人尋問が行われた。舟橋氏は起訴前後に元女子学生を鑑定し、一審でも証人出廷した。元女子学生の広汎性発達障害を「軽度」と診断した理由を「偏った興味や他者への共感性の欠如など障害の特徴はあるが、難関大に合格し、自立生活を送っていた。重症度を評価する一般的な診断基準からすると、相対的に正常発達者にかなり近い」と説明した。前回公判で出廷した医師が、劇物や死体に執着した犯行態様から「精神障害は重度」と証言したことに対し、「診断基準は執着する興味の内容を想定しておらず、(証言は)臨床的に当を得ない」と疑問を呈した。併発した双極性障害の影響は「気分が高揚し、犯行衝動を助長した可能性があるが、犯行時の行動は臨機応変で落ち着いていた。重度のそう状態だったとは言えない」と改めて指摘した。
 2018年1月15日の最終弁論で弁護側は、元学生の精神障害が各事件に重大な影響を及ぼしていたのに、一審判決は検察側証人の精神鑑定医の見解に依拠したため、障害の影響が限定的もしくは軽度であると誤って認定したと批判した。その上で、控訴審で出廷した弁護側証人の児童精神医学専門家の意見書と証言により、検察側証人の見解の矛盾が明らかになったとして、無罪または裁判を打ち切る公訴棄却として治療・教育につなげるよう訴えた。検察側は弁護側証人の意見書と証言について「証拠価値は極めて乏しく、一審の事実認定に誤りはない」と反論し、弁護側の控訴を棄却するよう求め、結審した。
 判決で高橋裁判長は、「精神障害が動機の形成に一定の影響を及ぼし、犯行に弾みをつけた」と指摘。しかし、各事件当時や前後の行動などから、「影響は限定的で、自らの意思で犯行に及んだ」と述べ、一審と同様、完全責任能力を認めた。一方、弁護側証人の証言に関しては「被告と面接することも、精神鑑定の前提資料を検討することもなく意見を述べており、採用することは困難」と指摘した。タリウム混入による殺人未遂事件の殺意の有無も争われたが、高橋裁判長は一審判決と同じく「死に至る可能性が低くない量を混入した。被害者が死んでも仕方ないと考えていた」と殺意を認めた。そして、「2年半ほどの間に重大犯罪を繰り返し、各犯行時に少年であったことを考慮しても、無期が重過ぎて不当とは言えない」と結論付けた。
備 考
 『週刊新潮』は2015年2月5日発売号で、女子学生の顔写真と実名を掲載した。
 Oは未成年時の事件で起訴されているが、名古屋家裁の検察官送致(逆送)決定を受け、名古屋地検が起訴した時点で既に成人になっていた。少年法は未成年の刑事裁判について、有期懲役・禁錮の期間に幅を持たせる不定期刑や、少年院送致などの保護処分が相当と判断した場合の家裁移送などを定めるが、成人になって刑事裁判を受けた場合は適用されない。一方で少年法は、未成年時の犯罪に関し本人が特定できる報道を禁じている。初公判でもOの名前は呼ばれず、名古屋地裁はプライバシーに配慮して傍聴者の手荷物検査を厳しくした。弁護側はOが傍聴席から見えないようについたてを立てるなどの遮蔽措置を要請したが、地裁は退けて一般の被告と同様の扱いにした。
 『週刊新潮』は2017年2月8日と23日発売号で、元女子学生の顔写真と実名を掲載した。日本弁護士連合会は2月24日、「少年法に反する事態で極めて遺憾だ」とする中本和洋会長名の声明を発表した。週刊新潮編集部は「事件の残虐性と重大性にかんがみ掲載した。反省や謝罪の念はうかがえず、実名報道する意義があると考えた」とのコメントを出した。

 2017年3月24日、名古屋地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2019年10月15日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
青木正裕(31)
逮 捕
 2015年11月14日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗強姦未遂
事件概要
 東京都江戸川区のアルバイト、青木正裕被告は2015年11月12日午後2時ごろ、以前のアルバイト先の同僚であった同区の高校三年生の少女(当時17)に「化粧品サンプルをもらってほしい」と嘘をついて自宅のアパートに連れ込み、玄関付近で背後から腕で首を絞めて気を失わせ、ブレザーで首を絞めて殺害。強姦しようとしたが失敗し、目的を果たせなかった。さらに少女の財布から現金7,500円と生徒証を奪った。
 青木被告と少女は東京都葛飾区内の同じコンビニエンスストアでアルバイトをしていたが、青木被告は10月ごろに辞めていた。アニメなど共通の趣味について会話を交わすこともあったが、親しい関係ではなかった。青木容疑者は11日にこのコンビニ近くで少女を待ち伏せ「化粧品のサンプルがあるので家に来ないか」と声をかけて翌12日に会う約束を取り付けた。
 午後11時半ごろ、生徒の親から「娘が帰ってこない」と110番通報を受け、小岩署が翌13日に捜索を開始。複数の防犯カメラに男と一緒に歩く少女の姿を確認し、関係先の聞き込みなどから青木被告を割り出した。青木被告は殺害後、14日昼まで室内でゲームをするなどして過ごしていた。14日午後に捜査員がアパートに行ったが、青木被告は午後2〜3時ごろに外出。青木被告は14日午後5時過ぎ、千葉県我孫子市内で110番した後、同県警我孫子署に「2日前に人を殺した」と出頭した。同署から身柄の引き渡しを受けた小岩署がアパートを調べたところ、少女の遺体が浴槽内で見つかった。小岩署は14日夜、青木被告を強盗殺人容疑で緊急逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月27日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 刑事訴訟法は、遺族らの申し出があれば、性犯罪などの被害者の実名を公判で秘匿することができると規定。しかし、遺族は「法廷で娘の名前が出なければ、事件がなかったことのようになってしまう」と実名での審理を選び、意見陳述や証人尋問では少女の名前を呼んだ。母は判決後の記者会見で「実名にしたことで、娘が何をされたのか、裁判を見ている人たちに分かってもらえたと思う」と述べた。
 控訴審判決後に記者会見した母は「(裁判を通じて)注目を浴び、実名か匿名か選択できることが伝わったのは良かったが、事件(直後の)報道で実名とするか匿名とするかは被害者の声を聞いてほしい」と述べた。姉は「本来なら今年は20歳の誕生日で、成人式もあるし、来春は就職予定だった。そんな経験もさせてあげられなくてごめんねという気持ちがある」と語った。被告に対しては「控訴審でもう一度、被告の話を聞くのがつらかった。反省していない態度に納得できない」と非難した。
 控訴審判決について12月15日夕、東京高裁の岡口基一裁判官が自身のツイッターで文章と判決文を閲覧できるページへのリンク先を掲載。被害者の遺族が不愉快な思いをしたとして16日に抗議し、ツイートは消されたが、説明や謝罪は無かった。26日、遺族は裁判官の厳重な処分を求める要望書を高裁に提出した。東京高裁の林道晴長官は2018年3月15日付で、「裁判官として不適切で、裁判所に対する国民の信頼を損なったため」として岡口判事を文書による厳重注意処分とした。また、性犯罪の判決文は裁判所の内規でサイトに掲載しないことになっていたが、誤掲載していたとして、高裁は2月13日付で、関係者3人を厳重注意や注意処分とした。

 2017年5月23日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年12月1日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
須川泰伸(39)
逮 捕
 2017年1月27日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火
事件概要
 長崎県対馬市の鉄工所経営、須川泰伸(ひろのぶ)被告は、2016年12月6日午前8時半頃から7日午前7時半頃までの間に対馬市内で、市内に住む漁業の男性(当時65)の頭部を金づちのような鈍器で多数回殴って殺害。遺体を男性宅に運び、男性宅で同居する二女で市営診療所職員の女性(当時32)の頭部を金づちのような鈍器で多数回殴って殺害した。そして、男性方にガソリンなどをまいて火を付け、木造2階建て住宅288m2を全焼させた。
 男性は妻と二女との三人暮らし。妻は事件当時、県外の医療機関に入院していた。男性は漁船のエンジンの修理を、須川被告が経営する鉄工所に依頼していた。
 長崎県警は2017年1月27日、現住建造物等放火容疑で須川被告を逮捕。2月17日、男性への殺人容疑で再逮捕、3月10日、二女への殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 長崎地裁 小松本卓裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2018年3月27日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。須川泰伸被告は逮捕当初から一貫して否認している。検察側は男性の殺害について、犯行があった場所や時刻を特定できていない。犯行の目撃者はなく、凶器も見つかっていない。
 須川泰伸被告は罪状認否で、「私はやっておりません」と起訴事実を否認し、無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、須川被告は男性から漁船のエンジン修理の依頼を受け、前金で100万円を受け取っていたが、実際にはエンジンは修理不可能で、男性から催促されていたことから、そのことを男性に知られまいとして事件に及んだと動機を説明。焼け跡近くから見つかったガソリンの携行缶から須川被告の掌紋が検出されたとした。さらに、被告は男性を別の場所で暴行した後、二女の軽乗用車を使って男性方まで運んだとし、車の荷台からは男性の血痕が見つかったほか、車のペダルには被告のサンダルと同じ足跡がついていたと主張。男性方で二女にも暴行を加えたとし、「事件は須川被告によるものだ」と述べた。火災は午前7時半に発生し、須川被告はその後、軽トラックで被告が経営する鉄工所付近へ逃走し、母親に自宅の洗面所で目撃される午前8時10分ごろまでに帰宅したと主張。午前7時50分には火災があった住宅と鉄工所の間にある防犯カメラに、鉄工所方向に進む軽トラックが映っていたとした。
 一方、弁護側は、須川被告は事件当時、自宅にいたと主張。エンジンの修理を巡るトラブルもなかったとし、「掌紋などは別の機会に付いたもの。真犯人と思われる別の人物が、須川被告を犯人だと思わせるために鉄工所から携行缶を現場に持ち込んだ可能性がある」と反論。さらに須川被告は犯行時刻に自宅にいたとアリバイを主張。仕事に向かう姉や自宅にいた母親に、被告は帰宅したところを見られていないことなどから、検察側が主張する被告の行動は合理的でなく、殺人や放火の犯行は行えない、と訴えた。そして、「被告の犯行を目撃した人はいない。第三者が犯人の可能性がある」と無罪を主張した。
 2月7日の第8回公判で、男性の妻が検察側の証人として出廷。妻は、男性が被告の鉄工所への不満を何度か話していたと証言。男性が被告に「仕事が進まないからお金を払わない」と言ってきたことも聞いたことがあるなどと語った。
 20日の第12回公判で、現場で火災原因を調べた大学教授が出廷し、出火原因は放火と断定した。また須川被告が経営していた鉄工所の元従業員も検察側証人として出廷。エンジン交換を請け負った男性の漁船に壊れたエンジンを載せたことや、事件数日前には作業を早く進めるよう男性に頼まれたことを証言した。
 27日の第16回公判で、弁護側証人として被告の姉が出廷。被告の姉は火災当日の朝、午前6時ごろに目が覚め、同8時ごろに出勤したが、その間、自宅で人の出入りには気付かず、午前7時50分ごろには2階の自室から下りてくる被告と思われる足音を聞いた、と証言した。
 その他、公判日時は不明だが、県警鑑識課員は二女の軽乗用車のペダルに残っていた足跡が須川被告宅から押収されたサンダルと一致したと証言。須川被告の母はサンダルについて、「息子のものではない」と公判で証言した。
 鉄工所の元従業員は、鉄工所のハンマーが1本無くなっていることに事件後に気付いたと証言。検察側は、このハンマーが凶器の可能性があると訴えが、弁護側は無くなったのが事件後とは断定できないと反論した。
 男性の軽トラックが事件後の午前7時50分に防犯カメラに映っていたが,出廷した県警科学捜査研究所の職員は「映像解析では運転手は分からなかった」と語った。
 鉄工所の元従業員は「午前9時半ごろに須川被告から電話があり、(軽トラの発見場所近くの)バス停へ車で迎えに行った」と証言。検察側は、須川被告が軽トラで一旦帰宅した後、再び自宅を出て人目につかない草むらに乗り捨てたと主張した。
 3月1日の第18回公判で被告人質問が始まり、須川被告は弁護側の質問に対し、弁護人からエンジン交換の期限を尋ねられた被告は「(男性と)そういう話はしていない」と述べた。取り付けるはずだった中古のエンジンが壊れていることを男性に事前に伝えていたと説明し、「(男性は)困っていたような感じはしたが、何か言われた記憶はない」と語り、トラブルはなかったとの認識を示した。また軽トラックの血痕について、須川被告は軽トラックを運転したことが「2回ある」と証言。事件前、男性が度々訪れた鉄工所の敷地内で移動させるためで、その時大量に血が付くようなけがはしていなかったが、「けがは日常茶飯事で、小さいけがをしても、そのまま作業することはある」などと述べ、事件との関係性を否定した。
 2日の被告人質問で須川被告は、「6日午後9時ごろに家族と夕食を終えて自室に戻った。7日午前1時過ぎに鉄工所で作業をしたが、その後は自室で寝て午前7時40分ごろ起きた」と供述した。また、鉄工所の元従業員が、7日の火災発生後、須川被告を車で迎えに行ったと証言したことについては「呼んでいない」と否定した。
 5日の第20回公判で男性の妻と長女が被害者参加制度で出廷し、厳罰を求めた。
 12日の公判で遺族は被害者参加制度を利用、弁護士を通じて「極めて自分本位で身勝手な理由で理不尽な犯行に及んだ」と訴え、極刑を求めた。
 同日の論告で検察側は、現場で見つかったガソリン携行缶に被告の掌紋が残り、犯行時の移動に使ったとみる被害者の車から被告のサンダルの足跡やDNA型が検出されたと説明。自身のスマートフォンから事件時の位置情報を削除して証拠隠滅を図ったとも述べ「被告が犯人であることは常識に照らして間違いない」と主張した。動機に関しては、男性が被告に依頼した漁船のエンジン交換を巡り、作業の遅れを取り繕うため、壊れたエンジンを載せていたうそが端緒だったと言及。露見するとトラブルになるため男性を襲い、疑われないよう面識のない二女も殺害して被害者宅に放火したと説明した。そして、「何の落ち度もない2人の命を奪った結果は重大で、悪質だ」と指摘した。
 同日の最終弁論で弁護側はトラブルを否定し、「間接証拠をいくら積み上げても立証に足らない。被告人が犯人であると推認することには無理がある」と反論し、無罪を訴えた。
 須川被告は最終意見陳述で「私は絶対にやっておりません。信じていただきたい」と述べた。
 判決で小松本卓裁判長は、火災現場のガソリン携行缶から須川被告の掌紋が検出されたことや、二女の軽乗用車のブレーキペダルから被告が使用していたサンダルの足跡が検出されたことなどから、「被告が犯人と強く推認される」とした。さらに、男性の血痕が付いた軍手が被告の鉄工所から見つかったことや、被告のパソコンに「焼死」という語句を検索して調べた形跡があることも指摘。これらの事実関係について、「被告以外の者が犯人であったならば合理的に説明することができない」とし、被告の犯行と断定した。動機については、男性が依頼したエンジンの修理を巡るトラブルと認定した。その上で「被害者の頭部を複数回鈍器で殴打する犯行は執拗で残虐」と指摘。「虚偽の供述をしており、反省の態度や謝罪の姿勢は全くうかがえない」と非難した。一方で、男性と漁船の修理を巡るトラブルがあり「犯行に計画性がなく、口論となって、怒りに任せて殴った突発的な可能性も否定できない」とした。その上で、同種事件の量刑と比較。「被害者は2人だが計画性が認められず、死刑を選択することがやむを得ないとはいい難い」と述べた。
備 考
 長崎県対馬市では同じような事件の抑止や発生時の手がかりにつながるとして、防犯カメラ設置を求める声が高まった。市議会の一般質問で取り上げられ、市民団体も請願書を提出。これを受けて市は2017年4月、国道と県道沿いに4台を新設し、県警も9台を設置して運用を始めた。
 被告側は即日控訴した。検察側も控訴した。2019年3月13日、福岡高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
松橋伸幸(35)
逮 捕
 2016年6月21日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反
事件概要
 釧路市の新聞販売店アルバイト従業員、松橋伸幸被告は2016年6月21日午後3時15分ごろ、釧路市の大型商業施設1階出入り口付近の通路で客や店員の女性4人を柳刃包丁で襲い、釧路市に住む客の女性(当時68)の胸を刺して死亡させたほか、客の母(当時76)に首や腰を複数回刺して重傷を負わせ、娘(当時49)の首を切り、店員の女性(当時66)の手のひらを切り、ともに軽傷を負わせた。
 松橋被告は精神疾患で通院しており、病気に悩んで人生を終わりにさせたく、死刑になりたくて無差別殺傷を行った。包丁は事前にホームセンターで購入した。
 釧路地検は7月8日、松橋被告の鑑定留置を釧路簡裁に請求し、認められた。10月11日、釧路地検は刑事責任能力があると判断し、殺人と殺人未遂、銃刀法違反の罪で起訴した。
裁判所
 札幌高裁 登石郁朗裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年4月12日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年3月20日の控訴審初公判で、弁護側は、統合失調症の影響があり、出所後には福祉支援を受け、更生に向けて社会復帰を望んでいることを理由に量刑不当を主張。検察側は控訴棄却を求めた。 同日の被告人質問で、松橋被告は「同じ過ちを犯さないため刑務所を出たあとは自立支援のサービスを受けたい」などと話し、即日結審した。
 判決で登石裁判長は「犯行時は寛解状態で精神的不調があったにすぎない。精神的不調のために自分の人生を終わらせたいと考えるに至ったとしても直ちに量刑判断を大きく左右させる事情にならない。計画性があり、冷静な判断に基づく犯行とした一審判決が不合理とは言えない」と弁護側の主張を退け、「強固な殺意に基づく極めて危険な犯行。重大な結果を生じさせた悪質な事案で、無差別殺人の中でも重い部類に入る」と指摘した。
備 考
 2017年11月9日、釧路地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
新井茂夫(60)
逮 捕
 2014年1月15日(別件の詐欺罪で逮捕済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺、詐欺未遂
事件概要
 京都市伏見区にある学習教材販売会社役員で、宇治市に住む新井茂夫被告は、同社社長で弟の新井正吾被告と共謀。同社社員の男性(当時35)に2010年11月10日、1億円の海外旅行保険をかけた。11月24日午後9時ごろ(日本時間午後10時)、フィリピンマニラ市中心部の路上で茂夫被告が男性の頭などに複数の銃弾を発射させ、死亡させた。会社は1億数千万円の負債があった。
 11月24日夜、男性の遺体が路上で発見された。男にかばんを奪われそうになり、銃撃されたとの目撃情報があり、現地警察が強盗殺人事件として捜査。府警は刑法の国外犯規定に基づき、事件の約2週間後にフィリピン政府から男性の遺体の引き渡しを受けて司法解剖し2011年と2013年、捜査員を現地に派遣した。
 男性死亡後、両被告は保険金を請求したが、保険会社は「正吾被告らが共謀して殺害した可能性がある」として拒否。両被告は2011年、支払いを求めて東京地裁に提訴し、地裁は2013年5月、〈1〉当時、会社の負債は膨れ上がり、両被告の経済状態も悪化していた〈2〉過去の社員旅行では従業員に保険をかけなかった−−と認定し、「保険会社が疑問を抱くのもうなずけなくもない」としたが、「(正吾被告らが)殺害したとの十分な証拠はない」として保険会社に全額支払いを命じた。保険会社側は控訴した。
 新井正吾被告は知人女性のために健康保険証をだまし取ったなどとして、新井茂夫被告は生活保護費約120万円を不正受給したとして、2013年10〜12月に逮捕、詐欺罪などで起訴された。2014年1月15日、京都府警は両被告を殺人容疑で再逮捕した。2月6日、保険金をだまし取ろうとした詐欺未遂容疑で両被告を逮捕した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 小池裕裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年4月23日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 弟の新井正吾被告は2015年3月18日、京都地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。2015年11月19日、大阪高裁で一審破棄の上、改めて無期懲役判決。一審では実行犯について、実兄の新井茂夫被告か氏名不詳の第三者と認定したが、控訴審では「実行犯は茂夫被告」として、第三者の関与を否定した。2017年2月8日、被告側上告棄却、確定。

 2016年11月14日、京都地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年9月12日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
池田徳信(30)
逮 捕
 2016年7月9日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、死体損壊、住居侵入
事件概要
 東京都世田谷区の無職、池田徳信(やすのぶ)被告は2016年6月20日ごろ、世田谷区のマンションの2階の部屋に忍び込もうとベランダから上ったが、鍵が閉まっていたため、一つ上の3階に住む無職の女性(当時88)の部屋の窓の鍵が開いていたため、侵入。寝ていた女性が驚いて大声を出したため、首を絞めるなどして殺害し、現金約35万円を奪った(ただし現金を奪ったことは裁判で認められなかった)。さらに、室内にあった包丁で女性の遺体を浴室で切断。一度帰宅した後、翌21日に忍び込み、遺体を持出し区立碑文谷公園内の池に遺棄した。
 池田被告は当時、女性のマンションから約500メートルのマンションに母親と二人暮らしだった。
 6月23日午前10時半ごろ、公園の清掃作業員の男性が切断された一部が池に浮いているのを見つけた。その後の捜索で首や腰、両手足などが見つかった。捜査本部は7月3日に池の水を抜いて約50人態勢で大規模な捜索をした。
 池田被告が女性のマンションに出入りする姿や、公園近くにいる姿が防犯カメラに映っていたことや、池田被告の足跡などが見つかったことから、警視庁碑文谷署捜査本部は9日、池田被告を死体遺棄容疑で逮捕した。8月2日、強盗殺人容疑で再逮捕した。遺体は8月17日、すべての部位が見つかった。
裁判所
 東京高裁 秋葉康弘裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年4月25日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年3月9日の控訴審初公判で弁護側は、警察官の取り調べでは異なる供述をしており、検察官の取り調べ映像に記録された被告の供述を基に、強盗を認めた一審の判断は問題だと主張。検察側は控訴棄却を主張し、即日結審した。
 判決で秋葉康弘裁判長は「被告の供述はほかの証拠と整合しており、信用性は高い」として弁護側の主張を退けた。
備 考
 目黒区は事件後、警察捜査と園内の整備に伴い、一部を除き区立碑文谷公園を閉鎖していた。2016年9月15日、公園の利用を10月3日に再開すると発表した。園内の防犯対策に向けた整備が終了したためで、同日再開式も行う。また、池のボートは10月8日に再開した。
 2017年9月29日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2018年4月25日、東京高裁で被告側控訴棄却。2019年1月8日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
山本亮(35)
逮 捕
 2017年7月31日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 住居不定の無職、山本亮被告は被告は2017年7月27日夜、東京都墨田区の公園内で眠っていた住居、職業不詳の男性(当時70)の頭を、園内の資材置き場にあった保安灯(高さ約90cm、重さ約5kg)のコンクリート製の土台部分で殴り、殺害したうえ、財布から現金2,000円を奪った。
 山本被告は7月初めごろ勤務先を辞めて、岩手県から状況。被害者同様、公園内でホームレス状態だった。腹が減って金が無いことから誰でもいいからという理由で殺害し、男性とは面識はなかった。
 保安灯に残された指紋から山本被告が浮上。警視庁捜査1課は7月31日、山本被告を殺人容疑で逮捕した。東京地方検察庁は8月21日、強盗殺人の罪で起訴した。
裁判所
 東京地裁 任介辰哉裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年5月23日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 判決で任介辰哉裁判長は、金品を奪おうと思ったが殺害しようとまでは思っていなかったと指摘。一方、保安灯で殴った後でベンチから地面に落としたことなどから、死亡する危険を認識していたと判断した。そして「男性は年金を受給して路上生活し、公園で寝ていたところを突然襲われたもので、何ら落ち度はない。山本被告の責任は非常に重大だ」とした。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
末平征広(33)
逮 捕
 2017年12月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 石川同県羽咋市の会社員、末平征広被告は2017年5月23日午後5時頃から同9時頃までの間、同県宝達志水町に住む無職男性(当時85)方で、男性の背中を包丁で数回刺して失血死させ、現金約25,000円などが入った手提げカバンを盗んだ。
 末平被告は設備工事会社に勤務し、一人暮らしの男性の家の工事のために数回訪れたことがあった。
 防犯カメラの映像や関係者への事情聴取などから末平被告が浮上。石川県警は12月11日、末平被告を強盗殺人容疑で逮捕した。
裁判所
 金沢地裁 田中聖浩裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年6月8日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年6月5日の初公判で、末平征広被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は「ギャンブルなど遊ぶ金を手に入れるため友人から借金を負ったが、利息が膨らむことが怖くなり犯行に及んだ」と指摘し、「経緯や動機に情状酌量の余地はない」と主張。一方、弁護側は「借金の返済に焦り、精神的に追い詰められていた。直前に思いついた行き当たりばったりの犯行だった」と計画性の薄さを訴え、情状酌量を求めた。
 6日の論告求刑で検察側は、「相応の計画性が認められ、利欲的かつ自己中心的な動機は悪質極まりない」とした。
 同日の最終弁論で弁護側は、「法外な金利の借金を抱え、平常心を失い犯行に及んだ。計画性も薄く一定程度、酌むべき事情がある」とし、懲役20年が相当だと主張した。
 田中聖浩裁判長は判決理由で、以前に仕事で訪れた1人暮らしの被害者を狙ったとした上で「到着前に想定していた殺害を実行し、相応の計画性があった」と認定。「無関係の被害者の現金欲しさに犯行に及んでおり、動機は身勝手極まりない」と述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
山本勝博(45)
逮 捕
 2016年2月7日(詐欺容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、詐欺
事件概要
 広島県安芸高田市の無職、山本勝博被告は、2010年に三次市内の同じ入院先で知り合い、たまに連絡を取り合う程度の中であった、広島市安佐南区に住む広島修道大4年の男性(当時24)が、親族から多額の金を受け取ったことを聞きつけ2015年5月ごろから接近し、「一緒に事業をやろう」と提案した。2016年5月21日頃、架空の投資話を持ちかけ、現金100万円をだまし取った。
 しかし山本被告は配当の支払いを約束していたが期日を守らず、男性は配当の支払いか全額返済を求めた、山本被告は返済を免れようと、6月21日から23日にかけ、過去の転落事故の後遺症から体の痛みを訴えていた男性に対し、痛み止めとだまして複数回にわたり抗うつ剤・睡眠薬・殺そ剤を飲ませたり、知人から入手したインスリン製剤を注射したりし、23日にインスリン注射後ぐったりとした男性の顔を、湯をためた浴槽につけて殺害。借金返済を免れるとともに、現金9万円を奪って逃走した。
 山本被告は約15年前に病気で右足を切断し、その後も入退院を繰り返していた。農業を営む両親と同居し、職には就かず普段は松葉づえ暮らしで、1カ月約10万円の障害者年金で生活していた。しかし、消費者金融から多額の借金があった。
 男性と連絡を取れないことを不審に思った家族が、男性のワンルームマンションを訪れ、裸で浴槽にうつぶせになって死亡している男性を見つけた。遺体に目立った外傷がなく、司法解剖でも死因が特定できなかったため、広島県警は事故と事件の両面で捜査。その後、遺体から抗うつ剤や殺そ剤などの成分が検出され、交友関係から山本被告が浮上した。
 広島県警は2016年2月7日、山本被告を詐欺容疑で逮捕。18日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 宮崎裕子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年6月15日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2017年9月26日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2018年2月27日、広島高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
葉山輝雄(49)
逮 捕
 2012年8月3日
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 鹿児島県枕崎市出身で守山区の建築作業員の葉山輝雄被告は、仕事仲間だった守山区の無職の堀慶末被告、名古屋市守山区の無職佐藤浩受刑者と共謀。1998年6月28日午後4時半ごろ、愛知県碧南市に住むパチンコ店運営会社営業部長で、店の責任者である男性(当時45)宅に押し入った。家にいた妻(当時36)を脅して家に居座り、ビールやつまみを出させた。家にいた長男(当時8)と次男(当時6)が就寝し、翌日午前1時ごろに夫が帰宅後に夫と妻を殺害、現金60,000円などを奪った。長男と次男にけがはなかった。
 3人は夫婦の遺体を男性の車に乗せ、愛知県高浜市で遺棄した後、葉山輝雄被告の車で同県尾張旭市のパチンコ店に行き、通用口から侵入しようとした。通用口には鍵のほかに防犯装置が設置されており、堀被告らは解除方法が分からず、最終的に侵入を断念した。
 7月4日、愛知県高浜市で路上に放置されていた車のトランクから、二人の遺体が見つかった。
 堀被告は当時塗装業など建築関係の仕事で生計を立てていた。営業は順調にいかず、仕事の依頼がほとんど無かったため、約300万〜400万円の借金があった。堀被告は当時の仕事仲間であった二人を誘い、事件を計画。堀被告は行きつけのパチンコ店の責任者だった男性から店の鍵を奪うため、自ら尾行するなどして、男性は店の寮に住み込み、定休日の月曜に合わせて週に1度、寮から自宅に帰っていたことや、自宅の住所を割り出していた。
 碧南事件の捜査は、指紋などの物証に乏しく、難航した。
 殺人罪の時効撤廃を受け2011年4月に発足した愛知県警捜査1課の未解決事件専従捜査班は夏、冷凍保存されていたつまみの食べ残しに付いた唾液から、当時の科学技術では困難だったDNA採取に不完全ながらも成功。警察庁のデータベースに照会し、堀被告のDNAと同一である可能性を突き止めた。特命係は堀被告の当時の交友関係を再度洗い直し、同じ建築関係の仕事仲間だった佐藤浩被告と葉山輝雄被告を特定。さらに、佐藤被告についても現場に残された唾液から酷似したDNAを検出した。県警は2012年8月3日、堀被告ら3人を逮捕した。佐藤浩被告は別の事件で懲役刑が確定し、服役中だった。24日、名古屋地検は3人を起訴した。
 碧南事件後、小学生の2人の息子は母方のおばに引き取られ、愛知県から関東地方に引っ越した。しかし2011年、未成年後見人だったおばが、兄弟に残された遺産数千万円を使い込んでいたことが発覚した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 小池裕裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年6月20日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 共犯の堀慶末被告は2015年12月15日、名古屋地裁(景山太郎裁判長)で求刑通り死刑判決。2016年11月8日、名古屋高裁(山口裕之裁判長)で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 共犯の佐藤浩被告は2016年2月5日、名古屋地裁(景山太郎裁判長)で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。控訴せず確定。

 2016年3月25日、名古屋地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。2016年12月19日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
小濱秀治(65)
逮 捕
 2009年3月10日(殺人容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 組織犯罪処罰法違反(組織的殺人)、銃刀法違反(組織的加重所持)、組織犯罪処罰法違反(暴力)他
事件概要
 指定暴力団山口組系幹部で、横浜市在住の小濱秀治被告は、静岡市の指定暴力団山口組直系総長、落合益幸被告らと共謀。落合被告は2008年4月1日午前5時35分ごろ、組員らに指示し組織として、ふじみ野市内の暴力団事務所駐車場で住吉会系幹部(当時35)を射殺した。また同日、さいたま市内の住吉会系暴力団事務所のドアをバールなどで破壊した。
 3月31日、八潮市のファミリーレストラン駐車場で、山口組系暴力団関係者の男性(当時35)が刺殺された事件の報復が動機とされる。
 2009年3月9日、埼玉県警は山口組系暴力団組長ら5人を殺人容疑などで逮捕した。10日、別の容疑で逮捕していた暴力団組員8人を殺人容疑で再逮捕した。その後も逮捕が続き、2010年1月22日、殺人容疑で落合益幸被告ら3人が殺人容疑で逮捕された。合計40人以上が逮捕されている。
裁判所
 最高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年6月25日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 暴力団による抗争事件で計33人が組織犯罪処罰法違反罪などに問われた。
 落合益幸被告は2013年7月18日、さいたま地裁(多和田隆史裁判長)で求刑通り無期懲役+罰金3000万円判決。2016年2月1日、東京高裁で被告側控訴棄却。2017年12月19日、被告側上告棄却、確定。

 2014年3月26日、さいたま地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2016年5月13日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
藤長稜平(31)
逮 捕
 2016年4月28日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗未遂、窃盗、住居侵入他
事件概要
 千葉県千葉市の飲食店アルバイト従業員、藤長稜平被告は2016年4月4日午前3時ごろ、千葉市稲毛区のアパート2階に住む契約社員の女性(当時41)宅に無施錠の玄関ドアから侵入し包丁で「騒ぐな。金を出せ。静かにすれば何もしない」などと脅して金品を奪おうとしたが、抵抗されたため、殺意を持って首や腹などを包丁で複数回突き刺すなどして失血死させた。
 他に同年3月7日午前5時5分ごろ、包丁で脅して金品を奪う目的で同区内の別の女性宅に侵入し、下着を盗んだ上、女性に暴行を加えてわいせつな行為をしたほか、翌週14日にも同区内の女性方(殺害された女性と同じアパート)に侵入し、現金約9万6千円や財布など計36点の入ったショルダーバッグ(時価計約7900円相当)などを盗んだ。  藤長稜平被告は被害者の女性のアパートから約60m離れたアパートに住んでいた。
 4日午後9時ごろ、勤務先から被害者の父親に「出勤していない」と連絡があり、部屋を訪れた父親が「部屋の中で娘が死んでいる」と110番通報した。午後9時55分ごろ、駆け付けた千葉西署員が室内で死亡している女性を見つけた。
 千葉県警は3月の事件について4月16日に藤長稜平被告を逮捕。その取り調べの中で藤長被告が強盗目的での女性殺害を認める供述をしたこと、さらにこれまでの捜査結果などから4月28日、強盗殺人と住居侵入の疑いで藤長稜平被告を逮捕した。
裁判所
 東京高裁 藤井敏明裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年6月27日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は、衝動性が高く社会的に未成熟な被告の人格を考慮すべきだとして量刑が重すぎると訴えたが、藤井裁判長は「鑑定の結果、診断できる精神障害はないと判断した一審判決は合理的だ」と退けた。
備 考
 2017年7月12日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2018年中に被告側上告棄却と思われる。

氏 名
溝部和也(33)
逮 捕
 2016年1月9日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火
事件概要
 福岡県苅田町の派遣社員溝部和也被告は2014年12月19日午前4時頃、大分県豊後高田市の実家の1階に放火し木造2階建て住宅述べ152平方メートルを全焼させ、2階で就寝中だった会社員の母(当時56)と介護士の妹(当時26)を焼死させた。午前4時10分には実家から炎が上がっていたが、溝部被告は直後に近所の駐車場から車で立ち去った。実家近くに住む弟から電話で火災を知らされた際に「寮にいる」とうそをついていた。溝部被告は2時間前に苅田町の寮を出て実家に向かい、合い鍵で中に入った。
 溝部被告は2014年10月頃、当時の同僚2人から約33,000円を盗んだことが発覚し、返済を約束した。11月、福岡県の工場に就職して苅田町の寮に引っ越し。給料の口座は母親が管理していたが、被告は渡された小遣いをパチンコ代などに使ってしまった。12月、実家で妹が置いた5万円を盗み、発覚。消費者金融から借金も同僚2人から「実家にお金を返してもらいに行く」と迫られた。母と妹の2人には計約9,000万円の生命保険金、実家には約2,800万円の火災保険がかけられていた。
 現場から油が検出されないなど、被告が放火したと示す直接の物証はなく、放火の方法も判明していない。
 出火元である1階の居間にストーブなど火元になるようなものはなく、漏電も確認できなかったことから、大分県警は放火の可能性もあるとみて、約1年にわたって捜査。現場近くの防犯カメラの映像や目撃証言で、火災の時間帯に溝部被告が自分の軽乗用車で現場を訪れていたことが判明。大分県警は2016年1月9日、溝部和也被告を逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年7月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は無罪を主張している。
備 考
 2017年2月13日、大分地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年7月20日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
渋谷恭正(47)
逮 捕
 2015年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、わいせつ目的略取・誘拐、死体遺棄
事件概要
 千葉県松戸市の不動産賃貸業で小学校の保護会長だった渋谷恭正(やすまさ)被告は、小学校の修了式だった2017年3月24日朝、自宅から登校中だった小学3年でベトナム国籍の少女(当時9)を軽乗用車で連れ去り、車内でわいせつな行為をしたうえ、何らかの手段で首を圧迫して窒息させて殺害。遺体を我孫子市の排水路の橋の下の草むらに遺棄した。
 26日朝、遺体が発見され、翌日には茨城県坂東市の利根川河川敷でランドセル発見された。
 千葉県警捜査本部の聞き込み捜査などから、渋谷被告が容疑者として浮上。その後の捜査で、我孫子市の死体遺棄現場の遺留物から採取したDNA型と、渋谷被告のDNA型が酷似していることがわかった。4月14日、死体遺棄容疑で渋谷被告を逮捕。5月5日、殺人他の容疑で再逮捕。
裁判所
 千葉地裁 野原俊郎裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2018年7月6日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。渋谷被告は県警の捜査には黙秘している。
 2018年7月4日の初公判で、渋谷恭正被告は「検察側の主張は全て架空で、捏造されたもの。一切関与していない。私はこの事件には一切関与していない。私の子供の目の前で逮捕状も提示されず、強制的に身柄を拘束された。全面的に無実、無罪を主張する」と述べた。
 冒頭陳述で検察側は、渋谷被告が使用する軽乗用車の後部座席の床マットや中にあった軍手など8カ所に付着していた血液や、大型キャンピングカー内のSM用品の箱に入っていたネクタイとフェースマスクから検出された唾液から採取したDNA型が、少女と同一だったと指摘。「キャンピングカーにあった手錠や遺体の腹部などからは、混合したと考えられる2人のDNA型が見つかった」とした。また、犯行当日午後3時44分ごろからの1時間に渋谷被告の軽乗用車が、少女のランドセルなどが見つかった利根川河川敷付近の野田市内を往復していたとする画像を示し、ドライブレコーダーの記録は4月に消去されたとした。犯行状況について「特異かつ冷酷、残酷で悪質。一定の計画性がある。被告は反省の態度が皆無。遺族は極めて厳しい処罰を求めている」と述べた。
 弁護側は「実は事件前に少女が軽乗用車に乗ったことがある(このことについては、見守り活動を行っていた別の女性が一緒に乗ったと証言している)。その時、膝を擦りむいていて血が付いた可能性がある」と反論。「注目事件で早く犯人を挙げたい重圧のあった県警が、犯人と見立てた被告のDNAを意図的に混入させた疑いがある」とし、DNA型鑑定の信頼性にも疑義が生じるとした。そして「少女の指紋が車になく、遺棄現場に被告の足跡が残っていない。それらの客観的証拠が一切ないのは不自然。DNA型鑑定だけで判断してよいのか。事件当日の明確なアリバイがないだけで、犯人で間違いないと言えるのか」と疑問を呈した。
 5日の第2回公判で、事件を担当した千葉県警鑑識課調査官が証人として出廷した。調査官は現場鑑識では日本に5人という「警察庁指定広域技能指導官」。検察側尋問で、調査官は、一般的な血痕の種類について、滴が落下して丸く残る「滴下血」、滴が斜めに飛んで「!」の形に残る「飛沫血」、血液が何かに押し当たって残る「押し当て痕」、血液が何かにすれて残る「擦過痕」の4種類と説明。その上で、少女のDNA型が検出された血痕の形は、軽自動車の後部座席の足元のトレーや灰皿、助手席後ろのポケット部分にあったメガネケースについた「押し当て痕」だったと説明。メガネケースはポケット部分に血液の付着がないため、血液との接触時は後部座席床上に落ちており、乾燥後にポケットにしまわれたと推定した上で「被害者が後部座席足元に押し込まれ、口、性器などから出た血液がついたと考えた。すりむいたなどの傷の血液の着き方とは感じなかった」と証言した。また、「遺体の付着物を採取したのは、渋谷被告が容疑者として浮上する前のことで、混入することはあり得ない。渋谷被告のマンションのごみからたばこの吸い殻を押収し、DNA型を採取したのも逮捕の4日くらい前で、遺体の試料採取の後だ」と述べ、弁護側の主張を否定した。
 弁護側は、2005年12月の栃木県今市市(現日光市)小1女児殺害事件のDNA鑑定が、事件後に遺体に接触した栃木県警幹部らのDNAで汚染されていた問題を例示。その上で「(以後)栃木県警は捜査員のDNA登録をしているが、千葉県警はどうか」と質問した。調査官は「私のは登録されているが全員ではない。(千葉県警の)制度としてはない」と話した。また弁護側は、「上(県警上層部)から早く解決しろという話はなかったか」と尋問。調査官は「もちろんどんな事件でも早くというのは当然。特に小さい子どもが被害に遭った事件で住民も不安になっており、『早急に解決を』というのはあると思う」と証言した。
 裁判長は調査官に対し、少女の事件でDNA鑑定が行われた試料から「被害者と被告のもの以外が出たか」と確認。調査官は「ありません」と証言した。また「軽乗用車に被害者の血液を垂らすなど、捜査員が故意に混入させたことはあるか」との質問に対し、「ない。客観的資料から真実を追求するのが鑑識の仕事。神に誓ってないと断言する」と述べた。
 この日はDNA試料の採取や運搬などに関わった鑑識課の捜査員4人が出廷し、運搬時の試料の包装の破損などによる汚染の可能性の有無や、少女のDNAを証拠品に意図的に混入したことがないかなどについて、審理が続いた。4人の捜査員は「汚染」や「意図的な混入」について、否定した。
 6日の第3回公判で、鑑識課の捜査員3人が証人として出廷した。渋谷被告が少女の拘束に使ったと検察側が主張するSM用手足錠の形状や機能が明らかになった。また「汚染」や「意図的混入」について否定した。
 7日の第4回公判で、DNA採取や鑑定に携わった県警の鑑識課捜査員と科学捜査研究所研究員が証人出廷した。遺体で発見された少女の両手や、少女と同じDNA型の血痕が検出された軽自動車からDNA採取を行った捜査員は、証拠物へのDNAの意図的混入は「ありません」と証言。研究員も意図的混入を否定し、鑑定時に自身のDNAが混入するなどして証拠品が汚染された可能性の有無についても「ありません」と答えた。
 11日の第5回公判で、DNA鑑定を担当した千葉県警科学捜査研究所の女性主任研究員が検察側証人として出廷した。検察側の主尋問で主任は、少女の遺体の腹部から採取した試料から唾液と血液の成分が採取されたと証言。同じ試料のDNA鑑定では少女と渋谷被告の2人分のDNA型が検出されている。主任は「DNAが出ているのに血液、唾液がどちらの持ち主のものでもないとは考えにくい」と、渋谷被告の唾液である可能性に言及。唾液は顔、左右の耳、左右の胸、腹部、下腹部から検出された。弁護側は、鑑定手順を1つ1つ確認。汚染や意図的混入の可能性を探った。少女のDNA型を含む混合DNA型が検出された目隠しフェイスマスクの付着物の一部について「被告でも被害者でもないDNA型があったか」と確認すると、主任は「あったと記憶している」と証言。一部の試料からは第三者のDNAも検出されていたことを確認した。
 12日の第6回公判で、京大医学部教授で法医学の権威玉木敬二氏が出廷した。検察側尋問で、少女の遺体の腹部から採取された、少女と渋谷被告の持つDNA型だけがすべて含まれた混合DNA型について、「(型だけでなく)このDNAが、被害者と被告人の(固有の)DNAである可能性は、被害者と第三者のDNAである可能性の約3500京(兆の1万倍)倍だ」と証言した。
 弁護側は「計算は適正なDNA鑑定のデータが使われていることが前提か」とまず確認し、捏造データが前提なら計算自体が成り立たない可能性を指摘した。その上で「被害者はベトナム人だが、加害者が外国人でも(計算は)変わらないか」と質問。玉木氏は「日本人と(生物学的に差のある)米国の黒人のデータで計算しても2000倍ほどしか違わない」として、誤差の範囲であり、大きな違いは出ないと解説した。また弁護側は、採取されたDNAを鑑定のために試薬を使ってコピーを増やす「増幅」と呼ばれる作業の際に副産物として生じる「スタター」が、DNA型のように検査表に表れることについて「アリル(実際の型)とスタターを明確に区別をできない可能性はあるのか」と質問。玉木氏は「可能性はある」とした。千葉県警の科捜研が行ったDNA鑑定結果は、スタターの可能性も考慮し、検出量が規定値に満たなかったものを「不詳」としたDNA型データもある。しかし、玉木氏は渋谷被告のキャンピングカーから押収され、「不詳」データも検出されているSM用手足錠と目隠しマスクから検出されたDNA型について、弁護側尋問で「(検出されたDNAの量では)被害者のDNA型が6〜8割を占めており、被害者のDNAが入っているのは有力だ」と証言した。
 13日の第7回公判で、少女が通っていた小学校の校長やボランティア活動の責任者などが証人として出廷。事件当日、被告は見守り活動に来なかったと証言。午後1時ごろ、行方不明になった少女の捜索を保護者会に依頼するため、2、3回電話をかけたがつながらなかったという。午後5時半ごろと午後7時ごろ、渋谷被告から連絡があり、被告は少女の行方について「知らない」と答えていたと証言。当日朝の見守り活動に来られなかった理由として「母親の介護があった」と話していたという。また午後2時からボランティアの新人研修会が予定されていたが、渋谷被告は午後1時20分ごろ、男性に電話で「ちょっと不幸ができまして」と欠席を伝えていたことが明らかになった。
 同日、渋谷被告の元妻で事件当時も同居していた中国籍の女性が出廷。検察側の主尋問で、ヒトの尿反応が検出された渋谷被告の軽自動車に、事件から2日後の26日に後部座席に乗ったと説明。この際「しばらく乗っていなかったが、26日に乗った時はカバーがなかったなと思った」と証言した。「母親の介護」との説明について、裁判官が渋谷被告の実母が事件当日の時点で存命だったかを元妻に確認。元妻は「(事件当日以前に)亡くなっている」とした。元妻の母についても、検察側が事件当日に日本にいたかを元妻に確認。元妻は「(事件当日は)中国にいると思う」と証言した。裁判員は、渋谷被告の軽自動車の尿反応をめぐり、渋谷被告と元妻の間に生まれた事件当時小学校1年生だった長女が後部座席でおもらしをしたことがないかを元妻に確認。元妻は「娘が保育園の時、おもらししたことはあります。運転席側の後部座席です」と証言した。最後のおもらしの時期は事件当時からさかのぼって「1年以上あると思う」とした。
 14日の第8回公判で、被告人質問が行われた。午前中は弁護側の質問に対し、「(事件当日は)午前7時45分過ぎに家を出て(自分の)子どもを軽乗用車で学校に送った。体調が悪かったので自宅に帰った」と発言。その後、自宅近くに止めたキャンピングカーで釣りざおの確認をした後、帰宅して2人の子どもに昼食をとらせたと主張した。そして、「午後1時ごろに釣りの下見に利根川や江戸川に出かけた。コンビニでおにぎりと雑誌を買い、夜に自宅に戻った」述べた。裁判員から「昼くらいに出て午後10時くらいまでポイントを探して1カ所も見つけられなかったのか」と問われると「見つけることができなかった」と述べた。前日の校長たちの証言については、いずれも「話していない」と淡々とした口調で次々と否定。渋谷被告の軽自動車で検出された血痕から少女と同型のDNA型が検出されたことについては「なぜそれが付いたか分かりません」と供述した。体調を問われた渋谷被告は「両目が見えない。腎臓と肝臓も20%程度しか機能していない」と発言。事件当時についても「血圧が230、上があって、右目が見えない状態。(左目は)見えていました」と供べた。右目がまったく見えなかったか問われると「今より見えていたが、ビニール袋を重ねたような状態で乱反射してまともに見れない(状態だった)」とした。裁判員から「午後1時から午後10時まで9時間運転して大丈夫だったのか」と問われると「途中で休憩しながら、(乱反射を防ぐため)太陽に背を向ける形で運転した」と説明。釣り道具について「針もテグスも小さいが目が悪くても大丈夫か」とも問われたが、被告は「セットになっているのが売っている」とした。質問の最後に自由意見を求められると、突然声をうわずらせ、「私が犯人と思われている中で私が行った募金を受け取ってもらい、ありがとうございました。忙しくて仏前にお参りに行けずすみません。見守りしてた時に守ることができなくてすみませんでした」と謝罪した。
 午後からの検察側の質問に対し、保護者会長として少女を探そうと思わなかったか問われ「思わなかったというより、何でいなくなったか分からず、最後の最後にめんどくさい事件が起きたのかなと思いました」などと供述。検察官や裁判員から「保護者会長として探そうとはしなかったのか」と問われると、「依頼がなかったのでやらなかった」と答えた。
 少女の父の代理人弁護士が「少女が行方不明になったのは親の責任ということか」と問われ、すぐに「そう思います」と回答。野原俊郎裁判長が「被害者の親を糾弾するのか」と指摘すると、「そのつもりはないが、私は毎日送り迎えをしていた」と語った。さらに弁護士が「あなたの娘が性暴行を受け殺害されたら犯人を許せるか」と質問。渋谷被告は「許すことはできませんけども」と一言触れた上で「その前に私は(登校時)子どもに付いて行っている。子どもから目を離さないようにしている。それは親の義務だ」と主張した。さらに見守り活動について「やる人とやらない人がいるのは不公平だと思いませんか」と弁護士に逆質問。殺害された少女への心情を問われ「すごくかわいそうだなと思うけど、自分が犯人ではないので、それしか答えられない」とし、遺族への言葉を問われると「お悔やみを申し上げる程度のことしかできないですね」と話した。
 15日の第9回公判で、少女の父が証言台に立ち、「本当に、裁判員のみなさんには娘を殺した犯人に死刑判決を出してほしいです。お願いします」と話した。母の提出した意見陳述書も裁判長によって読まれ、死刑判決を求めた。
 18日の第10回公判で被害者参加弁護士が意見陳述し「当たり前の幸せが被告によって全て奪われた」「リンちゃんの命を償う唯一の方法は死刑しかない」と死刑判決を求めた。
 検察側は論告で、渋谷被告の軽乗用車から少女と同一のDNA型の血液が見つかったことや少女の遺体から2人の混合したDNA型が検出されたことなどを挙げ、渋谷被告が車内でわいせつ行為や殺害に及んだと主張。そして遺体のDNAについて「厳重に管理していた」と、意図的な混入の可能性を否定し、弁護側の主張について「理由がない」と反論した。少女が行方不明になった昨年3月24日の行動について渋谷被告が、同じマンションの住民に会ったり、釣りの準備をして下見に行ったりしたとする説明を「場当たり的な供述。内容が不自然」。同日午後に少女の所持品や遺体が見つかった現場周辺を渋谷被告の軽乗用車が走行し、帰宅した同10時ごろまで具体的なアリバイがないことから「遺体や所持品を遺棄する機会は十分あった」と述べた。また「少女とは顔見知りで口封じの必要もあった」と主張。ネクタイから検出された唾液は首を絞めたか、口をふさいだためで、遺体の胃の内容物から不明になった当日正午までに殺害されたと指摘。渋谷被告が登校中のリンさんに声を掛けるなどして軽乗用車に乗せ、車内で手錠で拘束してマスクをかぶせわいせつな行為をして殺害し、遺体を遺棄したとした。被告が無罪を主張し続けている点について「人間性の欠片もない。犯行について語ろうともせず、刑事責任を免れようとしている」と批判し、「殺人は口封じ、わいせつは性的欲求を満たすためで、動機は身勝手の極みだ。常軌を逸した犯行で、被害者の肉体的、精神的苦痛は甚大。児童を保護すべき立場にあったのにまったく逆の行為に及んだ。犯行は冷酷、残忍、悪質で結果も重大。更生の可能性はまずない。死刑を回避できる事情はない」と強調した。
 同日の最終弁論で弁護側は、DNA鑑定と同時並行で他の鑑定が行われたことなどを指摘し「警察が犯人を早期に逮捕しなければならないプレッシャーから証拠を捏造した」と主張。渋谷被告のDNA型を意図的に混入させたとした。行方不明当日の渋谷被告の言動が関係者らの証言と食い違うことに「被告がうそをついたとしても犯人とする裏付けにはならない」。軽乗用車の車内複数カ所から少女の血液が見つかったことには、渋谷被告が被告人質問で自分の子どもと一緒に少女が車内で遊んでいたと話したことを踏まえ「子どもがどこかを擦りむくことはよくあること。血が付いた手であちこちを触った可能性がある」とした。さらに「手錠やマスクを犯行に使ったのであれば、なぜ処分しなかったのか。軽乗用車に血や尿が付いたのなら、どうして掃除をしたり床マットを捨てたりしなかったのか」と疑問を呈した。そして「DNA型鑑定以外に渋谷被告が犯人と認められる証拠はなく、鑑定も万能ではない。疑わしきは被告人の利益に」などとして改めて渋谷被告の無罪を主張した。
 渋谷被告は最終意見陳述で「私は無実無罪でございます。私のことを信じて待っている子供2人のために公正な判決をよろしくお願いします」と改めて無罪を主張した。
 判決理由で野原裁判長は、DNA鑑定に汚染や故意の混入があったとの弁護側の主張は「抽象的で具体的な可能性がない」とし「認められない」と退けた。一方、遺体の腹部から検出された付着物のDNA型が被告と少女のものであるなどとした検察側の立証を支持。「証拠能力は極めて高い」と延べた。
 また、被告が事件当日、登校時の見守り活動に行かなかったことを「都合が悪くなった」とし、補導員の説明会に行かなかったのを「具合が悪かった」、捜索に加わらず「釣りの下見に行った」とした主張について、「信用できない」と退ける一方、事件当日に被告と会話したとする証人たちが渋谷被告から聞いたと証言した「母の介護で行けなかった」「不幸ができまして」といった発言が実際にあったと認定。被告の証言について「DNA鑑定の結果とも、被告の証言は矛盾し、全体として信用できない」と退けた。
 犯人性について、裁判長は「被告人の指紋、足跡がなくても、被告が本件の犯人と認められる」と結論づけた。
 裁判長は量刑について、裁判長は「両親の峻烈な処罰感情も親として当然」とした上で、少女のランドセルや衣服などを分散して投棄し、ドライブレコーダーの記録も消去するなど、罪状隠滅も行っていると指摘。さらに、公判中、「親の責任だ、などと、無神経にも親を傷つける発言までしており、反省は皆無だ」とも指摘した。裁判長は、これらの事情を加味して、有期懲役ではなく、死刑判決または無期懲役判決を検討したと説明。ただ、究極の刑罰である死刑を選択するには、同様の事件の量刑との「公平性に配慮する必要がある」とも説明した。これについては「殺害状況が特異かつ冷酷か」また「強い計画性があったか」を検討。この2点について裁判長は「わいせつ行為の発覚を免れるための殺害は他の事件でもある」「わいせつ行為の特異さをもって直ちに殺害行為の執拗性・残虐性と同じに評価することは相当でない」、計画性については、遺棄場所を探して車で走り回るなど「むしろ場当たり的」「意を決して計画していたとまでは言えない」と指摘。この2点について「検察側の立証が十分立証ではない」とし、わいせつな動機で1人が殺害された同種の事件の裁判員裁判で「14件中11件が無期懲役(3件は有期懲役)」だったという過去の量刑傾向も挙げ、死刑を言い渡すのに「真にやむを得ないとまでは認められない」と、無期懲役判決を選択した理由を説明した。
備 考
 被告側は即日控訴した。検察側も控訴した。

氏 名
ランパノ・ジェリコ・モリ(36)
逮 捕
 2017年9月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強姦致死
事件概要
 フィリピン国籍のランパノ・ジェリコ・モリ被告はフィリピン国籍の少年2人(事件当時19、18)と共謀。2004年1月31日午前0時から6時半ごろまでの間、茨城県阿見町の路上で、散歩で通りがかった茨城大農学部2年の女子学生(当時21)の腕をつかんで車に連れ込み、美浦村舟子の清明川に向かう車内で暴行を加え、手などで首を絞めた。さらに、清明川の河口付近で首を刃物で複数回切るなどして殺害した。  ランパノ被告は母親らと2000年に入国。事件当時、ランパノ被告は土浦市内に住み、美浦村内の電器部品加工会社に勤務していた。女子学生と面識はなかった。
 遺体は31日の午前9時半ごろ、発見された。
 ランパノ被告や共犯の2人は2007年にフィリピンに出国するも、ランパノ被告は再び日本に入国。2010年からは岐阜県瑞浪市に母親や妻、子供らと住み、工場に勤めていた。
 茨城県警は交友関係を中心に調べるもトラブルは無く、犯人につながる手掛かりが乏しく捜査が長期化。県警は殺人罪などの公訴時効が2010年に撤廃されたことを受けて、未解決事件に専従する捜査班を翌年に設置した。新たな情報提供を呼びかけるなどした結果、2015年に情報が寄せられ、ランパノ被告が捜査線上に浮上。捜査を続けた結果、ランパノ被告が友人らに対し、事件への関与をほのめかしていたことが判明。遺体に付着した微物のDNA型がランパノ被告のものと一致した。茨城県警は2017年9月2日、岐阜県瑞穂市で工員として働いていたランパノ・ジェリコ・モリ被告を強姦致死と殺人の疑いで逮捕した。また県警は同日、ランパノ被告の妹と日本人の夫について偽装結婚したとして電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕、さらに夫と同居するタイ国籍の飲食手順従業員の女性を入管難民法違反(不法在留)容疑で逮捕している。
 9月5日、茨城県警はフィリピン国内にいると思われる共犯2人の逮捕状を取り、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配した(なお1人についてはフィリピンで日本の取材に応じている)。ただし日本とフィリピンとの間には事件捜査の協力を要請できる「刑事共助協定」がなく、容疑者の身柄引き渡しに関する条約もないため、フィリピン政府に引き渡しを求めることができない。
裁判所
 水戸地裁 小笠原義泰裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年7月25日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年7月17日の初公判で、ランパノ被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、ランパノ被告と、同国籍の34歳と32歳の男3人による犯行によって「被害者は性的尊厳を踏みにじられ、命まで奪われた」と指摘し、「遺体の手からランパノ被告とほぼ一致するDNAが検出された」と述べた。
 弁護側は「被告には反省の意思がある」として、被害弁償金100万円を用意していることを明らかにし、「当時若年だった共犯者の影響で犯行がエスカレートした」と述べた。
 同日の被告人質問でランパノ被告は「(共犯の1人が)女性を暴行することを提案した。仲間の誘いなので同意した」と語り、暴行について「飲酒していた影響で重い罪だと考えられなかった」と語った。
 18日の第2回公判で被告人質問が行われ、女性を暴行しようと計画し発見するまでの時間について「1時間から1時間半くらい」と証言。「被害者を確実に殺すために、車内にあったカッターナイフを(共犯の男に)渡した」と述べた。殺害理由について問われると、「警察や両親に(暴行したことを)話さないようにするため」と口封じ目的だったことを明かした。女性を拉致した状況については、自転車に後方からワゴン車で近づき、自転車の右側から進路をふさいだとし、「1人が女性の体を引っ張り、もう1人が車外から体を押して、車内に連れ込んだ」と述べた。さらに「(職場の近くの)川に被害者を捨てようと提案した」と語った。ランパノ被告は初公判で共犯者の影響などが犯行をエスカレートさせたと主張したが、なぜ共犯者との関係を絶たなかったと問われると、「分からない」と答えた。事件の詳細についての質問に「覚えていない」「分からない」と繰り返し、小笠原裁判長から「当時のことをよく思い出して答えてください」と注意される場面もあった。弁護側の質問に「首を切り付けたのは1度だけ。胸は刺していない」と話し、起訴内容の一部について否認した。弁護側から反省の念について問われると、「後悔している。被害者や遺族に申し訳ない」と述べた。「自分に子供ができて被害者や遺族の苦しみが分かるようになったか」という問いに対しては、弱々しくうなずきながら「はい」と答えた。犯行後は、被告の自宅に戻って再び飲酒したといい、「(共犯の2人に)誰にも話さないようにしようと話した」と明かにした。
 19日の論告で検察側は、偶然発見した女子学生を乱暴した上で、「口封じのため確実に死亡する方法で殺害した」として「強固な殺意に基づく、執拗で残虐な犯行」と指摘。「女子学生の遺体を川に捨てることを提案したり、共犯の男にカッターナイフを渡すなど主体的に動いた」とし、「力の劣る女性に対し、男3人で襲うという犯行態様は卑劣極まりない」と強調した。そして「動機に酌量の余地はなく、有期刑が相当とはいえない」と糾弾した。
 同日の最終弁論で弁護側は「若年の共犯者や飲酒の影響で思慮分別が乏しいまま犯行に及んだ」とし、「被告は(事件後に)娘が生まれてから後悔して罪に向き合い、反省している」と情状酌量を求め、有期刑を求めた。起訴内容の一部について「首を切り付けたのは1回で、胸は刺していない」と訴えた。
 ランパノ被告は最終陳述で「(被害者の)両親に申し訳なく謝罪の気持ちでいっぱい。更生するチャンスを与えてほしい」と涙混じりに語り、頭を下げた。
 判決で小笠原裁判長は、「通りすがりの被害者を無理やり連れ込み、3人全員が強姦した卑劣な犯行」と厳しく指弾した。そして被告が共犯2人と口封じのため殺害を事前に話し合っていたと指摘。首を絞めた上、息を吹き返さないよう被告が刃物を渡し、3人で首を複数回切ったとして、「執拗、残虐な犯行で殺意の強固さも明らか」と述べた。共犯者の影響や飲酒、若年であったことが犯行をエスカレートさせたとする弁護側の主張については、「いずれも量刑上重視できない」と退けた。その上で被告が起訴内容を認め、反省している点を踏まえても「被害者の人格を踏みにじる卑劣な犯行。被害者の屈辱や恐怖、苦しみは筆舌に尽くしがたい。有期懲役刑を選択すべき事情はない」と結論付けた。
備 考
 2018年7月に改正刑法が施行され、強姦罪は「強制性交罪」に変わり、法定刑が引き上げられた。ただ今回の事件は2004年に発生しており、改正前の刑法が適用された。
 被告側は控訴した。2019年1月16日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
勝又拓哉(35)
逮 捕
 2014年6月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、商標法違反、銃刀法違反
事件概要
 栃木県鹿沼市の無職、勝又拓哉被告は2005年12月1日午後2時50分ごろ、栃木県今市市(現日光市)で下校途中の小学1年の少女(当時7)を車で連れ去り、「1日午後2時38分ごろから2日午前4時ごろまでの間」(二審の途中までは翌2日午前4時ごろ)、「栃木県か茨城県内とその周辺」(二審の途中までは「約65km離れた茨城県常陸大宮市の林道」)で胸を数回刺して殺害した。
 帰宅した母親が家にいないことに気付き、1日午後5時ごろ、警察に届け出た。遺体は2日午後2時ごろ、狩猟の下見で訪れた男性らが遺体を見つけた。栃木・茨城の両県警が合同捜査本部設置。遺体の付着物から採取されたDNA型は当初、有力な手掛かりとみられていたが、当時の栃木県警の捜査幹部のものが誤って付着したことが2009年に判明。物証が乏しく捜査は難航した。警察庁は2007年7月、は本件を最重要未解決事件の一つとして、公費による懸賞金「捜査特別報奨金」(1年間)の対象に指定。2013年8月に6度目の更新をしている。
 勝又拓哉被告は2014年1月29日、高級ブランドの「ルイ・ヴィトン」に似た商標付きショルダーバッグを販売目的で所持していたとして、商標法違反の疑いで母親とともに現行犯逮捕された。起訴拘留中に少女の連れ去りへの関与を認める供述をした。6月3日、合同捜査本部は勝又被告を殺人容疑で再逮捕した。死体遺棄罪は3年の時効が成立している。
 また勝又被告は2014年1月29日午後、鹿沼市の自宅に駐車中の乗用車に、刃渡り約7.2cmのナイフを所持し、同日、母親と一緒に販売目的で、計206点の偽ブランド品を所持したほか、2013年9月、偽ブランド品を中国から輸入した。
 勝又拓哉被告は台湾出身の両親の間に生まれ、7歳で台湾から来日。1990年頃〜2000年ごろ、骨董商を営む母親や再婚相手の日本人男性、家族らと当時の今市市に住んでおり、少女の自宅からは約5分の位置にあった。勝又被告は不登校になり、中学校卒業後の2000年頃から鹿沼市で一人暮らしを始め、2009年に日本に帰化した。
 県警は2014年9月10日、勝又拓哉被告の逮捕に結びつく情報を寄せた2人に、公的懸賞金(捜査特別報奨金)300万円と遺族らの寄付による情報提供謝礼金200万円の計500万円が支払われたと発表した。県警は「情報提供者を保護する必要がある」として、名前や懸賞金の分配比率などは明らかにしていない。
裁判所
 東京高裁 藤井敏明裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年8月3日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 2017年10月18日の控訴審初公判で、弁護側は一審同様無罪を主張した。検察側は「自白には犯人しか知り得ない秘密の暴露に準ずる内容がある」と述べ、控訴棄却を求めた。
 弁護側は、遺体の頭部に付いていた粘着テープなどから、被告のDNA型が検出されず、第三者のDNA型が出ているとし、「遺体から見つかったDNA型は真犯人に由来する可能性が極めて高い」と主張。被告の型が検出されなかったことは、女児と接触したとする被告の自白が「事実でないことを示している」とした。検察側は「皮膚に触れても、必ずDNA型が付着するわけではない。鑑定前に指紋を鑑定した際、捜査関係者など不特定多数の人のDNAが付着した可能性が高い」と反論した。殺害場所についても、弁護側は「自白の通り殺害現場とされた林道で女児の血液がほとんど検出されなかった」と、遺体発見現場に大量の血液反応がなかったことから「犯行場所の自白は虚偽」と主張。検察側は血液について、現場の土に染み込んだとして、自白に矛盾がないと反論した。また弁護側が根拠とする血液反応の実験は信用できないと述べた。検察側は、客観的証拠について「犯人と直接結び付けるものはない」とした一審判決に対し、「勝又被告が母親に宛てた手紙で事件について告白している」などと言及した。
 弁護側は、遺体から検出されたDNA型が被告以外のものだとする鑑定結果の採用を求めたが、採否は次回以降に決まることになった。また、被害者の遺体に付着した獣毛の鑑定書を提出。被告の飼い猫とDNA型が矛盾しないとする検察側の主張に反論する内容で、高裁は採用した。
 藤井裁判長は控訴審の争点を、DNA型の評価や、殺害場所など6点に整理した。
 10月30日の第2回公判で、弁護側証人の吉田謙一・東京医科大教授は、勝又被告が捜査段階で「被害者を林道に立たせ、右肩を押さえて胸などを6〜7秒で10回刺した」などと述べた自白について「刃物の向きが傷ごとに異なっており、遺体の傷のつき方や深さからすると、被害者を立たせた状態で短い時間に何度も刺したとは考えにくい」などと指摘。解剖結果では被害者が大量に出血しているはずなのに、殺害現場とされる場所で検出された血液はわずかだったと主張した。一方、検察側証人の上村公一・東京医科歯科大教授は「6〜7秒という一瞬の出来事なので、被害者にまだ意識があり、立ったまま動かなかったことはあり得る」と反論。殺害現場とされる場所に血痕が少なかったのは、血液が胸腔内にたまったためだと述べた。
 12月11日の第3回公判で、再び吉田教授と上村教授が出廷。吉田教授は「被害者は大量に出血しており、被告が自白した殺害方法とは合致しない」と改めて述べた。上村教授は、裁判官に自白と状況に異なる可能性があるかどうか問われると「2、3割は違う部分があるかもしれない」と述べた。
 12月21日の第4回公判で、被告側の鑑定人である、進化ウイルスを研究する京都大准教授の宮沢孝幸氏が出廷。宮沢氏は遺体に付着した獣毛について、一審で採用された麻布大獣医学部・村上賢教授の鑑定に誤りがあるとした上で「(自らが)国際的な手法で鑑定をした結果、被告の飼い猫は国内で19%存在する型の猫だった」と説明した。宮沢准教授はまた、「猫はマイナーなDNA型でも、ある地域には多く存在する場合もある」と主張。被害者に付いていた毛を被告の飼い猫の毛と認定することについて「個体が同一かどうかの議論は慎重にすべきだ」と述べた。検察側の証人として村上教授が出廷。宮沢准教授が採用した鑑定手法について、「最近使われている手法だが、それだけが唯一の手法ではない」と反論した。村上教授はまた、宮沢准教授からの指摘を受け、自身が行ったDNA型の分類結果を一部修正した。しかし、被害者に付いた猫の毛と被告の飼い猫の毛のDNA型は「(分類結果を修正したとしても)あまりみられない型で珍しい」と述べ、従来の見解を維持した。

 藤井敏明裁判長は訴因変更するかどうかの検討を検察側に求めたが、東京高検は2018年1月10日、殺害日時を「1日午後2時38分ごろから2日午前4時ごろまでの間」と広げ、被害者の殺害場所を遺体の発見現場の林道から「栃木県か茨城県内とその周辺」に変更する「訴因変更」の請求を東京高裁に行った。
 被告の弁護団は、東京高裁に「女児の遺体から元県警刑事部長らのものとみられるDNA型が検出された」との趣旨の意見書を提出した。検察側も意見書への反論書を高裁に提出。「検出されたDNA型は元刑事部長のものとは到底断定できない。そもそも、捜査段階の自白などで有罪とした一審の判断は揺らがない」と主張した。

 2018年2月5日の第5回公判で、女児の遺体に付着していた粘着テープの指紋を調べた茨城県警鑑識課の捜査員が検察側証人として出廷し「テープをDNA型鑑定するとは想定しておらず、指紋検出の器具を使い回していた」と証言した。東京高検は栃木県警の警察官らの型と照合した結果を、弁護側に開示した。遺体に付着した粘着テープなどから見つかったDNA型に、計71人の捜査関係者らとも合致しない、第三者のものが複数人分あることがわかった。
 2月6日の第6回公判で、弁護側証人の法医学者、押田茂實・日大名誉教授が出廷。県警が2014年に別の大学教授に依頼した鑑定書を分析した結果、「被告のDNA型が検出されなかったのは明らかだ」と説明した。また、「2006年以降、進歩した(DNA型の)検出法が定着しているのに(捜査員のDNA型が混じるような)汚染の問題が起きている。汚染に気をつけるというのは常識のはずで、大きな問題だ」などと、捜査のずさんさを指摘した。女児の遺体などに付着したDNA型について再鑑定が必要だと主張し「このような捜査で無期懲役を語るべきではない」などと述べた。検察側証人として出廷した科学警察研究所の職員は、女児の遺体から勝又被告のDNA型が出ていない点に触れ「コンタミネーション(別のDNA型の混入)があれば、(被告のDNA型があっても)隠れて検出できないということもある」と、被告側の無罪主張に反論した。
 3月29日の第7回公判で、藤井敏明裁判長は、従来より殺害の場所と日時を広げる検察側の訴因変更請求を許可。これに対し、弁護側は「争点は一審で詰めに詰められている。(控訴後)1年半以上が経過した時点で訴因が変更されるなら、主張する証拠構造の再構築が必要となる可能性がある」などと反論したが、高裁は「一審では、訴因変更の必要性が看過されていた。訴因変更後も弁護側主張の全体構造は変わらない」として変更を許可した。勝又被告は、変更後の起訴内容について改めて「違います。殺していません」と無罪を主張した。被告人質問が行われ、「自分で引き起こした事件でお母さんやみんなに迷惑をかけてしまい、本当にごめんなさい」とする母親宛ての手紙について、勝又被告は女児殺害に関してではなく、自白調書にサインしたことに対する謝罪だと説明。「検事から『サインしたら犯人で間違いない』と言われた。決めつけられ、もう犯人になるしかないと思った」と涙ながらに語った。
 6月8日の第8回公判で弁護側は最終弁論で、遺体や犯行現場の状況は捜査段階の自白と矛盾しており、自白調書の信用性を認めた一審は「論理則、経験則に照らして著しく不合理」と指摘。遺体の付着物から、被告でない第三者のDNA型が検出されたことは「被告が拉致や殺害、死体遺棄に関与していないことが推認される」とした。検察側は弁護団の見解を非科学的と批判。「女児が事件前に接触した人のDNA型が付着した可能性がある」などと主張し、「被告が犯人であることは明らか」として控訴棄却を求めて結審した。
 判決で藤井裁判長は、一審で地裁が供述の信用性を判断するための「補助証拠」として録画を用いることを提案し、検察側、弁護側の了解を得ており、録画はあくまで補助証拠で、犯罪事実の立証には供述調書を使うという位置付けだったことについて、「現実の心証形成は、録画を視聴することで直接的に行われる」と指摘。「裁判所から、あたかも調停案のように、録画を信用性の補助証拠とすることを提案すべき筋合いではなかった」と地裁の対応を批判した。そして取り調べの録音・録画(可視化)の映像を有罪の直接的な根拠とした一審判決について「取り調べ映像により犯罪事実を直接的に認定したことは訴訟手続き上の法令違反がある」と指摘。録画を使った信用性判断では、「取調官に強制された供述か」「自発的な供述か」という単純な二者択一に陥り、勝又被告の自白のように「自発的だが、内容は虚偽の供述」が見落とされる危険性があると指摘。供述に秘密の暴露があるか、客観的な事実と整合するかなどを含めて多角的に検討し「自白供述から適切な距離を保って、冷静に熟慮することが肝要」とした。さらに、勝又被告が偽ブランド品を所持していたとする商標法違反容疑で2014年1月29日に逮捕され、同罪で起訴された2月18日に、検察官に殺害を自白するも。供述を変遷させた後に6月11日から詳細な供述を始め、24日に殺人罪で起訴された経緯について言及。2月25日の取り調べは被告が黙秘権を行使したいと申し出た後も30分以上続行された末、被告が「もう無理」と言いながら自殺を図ろうとしたと指摘。余罪取り調べが44日間に及び、弁護人からの中止の申し入れも無視されていたことからも、任意捜査の限度を超えた違法な取り調べだったと判断した。一方、検察官が被告に「これまでの供述にこだわる必要はない」と告げていたことなどから、「調書が、違法な余罪取り調べによって得られたものとは評価できない」として供述調書の証拠能力は否定しなかった。しかし一審判決について被告の自白に基づき、一審判決が殺害現場と殺害時刻を起訴事実通りに認定していたことについても、「事実誤認があり、破棄を免れない」として一審判決を破棄した。
 藤井裁判長は、遺体に付いていたテープから検出された第三者のDNA型について「指紋検出作業をした際のコンタミネーション(汚染)の可能性がある」とし、この型が「殺害犯人に由来するものである可能性が高いと言える合理的な理由はない」と判断し弁護側の主張を退けた。一方、証拠の一つとして挙げられてた獣毛のDNA型鑑定結果について、鑑定が同じDNA型を持つ猫が地域的に偏在する可能性を適切に踏まえていないことなどから「獣毛が猫の毛で、被告の飼い猫に由来するものとして矛盾しないことまでしか認定できない」とした。
 藤井裁判長は、被害者が拉致された翌日未明に被告の車が遺棄現場のある茨城県方向に走っていたことを示す自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)の走行記録など「被告が犯人であることを相当程度、推認させる間接事実が存在する」と指摘。別の事件で逮捕された後に、被告が母親にあてて「事件」を謝罪する手紙を書いていることも踏まえれば「被告が殺害の犯人でないとすれば、合理的に説明することは極めて困難」なことから「被告が犯人である可能性を示す複数の状況証拠を総合すれば、被告が殺害の犯人だと認められる」として、改めて無期懲役を言い渡した。
 なお自白や一審判決では、拉致した女児に対して自宅でわいせつ行為を行い、それが発覚することを恐れて殺害したことになっているが、高裁判決は客観的事実の裏付けがないわいせつ行為を、事実認定からすっぽり抜いている。
備 考
 母親は商標法違反で2014年6月に懲役1年6月、罰金30万円、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
 2016年4月8日、宇都宮地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は即日上告した。

氏 名
於保照義(69)
逮 捕
 2014年8月15日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、業務上横領
事件概要
 土木建設会社社長の於保(おほ)照義被告は2014年8月15日午後3時頃から同6時15分頃の間、佐賀市の会社が管理する残土置き場で、在日韓国人で下関市の会社経営の男性(当時76)と知人で無職の女性(当時48)を呼び出し、2人が乗った軽乗用車が到着すると、被告は車から降りる間も与えずショベルのバケットを車の屋根に振り下ろし、さらにバケットとキャタピラで車を挟み込み、穴まで引きずって落とした。穴に土砂を掛け続け、車外に出た男性と、車内にいた女性を生き埋めにして窒息死させた。
 於保照義被告は男性から借金などの名目で計4千万円の返済を求められていた。残土置き場周辺の土地は複数の所有権が絡み合っており、その一部が男性のものだった。於保被告は事件3日前、油圧ショベルの先端を、爪が付いた「スケルトンバケット」に交換するよう従業員に指示。翌日、別の従業員に「お盆過ぎに取引先が廃棄物を持ってくる」として犯行現場となった縦横6〜7m、深さ5〜6mの穴を掘らせていた。
 それぞれの親族から捜索願が出された。2015年7月25、26日、2人の遺体が発見された。
 9月1日、捜査本部は死体遺棄容疑で於保照義被告を逮捕した。22日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 佐賀地裁 吉井広幸裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2018年8月6日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年6月4日の初公判で、捜査段階に続き、黙秘を宣言した。
 冒頭陳述で検察側は防犯カメラや被告の自供など「犯行を直接証明する証拠はない」と認め、前後の状況から立証するとした。具体的には、車の損傷や現場が被告管理の土地だった点、穴掘りの指示理由や男性を呼び出した口実が虚偽とみられること、2人の死因は「医学的に窒息死と考えて矛盾はない」とする見解などを挙げた。
 弁護側は被告には動機がないと主張し、犯行の計画性について「被告は重機を扱うことができ、1人で簡単に穴を掘ることができる。人を殺すための穴を他人に掘らせるだろうか」と疑問を呈した。2人の遺体は腐敗が進み、死因が不明な点にも触れ「曖昧で不確かな証拠で処罰されることは許されない」とくぎを刺した。
 4日には検察側の証人として佐賀県警の捜査関係者4人が出廷した。県警本部の鑑識課員として捜査に携わった男性職員は、重機で穴を掘り返し、2人が発見された状況を証言。遺体は傷みが激しく捜索は難航したと述べた。2人を埋めるために盛られた土と、穴の周囲に元々あった土では「柔らかさが違った」とも証言した。別の男性職員は、男性の遺体は土中で見つかり、女性の遺体は埋められていた軽乗用車の運転席でシートベルトをした状態だったと述べた。
 5日の第2回公判で当時、県警捜査1課員として捜査に関わった男性職員は、於保被告が使ったとされる重機の先端に取り付けられていた「スケルトンバケット」の捜査状況について説明。バケットに多数の傷があったと調書に記載したことを証言したが、弁護側に「傷がついた時期は断定できるか」と問われると、「(その点は)分からない」と答えた。
 6日の第3回公判で重機部品を貸し出した業者は、事件があったとされる数日後、現場付近で重機のバケットを交換したことを明らかにし、その際、バケット先端の爪の一部が壊れていたと述べた。鑑識業務に関わった県警の捜査員は、車のドアなどにバケットの爪による損傷があったことや、バケットが振り下ろされた衝撃で天井が谷折りになったとされる車の状況などを証言した。
 同日、弁護人は2018年2〜3月、2人の遺体が発見された穴の隣に同じ5mの穴を掘り、水位を調べた結果を証言。約65mmの雨が降った3月5日は、前日より水位が2mほど上昇したとし、検察側が主張する窒息死以外の可能性を示唆した。
 11日の第4回公判で、遺体の司法解剖を行った佐賀大医学部の男性准教授の証人尋問が行われた。男性の遺体には肋骨などに複数の骨折があったと証言。遺体が腐敗して死因を特定できなかったため「可能性の一つ」と前置きしたうえで、発見状況などから、大量の土砂をかぶせられ、胸郭が圧迫されて窒息死したとした。女性の遺体は、両脚を折り曲げ、上体を前に倒した窮屈な姿勢だったと説明。死因は特定できないとし、「車内という狭い空間で無理な姿勢を続け、胸郭を広げられず呼吸不全となった」と述べ、窒息死とした。
 一方、弁護側は2人が窒息死したとされた経緯について「『遺体は穴に埋まっていた』といった情報を(准教授らが)警察から聞いたことで『圧死による窒息死』という結論が出た。遺体の所見だけでは導き出せなかった」と指摘。また、弁護側の尋問で准教授は、男性の遺体に擦過傷がなく、気管の中に土などを吸い込んだ痕跡がなかったことなどを明らかにした。
 12日の第5回公判で、筑波大教授が弁護側の証人として出廷。男性の肋骨や恥骨などが骨折していた点について「穴に埋められた時に骨折するなら、人の頭くらいの岩を打ち付けない限り、骨折しない。土砂が降り積もるくらいでは考えにくい」と述べた。死因として、多数の肋骨骨折による呼吸不全と、それに伴う出血による外傷性ショックを挙げた。女性の遺体については、「発見時のような無理な姿勢のまま死亡することは考えにくい。ある程度は逃れようと動くはず」とし、准教授の見解を否定。その上で死因につながる所見はなかったと述べた。
 18日の第6回公判で、捜査に携わった元県警科学捜査研究所所長が出廷し、2人が乗ってきたという軽乗用車が重機によって損傷したとする鑑定内容を証言した。弁護側は、車や重機に互いの塗膜が付いていなかったか質問。元所長は「(塗膜が付くほどの)交通事故に近い衝撃を受けた傷はなく、付く可能性は低い」とし、塗膜が検出されなくても不自然ではないとした。
 20日の第8回公判で、検察側は土中から見つかったボイスレコーダーに残された音声を再生し、被告が2人を殺害した動機とみている借金返済のやりとりを明らかにした。解析に携わった捜査関係者らの証人尋問もあり、再生された音声は会話の内容などから2014年8月8日で、2人の親族の話や被告の声の鑑定から3人のやりとりと推認したと説明した。
 26日の第9回公判で、重機の稼働状況を調べた捜査員らが出廷した。捜査員は、重機には全地球測位システム(GPS)があり、重機の製造会社などに稼働時の動き方や時間、場所などを確認したと説明。その結果、同年8月13、15日に殺害現場付近で重機が稼働していたと証言した。
 公判には、遺体の薬物や毒物の有無を検査した福岡大の教授も出廷した。教授は、現場で見つかった男性の遺体の臓器から睡眠導入剤などが検出されたが、「過剰摂取の可能性はなく、(死因となるような)毒物の摂取はなかった」と述べた。睡眠導入剤などの摂取のタイミングは「分からない」とした。
 7月2日の第11回公判で、於保被告が経営していた会社の従業員男性ら2人が出廷した。元従業員の男性は、2014年8月13日、出先から事務所に戻ると、別の従業員が重機で穴を掘っていたと証言。これまで穴が掘られた場所ではなく、「疑問に感じた」と述べた。また、掘った従業員に穴について尋ねると、「社長から指示された」と答えたという。その後、連休を取って18日に出勤したところ、穴は整地されていたという。
 重機で残土処理を担当していた元アルバイトの男性は同13〜17日の休みを終えて18日に出勤すると、普段は事務所付近に置かれない残土があったことから、他の従業員に尋ねたところ、「『社長が使う』と言われた」と証言した。
 4日の第12回公判で、於保被告が経営していた会社で働いていた男性らが証人として出廷した。元従業員の男性は同年8月13日、於保被告から「盆休み中にくずが運ばれてくる。バケットが届くくらいまで掘って」と指示され、残土置き場の事務所近くに深さ約5mの穴を掘ったと証言。連休明けの18日に出社すると穴は整地され、「於保被告から(業者が)何も持ってこなかったと聞いた」と述べた。
 この後、元従業員で、事業を引き継いだ於保被告の息子が出廷。被害男性が会社の敷地の一部を所有していたことから「(被害男性と)父がもめていたことは聞いていた」と述べた。また、2015年2月に於保被告から「今後仕事を引き継げるか」と聞かれたと証言。警察の捜査で穴から遺体が見つかった際は「やっぱりここから出てきたかと思った」と語った。一方で、穴について「かなり目立つところで、人を埋めるために掘ったとは思えない」とも述べた。
 9日の第13回公判で、男性被害者の仕事上の相談役だった知人が出廷。事件前の2014年5月、於保被告が被害者の土地に許可なく産廃を投棄していることを知り、被害者に伝えた。被害者は於保被告に「土地を買い取れ。そうでなければ当局に告発する」と求めたと述べた。
 10日の第14回公判で被告人質問が行われたが、弁護側は「『全て黙秘する』としている被告に対し質問することは誤った印象を与えるだけ」と主張。吉井裁判長から証言台に呼ばれると、於保被告は「黙秘するので証言台には立たない」と述べ、席から動かなかった。於保被告は検察側から「2人を殺していないのか」と問われると「全て黙秘する」と声を張り上げ、その後の質問には目を閉じて無言を貫いた。
 17日の第15回公判における論告求刑で検察側は、「借金返済を迫られた上不法投棄を告発すると言われたため、油圧ショベルで2人を車ごと穴に落として埋めた」と殺害に至る経緯を指摘。そのうえで、「人を人とは思わないあまりに凶暴、残酷で常軌を逸した犯行」として死刑を求刑した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「殺害方法が不明で殺意があったとも断定できない」として改めて無罪を主張した。
 於保被告は最後の裁判長の問いかけにも「私はお話することはできません」とだけ述べた。
 判決で吉井裁判長は、犯行に使われた油圧ショベルの稼働記録や被告の携帯電話の記録などから、「現場の近くにいた被告だけが犯行可能だった。被告以外が犯人ならば合理的な説明ができない」と認定した。於保被告が従業員に事前に穴を掘らせた行為も「犯行準備だった」とした。一方、男性から借金の返済を執拗に求められ、残土置き場で行っていた産業廃棄物の不法投棄を告発すると脅されていたと指摘。「極めて悪質とはいえず、死刑がやむを得ないとまではいい難い」として、死刑を回避した。
備 考
 検察、被告側は控訴した。

氏 名
長田輝実(32)
逮 捕
 2015年12月29日(死体遺棄・損壊容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄・損壊、窃盗、詐欺他
事件概要
 大阪府門真市の自称イラストレーター、森島輝実(旧姓)被告は2015年12月24日夜〜25日昼までの間、マンション自室で友人の女性(当時25)に睡眠導入剤を飲ませ、首を圧迫して窒息死させ、キャッシュカードなどを強奪。コンビニの現金自動受払機(ATM)で現金10万円を引き出した。そして刃物で切断して損壊した遺体を冷凍庫に隠したり、生ごみ処理機にかけて排水口やごみ置き場に捨てたり、女性と11月まで共同生活していた、マンションから北西約300メートル離れたシェアハウスに隠したりした。
 シェアハウスは3階建て。それぞれ個室があり、台所や浴室を共同利用する形態で、家賃は約3万円だった。森島被告は8月ごろに入居して女性らと同じ空間で生活し、11月ごろに事件現場となった近くのマンションに転居した。24日は森島被告の自宅で他の友人らと一緒にクリスマスパーティーを行う予定だったが、女性が行方不明になり、パーティーは中止された。
 2人の共通の友人が24日午後7時50分ごろ、マンションにいた女性や森島被告と電話で話したことが確認されたが、この数分後から女性と連絡が取れなくなった。翌日午後0時55分ごろ、森島被告が1人でマンションを出て行く姿が防犯カメラに映っていた。この間、第三者が森島被告宅に出入りした形跡はなかった。この直後、遺体切断などに使ったとされるのこぎり、塩酸入りの強力な洗浄剤、冷凍庫などを近くのホームセンターで購入。10万円も引き出した。森島被告は事件当時、約360万円の借金を抱えていた。
 松山市内に住む女性の父親が25日夜、「門真市内に住む娘の行方が昨夜から分からなくなった」と門真署などに相談。府内のATM(現金自動預払機)で同日午後、女性名義の口座から現金十数万円が引き出されており、防犯カメラ映像などから、森島被告が現金を引き出した疑いが浮上した。府警が29日未明、窃盗容疑で森島被告のワンルームマンションを捜索したところ、浴室や冷蔵庫から成人とみられる頭蓋骨や複数の人骨などを発見。死体損壊、死体遺棄の両容疑で逮捕した。
 2016年2月9日、11月に府内の金融機関で女性の免許証を使って預金口座を開設し、ローン契約を締結。3回にわたって現金約10万円を引き出したなどとして、詐欺、窃盗容疑で再逮捕。3月7日、強盗殺人及び窃盗容疑で再逮捕。
裁判所
 最高裁第一小法廷 池上政幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月12日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は殺人について無罪を主張している。
備 考
 2017年6月30日、大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年11月24日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
三原賢志(45)
逮 捕
 2016年6月13日(覚せい剤取締法違反(使用)容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、死体損壊、覚せい剤取締法違反(使用)他
事件概要
 北九州市八幡西区の市営住宅に住む無職三原賢志被告は、2015年5月から冬までの間に自室にて、北九州市の無職女性Mさん(当時43〜44)を刃物で刺して殺害し、遺体の一部を切り取った。また2016年6月5日ごろ、北九州市の職業不詳の女性Sさん(当時45)を刃物で刺して殺害し、胸を切りつけた。
 Mさんは2015年6月に、Sさんは2016年6月7日に、それぞれ行方不明者届が出されていた。
 2016年6月13日午後2時15分ごろ、Sさんと連絡が取れないことを不審に思った男性が部屋を訪ね、Sさんの遺体を発見した。駆け付けた福岡県警の警察官が約2時間後、同じ部屋でさらに別の性別不明の遺体を見つけた。県警は同日、覚せい剤取締法違反(使用)容疑で部屋にいた三原被告を緊急逮捕した。7月24日、Sさんへの死体損壊容疑で再逮捕。8月4日、Sさんへの殺人容疑で再逮捕。
 8月14日より2ヶ月の鑑定留置が実施され、10月、Sさんへの殺人ならびに死体損壊容疑で起訴。11月10日、Mさんへの殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 福岡高裁 岡田信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告側は覚醒罪使用の影響で責任能力は問えないと主張したが、岡田信裁判長は一審同様「刺し傷に乱れはなく、錯乱状態に陥っていたとは認められない」と退けた。刑の重さについても妥当と判断した。
備 考
 2018年3月19日、福岡地裁小倉支部の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2019年6月5日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
宮城慎太郎(38)
逮 捕
 2018年2月10日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 沖縄県石垣市の無職宮城慎太郎被告は2018年2月5日午後4〜5時ごろ、2017年8月まで勤務していた同市の土木会社事務所で、経理担当の女性(当時52)の首などを刃物で複数回刺して殺害し、事務所にあった現金約50万円や預金通帳、バッグを奪った。
 宮城被告は家賃約150万円を滞納していた。5日は会社で従業員へ渡す給料を用意していたが、支給予定の現金は事務所内に残っていた。同日午後6時ごろ、右手をけがした宮城被告が石垣市内の実家を訪れ「包丁でけがをした」などと述べ、薬を塗り包帯を巻いて治療。居住するアパートの管理会社に滞納している家賃の一部として、現金50万円が入った封筒を渡した。
 県警特別捜査本部は10日、強盗殺人容疑で宮城被告を逮捕した。
裁判所
 那覇地裁 柴田寿宏裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月14日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年9月11日の初公判で、宮城被告は起訴事実を認めた。
 12日、検察側は「危険かつ残虐」と無期懲役を求刑した。
 判決で柴田裁判長は「滞納する家賃の支払いに窮したという動機に酌量の余地はない。殺意は強固なもので減刑すべき事案ではない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴しない方針。

氏 名
ケネフ・フランクリン・シンザト(34)
逮 捕
 2016年5月19日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強姦致死(刑法改正で「強制性交等致死罪」に名称変更)、死体遺棄
事件概要
 元米海兵隊員で軍属のケネフ・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告は2016年4月28日、女性を暴行して殺害しようと企て、襲撃用の棒やナイフ、スーツケースなどを車に積み込み、うるま市内で女性を物色。午後10時ごろ、うるま市の路上でウォーキング中の会社員の女性(当時20)を見つけ、人目のない場所にて強姦目的で襲い、頭を背後から棒で殴打。ナイフで首付近を刺すなどして抵抗できない状態にしたが、目的を遂げられず、一連の暴行で女性を殺害した。さらに発覚を免れるため遺体をスーツケースに入れて車に積み、恩納村の雑木林に遺棄して土をかけた。その後、襲撃用の棒や被害者の携帯電話などを近くの川に捨て、スーツケースなどは米軍キャンプ・ハンセンに捨てた。  ケネフ・フランクリン・シンザト被告は2007年に米海兵隊に入隊し2014年まで所属。物資調達や射撃指導に当たり、対テロ戦争への貢献で表彰されたこともあった。沖縄で日本人女性と結婚し、シンザト姓を名乗った。事件当時は、米軍嘉手納基地内のインターネット関連会社に勤めていた。日本語はほとんど話せなかった。妻とは逮捕後に離婚した。
 女性と交際し同居していた男性が、29日未明に職場から「今から帰る」とメッセージを送ると、読まれたことを示すマークが表示されたが、返信はなく、男性が同日、うるま署に届け出た。5月12日、沖縄県警は有力な目撃証言がないなどとして顔写真を公開、情報提供を呼びかけた。
 女性のスマートフォンの位置情報が最後に確認された地域の防犯カメラにはシンザト被告の車両が写り、任意提出を受けた使用車両から女性のDNA型が検出された。5月16日、沖縄県警はシンザト被告を任意で事情聴取。17日午前7時半ごろ、シンザト被告は自殺目的で睡眠薬を大量に摂取、病院搬送された。さらに18日午前11時ごろにも大量のウイスキーを飲んで嘔吐し搬送された。19日、供述に基づき、女性の遺体が発見された。同日、沖縄県警は死体遺棄容疑でシンザト被告を逮捕した。
 カーター米国防長官は21日、中谷元・防衛相との電話会談で、「日本の法体系で対処されることを望む」と伝えた。米側は事件の際に容疑者が「公務外」だったと判断し、日本の刑事手続きに委ねた。日米地位協定では米軍人や軍属による事件や事故が公務中と判断されれば、原則的に米側に第一次裁判権があるとされている。
 沖縄県警は6月9日、殺人と強姦致死の疑いでシンザト被告を再逮捕した。
 シンザト被告の弁護人は7月4日、反基地感情が高まり公平な裁判ができないとして、那覇地裁ではなく、審理を東京地裁に移すよう求める管轄移転請求書を那覇地裁に提出した。8月1日付で最高裁第二小法廷(小貫芳信裁判長)は、被告側の請求を棄却する決定をした。4人の裁判官全員一致の意見。同小法廷は裁判員選任に際し公平性、中立性を確保できるよう配慮されるなど、「適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されている」と指摘。「那覇地裁で公平な裁判が行われることを期待できない事情はない」と退けた。また、千葉勝美裁判官は「沖縄県の特殊事情、県民の思いがあったとしても、公正な裁判を目指すことは十分に信頼でき、これこそが裁判員裁判の制度を支える基礎となる」とする補足意見を述べた。裁判員裁判の管轄移転請求への初判断となる。
裁判所
 福岡高裁那覇支部 大久保正道裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月20日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年7月24日の控訴審初公判で、弁護側は殺人行為を認定した証拠が「スラッパー(打撃棒)以外には被告人の自白しかない」と指摘。スラッパーによる殴打は「人を死亡させる危険性の高い行為であるとはいえない」として、殺人罪認定には事実誤認があると指摘して無罪を主張し、強姦致死などで有期懲役にするよう主張した。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。
 判決で大久保裁判長は、犯行状況などの供述には具体性があると指摘。自白の信用性を認定したうえで、棒で殴るなどの一連の暴行について「常識的にみて被害者を死亡させる危険性が高い行為で、殺意があると判断した一審判決は合理的」と判断した。
備 考
 2017年12月1日、那覇地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
斉藤義伎(24)
逮 捕
 2018年1月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、強盗傷害、窃盗未遂他
事件概要
 斉藤義伎(よしき)被告は2016年10月ごろ、ギャンブルなどで約500万円の借金を抱えていた。消防の仕事を退職し、東京都内に引っ越すも、仕事をえり好みし、困窮していた。斉藤被告は闇サイトで報酬300万円という求人広告を見て、指定された場所に向かい、男と知り合った。男と斉藤被告は2017年2月11日、男の知人男性(当時74)宅に宅配業者を装って侵入。2人は男性に暴行を加え、現金約38万円やキャッシュカードなどを奪った。さらに闇サイトで見つけた無職の男(当時62)と男(当時26)を引き出し役で12〜13日、平塚市内の現金自動出入機(ATM)で現金を引きだそうとしたが失敗した。
 いらだった男は、報酬1000万円を提示し、平塚市に住む女性宅への強盗を持ちかけた。
 斉藤被告は自分の手を汚したくないため、計画の実行役を募集するも、なかなか決まらず、斉藤被告は男から実行役になることを迫られた。斉藤被告は共犯役を求め、再度闇サイトで求人募集し、河島楓被告が連絡してきた。
 斉藤被告と川島被告は2月21日未明、平塚市の女性(当時80)宅に窓ガラスを割って侵入。就寝中の女性の首を絞めて殺害し、現金約20万円を奪った。
 明け方、斉藤被告は接触した男にバッグを渡すと、男は現金を抜き取ってバッグの処分を命じ、報酬は明日渡すとその場を去った。翌日、斉藤被告は男にメールを送るも、送信不能になっており、そのまま男は行方をくらました。
 大田区に住む塗装工の斉藤被告はほぼ「無一文状態」にも関わらず、事件前に約300万円の車を購入しており、殺害直後には販売業者に「車両代を用意できる」と連絡していた。
 22日、病院に行くはずの女性が姿を見せなかったため、病院が茅ヶ崎市に住む長女に連絡。午前11時ごろ、訪ねた長女が倒れている女性を発見し、119番通報。捜査で女性の交通系ICカードが事件後に複数箇所で使われた形跡があったことが判明。神奈川県警は使用場所周辺の防犯カメラや交友関係などを調べた結果、2人が関与した疑いがあると判断した。2018年1月15日、神奈川県警は強盗殺人容疑で斉藤被告と河島被告を逮捕した。また、引き出し役の男2人も逮捕した。2月5日、強盗傷害他の容疑で斎藤被告を再逮捕。
 事件を持ちかけた主犯の男(当時49)は2017年11月に病死。神奈川県警は2018年2月16日、強盗殺人などの疑いで容疑者死亡のまま書類送検した。男は被害者と同じ病院に通っていて、投資話などをめぐって金銭トラブルになっていた。
裁判所
 横浜地裁 青沼潔裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月25日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年9月12日の初公判で、斉藤義伎被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、病死した男がインターネットのサイトで事件の計画を持ちかけて仲間を勧誘したと指摘。借金に苦しんでいた被告は多額の報酬目当てに応じることを決め、さらにネットを通じて河島被告を誘い、実行に移したとし、「闇サイトで知り合った仲間と報酬目当てに計画を練った悪質な犯行だ」と指摘した。弁護側は「従属的な立場で及んだ犯行だ」と述べた。  13日の公判における被告人質問で、男から報酬1000万円で女性の殺害を打診されて承諾したと説明。その後、ネットで実行役の共犯者を探したが見つからず、男から「上の方からも言われていて、やらないとお前の命が危ない」「今日やらないと、お前が死ぬことになる」などと叱責されたとした。男については、「暴力団など『その世界の人』だと思った」と語った。また、報酬の取り分を多くしてもらう代わりに、女性の首を締め付ける役割を申し出たことも証言した。  20日、被害者の娘は「母はまだまだやりたいことがあり悔しかったと思う。 奪われた母の命を実感できるような重い判決を望みます」と厳しい判決を求めた。その後の論告で検察側は、「(病死した男からの)報酬を目的に自らの意思で犯行に加担したことは明らか」と斉藤被告を指弾。実行犯として河島被告を「ネットで誘うなど主体的に関与しており、(病死した)男と同等の責任を負うべき重要な役割を担った」とした。
 弁護側は「(病死した)男の指示なしに遂行できるものではなく、男との関係で明らかに刑事責任の差が認められる」と反論。情状を考慮して刑を軽減する酌量減軽を求めて、有期刑の上限に当たる懲役30年が相当との意見を述べた。
 斉藤被告は最終意見陳述で「私利私欲で女性の命を奪ってしまった。本当に申し訳ない」と謝罪した。
 判決で青沼潔裁判長は、インターネットのサイトで仲間を募り殺害を依頼してきた男からの報酬目当てに被告が計画に加担したと認定。男に脅され、犯行に及ばなければ自身に危害が加えられると主張していたことについては「認定できる」としたが、宅配業者を装う当初の計画が失敗後、ただちに寝込みを襲う計画に切り替えた点も、「強い犯意と計画性が認められる」と指弾。犯行動機についても「報酬目的であり、人命より利欲を優先させる生命軽視の身勝手な動機に基づくもの」と非難。「ネットを通じて実行役の共犯者を募集し、犯行時には被害者の身体を押さえつけるなど、重要で不可欠な役割を担った」とし、無期懲役から減軽する理由はないとした。
備 考
 河島楓被告は 2018年10月22日、横浜地裁で求刑通り一審無期懲役判決。

 控訴せず、確定。

氏 名
中野翔太(34)
逮 捕
 2015年9月12日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、占有離脱物横領
事件概要
 埼玉県警浦和署地域課の巡査部長、中野翔太被告は2015年9月3日午後2時5分ごろ、無施錠の掃き出し窓から、窃盗目的で朝霞市に住む男性(当時58)方に侵入。男性が在宅していたため、殺害して現金を奪おうと、男性の首を縄のようなもので絞めて窒息死させ、現金約121万6千円と記念硬貨123枚(64万7500円相当)を奪った。
 中野被告は朝霞署に勤務していた2014年10月、自宅で死亡した男性の父の遺体を調べるため、他の署員と共に男性宅を訪れ、居間に置かれた金庫の場所を把握していた。
 他に中野被告は7月28日午後、孤独死したとみられるさいたま市南区の男性(84)方を検視で訪れた際、男性名義のキャッシュカード2枚や鍵など13点を持ち去った。
 中野被告は2002年に警察官になった。刑事部門が長く、2011年3月には、県警本部捜査1課の刑事に抜擢されている。捜査で知り合った女性と2014年6月から不倫関係になった。アパートを借りて生活費を負担したが、2015年4月から家賃を滞納するなど困窮するようになった。県警は2015年3月、女性との不適切交際を理由に中野被告を処分し、朝霞署から浦和署に異動させている。中野被告は武蔵浦和駅前交番で勤務していた。
 中野被告は3日は泊まり明けの非番で、4日から10日まで休暇を取っていた。事件後、不倫関係だった女性の賃貸住宅の滞納家賃を払い、7日〜10日は沖縄へ旅行に行っていた。
 男性方のインターホンのカメラに中野被告と似た人物が映っていたことや、同じ日に中野被告が使っている乗用車が男性方の近くに止まっているのが目撃されていたことから、中野被告が浮上した。男性方に残された遺留物のDNA型が同容疑者のものと一致したため、容疑が強まった。県警は9月11日午後、中野被告に任意同行を求めて事情聴取。12日、殺人と住居侵入の疑いで中野被告を逮捕。さいたま地検は10月2日、中野被告を強盗殺人と住居侵入の罪でさいたま地裁に起訴した。県警は同日、中野被告を懲戒免職処分とした。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年10月2日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 埼玉県警は2015年11月10日、本部各課や県内39署などに、モラルや能力の高い若手県警職員の育成を目的とする「絆プロジェクト」に県警全体で取り組むよう通達した。プロジェクトは、若手職員が抱える仕事の問題や、私生活の悩みを上司や同僚が把握して解決を手助けし、仕事に専念できる環境を作り上げることで、不祥事を減らし、県民の信頼を取り戻すことを目的としている。具体的には、職場や県警全体で本人が相談しやすい体制を作る一方、家族用の相談窓口を設け、家族とも連携を図ることにした。職員の仕事や私生活について家族の悩みを迅速に解決できるよう、県警厚生課や委託弁護士への家族専用相談電話を設置。家族に仕事内容を理解してもらい、職員の私生活の悩みを減らそうと、長期勤続や優秀者の表彰に家族を、県警本部長名で招待することにした。
 一審判決後、埼玉県警の佐伯保忠首席監察官は「改めて被害者、ご遺族に深くお詫び申し上げます。判決を厳粛に受け止め、県民の信頼回復に向けて取り組んでまいります」とのコメントを出した。

 2016年12月20日、さいたま地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年7月12日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
河島楓(23)
逮 捕
 2018年1月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、詐欺他
事件概要
 斉藤義伎(よしき)被告は2016年10月ごろ、ギャンブルなどで約500万円の借金を抱えていた。消防の仕事を退職し、東京都内に引っ越すも、仕事をえり好みし、困窮していた。斉藤被告は闇サイトで報酬300万円という求人広告を見て、指定された場所に向かい、男と知り合った。男と斉藤被告は2017年2月11日、男の知人男性(当時74)宅に宅配業者を装って侵入。2人は男性に暴行を加え、現金約38万円やキャッシュカードなどを奪った。さらに闇サイトで見つけた無職の男(当時62)と男(当時26)を引き出し役で12〜13日、平塚市内の現金自動出入機(ATM)で現金を引きだそうとしたが失敗した。
 いらだった男は、報酬1000万円を提示し、平塚市に住む女性宅への強盗を持ちかけた。
 斉藤被告は自分の手を汚したくないため、計画の実行役を募集するも、なかなか決まらず、斉藤被告は男から実行役になることを迫られた。斉藤被告は共犯役を求め、再度闇サイトで求人募集し、河島楓被告が連絡してきた。
 斉藤被告と河島被告は2月21日未明、平塚市の女性(当時80)宅に窓ガラスを割って侵入。就寝中の女性の首を絞めて殺害し、現金約20万円を奪った。
 明け方、斉藤被告は接触した男にバッグを渡すと、男は現金を抜き取ってバッグの処分を命じ、報酬は明日渡すとその場を去った。翌日、斉藤被告は男にメールを送るも、送信不能になっており、そのまま男は行方をくらました。
 河島被告は2017年4〜11月には氏名不詳者と共謀し、キャッシュカードの詐取やだまし取ったカードでの現金引き出しを行った。
 22日、病院に行くはずの女性が姿を見せなかったため、病院が茅ヶ崎市に住む長女に連絡。午前11時ごろ、訪ねた長女が倒れている女性を発見し、119番通報。捜査で女性の交通系ICカードが事件後に複数箇所で使われた形跡があったことが判明。神奈川県警は使用場所周辺の防犯カメラや交友関係などを調べた結果、2人が関与した疑いがあると判断した。2018年1月15日、神奈川県警は強盗殺人容疑で斉藤被告と河島被告を逮捕した。また、引き出し役の男2人も逮捕した。2月5日、強盗傷害他の容疑で斎藤被告を再逮捕。
 事件を持ちかけた主犯の男(当時49)は2017年11月に病死。神奈川県警は2018年2月16日、強盗殺人などの疑いで容疑者死亡のまま書類送検した。男は被害者と同じ病院に通っていて、投資話などをめぐって金銭トラブルになっていた。

裁判所
 横浜地裁 青沼潔裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年10月22日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年10月10日、別件の詐欺事件における初公判で、河島楓被告は起訴内容について「間違いないです」と認めた。
 検察側は冒頭陳述で「消費者金融で借金をし、返済のため手っ取り早く金を得ようと闇サイトを使った。 強盗殺人事件のあとも闇サイトを利用し続け、特殊詐欺事件の受け子などをしていた」と指摘した。 一方、弁護側は「反省を深めている」と主張した。
 11日から強盗殺人事件の審理が始まり、河島楓被告は「間違いないです」と起訴内容を認めた。
 検察側は「300万円の報酬目的で犯行を引き受け、河島被告が被害者の首を手で絞めた。 計画的で動機は悪質」と指摘。 一方、弁護側は、「借金を抱えていて後戻りできなかった。 終始従属的な立場で、反省は深まっている」と主張した。
 12日の後半における被告人質問で、河島被告は、共犯者から持ちかけられた殺害計画に加担した理由を説明。提示された報酬については、コンプレックスを持っていた顔の整形費用に充てるために応じたとした。
 17日の論告で検察側は、報酬目的で面識のない被害者を殺害したと指摘。「計画的で強い犯意に基づく犯行」と非難した。
 弁護側は同日の最終弁論で、従属的だったとして懲役30年が相当と主張した。
青沼裁判長は判決理由で、報酬を高くしてもらう代わりに被告が女性の首を絞める役割を引き受けた点などから、「重要で不可欠な役割を担い、従属的とは認められない」と指摘。「一貫して人命より金銭的利欲を優先させ、甚だ身勝手」と非難した。女性の殺害事件後に、被告が闇サイトを通じて詐欺集団の一員となった点についても、「規範意識が鈍麻している」と述べた。
備 考
 斉藤義伎被告は2018年9月25日、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。控訴せず確定。

 控訴せず確定と思われる。

氏 名
林圭二(46)
逮 捕
 2012年10月26日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 2名(殺人1名、傷害致死1名)
罪 状
 殺人、傷害致死、死体遺棄、窃盗、詐欺、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)
事件概要
 岐阜県美濃加茂市の中古車販売業、林圭二被告は、2003年ごろから春日井市のキャバクラで飲食店で愛知県小牧市出身の飲食店員の女性Aさんと知り合い、2004年7月頃から同居。2005年頃から林被告は、浮気をしたなどと言ってはAさんを長時間罵倒し、殴りつけて骨折などの大けがをさせていた。2006年頃より、林被告は、Aさんに出会い系サイトや映像をインターネットで配信して代金を得る「ライブチャット」をさせて金を稼がせていた。Aさんはトイレにも行かせてもらえず、眠ることも許されないまま監禁されていた。Aさんは2006年に一度、助けを求めて実家に帰ったが、翌日には自ら林被告宅に戻り、その後は林被告が留守にしても逃げ出さなかった。
 2009年7月10日、ライブチャット中にAさん(当時26)が居眠りしたことに腹を立てた林被告は、Aさんを叱責。Aさんは自ら眠らないよう首に鎖を巻いて上から吊すと言った。林被告は女性に「自分でやれ」と言い、Aさんをそのまま放置した。座ると首が絞まる状態で、Aさんは立ち続けられず窒息死した。Aさんからの搾取などで、林被告が手にした金は4000万円余りに及んだ。林被告は元同僚で知人である岐阜県富加町のトラック運転手、W受刑者と共謀し、大型冷凍庫でAの遺体を凍らせ、電動のこぎりで切断して犬山市の山中などに遺棄した。
 その後、林被告は2009年7月〜11年9月、Aさんの口座から約525万円を引き出した。このうちに約470万円については、W受刑者と共謀している。
 林被告とW受刑者は共謀し2011年10月、Aさんの知人男性に、W受刑者がAさんを装って「目の手術費用に困っている」とメールを送り、85万円をだまし取った。
 林被告は2008年頃、一宮市のキャバクラで女性店員Mさんと知り合った。Mさんが2009年に別の店に移籍しても通い続けたが、Mさんの接客態度などに不満を持っていた。その後、Mさんと親しい別の店員に交際を迫ったが断られたため、Mさんが妨害したと邪推。一緒に店に通っていたW受刑者と共謀し、2011年11月24日、愛知県犬山市の駐車場に止めた車の中で、Mさん(当時27)の首を手で絞めて殺害。遺体を美濃加茂市の林被告の自宅に移して業務用冷凍庫に入れ、福井県大野市まで車で運び、九頭竜湖に投げ捨てた。Mさんは2ヶ月後に結婚式が予定されていた。
 Mさんの車は行方不明となった翌日、自宅から約30km離れた同県豊田市の山中で見つかった。ナンバープレートが外され、車体番号も削り取られていた。失踪後、12月初めまではMさんの携帯電話から複数の知人にメールが届いたが、言葉遣いなどが日ごろと違っていた。12月、Mさんの交際相手の男性が愛知県警へ捜索願を出した。
 2012年5月、Mさんの遺体が、福井県の九頭竜湖岸に放置されていた冷凍庫から見つかった。愛知、福井両県警は10月26日、死体遺棄容疑で、林圭二被告とW受刑者を逮捕。11月16日、殺人容疑で再逮捕した。W受刑者は、林被告とともにAさんを山中に捨てたことを自供。2013年2月、犬山市などの山林から人骨とみられる骨の一部が発見された。2013年3月1日、詐欺容疑で両被告を再逮捕。3月22日、窃盗容疑で両被告を再逮捕。さらに同日、不正に得たとみられる総額約3600万円を、自分が管理する口座に移すなどして隠したとして組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の疑いで林被告を再逮捕した。林被告の腕時計の中にあった骨片のDNA型がAさんと一致するなどしたため、2013年10月5日、傷害致死容疑で林被告を再逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 山本庸幸裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2018年10月24日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 4裁判官全員一致の結論。
備 考
 共犯のW受刑者は、Mさん殺害と死体遺棄で2015年3月2日、名古屋地裁で懲役14年(求刑懲役16年)判決。景山太郎裁判長は、W被告が殺人罪などで起訴されている林圭二被告に対して従属する立場だったことを認めたうえで、「関係を断ち切る機会がなかったわけではない」と指摘した。事件の約3カ月前から、殺害方法などについて綿密に打ち合わせるなど「極めて高い計画性」があったとして、「残忍性などを考えると、長期の刑に処するのが相当」と述べた。控訴せず確定。さらにW受刑者は、詐欺と窃盗で4月27日、懲役1年(求刑懲役2年)判決。控訴せず確定。

 一審の初公判から判決までの実審理期間160日間は、2017年11月時点で最長(後に抜かれる)。
 2016年11月2日、名古屋地裁の裁判員裁判で、求刑死刑に対し一審無期懲役判決。検察側は控訴せず。2017年12月4日、名古屋高裁で一審破棄、改めて無期懲役判決。

氏 名
陳春根(47)
逮 捕
 2011年12月27日
殺害人数
 2名(1名は殺人、1名は逮捕監禁致死)
罪 状
 殺人、逮捕監禁致死、監禁傷害、恐喝、監禁、他
事件概要
 兵庫県姫路市のパチンコ店運営会社の実質経営者であった、韓国籍の陳春根(しゅんこん)(日本名:中村春根(はるね))被告は部下の上村(うえむら)隆被告らと共謀し、以下の事件を引き起こした。
  • 陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2009年4月、東京都世田谷区の広告会社社長Mさんを、会議の席上で上村隆被告らが押し掛け連れ出した。そして2010年6月まで、兵庫県姫路市内のマンションや事務所内、倉庫などにMさんを監禁した。
     Mさんの会社は陳被告から10億円の融資を受けていたが、返済は滞っていた。
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2010年6月中旬頃、東京都世田谷区の広告会社社長Mさん(当時50)を兵庫県内またはその周辺で、拳銃を発射するなど何らかの方法で殺害した。遺体は発見されておらず、凶器の拳銃も見つかっていない。(注:本件については無罪判決が出ている
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2010年4月13日、姫路市内に住む元暴力団組員で韓国籍の男性Tさん(当時57)を同市内のパチンコ店駐車場で乗用車に押し込んで拉致監禁し、三木市の倉庫まで走行。その間、車内でTさんの口に粘着テープを張り付けるなどして、Tさんと窒息死させた。Tさんの遺体は見つかっていない。
  • 2009年8月、神奈川県鎌倉市で、東京都世田谷区の広告会社社長Mさんの部下だった男性(当時33)の顔にナイフを突きつけて、車に乗せて連れ回し、顔にけがをさせた。
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2010年8月30日、姫路市内の路上で、陳被告の知人の30代男性を車に押し込み、手錠をかけるなどして三木市内の貸倉庫に連行。9月28日まで監禁した。同じ倉庫に監禁していたSさんが逃げ出したため、監禁の発覚を恐れた陳被告らは男性を解放した。
  •  陳春根被告は複数人と共謀。2010年9月28日朝、兵庫県姫路市の元暴力団組員の作業員Sさんを姫路市内の路上にて車で拉致し、三木市の倉庫で両手首に手錠をかけるなど約9時間監禁し、両手首にけがをさせた。同日、Sさんは逃げ出した。
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2011年2月10日、兵庫県姫路市の元暴力団組員の作業員Sさん(当時37)の自宅マンション前でSさんを連れ去ってトラックに監禁し、首を絞めて殺害。姫路市の路上に止めた保冷車に遺棄した。
     10日午後6時過ぎ、女性の声で「『助けて』という男性の声が聞こえた」と110番があり県警が捜査。11日午後10時20分ごろ、遺体を発見した。
 2011年2月11日、Sさんへの逮捕監禁致傷の容疑で3人を逮捕。3月31日、兵庫県警は別の元会社役員(当時35)への恐喝容疑で陳春根被告や上村隆被告を全国に指名手配した。4月28日、上村被告は、宿泊先の広島市内のビジネスホテルで身柄を確保され、逮捕された。12月27日、陳被告が逮捕された。
 2013年10月23日、県警暴力団対策課などはSさんへの殺人容疑で陳春根被告と、上村隆被告を逮捕した。
 2014年3月6日、県警暴力団対策課などはTさんへの逮捕監禁致死容疑で陳春根被告と上村隆被告、その他3人を逮捕した。
 11月14日、県警暴力団対策課などはMさんへの逮捕監禁容疑で陳春根被告と上村隆被告、その他3人を逮捕した。
 2015年2月18日、県警暴力団対策課などは知人男性への逮捕監禁容疑で陳春根被告と上村隆被告、その他1人(後に起訴猶予)を逮捕した。
 6月10日、県警暴力団対策課などはMさんへの殺人容疑で上村隆被告を逮捕した。10月23日、殺人容疑で陳春根被告を逮捕した。社長の遺体や拳銃は見つかっていないが、社長の生存が長期間確認できないことなどから同課は社長が殺されたと判断した。
 県警と地検は計12回、陳被告を逮捕、起訴している。
裁判所
 神戸地裁姫路支部 木山暢郎裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2018年11月8日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年4月16日の初公判で、陳春根被告は対象7事件の罪状認否で「全ての事件について私は無罪です」と述べた。
 検察側は冒頭陳述で、「自ら経営するパチンコ店の関係者を暴力などで支配し、自分の手を汚さず配下の者に犯行を指示した」とし、被告が事件の首謀者だとする構図を提示。1999年に被告の父親が死亡した傷害致死事件にまつわる怨恨や、被告が広告会社に融資した資金の返済遅れなどのトラブルを事件の原因と主張した。弁護側は冒頭陳述で「監禁や殺害を指示したことはなく、仮に監禁や殺害などが行われたとしても、被告は現場におらず、指示もない。捜査機関は、全事件が被告の首謀と決めつけて捜査をした」と反論。さらに被害者とされる3人中2人の遺体は見つかっておらず、残る1人についても死亡時の状況が明らかになっていないと指摘した。
 4月24日の第6回公判で、遺体が見つかっていない元暴力団組員の男性に対するる逮捕監禁致死事件の審理が始まり、検察側は陳被告が「父の死亡に男性が関わっていると考え、配下の者に犯行を指示した」と指摘。「倉庫内の壁から男性のDNA型と一致する血痕、焼却炉から人骨の可能性がかなり高い骨片が見つかっている」とした。
 10月15日の論告で検察側は、「一時の激情に駆られたのではなく、計画的に殺害したもので悪質性は重大」と指摘。逮捕監禁後に殺害し、遺体を焼却炉で処理するなどしたと訴え、「罪証隠滅を繰り返し、無反省な態度で更生意欲も認められない」「事件の首謀者として、自らの手を汚さず殺害を犯した自己中心的で極めて悪質性の高い犯行」「類例を見ない凶悪性で、極刑以外は考えられない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、男性1人の逮捕監禁の罪については認めた上で「証拠調べの結果などに従えば懲役3年にとどまる」と主張した。
 判決で木山裁判長は、実行犯である上村隆被告に動機がないことなどを挙げ、「陳被告が金銭などで支配関係を築いた配下の者を都合よく利用した。自らは手を汚さずに発覚防止策も準備した」と認定した。2010年に広告会社役員の男性を殺害したとする起訴内容について、客観的証拠がなく「遺体が発見されておらず、凶器とされる拳銃の薬きょうも見つかっていないため、立証されたとは言い難い。殺害行為に及ぶ前に死亡した可能性も否定できない」と述べて無罪とした。作業員殺害については「約1年半前から準備を進めるなど計画性と執念深さは際立つ」と指摘。遺体が未発見の無職男性の血痕と人骨とみられる骨片が三木市の倉庫から見つかったことから「常識に照らすと遺体が倉庫内で処分されたと考えて間違いない」と述べた。他の事件についても有罪と判断した。有罪と判断した2人への殺人・逮捕監禁致死について判決は、被告の父親が被害者となった過去の傷害致死事件にまつわる恨みなどが背景にあったと言及。そして「計画性、執念深さは際立っているが、動機が利欲目的など最も悪質な部類ではない。人間の尊厳を顧みない犯行で刑事責任は極めて重いが、死刑の選択がやむを得ないとまでいえない」と述べた。
備 考
 審理期間は裁判員裁判で過去最長の207日。判決までの公判回数は76回に上る。約120人の証人が出廷した。裁判員6人のうち3人が、途中で辞退を申し出て交代した。暴力団が関係する事件のため、裁判所側は4月の初公判以降、廷内に入る前に必ず荷物検査や身体検査を実施するなど徹底した安全対策を取った。
 共犯の上村隆被告は2018年10月1日、初公判。
 一連の事件で兵庫県警は陳、上村被告のほかに15人を逮捕し、14人は有罪が確定している。

 陳春根被告、逮捕監禁事件で有罪判決が確定した男性元被告2人と弁護人だった弁護士が、違法な捜査で精神的苦痛を受けたとして県と国に計1300万円の損害賠償を求めた訴訟で、2015年10月29日、神戸地裁(伊良原恵吾裁判長)は県警の一部捜査の違法性を認定し、県に87万円の支払いを命じた。国への請求は棄却した。判決によると、県警の捜査員が2011年2月〜2012年1月、逮捕監禁事件などの任意捜査段階で元被告2人を警察署の取調室やホテルに最大4泊5日宿泊させたほか、陳被告の取り調べで「弁護士の言うことを聞いていたら最悪の結果になる」などと発言した。伊良原裁判長は「実質逮捕といえる違法な身柄拘束」と指摘し、発言も「被告を不必要に混乱させ、弁護士との信頼関係の形成を妨害した」と結論づけた。

 検察・被告側は控訴した。

氏 名
原田義人(46)
逮 捕
 2017年8月3日(窃盗容疑)
殺害人数
 0名
罪 状
 強姦致傷、強姦、強姦未遂、住居侵入、窃盗他
事件概要
 三重県鈴鹿市のホンダ従業員原田義人被告は2010年1月〜2017年6月、鈴鹿市や四日市市で1人暮らしをする女性のアパートなどに玄関や掃き出し窓から侵入し、当時17〜42歳の女性計15人に包丁を突きつけて「騒ぐな」などと脅し、強姦などした。強姦致傷3件、強姦10件、強姦未遂2件の罪に問われている。
 2017年8月3日、原田被告は人けのない鈴鹿市内の住宅街を歩いていた。パトカーが通りかかると、一瞬、逃げるような素振りを見せたため、捜査員が職務質問をかけた。鈴鹿署に任意同行された原田被告は、2017年6月12日に鈴鹿市内のサラリーマン(当時31)宅に侵入し、デジタルカメラなど20点を盗んだことを認めた。その後の取り調べで、強姦等についても自供した。原田被告は8月25日付で懲戒解雇となった。
裁判所
 津地裁 田中伸一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年11月13日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年10月30日の初公判で、原田義人被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、原田被告は妻子と普通に暮らしていたが、10年ほど前から小遣い稼ぎのために盗みに入れる家を探して深夜住宅街を徘徊するうちに無施錠の女性宅を見つけ、以前から女性を乱暴するアダルトビデオに興味があったことから侵入し暴行などに至ったと指摘。脅すための刃物や顔を隠すためにかぶるストッキング、拘束用のベルトなどを準備し、侵入する家が見つからないときは屋外や車内などで犯行に及ぶなど、犯行期間の長さや事件件数の多さ、脅すための刃物などを準備した計画性にも言及し、「犯行態様は悪質で結果は重大。再犯の可能性は高い」と主張した。
 弁護側は、「犯行15件のうち2件は未遂。強姦致傷3件についてもけがの程度は比較的軽い」と主張。妻とは離婚し、懲戒解雇により仕事を失うなど社会的制裁を受けて、反省を示しているなどと述べた。
 11月6日の論告で検察側は、事前に刃物や拘束用のベルトなどを準備し、入念な下見をして臨むなど計画的な犯行であり、ほとんどが自宅に侵入して寝込みを襲い、刃物を突きつけて脅迫した危険な態様だとして「陵辱の限りを尽くした犯行で、犯行全体を見ても個々の犯行態様を見ても、他に類を見ないほど悪質な犯行」と指摘。で「15人の被害者は今も精神的肉体的に苦しんでいる」と、被害者に与えた精神的苦痛や生活への影響などは多大で、また約7年半の長期間に多数の被害を重ねたことからも「執拗かつ卑劣。今後同様の犯行に及ばない保証はどこにもない」と再犯の可能性を強調した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「犯行15件のうち2件は未遂で、強姦致傷3件についてもけがはいずれも全治約1週間程度と比較的軽い」と主張。罪を認め反省し、実名報道により離婚して職を失うなど一定の社会的制裁を受けたとして「懲役12年程度が妥当」とした。
 最終陳述で原田被告は、「残りの人生で罪を償えないが、私にできることは刑務所に入ることだけ。その中で残りの人生を過ごしていきたい」と述べた。
 判決で田中裁判長は、約7年半の間の15件の犯行を「裁判員裁判で審理された他の同種事案と比較しても突出して多い」と指摘。各犯行についても「事前に刃物や顔を隠す道具を準備し、一人暮らしの女性宅を捜すなど計画性が高い。暴行や脅迫の態様も、刃物を突きつけて腹部を殴るなど抵抗を抑圧し、自身の性癖を満足させるために執拗な行為に及んだもので陵辱の程度は甚だしい。被害者に与えた恐怖感、屈辱感は想像を絶する。被害者の人格を著しく踏みにじった極めて悪質な部類」と結論付けた。その上で、「強姦致傷3件の傷害結果は重大とは言えないが偶然生じたとは言えず、他の事件でも同様の結果が生じる可能性は十分あった。何の落ち度もない被害者の日常生活を苦難の多いものに一変させた」とし、「事件数は突出していて犯情も特に悪質。同種事案でも最上位に位置付けざるを得ない。極めて悪質で無期懲役を回避する理由がない」と述べた。
備 考
 検察側によると、これまでの裁判員裁判で強姦致傷事件で最も重い刑は、有期刑の上限である懲役30年だった。

 控訴せず確定。

氏 名
石田仁(44)
逮 捕
 2010年8月30日
殺害人数
 0名
罪 状
 住居侵入、強姦、強盗強姦、強盗致傷、逮捕監禁、邸宅侵入
事件概要
 東京都八王子に住む米軍横田基地の職員、石田仁被告は、2008年9月25日未明、八王子市内の女性(当時19)宅に侵入し、ナイフを突きつけて強姦。2009年5月22日にも同じ女性方に侵入し、「ビデオや写真があるからばらまくぞ」と脅して強姦した。
 2009年10月初旬未明、八王子市内のマンションに帰宅した20代の女性宅に侵入し、女性に刃物を突きつけて「カネを出せ」などと脅迫。女性の手足を縛って現金千円や携帯電話などを奪い、強姦した。
 石田被告は2008〜2010年に女性6人に暴行などをしたとして、合計10の罪に問われた。
 2009年10月の事件で、顔の特徴や車の目撃情報などから石田被告が浮上。現場の遺留物と石田容疑者のDNA型が一致したため、捜査本部は2010年8月30日、石田被告を逮捕した。石田被告は2010年9月に起訴された。
裁判所
 最高裁第二小法廷 三浦守裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年11月15日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2016年1月22日、東京地裁立川支部で求刑通り一審無期懲役判決。2017年8月3日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
戸倉高広(39)
逮 捕
 2016年3月12日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、住居侵入
事件概要
 戸倉高広被告は2015年8月25日午前0時50分ごろ、東京都中野区のマンションに帰宅途中だった、アルバイト店員で劇団員の女性(当時25)を見かけ、女性の部屋に侵入。女性を乱暴しようと口を塞いで床に押し倒したところ抵抗されたため、扇風機のコードで首を絞めて殺害した。
 アルバイトを無断欠席したことを不審に思った同僚が中野署に相談し、26日午後10時頃、署員が遺体を発見した。
 捜査本部は顔見知りの犯行との疑いを強めて捜査したが、被害者の爪の中に残っていた微物などから検出された男のDNA型は、生前に交流のあった人物とは一致しなかった。捜査本部は被害者宅から半径500m圏内に住む75歳以下の成人男性に対し、任意のDNA鑑定を実施。さらに、事件直後に現場マンション周辺から引っ越しをするなどしていた複数の人物の転居先を探った。その中の1人が、戸倉被告だった。
 戸倉被告は高校卒業後に上京し、職を転々。事件当時は被害者のマンションから約400m離れたマンションに住んでいたが、被害者との面識はなかった。事件直後の8月末から福島県矢吹町の実家に戻っていた。
 警視庁中野署捜査本部はDNA型が一致したことや、防犯カメラの映像などから2016年3月12日、戸倉被告を殺人容疑で逮捕した。
 東京地検は鑑定留置の結果、刑事責任能力に問題はないと判断し、6月に起訴した。
裁判所
 東京高裁 青柳勤裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月6日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年9月6日、控訴審初公判。
 弁護側は量刑が重すぎることや、被告にわいせつ目的はなく、強制わいせつ致死罪は成立しないことなどを主張した。
 判決で青柳裁判長は、若い女性の後をつけて部屋に侵入したことや被害者の首を締めた後に服を脱がせたことなどから、わいせつの故意があったと認定。幻聴や幻覚の影響があったとする弁護側の訴えも「犯行時には存在しなかった」として退けた。そして「犯情の重大さに照らすと、無期懲役が重すぎるとはいえない」とした。
備 考
 2018年3月7日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2019年4月15日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
元少女(21)
逮 捕
 2015年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、逮捕監禁
事件概要
 千葉県船橋市のアルバイトの少女(当時18)は、住所不定、無職の中野翔太被告、同井出裕輝被告、東京都葛飾区の鉄筋工の少年(当時16)と共謀。2015年4月19日夜、千葉市中央区の路上を歩いている船橋市の被害少女(当時18)に少女が声をかけ、井出被告が運転する車に乗せた。その後、井出被告、中野被告、少女は被害少女に車内で手足を縛るなどの暴行を加え、現金数万円が入った財布やバッグを奪った。さらに20日午前0時ごろ、芝山町の畑に連れて行き、中野被告が井出被告の指示で事前に掘っていた穴に被害少女を入れ、中野被告が土砂で生き埋めにして、窒息死させた。少女の顔には顔全体に粘着テープが巻かれ、手足は結束バンドで縛られていた。
 被害少女と少女は高校時代の同級生。被害少女は高校中退後に家を出て、アルバイトをしながら暮らしており、飲食費などを複数回、逮捕された少女に借りたことがあった。少女は友人から借りた洋服などを返さなかった被害少女に腹を立て、井出被告に相談し、事件を計画。少女は少年にも声をかけ、参加させた。井出被告は中野被告に協力をもちかけ、犯行に及んだ。井出、中野被告は被害少女と面識はなかった。また少年も、井出、中野被告と面識はなかった。
 21日になって船橋東署に「女性が埋められたという話がある」との情報が寄せられたため、事件に巻き込まれた可能性が高いとみて捜査を開始。24日未明までに、車に乗っていた東京都葛飾区の少年と船橋市の少女、中野翔太被告を監禁容疑で逮捕し、井出裕輝被告の逮捕状を取った。そして供述に基づき芝山町内の畑を捜索し、女性の遺体を発見した。同日、井出被告が出頭し逮捕された。5月13日、強盗殺人容疑で4人を再逮捕。
 6月4日、千葉地検は井出被告、中野被告を強盗殺人罪などで起訴。少女を強盗殺人などの非行内容で千葉家裁に送致した。地検は少女に「刑事処分相当」の意見を付けた。少年は共謀関係がなかったとして強盗殺人では嫌疑不十分として不起訴にし、逮捕監禁の非行内容で家裁送致した。千葉家裁は7月17日、少女について、「刑事処分を選択して成人と同様の手続きを取り、責任を自覚させることが適切」として検察官送致(逆送)した。千葉地検は24日、少女を強盗殺人などの罪で千葉地裁に起訴した。
裁判所
 東京高裁 後藤真理子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2017年11月21日の控訴審初公判で、弁護側、検察側双方が証拠調べを求めた。
 被告は「殺害を共謀していない」として強盗罪などが成立するだけだと主張し、殺人について無罪を主張した。
 判決で後藤裁判長は、「借りた卒業アルバムを返さない女性に強く腹を立て、被告が井出被告に殺害を依頼しており、確定的な殺意があった」と一審の未必的な故意ではなく、確定的な殺意を認定。事件前に元少女が「3日後に女性はいなくなる」などと発言していたことを挙げ、「本当に殺すとは思わなかった」とする弁護側の主張は信用できないと退けた。
備 考
 中野翔太被告は2016年11月30日、千葉地裁(吉井隆平裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年6月8日、東京高裁(大熊一之裁判長)で被告側控訴棄却。2017年10月10日、被告側上告棄却、確定。
 井出裕輝被告は2017年3月10日、千葉地裁(吉井隆平裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2018年3月1日、東京高裁(大熊一之裁判長)で被告側控訴棄却。被告側上告中。

 2017年2月3日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2019年6月3日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
冨士田清治(49)
逮 捕
 2016年10月21日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、住居侵入、銃刀法違反
事件概要
 住居不定、無職冨士田清治被告は2016年10月15日夕方、福岡市に住む保育士の女性(当時28)のアパート2階の部屋に窓ガラスを割って盗み目的で侵入。午後7児15分ごろ、部屋の前の通路で帰宅した女性をナイフで刺した。重体となった女性は22日、死亡した。
 現場の鑑識活動や防犯カメラの映像から冨士田被告の関与が浮上。21日午後4時10分ごろ、冨士田被告は福岡・南署に犯人であることを告げる電話をし、約25分後に出頭、逮捕された。女性との面識はなかった。
 冨士田被告は別の事件で服役、出所直後の2004年6月28日午後7時15分ごろ、金品目的で福岡市内のマンションに侵入。物色中に在宅していた女性(当時37)に見つかり、女性の背中をナイフで刺して重傷を負わせ、約3万円の入ったバッグを奪って逃走。2日後に自首。強盗殺人未遂罪で懲役12年の実刑判決が確定した。
 2016年2月に仮出所。NPO法人が運営するホームレス自立支援施設に入所。10月2日に刑期満了し、建設会社で住み込みで働き始めたが1週間後に無断でいなくなり、インターネットカフェで寝泊まりをしていた。
裁判所
 福岡地裁 中田幹人裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月19日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年11月27日の初公判で、冨士田清治被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で事件当時、冨士田被告が別の強盗殺人未遂罪の刑期を終えたばかりだったと指摘。住み込みで働き始めた建設会社を逃走した直後の犯行だったとして「動機、経緯に酌量の余地はなく、更生は困難で再犯の恐れが極めて大きい」と主張した。弁護側は冒頭陳述で「女性ににらみつけられたと感じて立腹し、目を傷つけてやろうと部屋に侵入した」と主張。積極的に殺そうと思っていなかった。社会復帰に失敗した混乱から突発的に犯行を起こしたと強調。更生の望みはあるなどと述べた。
 12月4日の公判で女性の父親は被告に対し「許されるなら、娘が味わった恐怖、苦しみ、痛み以上のものを味わわせたい。二度と社会に戻すべきではない」と語気を強めた。
 同日の被告人質問で、冨士田被告は事件前日に被害者に路上でにらみつけられたと思い「目を切り付けてやろうと思った」と供述。事件当日に被害者宅に侵入し、帰ろうとしたときに帰宅した被害者に抵抗され「ナイフが胸に刺さってしまった」と説明した。過去に起こした強盗殺人未遂事件の服役を終えた直後の犯行だったことについては「自分を中心とした行動しか考えられない。この考えを変える必要がある」などと述べた。女性の遺族には「謝って済む問題ではないが、すいませんという気持ち」と話した。
 5日の公判で検察側は、防犯カメラの映像などから、事件前に冨士田被告と女性が接触した可能性はないとして「わいせつ目的」を追及したが、冨士田被告は否定した。
 6日の公判で冨士田被告は被告人質問で「私自身の勝手な考えで大切な命を奪ったことを申し訳なく思う。更生したい」と述べた。冨士田被告は、事件直前まで入所していた自立支援施設の対応に不満を持ち、関係者を殺害するためにナイフを買ったとも主張した。
 7日の意見陳述で、女性の父親は「極刑を望みます」、母親は「娘を返してください」と涙ながらに訴えた。
 同日の論告求刑で検察側は、「動機について虚偽の供述をし、真摯に反省していない。何の落ち度もない被害者を殺害した結果は重大だ」と主張。「犯行の動機、経緯に酌量の余地はない」と述べ。凶器のナイフが曲がっていたことなどから「強い殺意が認められる」とし「複数の前科で服役してもまた似た罪を犯してきた。出所すればまた同じ罪を犯す危険性が高く、二度と刑務所の外に出すべきではない」と訴えた。
 同日の最終弁論で弁護側は金品目的の犯行ではなく、積極的に殺害するつもりもなかったと主張。被告は本気で更生する意欲もあるとして「1日でも早く社会復帰できるように」と寛大な判決を求めた。
 冨士田被告は最終意見陳述で「被害者や家族に一生消えることのない傷を与えてしまい、本当にすみません。更生できるよう日々努力していきたい」と話した。
 判決で中田裁判長は、防犯カメラの映像などを踏まえ、冨士田被告と女性は事件前に遭遇していないと認定。「女性ににらまれたと感じ、目を傷つけようと侵入した」とする被告側の主張を退けた。仮釈放中に入った自立支援施設の関係者と金銭トラブルになったとも被告は主張していたが、裁判長は「心境は理解できなくはないが、全く無関係の被害者にやいばを向けた犯行は理不尽というほかなく、酌むべき事情はない」と指摘。検察側が強盗や性的行為が動機だったのではないかと推測した点については「動機は不明と言わざるをえない」と述べた。そしてナイフによる傷の深さなどから「強い殺意があった」とも指摘。冨士田被告が別の強盗殺人未遂事件で長期間服役し、刑期が終わった直後だった点にも触れ、「刑期満了からわずか10日余りで再び凶行に及んで人命を奪った点は極めて強い非難が向けられるべきだ」と指弾。「前刑の長期服役中に被害者の視点から内省を深めるなど再犯防止の取り組みを積極的にしてきたとは見えない」と述べ、有期懲役の余地はないとした。その上で「被害者の恐怖や苦痛は計り知れない。遺族が極刑を望むのも当然」としながらも、「計画性があったとは言いがたく、死刑を選択することがやむを得ないとまでは言いがたい。生涯をかけて罪を償うべきだ」と判断した。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
落合和子(43)
逮 捕
 2015年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 栃木県足利市の化粧品販売員、落合和子被告は2015年3月25日、知人で群馬県板倉町に住む40代の女性会社員と共謀し、群馬県内かその周辺で、足利市に住む同業他社の化粧品販売員で知り合いの女性(当時84)の首を絞めるなどして殺害。現金約50万円を奪い、群馬県館林市の川に遺棄した。被害者の女性は落合被告と会う前に自分の口座から現金50万円を下ろしていた。また、女性会社員も自分の預金数十万円を下ろしていた。落合被告は消費者金融などから数百万円の借金があり、奪った金を含む約94万円を同日と翌日、借金の返済に充てていた。
 4月2日、被害者の女性と同じ日に行方不明になった女性会社員の車が千代田町の駐車場で見つかり、車内に被害者の血が付着した衣服や指輪が残されていた。
 4月15日、館林市日向町の多々良川で被害者の遺体が発見された。遺体は頭に枕カバーのような布袋がかぶせられ、首にマフラーのようなものが巻かれていた。翌日、県警が館林署に捜査本部を設置し、被害者を司法解剖するも、死因は特定されなかった。
 6月26日、千葉県我孫子市の利根川で女性会社員の遺体が発見された。7月8日に身元が判明した。死因は水死だった。
 2018年1月24日、群馬県警は死体遺棄容疑で落合被告を逮捕。2月14日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 前橋地裁 鈴木秀行裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月21日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。被害者の死因は明らかになっていない。
 2018年12月5日の初公判で、落合和子被告は強盗殺人罪を「私とは関係ありません」と否認。死体遺棄罪については「手伝ったことはある」と述べ、事件当日に一緒に行動していた別の女性に従属的に関与したと主張した。
 検察側は冒頭陳述で、落合被告は金遣いが荒く、親族や消費者金融から借金をし、働いていた化粧品の委託販売店にも売上金の支払いを迫られていたと説明。仕事仲間だった被害者を殺害して現金を奪う動機があったと指摘し、40代の女性会社員とともに被害者と会った後、殺害して金を奪い、遺体を遺棄したと主張した。この女性の車に被害者の血痕や指輪などがあったが、女性は事件後に千葉県の川で死亡しているのが見つかった。弁護側は、被害者を殺害したのは、この女性だと主張。女性は落合被告の姉の同級生で、落合被告に「超人的な存在」が乗り移ると信じて「ピーチ」「殿下」といった架空の名前で信仰していたと説明した。被害者を殺害したのは、金銭関係の相談をした落合被告と女性に説教したのが原因で、落合被告は死体遺棄を頼まれて手伝っただけだとした。また、落合被告は姉から「お供え」として現金を渡され、「人を殺して奪うほどには困窮していなかった」とも述べた。
 同日の証人尋問では、落合被告の聴取をしていた警察官が出廷。事件発生から逮捕まで約3年を要した捜査について「被告の財務捜査が決め手となった」と述べ、「姉と女性はマインドコントロールされていた」と話した。
 6日の公判で県警の男性捜査員が証人として出廷し、化粧品販売をしていた落合被告が、販売収益を大幅に上回る金額で化粧品を仕入れる機会が多く、仕事を通じて計約900万円の損失を抱えていたことを明らかにした。
 12日と13日に行われた被告人質問で落合被告は、「車で移動中、女性と被害者が言い争いになり、顔などを腕で押さえ込んでいた。その後、被害者が動かなくなった」と話した。さらに、死体遺棄については、「女性に『手伝って』と言われたので、一緒に足を引っ張りました」と話した。一方、検察官から、「なぜ警察に行かなかったのか」と追求されると、落合被告は「女性が『嫌だ』と言った」「自分が疑われるのが嫌だった」と話した。
 14日の論告で検察側は、落合被告が事件後に返済した借金の元手を自ら用意することは不可能だったと指摘。事件当日、被告と一緒に行動していた知人女性は経済的に困窮していなかったなどとして「落合被告が何らかの影響力を利用し、女性に被害者を殺害させたとしか考えられない」とした。被害者の遺体を遺棄した後、女性の車から私物を持ち去るなど「女性の単独犯行に見せかけようとした」と強調。公判などでの供述の変遷は「信用できず、証拠に合わせて話を変えているだけだ」と断罪した。そして、「落合被告には多額の債務があり、被害者を殺害し現金を奪う動機があった。財産目的で命を奪い、物のように川に捨てた悪質な犯行。遺族への謝罪もなく、反省していない」などと述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「当時、落合被告の自宅には現金があり、被害者を殺害して金を奪う必要には迫られていなかった」などとして、強盗殺人罪については無罪を主張した。そのうえで死体遺棄については「被害者を殺害した別の女性に頼まれて手伝った」と述べ、従属的な立場にとどまると主張。「被害者に対して申し訳ないという態度をとっており、前科前歴もない」として執行猶予付きの判決を求めた。
 最後に、落合被告は「誓って人殺しなんかしていません。それだけは信じてください」述べ、遺族らに対し「本当にごめんなさいすみませんでした」と謝罪した。
 判決で鈴木裁判長は、多額の債務を抱えて被告の経済状況は切迫しており、強盗殺人の動機があったと認定。被害者をだまして呼び出し、知人女性の車の中で殺害した上、現金を奪ったと指摘。事件当時一緒に行動していた40代の知人女性の関与も認めたが、動機があったのは被告だけで、「首謀者だった」と結論付けた。また借金の返済に充てられた出所不明の現金94万円は「被害者と知人女性の所持金と強く推認できる」とした。そして、「別の人物を単独犯に見せかけようとしていて悪質性は大きい。謝罪は述べているが、供述を何度も変えるなど信頼できない」と述べた。
備 考
 被告側は即日控訴した。2019年10月10日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
井出裕輝(24)
逮 捕
 2015年4月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、逮捕監禁、強盗強姦
事件概要
 住所不定、無職の井出裕輝被告は、千葉県船橋市のアルバイトの少女(当時18)、住所不定、無職の中野翔太被告、東京都葛飾区の鉄筋工の少年(当時16)と共謀。2015年4月19日夜、千葉市中央区の路上を歩いている船橋市の被害少女(当時18)に少女が声をかけ、井出被告が運転する車に乗せた。その後、井出被告、中野被告、少女は被害少女に車内で手足を縛るなどの暴行を加え、現金数万円が入った財布やバッグを奪った。さらに20日午前0時ごろ、芝山町の畑に連れて行き、中野被告が井出被告の指示で事前に掘っていた穴に被害少女を入れ、中野被告が土砂で生き埋めにして、窒息死させた。少女の顔には顔全体に粘着テープが巻かれ、手足は結束バンドで縛られていた。
 被害少女と少女は高校時代の同級生。被害少女は高校中退後に家を出て、アルバイトをしながら暮らしており、飲食費などを複数回、逮捕された少女に借りたことがあった。少女は友人から借りた洋服などを返さなかった被害少女に腹を立て、井出被告に相談し、事件を計画。少女は少年にも声をかけ、参加させた。井出被告は中野被告に協力をもちかけ、犯行に及んだ。井出、中野被告は被害少女と面識はなかった。また少年も、井出、中野被告と面識はなかった。
 21日になって船橋東署に「女性が埋められたという話がある」との情報が寄せられたため、事件に巻き込まれた可能性が高いとみて捜査を開始。24日未明までに、車に乗っていた東京都葛飾区の少年と船橋市の少女、中野翔太被告を監禁容疑で逮捕し、井出裕輝被告の逮捕状を取った。そして供述に基づき芝山町内の畑を捜索し、女性の遺体を発見した。同日、井出被告が出頭し逮捕された。5月13日、強盗殺人容疑で4人を再逮捕。
 6月4日、千葉地検は井出被告、中野被告を強盗殺人罪などで起訴。少女を強盗殺人などの非行内容で千葉家裁に送致した。地検は少女に「刑事処分相当」の意見を付けた。少年は共謀関係がなかったとして強盗殺人では嫌疑不十分として不起訴にし、逮捕監禁の非行内容で家裁送致した。千葉家裁は7月17日、少女について、「刑事処分を選択して成人と同様の手続きを取り、責任を自覚させることが適切」として検察官送致(逆送)した。千葉地検は24日、少女を強盗殺人などの罪で千葉地裁に起訴した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 深山卓也裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月25日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 中野翔太被告は2016年11月30日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2017年6月8日、東京高裁で被告側控訴棄却。2017年10月10日、最高裁第一小法廷で被告側上告棄却、確定。
 少女は2017年2月3日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2018年12月11日、東京高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。

 2017年3月10日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決2018年3月1日、東京高裁で被告側控訴棄却。




※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」

※入管難民法
 正式名称は「出入国管理及び難民認定法」



【参考資料】
 新聞記事各種



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