第1回(2010年) |
受賞 |
貴志祐介 『悪の教典』 |
サイコホラーであり、超弩級のエンターテインメント。はっきり言って、殺人鬼の話だし、最後は大量殺戮を行うのだから、内容としてはひどいのだが、それでもページをめくる手が止まらないというのは、それだけ読む者の目を惹き付けるだけの内容があるということ。本当にこういう人物がいるんじゃないかと思わせるところに、見事なリアリティがある。ある意味悪夢に近い、強烈な印象を与える、そして忘れられない作品だ。 |
第2回(2011年) |
受賞 |
高野和明 『ジェノサイド』 |
590ページの大作ながら一気に読み進めてしまうストーリー。手に汗握る先の読めない展開、わかりやすく咀嚼されているため思わず読み込んでしまう学術的なストーリーの補強部分、極限に追い込まれた人間たちのドラマ、大きな不安とそれ以上に輝かしい未来を感じさせるラストなど、エンタテインメントとして超一級品。ためらうことなく傑作と言える作品である。 |
第3回(2012年) |
受賞 |
冲方丁『光圀伝』(角川書店) |
未読 |
第4回(2013年) |
受賞 |
伊東潤『巨鯨の海』(光文社) |
未読 |
第5回(2014年) |
受賞 |
荻原浩『二千七百の夏と冬』(双葉社) |
未読 |
第6回(2015年) |
受賞 |
佐藤正午『鳩の撃退法』(小学館) |
未読 |
第7回(2016年) |
受賞 |
塩田武士『罪の声』(講談社) |
31年前の事件の謎に順調に迫っていく展開が、あまりにも都合よすぎ。本文中でも「幸運に恵まれている」などと書かれているが、そんな言葉で済まないほどのラッキーさにげんなりとさせられる。序盤の部分があまりにもまどろっこしすぎて、退屈だった。結局、作者の都合に合わせて書かれた実在事件の「ある真相」でしかなく、作品世界にのれなかった。 |
第8回(2017年) |
受賞 |
池上永一『ヒストリア』(KADOKAWA) |
未読 |
第9回(2018年) |
受賞 |
真藤順丈『宝島』(講談社) |
未読 |
第10回(2019年) |
受賞 |
月村了衛『欺す衆生』(新潮社) |
未読 |
第11回(2020年) |
受賞 |
今村翔吾『じんかん』(講談社) |
未読 |
第12回(2021年) |
受賞 |
米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA) |
なんといっても歴史的に確定した事実の裏側を紐解くその発想にただ脱帽。しかも当時ならではの不可能犯罪と謎解きを絡める本格ミステリとしての面白さ。さらに当時の戦国武将ならではの心根や戦を描き切っているのだから、もはや言うことなし。本当にすごい。歴史上の謎と本格ミステリならではの謎をここまで密接に絡め、そして人物描写や背景描写に優れた作品はないだろう。傑作の一言。作者の代表作になるだろう。 |
第13回(2022年) |
受賞 |
小川哲『地図と拳』(集英社) |
満州を舞台とした群集歴史空想小説。序章から終章までの期間は半世紀以上。様々な人物の視点を通じて物語は進み、様々な立場と思惑と役割が時代を動かしていく。よくぞまあ、これだけのスケールがでかい作品を仕上げることができたものだと素直に脱帽。拳によって地図を書き換えようとする国家や人物が次々と現れてきている2022年の今だからこそ、読まれるべき作品である。 |