平成21年5月、一般の国民が参加する義務を負う、新しい裁判員制度が始まる。有罪か、無罪か。無期か、死刑か――。被告に対しては当然のこと、被害者および関係者の人生をも左右する決断を、否応なく迫られるかもしれない。
本誌に収録された96名の人物は、平成21年3月3日現在における、確定死刑囚(再審請求中含む)である。ひとりひとりの死刑囚は、氏名不詳のA氏でも年齢不詳のB氏でもない、それぞれに顔も名前も意志もある、いまなお生きる人間たちだ。だがしかし、国はいまだ、氏名と断片的な事件の概要を伝えるのみである。顔はおろか、死刑囚が日々どんな生活を送り、どんな心境で生きているのか、公開することはない。顔も知らない「誰か」が、見ることのない「どこか」で、我々の「総意」で、命を絶つことになるのだ。
それで許されるのだろうか――。死刑判決が下され、執行を待っているのは、いかなる人間なのか、そして、最期に何を思うのか。我々にはそれを知る権利があり、また、知る義務もあるはずだ。
各事件の内容、死刑囚の現状については、判決文および公的機関、また民間報道の情報に基づき、本誌独自の調査を加えて構成した。そこには冤罪を訴えている人物らも含まれているが、本誌では一事不再理の原則に準じて、あえて確定した事実として掲載している。死刑そのものの是非もあるだろう。これからの、この国の司法制度を考える上で、ささやかな一石を投じられれば幸いである。
【目 次】
東京拘置所に隠された死刑執行現場の全貌
死刑囚の「デスマスク」
宮崎勤 幼女殺人の全記録
はじめに
(死刑囚96人)
死刑囚の「最期の告白」
この処刑方法で本当に人間は即死するのか?
あなたは法廷で死刑判決を下せるか
死刑をどう考えるか
死刑囚・岡下香が遺したメッセージ
死刑台から生還した男
宅間守の“反懺悔”肉筆手記
麻原彰晃が処刑されない本当の理由
こうして私は死刑囚の息子になった
なにをもって「緊急出版」なのかはわからないが、平成21年3月3日現在における死刑囚96人の罪状と写真が載っている。罪状といっても、書かれていることは事件の概要程度でしかなく、「はじめに」にあるような“本誌独自の調査”がどこなるのかさっぱり分からない。これだったら、インターネットで調べた方が、よっぽど詳しく調べられる。まあ、一冊にまとめたことに意義があるのだろうが。96人中、73人の写真が載っていることが、唯一目新しい点か。以前にあった「FLASH」の特集よりはましかもしれない。ただ、写真をこれだけ大きく引き伸ばさなくても、その分事件の概要とか死刑囚の言い分を載せて上げたら、とは言いたくなるのも事実だが。
死刑囚の「最期の告白」とは、「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が2008年8月から9月にかけて全国の死刑囚105名(当時)にアンケートを送って、77人から回答を得られたものの中から一言を抜粋したもの。アンケートの全文については、死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90編『命の灯を消さないで 死刑囚からあなたへ』(インパクト出版会)に全文が載っているので、そちらを見た方がよい。
笑えるのは「究極の二択!!! 100人に訊きました」だろうか。東京都内の成人男女100人(20〜72歳 平均年齢36.9歳)への本誌街頭アンケート(2009年2月20日〜22日取材)をもとに構成したもの。事件(人物)を知らないと答えた方には、本誌に掲載されている記事および写真を提示した上で他の質問に答えてもらっている。その質問とは次の三つ。
Q1:この事件(人物)を知っている?
Q2:この人物を死刑にすべきだと思う?
Q3:冤罪の可能性があると思う?
このアンケートにどこまで信憑性があるかどうかはさておいて、結果を見るとそれなりに面白い。Q1で「はい」が5割以上を超えている死刑確定囚(以下敬称略)は松本智津夫(100人)、永田洋子、小林薫、小林光弘、上田宜範、端本悟、関光彦、上部康明、前上博、宮前一明、横山真人、造田博、林泰男、八木茂、山地悠紀夫、松村恭造。坂口弘(45人)、奥西勝(12人)、袴田巌(31人)は少なすぎて意外。奥西や袴田はかなり再審絡みで報道されているのだが、普通の人には興味がないということか。逆に石橋栄治の16人、中村喜代司の23人、江藤恒の20人は多すぎてちょっと信じられない。
Q3で「はい」が5割以上を超えていたのは袴田巌、荒井政男、高橋和利の3人。再審請求を出している死刑囚は多いが、概要を見て冤罪じゃないかと疑わしいと感じるのはこの程度ということだろうか。奥西勝の15人というのはちょっと意外だったが。それにしても「はい」が0人という死刑囚がいないことの方が不思議。本人が認めて、物証が残っている事件でも「はい」と答えた人は何を考えていたのだろう。
お手軽な作りではあるが、現時点での死刑囚を知る分にはお手頃なところかもしれない。インターネットでほとんどは検索できるけれど、という但し書きはつくが。
参考websiteにうちのHPを挙げていただき、有り難うございます。事前連絡は何もなかったけれど、そういうものなんだね。昔、別のページが幾つか雑誌に取り上げられたときは、事前に連絡があったけれど。よくかんがえてみると、自分も参考文献を挙げるのに、いちいちその著者に連絡はしないな。
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