無期懲役判決リスト 2022年





 2022年に地裁、高裁、最高裁で無期懲役の判決(決定)が出た事件のリストです。目的は死刑判決との差を見るためです。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントなどでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。



地裁判決(うち求刑死刑)
高裁判決(うち求刑死刑)
最高裁判決(うち求刑死刑)
19(2)
10(1)+1
7(2)

【2022年の無期懲役判決】

氏 名
勝田州彦(43)
逮 捕
 2018年5月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、住居侵入
事件概要
 勝田州彦(くにひこ)被告は2004年9月3日午後、岡山県津山市内で下校途中の小学3年生の女児(当時9)を見つけてわいせつな行為をしようと後をつけ、午後3時15分ごろに女児が帰宅したのを確認。玄関で女児に時間を尋ね、時計を確認しに行ったのを追って居間に侵入した。女児の首を絞めた際に抵抗され、刃物で胸や腹を複数回刺して殺害した。
 午後3時35分ごろ、帰宅した当時高校1年の姉が遺体を発見。事件後、不審者に関する目撃情報などが寄せられたが、容疑者の特定につながる有力な手がかりはなく、捜査は難航していた。岡山県警は最大の懸案事件として、これまでに延べ約6万3千人の捜査員を投入し、捜査を続けてきた。岡山県警が類似の手口の事件を調べる過程で、勝田被告が浮上。2017年9月から大阪刑務所で服役していた勝田被告から任意で事情を聴き、関与をほのめかす供述を行った。2018年2月、岡山刑務所へ移送。2018年5月30日、岡山刑務所で服役中だった勝田州彦被告を殺人容疑で逮捕した。
 6月8日、岡山簡裁の勾留理由開示手続きで、勝田被告は「うその供述をした」と殺害を否認した。13日、岡山簡裁は鑑定留置を決定。15日、岡山県警は供述に基づき兵庫県沖で凶器の刃物を捜索したが、見つからなかった。
 10月30日、鑑定留置が終了。11月2日、岡山地検は刑事責任能力を問えると判断し、殺人、強制わいせつ致死、住居侵入の罪で起訴した。
裁判所
 岡山地裁 倉成章裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年1月6日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。検察側は公判前整理手続きで、勝田州彦被告が自白した際に録音・録画した映像を証拠として認めるよう求めたが、地裁は保留。取り調べのやりとりを書き起こした書面のみを証拠採用する異例の措置を取った。
 2021年10月6日の初公判で、勝田州彦被告は「絶対にそのようなことはしていない。(事件の日は)津山市にも現場にも行っていない」などと無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、勝田被告が下校中の女児の後をつけ、女児宅で時間を尋ねるふりをして侵入したと指摘。「捜査段階で勝田被告は取調官の誘導なく自白したり、事件現場の図面を作成したりしており、それらは客観的な状況と符合している。自白は信用できる」と説明。自分の母親宛てに女児の首を絞めたことを明かす手紙を送っていたほか、勝田被告の供述通りに車を借りていたことが確認されたと説明し、事件当時に車で津山市を訪れたことなども裏付けられたと主張した。否認に転じた後に実施された精神鑑定で鑑定医に犯行を認める説明をしたことや、その後の取り調べでも同様の供述をしていたことを明らかにした。
 弁護側は、逮捕前の刑務所での取り調べが9カ月に渡ったうえ、被告は弁護士を依頼する権利があることを教えられず、精神的に追い詰められた状況で自白をしたこと、被告は自分の発言がどのような意味を持つか判断することができないことなどから「信用性はない」と主張。事件直前に交通事故でけがを負い、「兵庫県加古川市の自宅から津山市までの運転はできなかった」などと事件当日は津山市に行っていないと主張した。また勝田被告が現場の間取りなどを説明できたのは、従来からこの種の事件に関心があり、この事件についても新聞やテレビで見て記憶していたからだと指摘。そして、「「自白」には、犯人しか知り得ない「秘密の暴露」はなく、被告人の話は新聞やテレビで報じられた情報の域を出ず、犯人以外にも語れる内容だ。被告と結び付く現場の遺留品や目撃証言、凶器の発見などがない。客観的証拠が全くないままに有罪とされることは許されない」と述べた。
 検察側は勝田被告が殺害を認めた取り調べの映像について、供述内容を文字化した「反訳書」を証拠提出し岡山地裁に採用された。一方の弁護側は弁護人不在時の供述だとして証拠価値を認めず、「自白」の信用性だけでなく任意性も否定した。
 7日の第2回公判で、被害者の姉が証人として出廷。事件が起きた17年前、自宅で倒れていた妹を見つけた状況などを語った。
 8日の第3回公判で、事件当日、現場付近で不審な男を目撃した女性が証人出廷し、当時を振り返った。事件の直後は県警の似顔絵作成に協力。複数の男性の顔写真を見せられたこともあったが、目撃した男に該当するものはなかったと語った。勝田被告の逮捕前にも、捜査員から男性1人の顔写真を示されたが「『覚えていない』と答えた」と述べた。
 11日の第4回公判で、現場で鑑識活動を行った県警の捜査員の男性が証人出廷し、有力な証拠は得られなかったことを明かした。
 12日の第5回公判で、2017年9月から2018年5月までに任意で勝田被告を計20回取り調べた県警の捜査員の男性2人が証人出廷し、勝田被告が事件への関与をうかがわせる発言を自発的にしたと証言した。勝田被告は当初否定したが、取り調べを重ねるうちに供述が変化し、首を絞めた状況を説明し、現場の周辺や家の間取りも詳しく描き、捜査員は「殺害事件と状況が合致しており、疑いが深まった」と述べた。その上で「こちらから殺害事件の情報は一切与えず、追及もしなかった」とした。一方で供述拒否権については伝えたが、「弁護人を呼べる」「任意なので応じなくてもいい」といった説明はしなかったと語った。
 13日の第6回公判で、前日の証人のうちの1人が出廷。弁護側の質問に対し、供述に基づき、代車を借りたとするレンタカー会社に記録の有無を照会したがデータはなく、防犯カメラ映像や女の子をつける男についても捜査したが、有力な証拠はなかったと話した。また、県警は2018年1月から取り調べの録音・録画を開始。当初から実施しなかった理由について「任意段階では法的義務がなく、初めはそれほど疑いが強くなかったため」と説明した。
 18日の第7回公判で、勝田被告が逮捕前、服役中の刑務所から母親に複数回送った手紙の内容が読み上げられた。母親はすでに死亡しており、この日は検察側が複数の手紙を朗読した。このうち2017年11月15日分には「津山市内で1人で下校する女の子を見つけ、後をつけて家に入った。苦しむ表情が見たくて首を絞めたら、顔が土気色になり慌てて逃げた」と書かれていた。一方で「首を絞める以上のことは誓ってやっていない」「刃物で刺すという悪魔の所業は決してしていない」などと記されていた。
 20日の第8回公判で、女児の母親が証人出廷し、事件当時の状況を振り返った。 午後の公判では、勝田被告の供述に基づき一緒に車で市内を巡った捜査員が出廷した。勝田被告が道案内しながら「首を絞めた女の子の家と似ている」とした民家は、殺害された女児の家だったと証言した。
 22日の第10回公判で、逮捕後に被告を取り調べた警察官が証人出廷し、被告が逮捕後の2018年6月2日に「本当は女の子を刺して殺した」と認める調書に署名・押印したと証言した。これに対し弁護側は、被告が翌3日の接見で「2日の取り調べで話したことは真実ではない」と書いて署名・押印したと説明。弁護側が捜査員に「殺害を認めた理由について被告は何か言わなかったか」と質問すると、「『死刑になるのが怖く、認めれば死刑にならないと思い認めた』と言っていた」と証言した。
 28日の第11回公判で、検察側によって警察や検察の取り調べの録音を文字起こしした書面が読み上げられた。
 29日の第12回公判で、前日に引き続き書面が読み上げられ、勝田被告の供述が変遷した様子を裁判員らに伝えた。起訴直前の同年10月31日の県警の調べで「(女児の)命日が来る度にネットで調べて、自分が犯人とばれていないことを確認して安心していた」と、再び認める趣旨の発言も読み上げられた。またこの日は、勝田被告が自白したとされる6月3日の取り調べ映像を44コマに分割し、静止画で裁判員らに示した。
 11月1日の第13回公判でも、引き続き書面が読み上げられた。勝田被告は殺害を認めた上で、女児の無念や遺族の怒りについては「何も思わない」と応じたことが明らかにされた。
 2日の第14回公判で、事件翌日に女の子を司法解剖した医師が証人として出廷。解剖の結果、死因は首を絞められたことによる窒息及び、胸や腹を刃物で刺されたことによる失血と判断したと証言した。弁護側は反対尋問で、女の子が刺された後に言葉を発することはできるのかと問い、医師は、「言葉を発することはできない。あーとか、うーと聞こえるような発声は少しできた可能性はある」などと証言した。
 5日の第15回公判で、弁護側からの被告人質問が行われた。質問で勝田被告は、女児をつけたりするのかという質問に対し「つけたりします。それだけでも楽しいです。女の子を見るだけでも楽しいです」と話した。事件の前、自宅があった兵庫県から4回ほど車で津山を訪れ、下校中の女の子の後をつけるなどしていたと話す一方で、被害に遭った女の子の家の近くの景色は見たことがないと答えた。また、勝田被告は事件の約1カ月前に兵庫県内で交通事故に遭い、腰やひざを痛めていたため、当時は車で津山まで行くことはできなかったと述べた。犯行を認めたという母親宛の手紙について、勝田被告は「全てうそ、作り話」だとし、「母親と面会した際、『実家に岡山県警の人が来た』と言われた。真犯人を目撃したと言って自分が殺人犯ではないと安心させたかった」と送った理由を語った。また、捜査段階で家の間取り図や自宅周辺の地図を作成したことについては「テレビで情報を得て、その記憶をもとに描いた」「詳しく書くことで現場にいたことや、真犯人を見たことを信用してもらえ、自分への疑いが晴れると思った」などと話した。
 8日の第16回公判でも被告人質問が行われた。勝田被告は、逮捕後に犯行を一度認めた理由について「死刑になるのが怖いと思った」ためだと改めて述べた。その後、再び殺害を認めたことについては、「取り調べの警察官にサービスをしたいと思い、犯人を演じきった」と説明した。女児を4回刺したという供述が実際の傷と一致していることについて、「(捜査員が)2回から5回までを聞いてきたので真ん中をとった」と答えた。公判の最後、勝田被告は「弁護人と相談して完全黙秘することにした」と述べた。裁判官や裁判員からの質問については答えるとしている。
 10日の第17回公判で、検察側からの被告人質問が行われた。検察側は、「捜査段階で「犯行」の態様を詳しく供述した理由」「取り調べを受けたのはテレビの特番を見てから12~13年も経っているのに覚えていたのか?」「女児宅の間取りなどはテレビ番組と同じなのに、なぜ首の絞め方は違うのか」など5つの質問を行ったが、被告は全て無言だった。倉成章裁判長が「答えるつもりはありませんか」と尋ねると勝田被告は、「どんな質問をされても答えるつもりはありません」などと述べた。裁判長は「これ以上の質問は訴訟指揮で許さない」と打ち切った。検察側は異議を申し立てたが、却下された。
 11日の第18回公判で、裁判官や裁判員からの被告人質問が行われた。「テレビ番組の再現VTRでは、犯人役の男が女の子の後ろから首を絞めていた。しかし、勝田被告は、取り調べで、正面から両手で首を絞めたと供述している。なぜそのような供述をしたのか」と問われると、「特に理由はありません。私のストーリーで決めていたからです」などと話した。また、「事件について、様々な情報を得てどう感じていたか」と問われると、「私は犯人ではないのですが、何でこんな事件が起きるんだろうとか、かわいそうだなと思いました」と答えた。「母親を安心させたいなら、なぜ自分はやっていないと本当のことを言わなかったのか」「首を絞めたと手紙に書いたら自分も疑われると思わなかったのか」などと問いには「実家に捜査の手が伸びていると知って怖かった」「殺害はしていないから、そのことを伝えれば大丈夫だろうと思った」などと述べた。
 17日の第19回公判で、被告の逮捕後に精神鑑定を行った医師が証人として出廷。勝田被告は自らが体験したことの記憶力がよいが、抽象的なことを理解するのが苦手で、新聞やテレビなどの断片的な情報から犯行のストーリーを組み立てて供述するのは、困難ではないかと証言した。弁護側は、これまで「医師が精神鑑定で犯人扱いしてきたので、それに合わせた」と主張したが、医師は、勝田被告を犯人とは断定はしていないと否定した。16回に及ぶ本人との面接や、心理・知能検査の結果などから、勝田被告について、「他者へ身体的・精神的苦痛を与えることに性的興奮を覚える性的サディズムや、その対象が年少者に向く、小児性愛などが認められる」と話した。その上で、勝田被告が犯人であると仮定した場合には、「本件犯行は、これらの人格によって全て説明が可能である」と鑑定結果をまとめたと話した。
 18日の第20回公判で、女児の母親が出廷。女児の生前のエピソードや事件前後の状況について答えた。また、勝田被告に対し「本当のことを話して、罪を認めてほしい」「なぜ娘が殺されなければならなかったのか知りたい」「娘のこれからの人生を返してほしい」と語った。検察側から最後に、「犯人にどのような処罰を求めるか」という検察官の問いに対し「娘と同じように苦しんで、同じようにして命をもって償ってほしいです」と訴えた。
 この日の公判では、倉成章裁判長が、逮捕後の取り調べで被告が「自白」したとされる録音・録画の映像について「必要性がない」と述べ、検察側の証拠請求を却下した。
 24日の公判の論告に先立ち、女児の父親が意見陳述し「娘のことを考えない日はなかった。極刑か仮釈放のない無期懲役で、一生苦しんでほしい」と訴えた。
 論告で検察側は、捜査員の証言などから勝田被告は犯行状況や事件があった家の間取り図を誘導なく書いていること、勝田被告の「首を絞めてから4回、女の子を刺した」という供述が死因と一致していることなどから勝田被告の犯行だと主張。捜査員や精神鑑定医の誘導なく自白していて、その内容が客観的事実と一致していることなどから「自白は十分に信用でき、被告が犯人であることは明らかだ」と強調した上で、「生命を奪われた女児の無念は察するに余りある。殺害は犯行が発覚するのを防ぐための身勝手かつ自己中心的な動機によるもので、公判でも反省の情を全く示していない。今後、再犯に及ぶ可能性は極めて高い」などとして、無期懲役を求刑した。遺族感情をふまえ「死刑求刑も考慮したが、ややちゅうちょする点があった」とした。
 被害者参加制度を利用した遺族側の弁護士は死刑を求め、「それがかなわない場合でも最低でも無期懲役を」と述べた。
 最終弁論で弁護側は、「勝田被告は事件に興味を持ち、テレビやインターネットで情報を集めていたため、供述に秘密の暴露はなく、合理性が無いため自白に信用性はない」など主張。さらに、女児の左側から刺したとする検察側の立証と、被告の「上に乗って刺した」との説明が食い違っていると反論。女児があおむけに倒れていたとする供述は、発見時にうつぶせだったとする家族の証言などとも矛盾し、「自白の信用性がないことは明白だ」と強調した。また「虚偽自白」の動機について被告が「警察官へのサービス」と法廷で語ったことも、被告の知能指数(IQ)が知的障害との境界にあることを考慮すれば不自然ではないと述べた。そして「現場に遺留物がなく、目撃証言も無いなど、客観的な証拠が一切なく、犯行を自白した供述のみが証拠であり、有罪ではない」と改めて無罪を主張した。そして自白をもとにした過去のえん罪を挙げ、慎重な判断を求めた。
 最終意見陳述で勝田被告は、「嘘をでっちあげ、ここまで話を大きくしてしまい後悔しています。私は絶対の絶対にやっていない。無実であり潔白です。これは冤罪です」と述べた。
 判決で倉田裁判長は、警察官の取り調べには自白の誘導が見られなかったことを踏まえ、テレビ番組で詳しく触れられていない通学路にある建物を知っていることや、取り調べの際に「首を絞め、刃物を左手で腹に刺し右手に持ち替えて胸を3回刺した」とする自白の内容は遺体の傷の数や形など客観証拠と一致していたことを挙げ、「たまたま回数が当たったとしても、刺し傷の割り振りまでは偶然に偶然が重ならないと当たらず、実際に体験した犯人だからこそ殺害態様を供述できたと考えるのが合理的だ」などとして「有力な客観的証拠はないが自白は信用できる」と有罪を認定した。また、「現場の遺留物など有力な物的証拠が発見されていない」という弁護側の主張については「被告の自白の内容では当然、遺留物が残るとは言えず、必ず物的証拠を発見できるとは言えない」と退けた。その上で、「欲望を満たすための犯行で極めて身勝手と言え、同情の余地はない。何の落ち度もない被害者がかけがえのない人生を奪われた絶望感や、見知らぬ男に刺された恐怖、遺族の悲しみは計り知れない。犯行の事実と向き合って反省する様子がなく、更生の可能性は乏しい」などと述べた。
備 考
 勝田州彦被告は2000年3月13日午後2時50分ごろ、兵庫県明石市内の路上で、下校途中の同市内の小学五年女児(当時11)に自転車で近付て、女児の腹を殴って逃げた。1時間後に暴行容疑で逮捕された。明石市の西部では、1999年5月から2000年2月にかけ、下校途中の小学校高学年の女児らが、銀色の自転車に乗った若い男に頭などを殴られたりする通り魔の暴行事件が十数件起きていた。その後、女児6人の腹部を殴ったり、下腹部を触ったりするなどしたとして暴行や強制わいせつの罪で、保護観察付きの執行猶予判決を受けた。
 勝田州彦被告は2009年9月19日午後0時25分頃、姫路市の路上で、遊んでいた小学1年の女児(当時6)の腹部を素手で殴り、肝臓から出血させるなど6か月の重傷を負わたとして12月6日、傷害容疑で逮捕された。その後、姫路市や三木市、太子町で小学1年~高校3年の少女5人にの腹部をすれ違いざまに殴ったり、ドライバーの先で突いたりしたとして傷害と暴行の罪に問われ、2010年3月30日、神戸地裁姫路支部で懲役4年判決(求刑懲役6年)が言い渡され、おそらく控訴せず確定している。
 勝田州彦被告は2015年5月11日午後4時55分ごろ、姫路市の市道で、近くに住む中学3年の女子生徒(当時14)の胸や腹など5カ所ほどをナイフで刺したり切りつけたりし、殺害しようとして約1カ月の重傷を負わせたとして5月19日、殺人未遂容疑で逮捕された。2016年5月18日、神戸地裁姫路支部の裁判員裁判で懲役12年判決(求刑懲役15年)が言い渡された。控訴し、大阪高裁で懲役10年に減刑され、確定した。

 被告側は即日控訴した。2022年9月28日、広島高裁岡山支部で被告側控訴棄却。

氏 名
山本豊和(38)
逮 捕
 2017年11月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、窃盗
事件概要
 静岡市駿河区の新聞配達員、山本豊和被告は2017年10月5日、静岡市駿河区に住む義理の母親宅で、義母(当時62)の首を圧迫するなどして殺害、現金約300万円を奪った。6日、駿河区の道路わきの草むらに遺体を遺棄した。山本被告は、被害者の次女の夫だった。週3~5日通うほどのパチンコ好きで、仕事で集めた金をパチンコ店につぎ込むこともあり、義母より借金をしていた。また消費者金融から280万円の借金があった。殺人後、退職していた。
 他に山本被告は2016年12月4日午後11時20分ごろから40分ごろにかけて、元勤務先の会社が運営する焼津市のコインランドリーの両替機などから現金約14万円を盗んだ。
 10月5日、同居する男性が深夜に帰宅したところ女性の姿がなく、女性の親族は11日に静岡南署に行方不明届を出し、17日に遺体が見つかった。11月26日、捜査本部は死体遺棄容疑で山本被告を逮捕した。2018年1月28日、強盗殺人容疑で再逮捕した。2月19日、窃盗容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 山口厚裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年1月7日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2021年2月19日、静岡地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2021年9月22日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
国本有樹(36)
逮 捕
 2020年1月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 大阪市住之江区の塗装業、国本有樹被告は、大阪市西成区に住む塗装会社社長の男性(当時41)から借りていた280万円の返済を免れるため、2020年1月22日午後7時50分~同8時10分ごろ、男性の会社事務所で、男性の首などを刃物で複数回刺して殺害した。24日、西宮市の山中に遺体を遺棄した。
 国本被告は男性から仕事を請け負うなどしていた。また家族や友人のためと偽り、男性から借りていた。実際はギャンブル等で借金をしており、他の塗装会社で働いていた際も会社やほかの社員から借金を踏み倒したことがあった。
 22日夜に帰ってくると連絡のあった男性が帰ってこなかったことから、妻が23日午後2時半ごろ、府警に行方不明者届を出した。府警がその後、男性の塗装会社の事務所を調べると、建物の入り口に設置されたシャッター付近で、血が飛び散った痕が残り、事務所近くの側溝にも、血が流れたような痕があった。防犯カメラより不審な車両を確認した。国本被告の軽ワゴン車と似ていたことから、任意で事情聴取するとともに、車を押収。車内から血痕が発見された。さらに国本被告から提出されたスマートフォンを解析したところ、24日朝に兵庫県西宮市内の山中にいたことを示す位置情報の履歴を把握。周辺の防犯カメラを調べたところ、国本被告の車と酷似する車両が写っていた。27日、府警は会社事務所から約30km離れた西宮市内の山中で遺体を発見し、身元を特定した。同日夜、死体遺棄容疑で国本有樹被告を逮捕した。3月4日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 大阪地裁 御山真理子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年1月19日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2021年12月3日、初公判。24日、結審。公判では被告が犯人かどうかが争われた。
 判決で御山真理子裁判長は、被告の携帯電話の位置情報から「被害者の事務所に立ち寄ったと認められ遺棄現場も訪れている。被告が犯人でなければ説明できない」と認定。一定の計画性を認めた上で、首などを刃物で何度も突き刺すという犯行は「執拗で強い殺意があった」と指摘。借金を免れるために恩義がありながら男性を殺害したとして「身勝手な動機に酌むべき余地はない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。

氏 名
川瀬直樹(50)
逮 捕
 2019年1月21日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 東京都足立区の無職川瀬直樹被告は2002年12月21日ごろ、近所の足立区のアパート2階の各部屋の呼び鈴を順次鳴らし、対応した会社員の男性(当時23)の頭や背中を持っていた刃物で切り付けたうえ、室内のフライパンで殴るなどして殺害。財布の中から現金約1万円や商品券十数枚を奪った。男性は千葉県内の実家に帰省する直前で、川瀬被告とは面識はなかった。
 川瀬被告は近所で父親と同居していたが、事件数日前に家を出て、公園で野宿をしていた。奪った金で台東区内のビジネスホテルなどに滞在し、その後は生活保護を申請して同区内のアパートなどで生活していた。
 2018年12月9日、川瀬被告は警視庁浅草署に出頭。現場に残されていた指紋を最新の技術で鮮明化したところ、川瀬被告の指紋と一致した。2019年1月21日、警視庁西新井署捜査本部は強盗殺人などの容疑で川瀬被告を逮捕した。
 東京地検は2月から川瀬被告の鑑定留置を実施。5月17日、強盗殺人と住居侵入の罪で起訴した。
裁判所
 東京地裁 佐伯恒治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年2月2日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年1月24日の初公判で、川瀬直樹被告は「間違いないです」と述べ、起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、川瀬被告は事件の数日前、一緒に暮らしていた父親の社員寮を出て公園で野宿を始めたが、寒さや空腹に耐えかねて強盗を思いついたと主張。現場となったアパートの各部屋の呼び鈴を順次鳴らし、玄関の戸を開けた被害者を襲ったと述べた。奪った現金で食料品を購入するなどしたという。これに対し、弁護側は、川瀬被告が事件から16年がたった2018年12月に警視庁浅草署に出頭し、犯行について自ら話をしたことから、「自首が成立する」として、刑の減軽を主張した。
 26日の公判で論告に先立ち、検察官が殺害された男性の父親の意見を代読。「少しでも償いたいのであればもっと早く自首できた。厳しい処罰を求める」などと述べた。
 論告で検察側は、川瀬被告がアパートの各部屋の呼び鈴を押し、偶然対応に出た被害者の頭部を刃物で切りつけたり、フライパンが変形するまで殴ったりしたと主張。「単身者用のアパートを狙い準備した刃物で犯行に及んだ後、施錠してから逃走するなど計画性は高い。捜査段階と公判で供述も変遷しており信用できない」と指摘。出頭したことについては「事件から長期間が経過した後で、反省していたわけではない」とした。被害者は社会人1年目で、事件当日、実家の母親に電話して帰省しようとしていたところを襲われたとし、「前途を奪った結果は極めて重大だ」と批判した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「事件前から統合失調症の苦しみの中にいたことに加え、後悔から自首し、未解決事件が解決した」と主張。懲役25年が相当と訴えた。
 判決で佐伯裁判長は、野宿生活をしていた被告が寒さと飢えをしのぐために犯行を決意したと指摘。アパートのインターホンを軒並み押し、出てきた被害者をいきなり襲ったとして「金品目当てに人を殺すという人命軽視も甚だしい残虐な犯行だ」と非難した。弁護側が主張した総合失調症の影響については、「直接影響していない」と判断した。そして自首の成立は認めたが、「自首までの期間や経緯などを踏まえると、有期刑に減軽するほどの事情は認められず、斟酌するにも限度がある」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2022年9月29日、東京高裁で被告側控訴棄却。2023年1月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
宍倉靖雄(51)
逮 捕
 2019年8月28日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 千葉県八街市の内装会社社長、宍倉靖雄被告は、四街道市の彫師、S被告、住所不定の内装工、K被告と共謀。2019年1月27日午前5時25分~6時5分ごろ、富津市の浜金谷港の岸壁から、千葉市に住む内装工の男性(当時23)を海に落とし、溺れさせて殺害した。主犯が宍倉被告、殺害の実行犯がS被告、車の運転や釣りに誘うなどがK被告である。2018年8月に男性は後継者と騙され宍倉被告の養子となり、宍倉被告を受取人とした約5,000万円の保険金が掛けられていた。一つは2018年11月、受取人が母親から変更。残り二つは養子縁組後、新たに契約していた。S被告とK被告は宍倉被告の会社の元従業員で、K被告は宍倉被告から借金があった。宍倉被告には会社名義も含めて約1千万円の借金があり、S被告、K被告も数百万円の借金を抱えていた。S被告とK被告は養子縁組届の証人となっていた。
 S被告が「一緒に釣りをしていた人がいなくなった」と110番通報し、木更津海上保安署などが捜索した結果、海底から男性が引き揚げられ、現場で死亡が確認された。しかし、現場は足場が良く、足を滑らせて海に転落したとは考えにくいことなどから県警が捜査。男性に保険金が掛けられていたことなども判明。県警は8月28日、殺人容疑で3人を逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 岡村和美裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年2月16日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 殺人罪で起訴されたK被告は2020年12月16日、千葉地裁(小池健治裁判長)の裁判員裁判で殺人ほう助の罪にとどまるとして、懲役10年判決(求刑懲役15年)。控訴せず確定。
 殺人罪などで起訴されたS被告は2021年7月12日、千葉地裁(友重雅裕裁判長)の裁判員裁判で懲役18年判決(求刑懲役20年)。控訴せず確定。

 2021年3月2日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2021年10月12日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
中村雅満(46)
逮 捕
 2020年4月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強制性交等致死、殺人
事件概要
 住所不定の漁師、中村雅満被告は2020年4月29日朝、福岡市西区の玄界島の廃校となった旧中学校敷地内で、島に住む知人の女性(当時82)の後頭部をコンクリートブロックに打ち付け、首を手やロープで絞めるなどして殺害した。中村被告は玄界島出身で、女性と顔見知りだった。
 旧校舎は、女性が夫(当時82)と暮らす団地から道のりで約500m北にあり、女性は近くの畑で野菜を育てていた。中村被告は事件の数日前、島でワカメの加工作業中に体調を崩した。「新型コロナウイルスに感染したのでは」と周囲に指摘され、知人宅で待機した後、人との接触を避けるために女性の畑近くにある無人の小屋に身を寄せていた。
 同日昼、女性が外出したまま帰宅しなかったため、夫が近所のおいとともに畑周辺を捜索。旧校舎の1階廊下に倒れているのを発見した。
 福岡県警は30日、殺人他の容疑で中村被告を逮捕した。
裁判所
 福岡地裁 鈴嶋晋一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年2月25日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月12日の初公判で、中村雅満被告は起訴内容のうち、殺害については認めた。
 検察側は冒頭陳述で、中村被告は玄界島出身で、現場近くの畑で女性の作業を手伝った際に犯行を考え始めたと指摘。弁護側は、被告は女性から「コロナにかかっているのではないか」と言われたことなどから殺害し、検察側の主張には一部誤りがあるとした。
 16日の論告で検察側は、中村被告が性的暴行の目的で女性を殴ったり複数回首を絞めたりしたと指摘。「極めて執拗かつ残忍な犯行」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、女性に新型コロナウイルスの感染を疑われた被告が怒りで我を失ったためで、性的目的はなかったと主張。反省しているなどとして情状酌量を求めた。
 判決で鈴嶋裁判長は、被告の主張を「不合理な弁解」として退け、「被害者は何の落ち度もないのに、突如として苛烈な暴行を受け続け、命を奪われた。被害者の肉体的・精神的苦痛、無念さは察するに余りある」と指摘。「強固な殺意に基づく極めて執拗かつ残虐な犯行態様で、身勝手な動機である。真摯な反省態度は見られず、認めているとしても責任は重大」と述べた。
備 考
 当初は1月中に判決が言い渡される予定だったが、新型コロナウイルスの濃厚接触者が出て期日が変更になった。

 被告側は控訴した。2022年7月13日、福岡高裁で被告側控訴棄却。2022年10月18日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
安田こずえ(47)
逮 捕
 2020年8月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、死体遺棄
事件概要
 大阪市の無職、安田こずえ被告は、覚醒剤密売グループの仲間である福岡市の無職、M被告、韓国籍で大阪市の解体工、K被告と共謀。覚醒剤の売買をめぐるトラブルから8月5~6日ごろ、安田被告の自宅マンションで、大阪市に住む無職の知人男性(当時40)をビニールひもで緊縛した上で、腰を包丁で何度も刺し、殴る蹴るなどの暴行を加えて死亡させ、現金約20万円入りの財布などを奪った。その後、男性の遺体を東広島市の山林に遺棄した。
 男性は一時期、安田被告のマンションに住み、身の回りの世話をしていた。
 M被告の親族から8月20日、「人を殺して死体を遺棄したと言っている」と府警に相談があった。捜査員が安田被告のマンションでM被告を見つけ、翌21日、覚醒剤取締法違反(使用)容疑で逮捕した。M被告は、「金を貸していた知人に暴行を加えて死なせ、車で運んで遺体を遺棄した」と供述。26日午後、東広島市内の山中の崖の下で、男性の遺体が見つかった。大阪府警は27日、安田被告ら4人を死体遺棄容疑で逮捕した。
 大阪府警捜査1課は11月25日、安田被告、M被告、K被告を強盗殺人容疑で再逮捕した。
 大阪地検は12月16日、安田被告とM被告を強盗致死罪で、K被告を強盗致死ほう助罪で起訴した。
裁判所
 大阪地裁 森島聡裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年2月28日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 初公判2022年1月25日。
 安田こずえ被告は現金などを奪っておらず、手の甲で数回殴っただけで暴行の一部にしか加わっていないなどと起訴内容を否認した。また、酒や睡眠薬の影響で「物事を判断できる状態ではなかった」などと主張した。
 検察側は論告で「安田被告が8時間以上も自ら暴行を続けたほか、共犯者に指示した」と指摘。暴力団関係者と縁を切らないと明言するなど、再犯の恐れが強いと述べた。
 最終弁論で弁護側は、強盗及び殺人を否定し、懲役7年を超えるべきではないと主張した。
 判決で森島聡裁判長は、安田被告の関与を認めた仲間らの供述は具体的で信用できると指摘。安田被告が覚醒剤密売の客を男性に取られたと逆恨みし、共犯の男らに暴行を指示したとした。そして「金を奪う目的があったのは被告のみだった」として、強盗致死罪が成立すると判断するとともに主犯と認定した。その上で「約8時間にわたって暴行を繰り返し、残虐極まりない。被告は不合理な弁解に終始し、反省が見て取れない。酌量すべき事案とは言えない」とした。
備 考
 強盗致死幇助や死体遺棄などの罪に問われたK被告は2021年6月2日、大阪地裁(大寄淳裁判長)の裁判員裁判で懲役8年判決(求刑懲役10年)。控訴せず確定と思われる。
 強盗致死や死体遺棄などの罪に問われたM被告は2021年12月3日、大阪地裁(矢野直邦裁判長)の裁判員裁判で懲役20年判決(求刑懲役22年)。2022年6月3日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

 被告側は控訴した。2022年10月25日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
大城賢誉(39)
逮 捕
 2019年5月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗
事件概要
 沖縄県宜野湾市の大城賢誉被告は2019年3月2日午前0時45分ごろから同2時45分ごろにかけて、宜野湾市に住む接客業の女性(当時32)をドライブに誘って沖縄県読谷村の残波岬に連れ出し、岸壁から突き落として殺害し、キャッシュカードと現金約2,000円入りの財布を盗んだ。そして2日~4日、川崎市の会社員である知人女性と共謀して宜野湾市と北谷町のATMで、キャッシュカードから6回にわたり現金約267万円を引き出した。
 大城被告は職業を転々とし、2019年1月に埼玉県川口市に引っ越して解体工として勤めており、事件当時は実家に戻っていた。事件後、再び川口市に行った。知人女性は嘉手納町にかつて住んでいた。大城被告と被害女性は以前同じ業種に勤めていた知り合いだった。大城被告は消費者金融に借金があった。
 同日午後0時半ごろ。沖合でうつぶせの状態で浮いているところを発見。119番通報で駆け付けた消防隊員がその場で死亡を確認した。
 自殺を図る動機がないなど、死亡に不審な点があったことや銀行から金が引き出されていたことから、沖縄県警と第11管区海上保安本部が捜査。県警は付近の聞き込みや防犯カメラなどで、大城被告と被害女性が事件前に2人でいるところを確認。また大城被告が財布を質店に入れており、その財布から被害女性のDNAが検出された。5月23日、窃盗容疑で大城被告と知人女性を逮捕。6月17日、窃盗容疑で大城被告を再逮捕。7月2日、強盗殺人容疑で大城被告を再逮捕した。
裁判所
 福岡高裁那覇支部 谷口豊裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月3日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年1月21日の控訴審初公判で弁護側は、女性が崖から身を投げて自殺したもので、殺人の実行行為はないとし、無罪を主張した。
 被告人質問で大城賢誉被告は「彼女とは親友だった。強盗もしていないし、殺してもいない。(自死の手伝いを)頼まれたのは事実だが、押していない」などと、一審で主張した嘱託殺人罪を含め全面的に否認。キャッシュカードなどは頼みを一端承諾した際に渡されたが、その後に思いとどまるよう説得もしたとし、転落後に警察や遺族に連絡しなかったことなどは被害者の「思いを酌んだ」と述べた。虚偽の供述をしていた理由は「弔い、償いの気持ちがあった」とした。
 一方検察側は答弁書で、被告の新たな供述は「不自然不合理でおよそ信用性がなく、弁護人の主張を裏付ける証拠も皆無」などと指摘。弁護側の主張で被害者が自死したとする前提については、関係証拠から「被害者には生きていく意欲が見て取れるが、自殺をうかがわせる証拠は皆無で、主張自体が失当」として控訴棄却を求めて、即日結審した。
 判決理由で谷口豊裁判長は、女性が事件直前に買い物や人と会う約束などの予定を立てており、被告の供述以外に自殺をうかがわせるような証拠が見当たらないと指摘。被告が女性の死亡直後から、女性が使っていた口座の残高照会を試みるなどしていたとし「友人が自殺したばかりの者がとる行動として不自然だ。大城被告の控訴審における新たな供述内容は不自然、不合理で信用することができず、採用できない」と指摘し、一審判断に誤りは無いと判示した。
備 考
 大城被告と共謀し、キャッシュカードを使って現金を盗んだとして窃盗の罪に問われた女性は2020年1月28日、那覇地裁(君島直之裁判官)で懲役2年執行猶予4年判決(求刑懲役2年)。控訴せず確定。

 2021年3月26日、那覇地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2022年6月22日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
冨田幸誠(37)
逮 捕
 2019年4月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗
事件概要
 住所不定無職の冨田幸誠(とみた・ゆきのぶ)被告は2019年2月19日午後11時40分ごろから20日午前0時40分ごろまでの間、広島市の元旅館で住宅に住む男性(当時86)の住宅に1階の台所窓から侵入。男性に発見されて首や腹を刃物で突き刺すなどして殺害し、現金約26,000円と、現金約9,000円が入った男性の妻(当時88)の財布を奪った。冨田被告は事件後、県内の病院で左手の親指付近を9針縫う治療を受けた。また逃走中、兵庫県で自転車を盗んだ。
 午前6時半ごろ、起きてきた妻が夫の死体を発見して通報。男性の自宅近くの公園で血痕などが見つかり、男性と冨田被告のDNA型が採取された。22日、広島県警は冨田被告を指名手配。24日、公開捜査に切り替えた。27日、大津市内で自転車に乗っていたところを発見、逮捕された。
裁判所
 広島地裁 杉本正則裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月15日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月21日の初公判で、冨田幸誠被告は自転車を盗んだことを認める一方、「殺害し、金品をとろうとは思っていません。金品をもっては逃げていません」と起訴内容の一部を否認した。
 検察側は、冒頭陳述で、「金品を盗む目的で侵入したが、被害者に気づかれたため殺害した後、物色して現金や財布を奪って逃走した」「刃物で多数回強く刺しており、殺意も強く、経緯にくむべき事情がない。犯行後も窃盗をしながら逃走しており、悪質である」と指摘した。弁護側は「被告は自殺願望を持って被害者の家に侵入。自殺に使えるだろうと台所にあった包丁を手にしたが、予期せず見つかってしまい、『つかまりたくない』という思いからとっさに包丁を振り回してしまった」ことによる事後強盗に当たると主張し、「殺して金品を奪う気はなく、奪ってもいない。未必的殺意にとどまる」と反論した。
 22日の第2回公判における証人尋問では、事件当時自宅にいた男性の妻(公判前に死去)に事情聴取をした警察官が出廷。警察官は事件後、財布を置いていた場所を聞いた際の妻の様子について、「私の時はしっかりされていました」と述べ、「『財布はショルダーバックに入れていたが、事件のあとなくなった』と一貫して答えていた」と証言した。一方弁護側は、「時系列の前後や生年月日を間違えるなど、事実が判然としていなかった」として認知症と診断された妻の聴取内容について、信用性を問う姿勢を見せた。
 3月10日の論告で検察側は「被害者の家の中で見つかった冨田被告の血こんは物色中についたもので、金品を盗む目的で殺害したことは明らか」と非難。「強い力でめった刺しにし、残忍さは際立っている。法廷でも不合理な弁解をするなど真摯な反省はない。他の事件と比較しても例外的に有期懲役とすべき事情は全くない、悪質重大な事件」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「当時、被害者の家に現金と財布があったことは証明されていない」と述べ、現金は奪っていないと主張。「衝動的に殺害してしまったが、行き当たりばったりな行動で、強い殺意は認められない。幼いころから親からの虐待を受けたことで脳の発達が妨げられた影響があった」などとして、「社会の中で更生する機会を与えたい。有期刑が妥当である」と述べた。
 判決で杉本裁判長は「倒れた被害者の首に両手で刃物を深く突き刺してとどめを刺しており、積極的に殺害する意思があった」と強い殺意を認定。金品は奪っていないなどとして有期懲役を求めた弁護側の主張について、現場の床の間の引き出しやハンドバッグの内側などに冨田被告の血痕が付着していたことから「殺害直後に金品がある可能性が高い場所を狙って物色しており、強盗の故意があった」として退けた。そして「自己の欲求のままにギャンブルなどに金を使い、被害者を殺害してまで金品を奪い取ったことは強い非難に値する。動機や経緯にくむべき点は全くない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2022年11月8日、広島高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
小林遼(27)
逮 捕
 2018年5月14日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄、死体損壊、わいせつ目的略取、電汽車往来危険、児童買春・児童ポルノ禁止法違反
事件概要
 新潟市の会社員、小林遼(はるか)被告は2018年5月7日午後3時過ぎ、下校途中で友人と別れ自宅から300m地点を一人で歩いていた小学2年生の女児(当時7)に軽乗用車をぶつけて車に乗せ、駐車場に止めた車内でわいせつな行為をした上、意識を取り戻した女児が大声を上げたため、首を手で絞めて殺害。遺体をJR越後線線路に遺棄し、電車にひかせた。
 同日午後10時半ごろ、新潟市西区のJR越後線小針駅近くで、女児が列車にひかれた状態で死亡しているのが見つかった。新潟県警は殺人・死体遺棄事件として新潟西署に捜査本部を設置。近くに住む小林遼被告を5月14日に死体遺棄、同損壊容疑で逮捕し、6月4日に殺人容疑で再逮捕した。
 他に、2017年11月27日にネットで入手した児童ポルノが入った携帯電話を所持したとされる児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪でも起訴されている。
裁判所
 東京高裁 大善文男裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2022年3月17日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2020年9月24日の控訴審初公判で検察側は、被告が女児を連れ去ったことの発覚を防ぐため、少なくとも5分以上首を絞めて女児を殺害したとして、一審の首を絞めた目的が気絶させるためだったという判決は事実誤認だと異議を唱えた。そして「小林被告は犯行の発覚を防ぐために女の子を殺し、確定的で強い殺意があった。生命軽視の姿勢が顕著で、無期懲役は軽過ぎる」と訴え、一審で事実全体の悪質性について正しく評価していないとして、一審と同じく「極刑をもって臨むほかないことは明らか」と死刑を求めた。
 弁護側は、一審で殺意を認定したのは事実誤認として「殺意やわいせつ行為はなく、傷害致死罪にとどまる。殺人罪は成立せず、有期刑が妥当だ」と減刑するよう求めた。
 2021年3月1日の第2回公判で、司法解剖にあたった医師が検察側の証人として証言した。医師は証人尋問で「(小林被告が女の子の首を絞めた時間について「時間の認定はできない」とした)一審判決には法医学的に誤りがある」として、「少なくとも3分以上、あるいは4分以上首を絞めた」と改めて証言しました。
 9月30日の第5回公判で、小林被告への被告人質問が行われた。小林被告は被告人質問の冒頭で立ち上がり、検察官の横に座る被害者参加代理人や遺族に向かって深々とお辞儀をしながら「このたびは私の身勝手で、巻き込んでしまい、癒えることのない深い傷を残して申し訳ありません!」と謝罪した。
 冒頭で取り調べ時の映像が流され、小林被告は当時「わいせつ行為をしているのは確かだけど、抵抗を思い出せない」と証言。しかし、その後、生前のわいせつ行為を否定した。この日の被告人質問で供述が変わった理由を問われた小林被告は「動かない証拠があると言われ、自分が覚えていないだけでやっているんじゃないかと供述した」と、生前のわいせつ行為について改めて否定した。
 被害者参加人の女児の父親は、事件からの3年半、小林被告やその家族から一度も謝罪の言葉などがなかったことを明かし「本当に償いの気持ちがあるのか」と訴えた。それに対し小林被告は「もっといいものが書けると弁護士に言われ続けていて、届けることができていません」と答えた。一審で裁判長から「毎日、何度でも土下座してください」といわれたにもかかわらず、小林被告は手を合わせるのみで何もしていないことも明らかになった。事件にかかる損害賠償で被告に約8,000万円の支払いが決定しているにもかかわらず、一度も支払いに応じていないことも、また小林被告の家族が何もサポートしていないことも明らかになった。また父親は「事件当日は偶然、通学路で女の子を見付けたのではなく、本当は待ち伏せしていたのではないか」と犯行の計画性についても追及した。これについて小林被告は「自分としてはよく使う道だった」と否定した。また、弁護士から被害者の父親への謝罪を促されると「私の命に代えても一生かけて謝罪をし、償い続けていきます。申し訳ありませんでした。」と謝罪し、土下座をした。
 裁判長から今回の事件の原因について聞かれると、小林被告は「人を人として扱うことがあまりにも低すぎるのが原因だと思います」と答えた。
 12月16日の公判で、被害者参加制度を利用して女児の両親が意見陳述を行った。母親は、被告が事件直前にも別の女子中学生に対するわいせつ事件で書類送検されていたことを挙げ、「人を人と思っておらず、欲望のままに娘を餌食にした」と非難。前回の被告人質問で被告が土下座したことについても「被告の反省ばかりがメディアに取り上げられる。ただ単に刑を軽くしようとしているだけで、怒りがこみ上げた」と切り捨てた。父親は一審判決で犯行の計画性が否定されたことについて、被告が犯行当日に携帯電話の位置情報サービスを切り、児童の帰宅時間帯までコンビニエンスストアで待機していたと指摘。「『殺害の計画性はなかった』は無理がある」と訴えた。13日に被告から「私は加害者として娘さんの最期を覚えている。最期の姿が私の罪だからです」などと書かれた謝罪文が届いたと明かした上で「私は、被告が存在していることが罪だと思っている」などと、改めて死刑を求めた。
 同日、検察側は、「被告には強固な殺意があった。一審の判決は刑の重さの判断を誤っている」として死刑にすべきだと主張した。弁護側は、「被告の反省は、確実に深まっている。彼に生きて償う道を与えて欲しい」として、一審よりも軽い有期の懲役刑にすべきだと主張して結審した。
 判決で大善文男裁判長は、解剖医の証言から「首を絞めた時間は少なくとも3分以上だった」と認定。「被告の行動は場当たり的で、犯行の発覚を防止することと、気絶させることは矛盾しない」と検察側の「強い殺意」という主張を退けた上で「『女児が死ぬかもしれない』という未必的な殺意にとどまるとはいえ、殺意が認められることは明らかだ」と結論づけた。弁護側は、被告が捜査段階で行為を認めたのは捜査官の誘導による「虚偽自白」と主張。判決は、供述が詳細であることなどから「誘導や教示で出るものではなく、短時間で創作できる内容でもない。自発的に発言していると推測される」とし、信用できるとした。大善裁判長は量刑判断について、遺族や検察側が極刑を求めることは理解できるとした上で「殺害動機は犯罪の発覚を免れるために積極的に命を奪おうとしたものではなく、死刑を選択するにあたり重要な要素となる『計画性』が認められず、生命侵害や生命軽視という観点からの非難が一定程度弱まると言わざるをえない。極刑がやむを得ないとまではいえない」とした。過去の裁判員裁判でわいせつ目的殺人の死刑判決がないことも考慮した。弁護側の主張については「必ずしも真摯に反省しているとはいえないと言わざるを得ない。弱者を狙った無差別な事件で、無期懲役の判断は動かない」とした。
備 考
 政府はこの事件を受けて2018年6月、午後3~6時の下校時間帯の見守り活動を強化する「登下校防犯プラン」を新たに策定。新潟市教育委員会も自治体や保護者などで作る防犯マップを市内全学校で更新した。

 2019年12月4日、新潟地裁の裁判員裁判で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。被告側は上告した。検察側は上告せず。

氏 名
佐藤喜人(30)
逮 捕
 2020年12月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強制性交等致死、殺人、窃盗、住居侵入、強制わいせつ、死体遺棄
事件概要
 東京都豊島区の保育士、佐藤喜人被告は2020年9月24日夜、近所のアパートに住む会社員の女性(当時35)宅に無施錠の玄関から侵入。クローゼット内などを物色していたところを女性に見つかったため、「静かにしろ」などと言ってベッドに押し倒し、性的暴行を加えてロープのようなもので首を絞めて殺害したうえ、現金約18,000円が入った財布などを奪った。車で栃木県那須町内にある親戚の別荘地に遺体を運び、27日、裏にある山林に掘った穴に埋めた。女性は一人暮らしで、佐藤被告と面識はなかった。
 11月20日夕、新宿区の路上で、1人で歩いて帰宅中だった女児(当時9)に背後から近づき、体を触った。同日午後7時55分ごろ、埼玉県三芳町内の住宅街の路上で10代の女子高校生の体を触り、約5分後には30代女性の体を触った。3人とも面識はなかった。
 9月25日に会社を無断欠勤して以降、女性と連絡が取れなくなった父親と同僚が交番に相談。周辺の防犯カメラの映像から佐藤被告の関与が浮上。警視庁は12月5日から佐藤被告に任意で事情を聴いたところ、遺体を埋めた場所を供述。捜査で土中から性別不明の下半身とみられる遺体が見つかった。6日、死体遺棄容疑で佐藤被告を逮捕した。2021年1月6日、強盗・強制性交殺人と住所侵入容疑で佐藤被告を再逮捕した。
 27日、小学生の女児に対する強制わいせつ容疑で再逮捕。3月29日、2人の女性に対する強制わいせつ容疑で再逮捕。
裁判所
 東京地裁 坂田威一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月17日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年3月4日の初公判で、佐藤喜人被告は「間違いありません」と起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、「住宅街でわいせつ目的で女性を物色していた」と指摘。「被告は、わいせつな行為をしようと女性の後ろをつけて自宅を特定し、自宅の玄関に鍵が掛かっていないことを確認したうえで、その12時間後に侵入して乱暴し、ロープで首を絞め殺害した」「殺害後女性が失踪したように見せ掛けるため、遺体と一緒に女性の衣類やスマートフォンなどを持ち出してキャリーバッグに入れて運び出し、遺体は車に乗せて那須町にある自身の親族の別荘に運んだ後、近隣の山林に遺棄した」と述べた。弁護側は起訴内容は争わず、裁判員に対し「報道や起訴状をみて強い怒りの感情を抱いたと思うが、そのようなあいまいなもので罪をきめていいのか。被告の罪は決して軽いものではないが、犯行が計画的といえるかなど、先入観を持たずに判断してほしい」と訴えた。
 その後の公判における被告人質問で、動機について「一番は、性的欲求が抑えられなかった」と語った。「離婚し、自暴自棄になっていた時期があった」とも説明。子供との面会ができず、鬱屈した思いを抱えていたという。殺害を決意した理由について「被害者に顔を見られてしまい、右目の下にできものがあるという特徴も見られたと思った」と述べた。
 またわいせつ事件を起こした理由について、「捕まりたくないという気持ちだったが、女性を殺めた罪の意識があり、事件を起こして警察に捕まりたかった。(自首する勇気がなく)被害者が出た方が警察が早く動くと考えた」と打ち明けた。「(保育士として働いており)子供を守る立場でありながら、申し訳ない」と謝罪し、「刑務所には性犯罪の更生プログラムがあると聞いたので参加したい」と述べた。
 9日の公判で論告前に殺害された女性の父親が意見を述べ、「被告人は人間の皮をかぶった悪魔です。絶対に許すことはできません。死刑になるしかないと思います。裁判員には、娘を自分の娘と思って判決を考えてほしい」と訴えた。
 検察側は論告で、「被告は女性を物色した上で、アパートの無施錠を繰り返し確認するなどしていて犯行は計画的。被害者が苦しむことも意に介さず、5分以上も首を絞めて殺害した」と指摘。「一連の犯行態様は、これ以上ないほど悪質。再犯の恐れもあり、反省も認められない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「犯行に計画性はなく、凶器などは用いていない」と述べ、「懲役30年が妥当」と主張した。
 最終意見陳述で佐藤被告は、「長期間刑務所に入ることになると思うが、自分を見つめなおし反省していきたい」と語った。
 判決理由で坂田裁判長は、佐藤被告は性的暴行の発覚を免れるため無抵抗の女性を殺害しており「残忍で身勝手。酌量の余地は全くない」と指弾。「侵入した見ず知らずの男に命まで奪われ、女性の恐怖や屈辱、無念は筆舌に尽くしがたい」と述べた。そして殺害後は失踪したように装うため遺体を遺棄するなど「自己の利益を図るために人の尊厳や生命を顧みない意思決定は厳しい非難に値する」と指摘。「起訴内容を認めている、遺族への被害弁償を用意していることなどを考慮しても、有期刑を選択すべきとは認められない」と結論付けた。
備 考
 被告側は控訴した。2022年9月21日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
内藤昌弘(42)
逮 捕
 2021年5月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂、横領、窃盗、住居侵入
事件概要
 千葉県市原市の無職、内藤昌弘被告は2021年3月3日、同市の質店で、同市に住む叔父(当時74)から借りていた腕時計1本(42万円相当)を売り渡した。
 内藤被告は遊興のため多額の借金があったが、2021年1月末の出勤を最後に配管工を退職。収入がなくなったため、金のネックレスなどを持っていた叔父なら「金を持っていそう」と頼り、ロレックスの腕時計を質入れするため借りた。買い取りの方が高額だったため、質店で腕時計を売った。
 さらに内藤被告は3月31日、叔父方に侵入し、携帯電話やゲーム機など計7点(時価計約9万4千円相当)を盗んだ。ゲーム機1台とゲームソフト5本は、県内のリサイクル店に売った。
 4月30日午後3時ごろ、同市に住む叔父(当時74)方を訪れ、腕時計を返すふりをして叔父の胸を刃物のようなもので刺して殺害。腕時計の返却を免れようとした。さらに制止しようとした叔父の長男(当時42)の胸も刺して、全治1か月のけがを負わせた。
 叔父は内藤被告の叔母の配偶者で、長男は内藤被告の従兄弟に当たる。
 長男は市原署へ通報。署は長男からの証言をもとに、逃走した内藤被告の行方を追い、同日夜、市内で停車中の車に一人でいる内藤被告を発見し、身柄を確保した。内藤被告は容疑を認めたため、5月1日、市原署は長編への殺人未遂容疑で逮捕した。22日、腕時計を売り渡した横領の罪で再逮捕。6月17日、ゲーム機などを盗んだ窃盗と住居侵入の容疑で再逮捕。7月15日、叔父への強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 千葉地裁 岡部豪裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月23日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年3月9日の初公判で、内藤昌弘被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で「腕時計を返すふりをして空の段ボールを持って行き、(叔父が)段ボールに目を落とした際に刃物のようなもので胸を突き刺した」と指摘。制止しようとした叔父の長男ともみ合いになり、胸を刺したとした。
 弁護側は「綿密な計画性はなく、長男への犯行は偶発的」と強調。逮捕当初は正当防衛を主張した被告だが、その後は罪を認めているとして、情状酌量を求めた。
 14日の論告で検察側は犯行態様から「強固な殺意があった」と指摘。借金や退職を家族に打ち明けられず、金欲しさの犯行だったとした上で「体面を守るため他人の生命を奪った自己中心的で身勝手な犯行。悪質で結果は重大」と述べた。
 弁護側は、実父から暴力を受けて育った被告が、初めて触れた温かい家庭を失いたくない思いから犯行に及んだと言及。「謝罪の気持ちを深めており、被害者遺族も一生をかけて償ってほしいと死刑を望んでいない」とした。そして死刑ではなく無期懲役が相当とした。
 内藤被告は最終意見陳述で「この先の人生全てをかけて償いたい」と述べた。
 判決で岡部裁判長は、「内藤被告は多額の借金があるのに後先を考えずに仕事を辞め、その場しのぎの行動を重ねた」「借金返済のために叔父から借りたロレックスの時計の返還を免れるために殺害に及んだ。生活に困窮した被告のために退職記念でもらった大切な高級腕時計を貸し与えた叔父の恩を仇で返す身勝手な犯行だ」と指摘した。その上で「犯行は自己中心的かつ身勝手極まりなく、酌量の余地は全くない。死刑に処すほど重くないが有期懲役刑ほど軽くない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2022年10月21日、東京高裁で被告側控訴棄却。2023年2月1日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
上山亮(43)
逮 捕
 2019年12月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、銃刀法違反、詐欺
事件概要
 東京都板橋区の会社役員、上山亮被告は経営する会社の資金繰りに苦労したため、2019年3月から複数回にわたり、投資運用の目的で仕事上の付き合いがあった浜松市に住む飲食店グループ社長の男性から多額の貸し付けを受けた。投資運用は架空のもので、男性は口座に振り込ませた金を会社の運営費や交遊費に充てていた。利息分を上乗せして返済する契約で、当初は計画通りに支払われたが、10月頃から返済が滞った。神山被告は同年9月23日ごろから10月3日ごろまでの間、借り入れた現金を借金返済などに当てる意思であるのに投資運用で利益を加えて返済するなどと男性にうそを言い、同日に現金1,000万円をだまし取った。神山被告は12月時点で借金と利息分など約3,400万円の債務を負っており、うち約2,200万円の弁済期限が過ぎていた。
 上山亮被告は返済を免れようと12月8日午後9時15分ごろ、社長(当時38)の男性方敷地内に停車中の車内外で社長の胸や首などを包丁で刺して殺害した。上山被告は凶器をその場に捨て、東京から乗ってきた自分の車で逃走した。
 社長は「知り合いの上山が2,000万円返しに来る」と妻に言って自宅の外に出た後、午後9時20分ごろ、血まみれで自宅に戻ってきたため、妻が110番通報。社長は失血死した。静岡県警は上山被告の行方を追い、9日午後0時40分頃、東京都港区新橋の路上で、県警の捜査員がひとりで歩いていた上山被告を発見、殺人容疑で逮捕した。静岡地検浜松支部は後に殺人と銃刀法違反の罪で起訴した。
 2020年2月11日、社長に投資話を持ち掛けて2,700万円をだまし取った詐欺の容疑で上山被告を再逮捕。体調不良で一時釈放され、24日に同容疑で再逮捕。3月13日、静岡地検浜松支部は2019年9月23日ごろから10月3日ごろまでの間、借り入れた現金を借金返済などに当てる意思であるのに投資運用で利益を加えて返済するなどと男性にうそを言い、同日に現金1千万円をだまし取ったとして詐欺罪で追起訴した。同日、殺人罪から強盗殺人罪への訴因変更を静岡地裁浜松支部に請求した。静岡地裁浜松支部は4月23日付で、訴因変更を認めた。
裁判所
 静岡地裁浜松支部 大村泰平裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月25日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月1日の初公判で、上山亮被告は「借金を返済する意思はあった。殺害して返済を免れようとは思っていない」と強盗殺人罪を一部否認した。
 検察は冒頭陳述で、上山被告は男性を含む多数の人から金を借り、自身の借金の返済に充てていたと説明した。事件発生の6日前、男性から返済を強く求められ、その翌日から犯行に必要な物品を購入するなど、殺害の準備を進めていたと明らかにした。そして「多額の借金があり、返済を先延ばしするため嘘を繰り返すなど悪質で、犯行前に着替えるなど計画性もある」と指摘した。
 弁護人は、上山被告の知人から事件直前、借りていた金を上山被告に返すとの趣旨の連絡があり、男性に借金の一部を返済できるめどがあったとした。また、犯行に使用した一連の買い物について、本当に殺害の準備と言えるのかと検察側に反論した。上山被告は「男性に『嫁と子どもを連れに行く』と脅迫され、借金を返済しなければ自分の家族に危害が及ぶ」と考えていたとも述べ、「家族を守るために殺害した。強盗殺人は成立しない」と過剰防衛の成立を訴えた。
 2日の第2回公判で、検察側は事件が起きた日までの上山被告の行動内容などを説明した。検察によると、東京都内で男性から借金返済を求められた翌日の同3日、上山被告は包丁や乗用車の座席に掛ける防水シートを、同6日には犯行時に着ていた黒色のスエット上下をそれぞれ購入した。シートとスエットは事件後、同市天竜区の山林で見つかった。
 7日の論告で検察側は、上山被告は当初、自家用車内での殺害を計画し、血の付着を避けるための座席用防水シート、返り血が目立たない黒色のスウェット上下などを事前に購入していたと主張。「犯行の計画性は高く、何度も強く被害者を攻撃している」と事件数日前には殺害を決意していたと指摘した。上山被告が男性から借金をしていたことについても「短絡的に債務を逃れる目的の犯行で、経緯や動機に酌量の余地はない」とし、強盗殺人は「被害者の口封じで、大変悪質」と主張した。
 同日の最終弁論で弁護側は、凶器の包丁や黒色スウェットのレシートを所持していたことから「計画性があったら破棄するはず」などと主張。「(上山被告は)借金をすぐに返済しなければ、家族に危害が及ぶと考えていた」と過剰防衛の成立を主張した。その上で「債務から逃れるための犯行ではなく、殺人罪の適用で懲役10年が相当」とした。
 上山被告は最終意見陳述で「取り返しのつかないことをした。被害者と家族には心よりおわび申し上げる。自分の家族を守りたい一心だった」と訴えた。
 大村裁判長は判決理由で、被告が知人への貸付金の回収や事業の手数料を「(男性への)返済に充てるつもりだった」と主張したのに対し、「事件当時、知人から返済を受けられると現実的に認識していたとは考えられず、手数料による返済計画も被害者に提示していない」と退けた。その上で「債務の支払いを相当期間免れられるとの認識を持って(男性を)殺害していて、強盗の故意が認められる」と結論付けた。被告が凶器の包丁や、犯行時に着ていた黒色の衣服を事件数日前に購入した点は、「被害者から強く返済を要求されて追い詰められた状態になり、殺害の準備を進めた」と計画性を認めた。そして「被告の不誠実な対応が原因で起きた事件で、だまし取った金額は高い。逃げる被害者を追いかけて突き刺すなど、強固な殺意にもとづく残忍かつ残虐な犯行」と指摘。また、「妻子の身柄を抑える発言が男性からあったこと自体認められず、過剰防衛が成立する余地はない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。

氏 名
安東久徳(55)
逮 捕
 2019年11月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人予備、銃刀法違反、公務執行妨害他
事件概要
 愛知県江南市の無職、朝比奈久徳被告(旧姓)は2019年11月27日午後5時すぎ、兵庫県尼崎市の路上で、指定暴力団神戸山口組の男性幹部(当時59)にが居た飲食店の外から声をかけ、出てきたところ自動小銃で弾丸15発を撃ち、死亡させた。さらにその後、神戸山口組の別の幹部を殺害するため、自動小銃1丁と拳銃1丁、銃弾39発を所持し、京都市南区までレンタカーで向かった。
 事件から約1時間後に京都府警南署員が京都市南区内で酷似した車を発見。職務質問をしようとすると朝比奈被告が署員に拳銃を向けたため、公務執行妨害と銃刀法違反の両容疑で現行犯逮捕した。
 朝比奈被告は山口組傘下組織幹部だったが、山口組で取り扱いが禁じられている覚醒剤に手を染めたとして、2018年12月に「破門処分」を受けたとされる。2019年8月、覚せい剤取締法違反(使用)の罪で岐阜地検に起訴されたが保釈され、11月29日に岐阜地裁で判決が予定されていた。
 殺害された男性は、2018年3月と2019年7月にも棒や傘で襲撃され、指定暴力団山口組系組員らが逮捕されていた。飲食店は男性の息子が経営していた。
 山口組と神戸山口組の対立を巡っては、2019年4月に神戸市の路上で神戸山口組系幹部が山口組系組員に刺されて重傷を負う事件が発生。8月には神戸市の山口組系の組事務所前で組員が銃撃され、10月10日には神戸山口組系組員2人が射殺された(殺人罪で起訴されたM・T被告は、公判前の2020年12月31日に病死、70歳没)。
 11月29日、殺人容疑で朝比奈被告を再逮捕。2020年2月3日、殺人予備で再逮捕。
裁判所
 最高裁第三小法廷 渡邉惠理子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年4月6日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 事件後の2019年12月、山口組と神戸山口組は特定抗争指定暴力団に指定された。
 朝比奈被告の懲役前科は7犯である。

 2021年2月19日、神戸地裁で求刑通り一審無期懲役判決。裁判員裁判の対象からは除外された。被告は、控訴審が始まる前に養子縁組をしたため、姓が変わった。2021年11月29日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
菅井優子(54)
逮 捕
 2019年9月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、非現住建造物等放火、死体損壊、詐欺未遂
事件概要
 名古屋市の会社経営、菅井優子被告は、愛知県知多市で美容院を経営する不倫相手のAT受刑者と共謀。2016年2月6日午後10時18分ごろから55分ごろまでの間、愛知県稲沢市の自宅で、塾講師のアルバイトをしている夫(当時60)の胸を刃物で数回刺して殺害、同13日午後8時45分ごろに夫宅に放火し木造二階建ての母屋と離れ計約220平方メートルを全焼させ、遺体を焼損させた。3月22日、夫の死亡保険金約3,000万円をだまし取ろうと請求したが、保険会社が支払いを保留したため受け取れなかった。
 夫の男性は高校教師などを務め、母親の病死後はしばらく一人暮らしだったが、2015年7月に菅井優子被告と結婚相談所を通じて知り合い結婚。菅井被告は別の男性と離婚し、太陽光パネルの施工会社を経営していた。菅井被告の仕事の関係で、週末だけ一緒に過ごしていた。
 AT受刑者は、愛知県知多市で40年以上美容室を経営してきた。2019年5月には県美容業生活衛生同業組合の副理事長に就任していた。
 県警は当初、事件と自殺の両面で捜査してきたが、遺体の状況などから男性が死亡後に出火した可能性が高いとみて捜査を開始。菅井被告やAT受刑者に事情聴取や家宅捜索を進めた結果、当時の状況などから殺害に関与した疑いが強まったとして、2019年9月18日、殺人容疑で2人を逮捕した。菅井被告は事件後に遺産相続で夫名義の複数の土地を相続し、2019年6月に事件現場の土地を売却した。再婚もし、名古屋市内の訪問介護事業所にヘルパーとして勤務していた。
 稲沢署捜査本部は10月8日、非現住建造物等放火容疑で2人を再逮捕した。名古屋地検は同日、殺人容疑について2人を処分保留とした。名古屋地検は29日、2人を殺人と非現住建造物等放火、死体損壊の罪で起訴した。捜査本部は11月11日、詐欺未遂容疑で菅井被告を再逮捕した。
裁判所
 名古屋地裁 宮本聡裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年4月14日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月15日の初公判で、菅井優子被告は罪状認否で「全て違います」と述べ、無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、菅井被告は2015年に男性と結婚して直後に生命保険に加入させたが、男性が解約する意向を示したのを契機に「殺害して死亡保険金や相続財産を手に入れようと考えた」と指摘。交際していた美容師AT被告に250万円を渡して殺害を依頼し、殺害後は発覚を防ぐために二人で男性宅に放火したと述べた。
 弁護側は「三角関係のもつれから口論となり、男性が持ち出した包丁を奪ったAT被告が突発的に刺した」と主張。当時、3,000万円以上預貯金があった菅井被告は金を必要としていなかったとして、保険金や財産を目当てに殺害するという共謀はなく、保険金も「積極的に請求していない」として、全面的に無罪を訴えた。
 3月17日の論告で検察側は、菅井被告が事件後、男性の預貯金約5,500万円や、所有していた土地全てを相続したと指摘。保険金や財産目当ての犯行だとして「悪質さが際立っている」と非難した。そして「首謀者として、AT受刑者よりも役割は重大だった」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、交際相手だったAT受刑者と口論になった男性が刃物を持ちだし、同受刑者が衝動的に殺害したと反論。殺害や放火について共謀していなかったなどとして、いずれの罪も無罪を主張した。
 判決で宮本裁判長は、交際相手だったAT受刑者に報酬を約束して殺害を依頼、失火を装う犯行計画も一緒に練ったとして「『殺人の着手金を受け取った』とAT受刑者が証言していたことなどから、殺害を依頼していて共謀が成立する」と認定。「保険金など財産目的で人の命を奪う、身勝手かつ悪質な犯行」で「菅井被告は、AT受刑者に報酬を渡して犯行を促し殺害させた首謀者であり、刑事責任は実行犯よりも大きい」と判断した。
備 考
 共犯で殺人他の容疑で起訴されたAT受刑者は2021年2月14日、名古屋地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審懲役30年判決。宮本聡裁判長は首謀者を菅井優子被告だとしつつ、「殺害の実行行為に及び、主体的に犯行に加担した」と量刑理由を述べた。9月28日、名古屋高裁(鹿野伸二裁判長)で被告側控訴棄却。2022年2月21日、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)で被告側上告棄却、確定。

 被告側は控訴した。2022年11月11日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
岩嵜竜也(44)
逮 捕
 2017年7月10日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、死体遺棄、住居侵入
事件概要
 横浜市の派遣社員、岩嵜竜也被告は2017年7月6日、中国籍で飲食店従業員の姉(当時25)と専門学校生の妹(当時22)が住む横浜市のマンションの一室に合鍵を使って侵入。姉妹の首を絞めて殺害後、布団圧縮袋に入れてキャリーバッグに詰め込み、7日に秦野市の山林に遺棄した。
 防犯カメラの映像などから姉の交際相手だった岩嵜被告が浮上。神奈川県警は7月10日に監禁容疑で、11日に住居侵入容疑で岩嵜被告を逮捕。21日、死体遺棄容疑で再逮捕。8月11日、殺人容疑で再逮捕。
 横浜地検は9月1日、岩嵜被告を殺人、死体遺棄容疑などの罪で起訴した。監禁罪については不起訴とした。
裁判所
 東京高裁 細田啓介裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年4月19日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 細田啓介裁判長は「各殺人は強固な殺意に基づき、被害者らの生命を確実に奪おうとする手段によるもの」と指摘。そのうえで、「無期懲役とした判決の量刑が重すぎて不当とはいえない」とした。
備 考
 2018年7月20日、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判で、求刑死刑に対し懲役23年判決。被告側は無罪を主張。判決では凶器が使われていないことから、過去の殺人罪の裁判員裁判の例を考慮すれば死刑や無期懲役の選択は困難と述べ、有期懲役刑の上限の23年を選択した。
 2019年4月19日、東京高裁(中里智美裁判長)で一審破棄、差し戻し判決。量刑検索システムで類似事件での判決傾向を調べる際、一審では「殺人」「単独犯」「凶器なし」の条件でをつけて検索していたが、提示した判例は数例とみられ、すべて親族間での殺害事件だったことから、「経緯や動機にくむべき事情があることが多い親族間の事例と本件とは全く異なる類型」と判断。さらに、姉妹が相当な力で5分程度、首を圧迫されて殺害された点から「凶器を使う場合と比べて危険性に質的な違いはない」と指摘。高裁が凶器の有無を特定せず類似事件での量刑傾向を調べ直したところ、親族間の事例を除くと極刑か無期懲役刑が言い渡されていたとし、「量刑の認定や評価が甚だ不十分」と一審判決を破棄し、差し戻した。
 2020年1月29日、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)で被告側上告棄却、差し戻し確定。5裁判官全員一致の結論。

 2021年9月3日、横浜地裁の差し戻し裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。

氏 名
渋谷恭正(51)
逮 捕
 2015年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、わいせつ目的略取・誘拐、死体遺棄
事件概要
 千葉県松戸市の不動産賃貸業で小学校の保護会長だった渋谷恭正(やすまさ)被告は、小学校の修了式だった2017年3月24日朝、自宅から登校中だった小学3年でベトナム国籍の少女(当時9)を軽乗用車で連れ去り、車内でわいせつな行為をしたうえ、何らかの手段で首を圧迫して窒息させて殺害。遺体を我孫子市の排水路の橋の下の草むらに遺棄した。
 26日朝、遺体が発見され、翌日には茨城県坂東市の利根川河川敷でランドセル発見された。
 千葉県警捜査本部の聞き込み捜査などから、渋谷被告が容疑者として浮上。その後の捜査で、我孫子市の死体遺棄現場の遺留物から採取したDNA型と、渋谷被告のDNA型が酷似していることがわかった。4月14日、死体遺棄容疑で渋谷被告を逮捕。5月5日、殺人他の容疑で再逮捕。
裁判所
 最高裁第一小法廷 深山卓也裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2022年5月11日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告理由にあたる憲法違反などがないとだけ判断した。裁判官4人全員一致の判断。検察官出身で東京高検検事長として控訴審に関わった堺徹判事は審理から外れた。
備 考
 少女の両親は渋谷恭正被告に対して、慰謝料など計約7千万円の損害賠償を求める訴訟を2020年1月23日付で東京地裁に起こした。2021年9月24日、東京地裁(桃崎剛裁判長)は渋谷被告の犯行を認定した上で「卑劣極まりない犯行で、わずか9歳という若さで生命を絶たれた無念さは察するに余りある」とし、請求通り計約7千万円の支払いを命じた。2022年4月22日、東京高裁(中村也寸志裁判長)で被告側控訴棄却。

 2018年7月6日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑死刑に対し一審無期懲役判決。2021年3月23日、東京高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
大城賢誉(39)
逮 捕
 2019年5月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗
事件概要
 沖縄県宜野湾市の大城賢誉被告は2019年3月2日午前0時45分ごろから同2時45分ごろにかけて、宜野湾市に住む接客業の女性(当時32)をドライブに誘って沖縄県読谷村の残波岬に連れ出し、岸壁から突き落として殺害し、キャッシュカードと現金約2,000円入りの財布を盗んだ。そして2日~4日、川崎市の会社員である知人女性と共謀して宜野湾市と北谷町のATMで、キャッシュカードから6回にわたり現金約267万円を引き出した。
 大城被告は職業を転々とし、2019年1月に埼玉県川口市に引っ越して解体工として勤めており、事件当時は実家に戻っていた。事件後、再び川口市に行った。知人女性は嘉手納町にかつて住んでいた。大城被告と被害女性は以前同じ業種に勤めていた知り合いだった。大城被告は消費者金融に借金があった。
 同日午後0時半ごろ。沖合でうつぶせの状態で浮いているところを発見。119番通報で駆け付けた消防隊員がその場で死亡を確認した。
 自殺を図る動機がないなど、死亡に不審な点があったことや銀行から金が引き出されていたことから、沖縄県警と第11管区海上保安本部が捜査。県警は付近の聞き込みや防犯カメラなどで、大城被告と被害女性が事件前に2人でいるところを確認。また大城被告が財布を質店に入れており、その財布から被害女性のDNAが検出された。5月23日、窃盗容疑で大城被告と知人女性を逮捕。6月17日、窃盗容疑で大城被告を再逮捕。7月2日、強盗殺人容疑で大城被告を再逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 三浦守裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年6月22日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 大城被告と共謀し、キャッシュカードを使って現金を盗んだとして窃盗の罪に問われた女性は2020年1月28日、那覇地裁(君島直之裁判官)で懲役2年執行猶予4年判決(求刑懲役2年)。控訴せず確定。

 2021年3月26日、那覇地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2022年3月3日、福岡高裁那覇支部で被告側控訴棄却。

氏 名
宮岡龍治(68)
逮 捕
 2020年9月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗未遂
事件概要
 岡山県高梁市の建築業、宮岡龍治被告は2020年7月16日夜から同17日朝にかけ、近所に住む無職の男性(当時59)を結束バンドで縛りガムテープを顔に巻き、約20m離れた山中に掘った穴に突き落とし土砂で埋めて窒息死させ、男性方で現金約29万円が入った財布とキャッシュカード4枚を奪った。ほかに宮岡被告は9月2日、倉敷市のコンビニエンスストアのATMで男性のキャッシュカードを使って現金を下ろそうとしたが、利用停止措置がとられていて下ろせなかった。
 男性と宮岡被告は近所同士で、足が不自由な男性が通院や買い物で外出する際には宮岡被告が車で送迎するなど良好な関係だったが、2019年ごろ、宮岡被告が男性名義の口座から無断で現金を引き出したとしてトラブルになっていた。
 県内で別に暮らす男性の妹が19日、「数日前から兄と連絡が取れない」と行方不明届を出した。21日昼ごろ、捜索中の高梁署員が山中で埋め戻した痕跡に気付き、22日午前0時25分ごろ、遺体を発見した。
 岡山県警は9月3日、宮岡被告を窃盗未遂容疑で逮捕。24日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 岡山地裁 宇田美穂裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年7月5日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年6月13日の初公判で、宮岡龍治被告は殺害したと認めた上で、強盗目的はなかったと否定したと、起訴内容の一部を否認した。
 検察側は冒頭陳述で、被告は過去に男性の金を盗んでトラブルになり、弁償のため内縁関係にあった女性に借金をしたが、女性から返済を迫られていたと指摘。男性を殺害して金品を奪おうと考えたとして、計画的な犯行で強盗の目的も認められるとした。弁護側は、男性から女性との関係をばかにされるなどして感情を爆発させた末に殺害したと主張。金品を奪うことは殺害の後に思いついたと訴えた。
 21日の論告で検察側は、宮岡被告は当時、ギャンブルや借金返済で金に困っていたと説明。身の回りの世話を通じて男性の預金口座の残高やキャッシュカードの暗証番号を知り、事件前に何度も口座や自宅から現金を不正に得ていたことを踏まえ、多額の貯金を持つ男性を殺害して金を奪おうとしたと指摘。拘束のために結束バンドを用意したほか、男性の生存を装うために「入院します」などとメモを残していたことに触れ、「強固な殺意に基づく残忍な犯行だ」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、生活費は家族が負担していたことなどから「生活に困っておらず、金銭目的で殺害する状況ではなかった。強盗の意思があったと証明されていない」と反論。宮岡被告は殺害の動機は被害者の発言によるもので、身体拘束が発覚することを恐れて偶発的に男性を殺害し、その後に現場を片付ける中で財布などを盗んだとして、殺人罪と窃盗罪にとどまると主張。有期懲役刑が妥当と訴えた。
 判決で宇田裁判長は、「被告は遊興費や生活費、借金返済などで当時、収入以上の支出があった。事件前に何度も被害者の口座や自宅から現金を不正に得ていたことを踏まえ、被告が被害者宅を訪れたのは、金品を奪う目的以外に考え難い。被害者を殺害すれば現金を入手できる上、預金を引き出して使うこともできると考えて犯行に及んだ」とし、強盗殺人罪が成立するとした。そして、「事前に娘にうその行き先を伝える偽装工作を行うなどある程度、犯行は計画的だった」と指摘。そして「体が不自由な被害者を緊縛し、生き埋めにしており、残忍で非道というほかなく、被害者の恐怖や苦痛は察するに余りある。動機は身勝手極まりなく減刑の事情はない」などと述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2023年1月25日、広島高裁岡山支部で被告側控訴棄却。

氏 名
中村雅満(47)
逮 捕
 2020年4月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強制性交等致死、殺人
事件概要
 住所不定の漁師、中村雅満被告は2020年4月29日朝、福岡市西区の玄界島の廃校となった旧中学校敷地内で、島に住む知人の女性(当時82)の後頭部をコンクリートブロックに打ち付け、首を手やロープで絞めるなどして殺害した。中村被告は玄界島出身で、女性と顔見知りだった。
 旧校舎は、女性が夫(当時82)と暮らす団地から道のりで約500m北にあり、女性は近くの畑で野菜を育てていた。中村被告は事件の数日前、島でワカメの加工作業中に体調を崩した。「新型コロナウイルスに感染したのでは」と周囲に指摘され、知人宅で待機した後、人との接触を避けるために女性の畑近くにある無人の小屋に身を寄せていた。
 同日昼、女性が外出したまま帰宅しなかったため、夫が近所のおいとともに畑周辺を捜索。旧校舎の1階廊下に倒れているのを発見した。
 福岡県警は30日、殺人他の容疑で中村被告を逮捕した。
裁判所
 福岡高裁 辻川靖夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年7月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 量刑不当を理由に控訴。2022年6月17日、控訴審初公判で即日結審。
 辻川靖夫裁判長は「一審判決は不合理ではなく、判断に誤りはない」と述べた。
備 考
 2022年2月25日、福岡地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2022年10月18日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
岩崎恭子(47)
逮 捕
 2020年8月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、現住建造物等放火、詐欺未遂
事件概要
 宮城県大崎市の無職岩崎恭子被告は2019年9月16日、当時住んでいた大崎市のアパート2階の自室に放火し、自室と1階の部屋の一部あわせて52m2を焼いた。さらに火災保険金計290万円をだまし取ろうとした。請求を受けた保険会社は、不審に思い保険金を支払っていない。また起訴されてはいないが、それ以前に住んでいた大崎市内のアパートや元の夫と同居していた宮城県加美町の住宅でも、火事で建物が全焼し引っ越している。
 また岩崎被告は2020年1月15日8時45分ごろ、962万円の借金を免れるため、大崎市に住む無職男性(当時72)に睡眠薬を摂取させ眠らせ、男性方の木造平屋住宅と作業小屋に火をつけて計215m2を全焼させ、焼死させた。岩崎被告は男性方から約7km離れたアパートに一人暮らしで、約3年前に共通の知人を通じて男性と知り合い、直後から借金をするようになった。男性の家を週2、3回訪れ、男性の軽乗用車も普段から岩崎被告が乗り回していた。
 事件当日、火が出る直前に岩崎被告とみられる女が、男性宅から立ち去る姿を住民が目撃していた。8月27日、宮城県警は強盗殺人と現住建造物等放火の容疑で岩崎被告を逮捕した。11月27日、現住建造物等放火と詐欺未遂の容疑で再逮捕した。
裁判所
 仙台地裁 大川隆男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年8月10日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年5月30日の初公判で、岩崎恭子被告は「私は放火していません。保険金をだまし取ろうとしたことはありません」と起訴事実を全て否認し、無実を主張した。
 この日は自室への放火と詐欺未遂について審理が行われた。検察側は冒頭陳述で、岩崎被告が2018年頃から200万円以上の借金を抱え、「保険金目当てだった」と指摘。子供が外出して家に1人でいた時に放火したと主張した。弁護側は、天井裏の電気設備などから出火した可能性があると反論し、「全ての事実に争いがある」とした。
 6月27日から強盗殺人事件についての審理が行われた。冒頭陳述で検察側は岩崎被告について「男性から借金返済の督促が厳しくなり、借金を踏み倒すために殺害を計画した」と指摘。さらに岩崎被告は事件の4カ月前に「ばれない殺人」「密室殺人」などとネットで検索していた、男性から検出された睡眠薬は、岩崎被告が処方されたことがある薬と同じ種類だと指摘した。その上で、男性に薬を飲ませ家に火をつけられたのは岩崎被告だけだったと主張した。弁護側は、「被告は男性と愛人関係にあり、借金は贈与と考えるのが自然。目撃者もおらず、直接的な証拠はない。他にトラブルを抱えていた男性が、自分で睡眠薬を飲んで火をつけて自殺を図った」などとして改めて無罪を主張した。  7月20日からの被告人質問で、岩崎被告は男性について「亡くなる1年前から『脅されている、死にたい』などと言い、自殺をほのめかしたことも何度もあった」と説明。その上で、男性が自ら「火をつけてしまったと思っている」と主張した。一方、事件前にインターネットで「ばれない殺人」「密室殺人」などと入力し、映像を検索していたことを検察側に指摘されると、「検索した記憶はありません」と否定した。また、男性への借金については、「『返せるなら返して』と言って笑っていたので、返さなくていいという認識だった」と話し、動機にはなり得ないと主張した。
 27日の論告で検察側は、男性が家族と旅行の計画を立てていたことや、火災直前に建具修理を依頼したことなどから自殺の可能性を否定、さらに「放火した1月中に59万円の借金返済期限を迎えていた」と岩崎被告に動機があったと指摘。そして「火が出たとされる時間帯、住宅には被害者と岩崎被告しかおらず被告以外に犯行を行なうのは無理だった」とした。さらに「睡眠薬を気づかせることなく接種させ、生きたまま焼き殺すという計画的犯行で、残虐としか言えない。借金を踏み倒すためという動機も身勝手だと主張、酌量の余地はない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「借金を踏み倒すために債権者を殺害しようとまで考えるというのはあまりに大きな飛躍」と反論。そしてたばこの不始末による火災や自殺の可能性は捨てきれず、目撃者や岩崎被告が放火したという直接的な証拠は一切なく、検察側の立証は不十分であるとして、改めて無罪を主張した。
 最終意見陳述で岩崎被告は「私は男性を殺していないし、殺そうとも思っていませんでした」と涙ながらに述べた。
 判決で大川隆男裁判長は、発生場所などから火災は放火であると認定。被害者が事件直前に自宅の修理を依頼していることなどから「これから放火する建物の修理を依頼する者はいない」と述べ、さらに遺体発見場所と出火場所が離れていることなどから「被害者自身による放火の可能性はない」と判断し、目撃者の証言などから第三者の関与も否定した。そして出火時刻から、犯行に及ぶことができたのは岩崎被告のみであったと認定。そして岩崎被告が被害者から債務返済を求められていたことを発端として岩崎被告が被害者に対する「反感・憎しみ、幻滅などを募らせ、殺害を決意した可能性がある」とした。その上で、「睡眠薬で眠らせてから火をつけるなど危険な犯行態様で計画性もある。返済のあてもなく借金を重ね、身の丈に合わない生活を続けて浪費した末に、借金を免れようと殺害した犯行動機は身勝手でずるいとしか言いようがなく、酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 2022年6月20日の裁判員裁判における中間論告・弁論公判で、男性裁判員1名が審理中に居眠りをしていびきのような音がしたため、審理が約15分、中断された。弁護側は同日、地裁に解任請求を申し立てた。主任弁護人の斎藤拓生弁護士は「人の人生がかかっている問題に裁判員が耳を傾けないのは、裁判員制度の根幹に関わる問題。看過できない」と話した。男性裁判員は同日、地裁に辞任を申し入れた。裁判員法に基づき、地裁は同日付で解任を決定した。公判では補充裁判員が充てられた。

 被告側は控訴した。

氏 名
鈴木敬斗(19)
逮 捕
 2022年3月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗
事件概要
 福島県矢祭町に住む建築板金業の鈴木敬斗被告(事件当時19)は2022年2月9日午後11時45分頃~10日午前0時15分頃、現金を盗む目的で、塙町に住む祖母(当時75)方に侵入。祖母に見つかったことから鉄パイプで頭を十数回殴り、キャッシュカードなどを奪ったほか、同10日から16日にかけて計18回にわたり茨城県などのATMで現金合計300万円を引き出した。祖母は10日朝に見つかり病院に運ばれたが、出血性ショックで死亡した。
 鈴木被告は中学卒業後に親元を離れ、事件当時は建築板金業の個人事業主として働きながら生計を立てていた。
 3月1日、棚倉署捜査本部は祖母名義名義のキャッシュカードを使用し、ATMで現金50万円を引き出した窃盗容疑で鈴木被告を逮捕。22日、強盗殺人と住居侵入容疑で再逮捕。
 福島地検郡山支部は4月13日、鈴木被告を強盗殺人、窃盗、住居侵入の非行内容で福島家裁郡山支部に送致した。家裁支部は同日、2週間の観護措置を決定した。
 福島家裁郡山支部は5月9日、鈴木被告の少年審判を開き、検察官送致(逆送)を決定した。池上弘裁判官は「安易に金を得たいという思いから、周囲に人家がなく人目が付きにくい祖母方に侵入した」と指摘。また、鈴木被告が祖母の死亡を知った後も現金を引き出し、交際相手へのプレゼント購入など1カ月もしないうちに全額散財したことや、祖母の葬儀に平然と参列したことなどから「被害者を顧みる様子はみられない」と刑事処分以外の措置を相当と認める事情はないとした。
 福島地検郡山支部は5月18日、強盗殺人と住居侵入、窃盗の罪で鈴木被告を起訴し、氏名を公表した。
裁判所
 福島地裁郡山支部 小野寺健太裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年9月15日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年9月7日の初公判で、鈴木敬斗被告は「殺意を持って殴ったというところが違う」と起訴内容を一部否認し、殴った回数も起訴内容より少ない10回前後と主張した。
 検察側は冒頭陳述で、鈴木被告は昨年9月、現金を引き出す祖母を送迎した際、祖母がカードや通帳を茶の間のたんすに納めているのを把握したとし、今年1月に当時の交際相手と共に借金を申し込んだが断られていたとした。趣味で改造した車の修理道具代を得るために現金を盗もうと考え、2月9日夜に祖母宅に侵入したが、見つかったため殺意を持って鉄パイプで頭などを「十数回殴った」と経緯を明らかにした。鉄パイプで複数回殴った理由について「祖母に顔を見られたと考えたため」とし、頭を鉄パイプで殴る行為は死亡する危険性が高く、被告も危険と認識して殴打したと強調。凶器を家から持参し、侵入前に手袋を買うなど計画性があり、300万円を車の部品やブランド品に全額使った点に触れ、「計画性や悪質性などを重視すべき」と訴えた。
 弁護側は、窃盗罪について認める一方、「人がいたら引き返すつもりだった」と主張。被告は侵入した際に誰かが立ち上がる姿が見え、とっさに鉄パイプを振り下ろしたと説明。「フルスイングで殴ったわけではないし祖母の頭の骨も折れていない」と殺意を否定し、強盗致死罪にとどまるとした。また、鈴木被告が「精神的に未熟」で、「再教育の必要性を重視すべきだ」と更生可能性を重んじるよう求めた。
 鈴木被告は被告人質問で、検察側から鉄パイプを持って侵入した理由を問われると、「窓ガラスを割るためで人を傷つけるためではない」と説明。捜査段階で殺意を認めた理由は「取り調べが早く終わってほしかった。取調官に強要はされてない」と述べた。弁護側の「いずれ発覚するとは思わなかったか」との問いには「捕まるまでの間は自由にしようと思った」と述べた。被害者が亡くなった後、防犯カメラの映像から逮捕される可能性があるのにコンビニATMでで現金を引き出し続けた理由については「捕まるまでの間、自由に使おうと思った。(祖母に対して)後ろめたい気持ちは常にあった」と話した。
 公判で祖母の妹の供述調書が読み上げられた。「なぜ、こんなに痛く苦しい殺し方をしたのか。憎らしく許せない」と憤りをつづる一方、「姉の孫でもある。姉の長男や次男の気持ちを考えるとどんな処罰を求めるか。今は何も言えない」と戸惑いも浮かんだ。
 8日の第2回公判における被告人質問で、鈴木被告は個人事業主として手取りが月40万円あったが、事件当時は手元に5万円ほどしかなかったと説明した。車の修繕道具費など10万円が必要となり、事件の2、3時間ほど前に、キャッシュカードなどの収納場所が分かる祖母方への侵入を思い立ったと述べた。「(祖母方に行けば金が手に入るという)軽い考えがあった」と話した。弁護側から祖母への思いを問われると「自分を親代わりに育ててくれたこともあるし、困った時に助けてくれたので感謝している」と供述。繰り返し殴った理由については「孫というのもばれたくなかったし、殴っている自分を止められなかった」と述べた。
 この日の証人尋問で、司法解剖した医師は祖母の頭の傷の数などについて説明し、検察側は医師の証言を基に孫に「頭部だけで15、16回程度殴ったということで間違いないのか」と問うと、鈴木被告は「納得できない」と否定。殴った回数は「10回前後だ」と改めて主張した。また、「殴っている最中に祖母だと確信したが自分のことで一杯だった」と証言した。
 弁護側の証人として鈴木被告の両親が出廷。祖母の次男でもある父親は「家庭内の事件だと気持ちを抑えているので、被害者の息子だとしてもあまり重い罪は望まない」と述べた。遺族代理人は、祖母の長男の意見陳述を紹介。「あれだけのことをする人が更生できるとは思えない。身内だが、私にとって母ちゃんを殺した犯人。できれば刑務所に入れてずっと出てもらいたくない」などと読み上げた。
 9日の論告求刑公判で検察側は、鈴木被告は重く硬い鉄パイプで祖母の頭を少なくとも15回は殴ったと説明。死亡する危険性も認識していたとし、殺意が認められると主張した。その上で、祖母に発見され、事件の発覚を免れるとともに現金を確実に手に入れるために殴ったと指摘。「「指紋がつかないよう事前に手袋を購入するなど計画的な犯行で、生活に困っていたのではなく、車の改造費を得るためという自己中心的で利欲的な動機で奪った金を、元交際相手へのプレゼント購入などで散財しており、全く反省が見られない。反省や更生の意欲は見えず、再犯の可能性がある」とした。
 最終弁論で弁護側は、祖母の遺体の頭の骨が折れていないことや即死ではなかった点から「強烈に殴っていない」と述べた。死亡させる危険性があるという認識はなかったと殺意を否定し、強盗致死罪の成立が相当とした。19歳の鈴木被告は精神的に未熟だとも述べ、「刑罰よりも社会復帰を前提とした教育上配慮が重視されるべきだ」と、更生可能性を重んじるべきだと述べた。そして懲役15年以下の不定期刑が相当と主張するとともに、「成人と同様の刑を科すという改正少年法の厳罰化(の傾向)に流されないでほしい」と裁判員らに訴えた。
 最終意見陳述で鈴木被告は、「ばあちゃんには残酷なことをしたと思います。これから自分にできるのは謝罪と被害弁償と服役。自分にできることをこれからやっていこうと思います」と述べた。
 判決で小野寺健太裁判長は、「被告は鉄パイプがへこむほどの相当な力で頭部を殴った」と指摘。「被告は豆電球の明かりで被害者の輪郭も見えていたから、鉄パイプで急所である頭部を殴ることを理解していた。自分の行為で被害者を死亡させるおそれがあることを分かっていた」として、被告の殺意を認めた。犯行の動機については、車の修理代10万円ほどのために現金を盗むというもので「短絡的で身勝手かつ自己中心的」と厳しく指摘した。また、犯行後すぐにATMで現金を下ろし始め、計300万円を欲望のままに散在していて、被害者遺族への謝罪もしていないことから、反省は「表面的で不十分」とした。さらに、家庭環境の影響などから「自制心のなさなどの精神的未熟さがある」と言及。しかし、中学卒業後から働く中で一定の社会常識を身に付けることはできたと考えられ、減刑する事情とはいえないとした。
 判決言い渡しのあと、裁判長は鈴木被告に「裁判所は、あなたが更生できないと言っているのではありません。今後の服役の中で更生していくことを期待しています」と話した。
備 考
 2022年4月1日、成人年齢を18歳に引き下げる改正民法と同時に改正少年法も施行された。少年法の適用年齢は20歳未満が維持されたものの18、19歳が新たに「特定少年」と位置付けられ、起訴されれば実名報道が可能になった。

 被告側は控訴した。11月18日付で控訴取り下げ、確定。2023年1月12日に控訴審初公判が仙台高裁で予定されていた。

氏 名
佐藤喜人(31)
逮 捕
 2020年12月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強制性交等致死、殺人、窃盗、住居侵入、強制わいせつ、死体遺棄
事件概要
 東京都豊島区の保育士、佐藤喜人被告は2020年9月24日夜、近所のアパートに住む会社員の女性(当時35)宅に無施錠の玄関から侵入。クローゼット内などを物色していたところを女性に見つかったため、「静かにしろ」などと言ってベッドに押し倒し、性的暴行を加えてロープのようなもので首を絞めて殺害したうえ、現金約18,000円が入った財布などを奪った。車で栃木県那須町内にある親戚の別荘地に遺体を運び、27日、裏にある山林に掘った穴に埋めた。女性は一人暮らしで、佐藤被告と面識はなかった。
 11月20日夕、新宿区の路上で、1人で歩いて帰宅中だった女児(当時9)に背後から近づき、体を触った。同日午後7時55分ごろ、埼玉県三芳町内の住宅街の路上で10代の女子高校生の体を触り、約5分後には30代女性の体を触った。3人とも面識はなかった。
 9月25日に会社を無断欠勤して以降、女性と連絡が取れなくなった父親と同僚が交番に相談。周辺の防犯カメラの映像から佐藤被告の関与が浮上。警視庁は12月5日から佐藤被告に任意で事情を聴いたところ、遺体を埋めた場所を供述。捜査で土中から性別不明の下半身とみられる遺体が見つかった。6日、死体遺棄容疑で佐藤被告を逮捕した。2021年1月6日、強盗・強制性交殺人と住所侵入容疑で佐藤被告を再逮捕した。
 27日、小学生の女児に対する強制わいせつ容疑で再逮捕。3月29日、2人の女性に対する強制わいせつ容疑で再逮捕。
裁判所
 東京高裁 島田一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年9月21日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年8月31日の控訴審初公判で、弁護側は女性への犯行について「計画性はなかった」と主張。また一審判決後に女性の両親に対して被害弁償の一部として3,000万円を支払ったことなどを考慮し、刑の軽減を求めた。
 判決で島田一裁判長は「何度も女性宅を訪れ、1人暮らしであることを確認していた」として一定の計画性があったと認定し「無期懲役の量刑が重すぎて不当とは言えない」と判断した。
備 考
 2022年3月17日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
中西正雄(56)
逮 捕
 2014年5月28日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)、銃刀法違反、恐喝、詐欺他
事件概要
 特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の中西正雄被告は他の被告と共謀して以下の事件を起こした。
  • <飲食店経営者男性恐喝事件>2011年9月、市内で飲食店を経営していた男性(当時36)に対し、数回にわたって「店できんごとするぞ」などと因縁をつけ、30を脅し取った。(恐喝)
  • <建設会社会長殺人事件>2011年11月26日午後9時過ぎ、北九州市小倉北区で、型枠工事会社会長の男性(当時72)の自宅前で拳銃を2発撃ち、うち1発を首に命中させて失血死させた。会長は同市周辺の型枠工事業者で作る団体の会長を務めるとともに、暴力団排除活動をしていた。中西被告は実行犯だった。(殺人、銃刀法違反他)
  • <元警部銃撃事件>2012年4月19日午前7時5分頃、北九州市小倉南区の路上で、県警元警部の男性(当時61)がバイクの男に銃撃され、足などに重傷を負った。男性は暴力団捜査に約30年間従事しており、工藤会専従の「北九州地区暴力団犯罪捜査課」で特捜班長も務めた。事件の前年に県警を定年退職していたが、退職後、自宅周辺で不審な車が目撃されていたことから県警の「保護対象者」になっていた。当日は、再就職していた市内の病院への通勤途中だった。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)、銃刀法違反)
  • <標章ビル放火事件>2012年8月14日早朝、小倉北区の飲食店ビルのエレベータに放火して1基を焼損させた。ビル内には当時、飲食店店長らがおり4人が煙を吸うなどして軽症を負った。さらに約120m離れた別の飲食店ビルのエレベータにも火をつけ、1基を焼損させた。ビル内には誰もいなかった。被害総額は約5,500万円に上る。福岡県が2012年8月から始めた繁華街からの暴力団排除を目的に対象地域で標章を掲示する飲食店への組員の立ち入りを禁じる制度に基づき、暴力団組員の立ち入りを禁じる標章を店に掲示していた。(現住建造物等放火他)
  • <飲食店経営者女性他刺傷事件>2012年9月7日午前1時ごろ、北九州市小倉北区のマンション敷地内で、タクシーで帰宅したスナック経営の女性(当時35)の左ほおを刃物のようなもので複数回切りつけ、女性を助けようとしたタクシー運転手の男性(同40)の首や左手も切りつけて重傷を負わせ殺害しようとした。2人とも命に別条はなかった。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂))
  • <飲食店経営会社役員男性刺傷事件>2012年9月26日、北九州市小倉北区のマンション敷地内で、帰宅した飲食店経営会社役員の男性(当時53)の腰などを刃物で3回刺して刺して殺害しようとした。男性は全治半年以上の重傷を負った。男性は福岡県が2012年8月から始めた繁華街からの暴力団排除を目的に対象地域で標章を掲示する飲食店への組員の立ち入りを禁じる制度に基づき、暴力団組員の立ち入りを禁じる標章を店に掲示していた。男性は転居し、店から標章を外した。(殺人未遂他)
  • <看護師刺傷事件>2013年1月28日午後7時頃、福岡市博多区の歩道で、北九州市小倉北区の美容整形医院から帰宅中だった看護師の女性(当時45)が、後方から来た黒いニット帽にサングラスをかけた男に刃物で切りつけられ、頭などに重傷を負った。被害者が勤務していた美容整形医院で下腹部の手術を受けた野村被告が、術後の経過や被害者の対応に不満や怒りを抱いての犯行。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂))
  • <歯科医師刺傷事件>2014年5月26日午前8時30分頃、北九州市小倉北区の駐車場で、車から降りた歯科医師の男性(当時29)が刃物で胸などを刺されて重傷を負った。男性は(1)の事件で殺害された男性の孫で、漁協幹部の息子だった。男性は事件後、関わりたくないとリハビリ医師から診療を断られることもあり、雇ってくれる歯科医院もなかったことから、福岡を離れることになった。中西被告は実行犯に指示した。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂))
  • <携帯電話搾取事件>2014年4月、三重県伊勢市の携帯電話販売店で、組員が使用する携帯電話3台(約3万円相当)を契約してだまし取った。さらに別の人物の口座に15万円の報酬を振り込んだ。(詐欺、組織犯罪処罰法違反)
 2014年5月28日、飲食店経営者男性恐喝事件の恐喝容疑で逮捕。10月1日、看護師刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で逮捕。2015年1月21日、携帯電話搾取事件の詐欺他容疑で再逮捕。2月16日、歯科医師刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で再逮捕。11月25日、標章ビル放火事件の現住建造物等放火他容疑でで再逮捕。2016年6月3日、飲食店経営会社役員男性刺傷事件の殺人未遂他容疑で再逮捕。2017年1月19日、建設会社会長殺人事件の殺人他容疑で再逮捕。6月2日、飲食店経営者女性他刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で再逮捕。
裁判所
 福岡地裁 神原浩裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年9月28日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判の対象から除外された。
 2021年7月19日の初公判で、中西正雄被告は起訴内容について「黙秘します」などと述べ、弁護側は争う姿勢を示した。初公判ではU被告、S被告と共同であり、両被告も黙秘した。
 検察側は冒頭陳述で、U被告が銃撃準備の指示や被害者の行動確認をし、中西被告が銃撃して、S被告が運転するバイクで逃走したと指摘した。
 事件では同会関係者8人が起訴され4人が既に有罪判決を受けたが、その1人で同会を離脱した元組員が3被告も絡んだ事件の指示や状況を供述しており、その信用性が主な争点。U、S両被告の弁護人は冒頭陳述で「元組員の供述には問題があり(証拠として)採用できない」と主張し、中西被告の弁護人も「元組員の証言は信用できず中西被告は事件に関与していない」と無罪を訴えた。
 その後は分離された。
 5月25日の論告で検察側は、建設会社役員射殺事件では「実行犯として一般市民を射殺しており、1件だけをもっても有期懲役は軽きに失する」と主張。他の事件も「指揮役などとして組織的に準備、遂行する犯行を取り仕切った」とした。その上で一連の事件は上位者の指揮命令で行われ、組織の利益維持などが目的だったと主張。中西被告はいずれの事件でも上位者への連絡や組員への指示など重要な役割を担ったとして、「市民を狙った卑劣な犯行で、極めて凶悪で刑事責任は誠に重大。上位者の指示を拒否することが困難な立場だったことを考慮しても、生涯にわたって償いの日々を送らせる最高刑に近い刑で臨むほかない」とした。
 6月29日の最終弁論で弁護側は、7つの事件のうち4つの事件について無罪を主張した。
 判決で神原裁判長は、各事件が「工藤会組員により組織的に行われた」と判断。建設会社会長射殺について、被害者は暴力団との縁を切ろうとしていたとみられるとして「反社会的な価値観と論理で、意に沿わない者を組織を挙げて抹殺した」とし、「実行犯として関与した責任は首謀者と上位者に次いで重く、この事件のみでも無期懲役に値する」と述べた。看護師刺傷と歯科医師刺傷での被告の役割を「指示役として必要不可欠だった」と認定し、元県警警部襲撃では被害者の行動確認などで「組織的犯罪の円滑な実現に寄与した」とした。
備 考
 建設会社会長殺人事件他に関与し、殺人や殺人未遂などの罪に問われた組幹部のIK被告は、2019年2月26日、福岡地裁(中田幹人裁判長)で懲役18年判決(求刑懲役20年)。2020年1月28日、福岡高裁(野島秀夫裁判長)で被告側控訴棄却。上告したかどうかは不明だが、すでに確定している。
 建設会社会長殺人事件他に関与し、殺人や銃刀法違反、組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの罪に問われた工藤会系組員MH被告は2021年3月17日、福岡地裁(神原浩裁判長)で懲役21年判決(求刑懲役25年)。2022年3月24日、福岡高裁(市川太志裁判長)で被告側控訴棄却。上告したかどうか不明。

氏 名
勝田州彦(43)
逮 捕
 2018年5月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、住居侵入
事件概要
 勝田州彦(くにひこ)被告は2004年9月3日午後、岡山県津山市内で下校途中の小学3年生の女児(当時9)を見つけてわいせつな行為をしようと後をつけ、午後3時15分ごろに女児が帰宅したのを確認。玄関で女児に時間を尋ね、時計を確認しに行ったのを追って居間に侵入した。女児の首を絞めた際に抵抗され、刃物で胸や腹を複数回刺して殺害した。
 午後3時35分ごろ、帰宅した当時高校1年の姉が遺体を発見。事件後、不審者に関する目撃情報などが寄せられたが、容疑者の特定につながる有力な手がかりはなく、捜査は難航していた。岡山県警は最大の懸案事件として、これまでに延べ約6万3千人の捜査員を投入し、捜査を続けてきた。岡山県警が類似の手口の事件を調べる過程で、勝田被告が浮上。2017年9月から大阪刑務所で服役していた勝田被告から任意で事情を聴き、関与をほのめかす供述を行った。2018年2月、岡山刑務所へ移送。2018年5月30日、岡山刑務所で服役中だった勝田州彦被告を殺人容疑で逮捕した。
 6月8日、岡山簡裁の勾留理由開示手続きで、勝田被告は「うその供述をした」と殺害を否認した。13日、岡山簡裁は鑑定留置を決定。15日、岡山県警は供述に基づき兵庫県沖で凶器の刃物を捜索したが、見つからなかった。
 10月30日、鑑定留置が終了。11月2日、岡山地検は刑事責任能力を問えると判断し、殺人、強制わいせつ致死、住居侵入の罪で起訴した。
裁判所
 広島高裁岡山支部 片山隆夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年9月28日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年7月11日の控訴審初公判で、弁護側は「女児の遺体の傷や発見時の状況などの重要部分が、自白と矛盾がある」と一審に続き自白には信用性がないと、無罪を主張。被告の供述を分析した心理学者の鑑定書の提出などを求めたが、片山裁判長は退けた。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。
 判決で片山隆夫裁判長(柴田厚司裁判長代読)は、自白した殺害の状況と客観的事実は「整合性を欠くとはいえない」と改めて指摘。「経験と報道などの情報を組み合わせ矛盾のないストーリーを被告が作り出したとは考えがたい。弁護人の主張する点を踏まえても、被告の自白の信用性に関する判断は動かない」と結論付けた。
備 考
 勝田州彦被告は2000年3月13日午後2時50分ごろ、兵庫県明石市内の路上で、下校途中の同市内の小学五年女児(当時11)に自転車で近付て、女児の腹を殴って逃げた。1時間後に暴行容疑で逮捕された。明石市の西部では、1999年5月から2000年2月にかけ、下校途中の小学校高学年の女児らが、銀色の自転車に乗った若い男に頭などを殴られたりする通り魔の暴行事件が十数件起きていた。その後、女児6人の腹部を殴ったり、下腹部を触ったりするなどしたとして暴行や強制わいせつの罪で、保護観察付きの執行猶予判決を受けた。
 勝田州彦被告は2009年9月19日午後0時25分頃、姫路市の路上で、遊んでいた小学1年の女児(当時6)の腹部を素手で殴り、肝臓から出血させるなど6か月の重傷を負わたとして12月6日、傷害容疑で逮捕された。その後、姫路市や三木市、太子町で小学1年~高校3年の少女5人にの腹部をすれ違いざまに殴ったり、ドライバーの先で突いたりしたとして傷害と暴行の罪に問われ、2010年3月30日、神戸地裁姫路支部で懲役4年判決(求刑懲役6年)が言い渡され、おそらく控訴せず確定している。
 勝田州彦被告は2015年5月11日午後4時55分ごろ、姫路市の市道で、近くに住む中学3年の女子生徒(当時14)の胸や腹など5カ所ほどをナイフで刺したり切りつけたりし、殺害しようとして約1カ月の重傷を負わせたとして5月19日、殺人未遂容疑で逮捕された。2016年5月18日、神戸地裁姫路支部の裁判員裁判で懲役12年判決(求刑懲役15年)が言い渡された。控訴し、大阪高裁で懲役10年に減刑され、確定した。

 2022年1月6日、岡山地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は即日上告した。

氏 名
川瀬直樹(50)
逮 捕
 2019年1月21日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 東京都足立区の無職川瀬直樹被告は2002年12月21日ごろ、近所の足立区のアパート2階の各部屋の呼び鈴を順次鳴らし、対応した会社員の男性(当時23)の頭や背中を持っていた刃物で切り付けたうえ、室内のフライパンで殴るなどして殺害。財布の中から現金約1万円や商品券十数枚を奪った。男性は千葉県内の実家に帰省する直前で、川瀬被告とは面識はなかった。
 川瀬被告は近所で父親と同居していたが、事件数日前に家を出て、公園で野宿をしていた。奪った金で台東区内のビジネスホテルなどに滞在し、その後は生活保護を申請して同区内のアパートなどで生活していた。
 2018年12月9日、川瀬被告は警視庁浅草署に出頭。現場に残されていた指紋を最新の技術で鮮明化したところ、川瀬被告の指紋と一致した。2019年1月21日、警視庁西新井署捜査本部は強盗殺人などの容疑で川瀬被告を逮捕した。
 東京地検は2月から川瀬被告の鑑定留置を実施。5月17日、強盗殺人と住居侵入の罪で起訴した。
裁判所
 東京高裁 田村政喜裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年9月29日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年9月1日、控訴審初公判。内容は不明。
備 考
 2022年2月2日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2023年1月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
田中涼二(43)
逮 捕
 2021年4月26日
殺害人数
 3名
罪 状
 殺人、傷害致死、死体遺棄、詐欺
事件概要
 福岡県飯塚市の無職、田中涼二被告は、2021年1月9日ごろから自宅で、養子で小学3年の男児(当時9)の頭や太ももなどを殴ったり蹴ったりする暴行を繰り返していた。2月16日に福岡県小郡市の車の中で養子が失禁したことに腹を立てた田中被告は殴る蹴るの暴行を加え、大腿部打撲による外傷性ショックで死亡させた。田中被告は自宅に帰り、遺体を自宅に放置。18日、長男(当時3)と長女(当時2)を連れて福岡市内で借りたレンタカーで宮崎県串間市まで移動し、知人に金を無心。レンタカーのガソリンが無くなったため、電車で鹿児島市に移動し、24日にホテルにチェックインした。26日、ホテルで2人を首を絞めるなどして殺害後、自らの首を刃物で切るなどした後、ホテルの4階から飛び降り自殺を図った。部屋からは「3人で死ぬ」などと書かれた遺書が見つかった。
 田中被告は筑後地区に拠点を構える暴力団の元組員だった。2014年ごろに組織を脱退し、その後は大野城市で建築作業員として働いていた。田中被告は居酒屋で知り合った10歳年上の妻と2017年に結婚。妻の子供である男児を養子にした。2人の間には長男、長女が生まれたが、妻が酒浸りになり喧嘩が絶えなかった。仕事を辞め、福岡市に移住しても夫婦仲は悪く、さらにDVもあって養子は児童相談者に預けることとなった。2020年5月に田中被告は実子2人を連れ、福岡市から飯塚市へ転居。しかし2か月後に妻が養子を連れて再び同居。ただ喧嘩は絶えず激しさを増し、子供たちの前で激しくやり合うことも多かったため、警察が児童相談所に「面前DV」で複数回通告もしている。12月には夫婦喧嘩で妻が包丁を持ち出して血だらけの争いをして、警察官が駆け付ける騒ぎとなった。同月、夫婦喧嘩で妻が家を飛び出し、そのまま離婚。養子はお父さんについていくと話したため、田中被告は子ども3人と暮らしていた。小学3年生で普通に登校していた養子は2021年から休みがちになり、1~2月はそれぞれ3、4回登校しただけ。最後の登校は2月10日だった。田中被告から「家族で遊びに行くので」などの連絡が毎日のように学校にあったが、それも22日で途絶えていた。
 2月25日午前、宮崎県串間市の商業施設の従業員から、駐車場でレンタカーが放置されていると宮崎県警に通報。車内に未使用の練炭が見つかったことから、県警が利用客を捜していたところ、福岡県飯塚市の田中被告と判明。福岡県警が自宅の団地を訪ねたところ、25日午後2時50分ごろ、9歳の男児が倒れて死亡しているのが見つかった。警察はレンタカーからの足取りを防犯カメラなどで追跡し、田中被告が鹿児島市のホテルに滞在していることを突き止めた。捜査員が26日午後7時ごろに突入したが、田中被告は4階の部屋のベランダから飛び降り、腰や足の骨を折るなど全治数か月の重傷を負った。田中被告の首や胸には、刃物によるとみられる刺し傷があった。部屋から亡くなった2人が発見された。
 田中被告の回復後となる4月26日、福岡、鹿児島両県警は、子供2人への殺人容疑で田中被告を鹿児島市内の病院で逮捕し、福岡県警飯塚署に移送した。福岡地検は5月17日、殺人罪で起訴した。
 養子の死因は当初、司法解剖で病死の可能性が指摘されていたが、その後の捜査や複数の医師の所見から、田中被告の断続的な暴行により死亡したとみられることが判明した。6月18日、養子への傷害致死、死体遺棄容疑で再逮捕した。福岡地検は7月8日、傷害致死と死体遺棄の罪で追起訴した。
裁判所
 福岡地裁 武林仁美裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年10月11日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年9月20日の初公判で、田中涼二被告は長男と長女の殺害については認める一方、養子を死亡させたことについては「暴行でけがをさせたが、私の暴行で死んだかはわかりません」と起訴内容を一部否認した。田中被告は車椅子で出廷した。
 冒頭陳述で検察側は、「妻と離婚し、育児のストレスで養子を何度も暴行した犯行態様は、非常に悪質」と述べ、発覚を恐れ学校を休ませたと指摘した。そして「度重なる暴行による外傷性ショックで養子は死亡した」「養子を虐待死させた田中被告が、子供2人を道連れにして自殺しようと考え2人を殺害した」と述べた。また田中被告が残した遺書も読み上げられたが、そこに養子の名前は出てこなかった。
 弁護側は子供2人の殺害については争わないとした上で、養子への傷害致死事件については暴行は認めた上で「亡くなる直前から体調が悪く、死因は胸膜炎を伴う気管支肺炎だ」として傷害致死罪は成立しないと主張した。
 21日の公判で被告人質問が行われ、田中被告は「自分の料理よりもコンビニ弁当の方がいいと言われ頭にきた」、「養子の太ももや胸を殴ったり蹴ったりした」と述べた。また、「危険だと思わなかった」かと聞かれると、「思いました」と答えるなど、養子が死亡する危険性を認識していたことを証言した。
 この日の公判で田中被告の元妻が出廷。検察側が実施と養子との接し方について質問すると「天と地くらい違う」と答えた。また養子を無視したり部屋に閉じ込めたり、酔ってプロレスの技をかけるなどしていたと証言した。
 30日の論告求刑公判で、田中被告の当時の妻が出廷し「生きているのが許せない。死刑を望む」と意見陳述した。
 論告で検察側は、弁護側が主張する育児ストレスは「それほど大きなものではなく、児童相談所に相談していれば軽減できた」と指摘。「3人の子供の親権を引き取り、1人で育てる育児ストレスを考慮しても動機は身勝手で、生活苦や病気による無理心中とは全く異なり、情状の酌量の余地がない」と断じた。そして養子への傷害致死について「長期間に渡って衰弱するのを目の当たりにしながら虐待した、殺人に匹敵する危険で極めて悪質な行為」と指摘した。
 同日の最終弁論で弁護側は、子供2人の死亡について殺人の罪を認めた上で、養子の死亡については「肺炎で死亡した可能性を否定できない」として、傷害致死ではなく傷害の罪にとどまると主張。さらに「死ぬために自分の左胸をナイフの根元まで刺した」「逮捕されて2人の子どもと離れ離れにならない手段として、心中以外の選択肢が選べなかった」と述べた。そして田中被告の育児ストレスや、心理学の専門家の判定で被告の知的能力が低かったことを挙げ「適切な判断が困難だった。情状酌量の余地がある」として、懲役18年が相当と述べた。
 最終意見陳述で田中被告は、「今回、養子に対して思いやりと優しさを持って接していれば、このようなことにはならなかった」 「自分も一緒に死のうと思っていて逮捕以降も、その思いは変わらなかった」 「しかし今は自分は命ある限り償っていかなければいけないと思っている」と述べた。
 判決で武林裁判長は、男児の死因について「大腿部への打撲等による外傷性ショック」とした解剖医の見解を「合理的で信用できる」として傷害致死罪の成立を認めた。育児ストレスについては、3人の子供を一人で育てる中で、養子が被告の手料理を吐き出すなどしたことに腹を立てた心情は「理解できないわけではない」としたものの、被告は離婚前から児童相談所に相談し、児相が被告の家庭の見守りを行っていたことに言及し、「子供たちを児相に預けるなどしてストレスを軽減することは難しくなかった」と指摘した。そして「短い生涯を終えざるを得ず将来を奪われた被害者らの無念も計り知れない。養子の死亡が捜査機関などに露見することにより実子2人と離れ離れになりたくないと考えて無理心中を図った。被告人の身勝手な願望に何ら罪のない実子らを巻き込んだもので同情の余地はない。生涯をかけて罪を償わせることが相当だ」と述べた。
 最後に裁判長は、「生涯をかけて、愛する子供の命を奪った自分自身の罪から目をそらさず、向き合い続けてください」と被告に語った。
備 考
 田中涼二被告の約20年前の元妻は、2021年12月に別の暴行死事件で有期懲役判決が確定している。また田中被告と元妻は当時、監禁や脅迫などで有罪判決を受けている。この元妻は2022年夏、麓刑務所で服役中、体調が悪化し、43歳で死亡。

 飯塚市の「3児童死亡事例検証委員会」は2022年1月25日、検証報告書を片峯誠市長に提出した。報告書は、田中被告が2020年4月に飯塚市に転入した際、過去に長男への虐待通告が16回あったことや、夫婦喧嘩が子供に悪影響を与える「面前DV」があったことなどを福岡県田川児童相談所から知らされていたほか、飯塚市内で生活中にも夫婦げんかで警察が複数回出動したと認定した。
 その上で、通告などが積み重なったことで「(市の担当者らが)日常の範囲内という意識になった可能性があり、リスクを小さく捉えていた」と指摘。また、田中被告から頻繁に連絡があったことで「安心感を持ち、長男に直接面談した回数が少なかった」とした。そして学校や市が、虐待の「ハイリスク家庭」との認識の共有が不十分だったと指摘。学校は養子の欠席が続いた時、父親から「体調が悪いため休む」などと連絡があったため問題視されなかったが、「市などの関係機関と連携し早急に対応するべきだった」とした。また、2021年2月初旬、養子は腰にけがをし、虐待を疑った学校側などに「ジャングルジムから落ちた」と説明。この際に「虐待などの鑑別を含め医療機関受診を強く勧める必要があった」とも指摘。各行政機関の情報共有や危機管理意識が不十分だと結論づけた。その上で課題として、子育て行政での深刻な人材不足の解消▽専門職の育成と配置、意見を反映しやすい体制▽学校と市教委が一緒に対応する仕組みづくりなどを挙げた。地域との関係についても「連携の方策を検討する必要がある」と強調した。

 被告側は控訴した。

氏 名
陳春根(51)
逮 捕
 2011年12月27日
殺害人数
 2名(1名は殺人、1名は逮捕監禁致死)
罪 状
 生命身体加害略取、逮捕監禁致傷、生命身体加害略取、逮捕監禁、殺人、逮捕監禁致死
事件概要
 兵庫県姫路市のパチンコ店運営会社の実質経営者であった、韓国籍の陳春根(しゅんこん)(日本名:中村春根(はるね))被告は部下の上村(うえむら)隆被告らと共謀し、以下の事件を引き起こした。
  • 陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2009年4月、東京都世田谷区の広告会社社長Mさんを、会議の席上で上村隆被告らが押し掛け連れ出した。そして2010年6月まで、兵庫県姫路市内のマンションや事務所内、倉庫などにMさんを監禁した。
     Mさんの会社は陳被告から10億円の融資を受けていたが、返済は滞っていた。
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2010年6月中旬頃、東京都世田谷区の広告会社社長Mさん(当時50)を兵庫県内またはその周辺で、拳銃を発射するなど何らかの方法で殺害した。遺体は発見されておらず、凶器の拳銃も見つかっていない。(注:本件については無罪判決が出ている
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2010年4月13日、姫路市内に住む元暴力団組員で韓国籍の男性Tさん(当時57)を同市内のパチンコ店駐車場で乗用車に押し込んで拉致監禁し、三木市の倉庫まで走行。その間、車内でTさんの口に粘着テープを張り付けるなどして、Tさんと窒息死させた。Tさんの遺体は見つかっていない。
  • 2009年8月、神奈川県鎌倉市で、東京都世田谷区の広告会社社長Mさんの部下だった男性(当時33)の顔にナイフを突きつけて、車に乗せて連れ回し、顔にけがをさせた。
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2010年8月30日、姫路市内の路上で、陳被告の知人の30代男性を車に押し込み、手錠をかけるなどして三木市内の貸倉庫に連行。9月28日まで監禁した。同じ倉庫に監禁していたSさんが逃げ出したため、監禁の発覚を恐れた陳被告らは男性を解放した。
  •  陳春根被告は複数人と共謀。2010年9月28日朝、兵庫県姫路市の元暴力団組員の作業員Sさんを姫路市内の路上にて車で拉致し、三木市の倉庫で両手首に手錠をかけるなど約9時間監禁し、両手首にけがをさせた。同日、Sさんは逃げ出した。
  •  陳春根被告は上村隆被告ら複数人と共謀。2011年2月10日、兵庫県姫路市の元暴力団組員の作業員Sさん(当時37)の自宅マンション前でSさんを連れ去ってトラックに監禁し、首を絞めて殺害。姫路市の路上に止めた保冷車に遺棄した。
     10日午後6時過ぎ、女性の声で「『助けて』という男性の声が聞こえた」と110番があり県警が捜査。11日午後10時20分ごろ、遺体を発見した。
 2011年2月11日、Sさんへの逮捕監禁致傷の容疑で3人を逮捕。3月31日、兵庫県警は別の元会社役員(当時35)への恐喝容疑で陳春根被告や上村隆被告を全国に指名手配した。4月28日、上村被告は、宿泊先の広島市内のビジネスホテルで身柄を確保され、逮捕された。12月27日、陳被告が逮捕された。
 2013年10月23日、県警暴力団対策課などはSさんへの殺人容疑で陳春根被告と、上村隆被告を逮捕した。
 2014年3月6日、県警暴力団対策課などはTさんへの逮捕監禁致死容疑で陳春根被告と上村隆被告、その他3人を逮捕した。
 11月14日、県警暴力団対策課などはMさんへの逮捕監禁容疑で陳春根被告と上村隆被告、その他3人を逮捕した。
 2015年2月18日、県警暴力団対策課などは知人男性への逮捕監禁容疑で陳春根被告と上村隆被告、その他1人(後に起訴猶予)を逮捕した。
 6月10日、県警暴力団対策課などはMさんへの殺人容疑で上村隆被告を逮捕した。10月23日、殺人容疑で陳春根被告を逮捕した。社長の遺体や拳銃は見つかっていないが、社長の生存が長期間確認できないことなどから同課は社長が殺されたと判断した。
 県警と地検は計12回、陳被告を逮捕、起訴している。
裁判所
 最高裁第二小法廷 木山暢郎裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2022年10月12日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 一審の審理期間は、裁判員裁判で過去最長の207日。判決までの公判回数は76回に上る。約120人の証人が出廷した。裁判員6人のうち3人が、途中で辞退を申し出て交代した。暴力団が関係する事件のため、裁判所側は4月の初公判以降、廷内に入る前に必ず荷物検査や身体検査を実施するなど徹底した安全対策を取った。
 共犯の上村隆被告は2019年3月15日、神戸地裁姫路支部の裁判員裁判で、求刑通り一審死刑判決。2021年5月9日、大阪高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 一連の事件で兵庫県警は陳、上村被告のほかに15人を逮捕し、14人は有罪が確定している。

 陳春根被告、逮捕監禁事件で有罪判決が確定した男性元被告2人と弁護人だった弁護士が、違法な捜査で精神的苦痛を受けたとして県と国に計1300万円の損害賠償を求めた訴訟で、2015年10月29日、神戸地裁(伊良原恵吾裁判長)は県警の一部捜査の違法性を認定し、県に87万円の支払いを命じた。国への請求は棄却した。判決によると、県警の捜査員が2011年2月~2012年1月、逮捕監禁事件などの任意捜査段階で元被告2人を警察署の取調室やホテルに最大4泊5日宿泊させたほか、陳被告の取り調べで「弁護士の言うことを聞いていたら最悪の結果になる」などと発言した。伊良原裁判長は「実質逮捕といえる違法な身柄拘束」と指摘し、発言も「被告を不必要に混乱させ、弁護士との信頼関係の形成を妨害した」と結論づけた。

 2018年11月8日、神戸地裁姫路支部の裁判員裁判で、求刑死刑に対し一審無期懲役判決。2021年1月28日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
中村雅満(47)
逮 捕
 2020年4月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強制性交等致死、殺人
事件概要
 住所不定の漁師、中村雅満被告は2020年4月29日朝、福岡市西区の玄界島の廃校となった旧中学校敷地内で、島に住む知人の女性(当時82)の後頭部をコンクリートブロックに打ち付け、首を手やロープで絞めるなどして殺害した。中村被告は玄界島出身で、女性と顔見知りだった。
 旧校舎は、女性が夫(当時82)と暮らす団地から道のりで約500m北にあり、女性は近くの畑で野菜を育てていた。中村被告は事件の数日前、島でワカメの加工作業中に体調を崩した。「新型コロナウイルスに感染したのでは」と周囲に指摘され、知人宅で待機した後、人との接触を避けるために女性の畑近くにある無人の小屋に身を寄せていた。
 同日昼、女性が外出したまま帰宅しなかったため、夫が近所のおいとともに畑周辺を捜索。旧校舎の1階廊下に倒れているのを発見した。
 福岡県警は30日、殺人他の容疑で中村被告を逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 長嶺安政裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年10月18日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2022年2月25日、福岡地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2022年7月13日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
安田こずえ(48)
逮 捕
 2020年8月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、死体遺棄
事件概要
 大阪市の無職、安田こずえ被告は、覚醒剤密売グループの仲間である福岡市の無職、M被告、韓国籍で大阪市の解体工、K被告と共謀。覚醒剤の売買をめぐるトラブルから8月5~6日ごろ、安田被告の自宅マンションで、大阪市に住む無職の知人男性(当時40)をビニールひもで緊縛した上で、腰を包丁で何度も刺し、殴る蹴るなどの暴行を加えて死亡させ、現金約20万円入りの財布などを奪った。その後、男性の遺体を東広島市の山林に遺棄した。
 男性は一時期、安田被告のマンションに住み、身の回りの世話をしていた。
 M被告の親族から8月20日、「人を殺して死体を遺棄したと言っている」と府警に相談があった。捜査員が安田被告のマンションでM被告を見つけ、翌21日、覚醒剤取締法違反(使用)容疑で逮捕した。M被告は、「金を貸していた知人に暴行を加えて死なせ、車で運んで遺体を遺棄した」と供述。26日午後、東広島市内の山中の崖の下で、男性の遺体が見つかった。大阪府警は27日、安田被告ら4人を死体遺棄容疑で逮捕した。
 大阪府警捜査1課は11月25日、安田被告、M被告、K被告を強盗殺人容疑で再逮捕した。
 大阪地検は12月16日、安田被告とM被告を強盗致死罪で、K被告を強盗致死ほう助罪で起訴した。
裁判所
 大阪高裁 西田真基裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年10月25日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年9月13日、控訴審初公判。弁護側は、共犯者と比較して量刑が不当に重い、などと主張した。即日結審。
 判決で西田裁判長は、複数人で一方的に暴行を加えた犯行は「残虐かつ非人道的」と指摘。金銭を奪う動機があったのは被告だけだったとした。そして一審と同様、被害者に恨みのない共犯者に犯行を指示したとして、被告を主犯格と認定。「重い責任を負うのは正当」とした。
備 考
 強盗致死幇助や死体遺棄などの罪に問われたK被告は2021年6月2日、大阪地裁(大寄淳裁判長)の裁判員裁判で懲役8年判決(求刑懲役10年)。控訴せず確定と思われる。
 強盗致死や死体遺棄などの罪に問われたM被告は2021年12月3日、大阪地裁(矢野直邦裁判長)の裁判員裁判で懲役20年判決(求刑懲役22年)。2022年6月3日、大阪高裁で被告側控訴棄却。上告したかどうか不明。

 2022年2月28日、大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
請川正和(45)
逮 捕
 2022年1月19日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗、邸宅侵入、建造物侵入
事件概要
 大阪府八尾市の解体工事会社経営、請川(うけがわ)正和被告は妻、建設作業員の男性N被告と共謀。2021年12月1日午前0時ごろ、二人を待たせ、金を奪う目的で大阪市生野区に住む男性(当時82)の3階建ての別宅の2階窓から侵入。同6時ごろ、隣接する3階建ての本宅に侵入し、2階の室内を物色中に男性に発見されたため、男性の頭を金づちで殴るなどして殺害し、現金約10万円と指輪(約23万円相当)を奪った。
 男性は80代の妻と2人暮らし。以前は貸金業を営んでいた。本宅と別宅は3階でつながっており、別宅には親族が住んでいたが、事件には気付いていなかった。妻は3階寝室で寝ていて、事件に気付かなかった。午前7時すぎに知人男性が訪れ、自室で血を流して倒れている男性を見つけて警察に通報した。
 事件直前、現場付近の防犯カメラが付近で駐車する不審なダンプカーと2台の軽乗用車を確認。請川被告らに似た男性がダンプカーからはしごを下ろしたり、現場方面に向かったりする姿も映っていた。さらに逃走経路を調べた結果、3台は八尾市内にある請川被告の会社駐車場に集結していたことから3人の関与が浮上した。請川被告とN被告は仕事仲間で、請川被告の会社は経営が悪化していた。
 2022年1月19日、大阪府警は請川被告と妻、N被告を強盗殺人と住居侵入容疑で逮捕した。1月29日、請川被告に住宅の間取りや資産状況を教えたとして強盗殺人容疑で建設業経営の男性S被告を逮捕した。S被告は約10年前に被害者から金を借りたことがあり、住宅にも出入りしていた。
 S被告は2月に処分保留で釈放、3月29日付で不起訴(嫌疑不十分)となった。
 2月9日、捜査本部は男女3人が2021年9月29~30日、奈良県平群町の産業廃棄物回収業者の事務所に侵入し、現金約13万円などが入った金庫を盗んだとして窃盗容疑で再逮捕した。さらに、門真市に住む男性Y被告も逮捕した。請川被告が実行役で他の3人が見張り役だった。事件後に請川被告の会社で金庫を解体した。
 同日、大阪地検は請川正和被告のみ、強盗殺人、住居侵入容疑で起訴した。請川被告の妻については住居侵入幇助などで起訴した。N被告については不明。
 3月3日、捜査本部は2021年10月15日~18日ごろ、窃盗目的で大阪市平野区の60代女性宅の窓ガラスを割るなどして侵入したとして窃盗未遂容疑で請川正和被告、N被告、S被告を再逮捕した。S被告は女性から数百万円の借金をしていた。(これは不起訴になったらしい)
裁判所
 大阪地裁 西川篤志裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年10月31日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年10月21日の初公判で、請川正和被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は「逮捕を免れようと一方的に多数回殴っており、奪った金は取引先への支払いに使った。自己中心的で強い非難に値する」と指摘した。一方弁護側は、「空き巣のつもりだったが、被害者に見つかってパニックになり叩いてしまった。積極的な殺意はなかった」と主張した。
 26日の最終弁論で弁護側は、被告がいずれの罪も認め反省していることに加え、当時生活苦に陥っていたと主張した。
 判決で西川裁判長は「歩行に支障があり、脳梗塞の影響で体が不自由で抵抗が困難な一方的に殴っており、被害者の恐怖や苦痛は想像を絶する」と指摘。請川被告は当時、会社の資金繰りに窮していたが、「破産手続きなど適切な対応を取ることもなく、面識のない被害者を襲った。動機は身勝手で自己中心的だ。被害者を一方的に殴った後、救助することもせず逃亡しており、生命軽視の態度が甚だしい」と述べ、無期懲役が相当と判断した。
備 考
 請川正和被告に電話で呼び出されて脚立をトラックで運び、住居侵入幇助などで起訴された請川被告の妻に対し、大阪地裁は2022年12月14日、無罪判決(求刑懲役2年6月)を言い渡した。西川篤志裁判官は「夫が事件に及ぶ認識が女性にあったとは認められない」と述べた。

 被告側は控訴した。

氏 名
安保友佐(28)
逮 捕
 2019年12月8日(現行犯)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、公務執行妨害
事件概要
 さいたま市の無職安保友佐(あんぼ ともすけ)被告は2019年12月8日午後6時5分ごろ~同6時47分ごろ、集合住宅で同居する妹(当時24)の頭部や顔面、左腕を包丁やナイフで切り付けるなどして殺害し、妹の息子(当時3)の頭部や顔面を包丁で複数回切り付け、殺害した。また、駆け付けた警察官につかみかかるなどの暴行を加えた。
 安保被告は妹、甥、母親、兄との5人暮らし。事件当時、母親と兄は外出して不在だった。
 午後6時10分ごろ、「赤ちゃんの泣き声と男の笑い声が聞こえる」と近隣住民の男性から100番があり、署員が部屋を訪ねた。しばらく応答がなかったが、同47分ごろ、突然ドアが開き、包丁を持った安保被告が向かってきたため、署員は取り押さえ、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。
 30日、県警は妹に対する殺人容疑で安保被告を再逮捕。2020年1月19日、甥に対する殺人容疑で再逮捕。7月3日、さいたま地検は殺人と公務執行妨害の罪で起訴した。
裁判所
 さいたま地裁 佐々木一夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年11月7日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年10月25日の初公判で、安保友佐被告は「相違はありません」と、起訴内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は、甥が2歳になったころから、笑い声や泣き声に安保被告が不満を募らせたと指摘。次第に被告が甥から悪口を言われていると思い込み、2人に恨みを抱いて殺害を計画したと説明。「精神障害の影響は限定的。合理的な行動をしており、責任能力はあった」と述べた。一方、弁護側は被告は妄想性障害や自閉症スペクトラム障害と診断されて入退院を繰り返していたとし、「状況を判断する能力が失われていた」と主張した。
 31日、検察側は論告で被告が。「インターネットで殺害方法を検索したり、逃走方法を計画するなど合理的な行動を取っており、被告が親子への恨みから正常な思考によって実行を決意し、自らの判断で殺害した」と指摘。精神障害の影響は限定的とし、「計画的で強固な殺意に基づく犯行。極めて残虐で執拗。くむべき点はない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、被告は妄想性障害と自閉スペクトラム症の両方を患っており、犯行態様の異常性は「妄想性障害の影響が強かったというほかない」と主張。「精神障害の影響で正常な状況認識ができず、ささいなことが殺人に結びついた」と述べ、心神喪失による無罪と医療観察制度の適用を求めた。
 判決で佐々木一夫裁判長は動機について、「被告は自分が突然死ぬと思い込み、どうせ死ぬなら恨みのある人を巻き添えに無差別に殺害しようと考え、警察に捕まる前においと妹の殺害を決意した」と指摘した。また争点となった責任能力について、「犯行時の被告人は、妄想性障害、自閉症スペクトラム障害であったことは認められる」としたものの、「妹と甥の殺害を決意すると、妹に背後から襲い掛かるタイミングをうかがうなど的確に状況判断し、合理的に行動している」などと指摘。善悪の判断や行動のコントロール能力の欠如や低下は認められないとした。そして「甥と妹が助けを求め叫んでいるのに、笑い声を上げながら躊躇なく執拗に切りつけた。極めて残忍かつ残虐で、2人が味わった肉体的苦痛や恐怖、絶望感は計り知れない。若い命が無残に奪われた結果は重大というほかない」と述べた。
備 考
 

氏 名
冨田幸誠(38)
逮 捕
 2019年4月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗
事件概要
 住所不定無職の冨田幸誠(とみた・ゆきのぶ)被告は2019年2月19日午後11時40分ごろから20日午前0時40分ごろまでの間、広島市の元旅館で住宅に住む男性(当時86)の住宅に1階の台所窓から侵入。男性に発見されて首や腹を刃物で突き刺すなどして殺害し、現金約26,000円と、現金約9,000円が入った男性の妻(当時88)の財布を奪った。冨田被告は事件後、県内の病院で左手の親指付近を9針縫う治療を受けた。また逃走中、兵庫県で自転車を盗んだ。
 午前6時半ごろ、起きてきた妻が夫の死体を発見して通報。男性の自宅近くの公園で血痕などが見つかり、男性と冨田被告のDNA型が採取された。22日、広島県警は冨田被告を指名手配。24日、公開捜査に切り替えた。27日、大津市内で自転車に乗っていたところを発見、逮捕された。
裁判所
 広島高裁 伊名波宏仁裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年11月8日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年9月14日の控訴審初公判で、弁護側は「金を盗もうとして被害者を殺害していない」「金を持って逃げていない」と一審と同様に起訴内容を一部否認し、有期刑を求め、即日結審した。
 判決で伊名波宏仁裁判長は、「被害者の首の傷の状況から、被告は意図的に首付近を狙って刺したとみるのが自然で、被害者を積極的に殺害する意図があったと認めた一審判決に誤りはない。刑の量定に不当な点はなく被告人を無期懲役刑に処した原判決の量刑は相当である」として訴えを棄却した。
備 考
 2022年3月15日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。

氏 名
菅井優子(54)
逮 捕
 2019年9月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、非現住建造物等放火、死体損壊、詐欺未遂
事件概要
 名古屋市の会社経営、菅井優子被告は、愛知県知多市で美容院を経営する不倫相手のAT受刑者と共謀。2016年2月6日午後10時18分ごろから55分ごろまでの間、愛知県稲沢市の自宅で、塾講師のアルバイトをしている夫(当時60)の胸を刃物で数回刺して殺害、同13日午後8時45分ごろに夫宅に放火し木造二階建ての母屋と離れ計約220平方メートルを全焼させ、遺体を焼損させた。3月22日、夫の死亡保険金約3,000万円をだまし取ろうと請求したが、保険会社が支払いを保留したため受け取れなかった。
 夫の男性は高校教師などを務め、母親の病死後はしばらく一人暮らしだったが、2015年7月に菅井優子被告と結婚相談所を通じて知り合い結婚。菅井被告は別の男性と離婚し、太陽光パネルの施工会社を経営していた。菅井被告の仕事の関係で、週末だけ一緒に過ごしていた。
 AT受刑者は、愛知県知多市で40年以上美容室を経営してきた。2019年5月には県美容業生活衛生同業組合の副理事長に就任していた。
 県警は当初、事件と自殺の両面で捜査してきたが、遺体の状況などから男性が死亡後に出火した可能性が高いとみて捜査を開始。菅井被告やAT受刑者に事情聴取や家宅捜索を進めた結果、当時の状況などから殺害に関与した疑いが強まったとして、2019年9月18日、殺人容疑で2人を逮捕した。菅井被告は事件後に遺産相続で夫名義の複数の土地を相続し、2019年6月に事件現場の土地を売却した。再婚もし、名古屋市内の訪問介護事業所にヘルパーとして勤務していた。
 稲沢署捜査本部は10月8日、非現住建造物等放火容疑で2人を再逮捕した。名古屋地検は同日、殺人容疑について2人を処分保留とした。名古屋地検は29日、2人を殺人と非現住建造物等放火、死体損壊の罪で起訴した。捜査本部は11月11日、詐欺未遂容疑で菅井被告を再逮捕した。
裁判所
 名古屋高裁 吉村典晃裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年11月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年9月22日の控訴審初公判で、弁護側は、「保険金は保険会社から促されて請求しただけで、主体的に動いていない」「殺害はAT受刑者の突発的な犯行で共謀はなく、重大な事実誤認がある」として無罪を主張した。検察側は「控訴棄却が相当」と主張し、即日結審した。
 判決で吉村典晃裁判長は、被告から着手金をもらい、借金免除を約束されたAT受刑者が殺害行為に及んだなどとして共謀を認定した一審判決について、「一審判決に殺人罪の成立に関する事実の誤認があるとは言えず、利欲的かつ計画的で非常に悪質な犯行で、量刑が重すぎて不当だとは言えない」と判断した。
備 考
 共犯で殺人他の容疑で起訴されたAT受刑者は2021年2月14日、名古屋地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審懲役30年判決。宮本聡裁判長は首謀者を菅井優子被告だとしつつ、「殺害の実行行為に及び、主体的に犯行に加担した」と量刑理由を述べた。9月28日、名古屋高裁(鹿野伸二裁判長)で被告側控訴棄却。2022年2月21日、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)で被告側上告棄却、確定。

 2022年4月14日、名古屋地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。弁護側は上告する方針。

氏 名
喜納尚吾(39)
逮 捕
 2020年2月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 わいせつ略取誘拐、強制わいせつ致傷、殺人
事件概要
 新潟県新発田市の電気工事作業員、喜納尚吾(きな しょうご)被告は2014年1月15日午前4時頃、通勤中に信号待ちをしていた会社員の女性(当時20)が運転する軽乗用車に乗り込み、わいせつな行為をして約1週間のけがをさせた上、竹刀の小川あるいはその周辺の竹やぶで何らかの方法で溺死または窒息死させた。
 車は翌日、林道脇に放置されているのが見つかり、4月3日、約300m離れた小川で一部白骨化した女性の遺体が見つかった。
 遺体は一部が白骨化しており、司法解剖で死因は特定できなかったが、県警は、遺体や車の状況などから殺人事件と断定。車内から検出されたDNA型が喜納被告の型と一致したが、喜納被告は県警の調べに関与を否定していた。
 その後喜納被告は2013年11月の強姦致死事件などで2014年5月9日に逮捕。2018年3月に無期懲役が確定。岐阜刑務所で服役していた。
 2020年2月26日、新潟県警は服役中だった喜納尚吾被告を殺人とわいせつ目的略取、強姦致傷の疑いで逮捕した。
裁判所
 新潟地裁 佐藤英彦裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2022年11月18日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年10月17日の初公判で、喜納尚吾被告は「全く身に覚えがありません」と起訴内容を否認した。
 検察側は冒頭陳述で、女性について女性の遺体が見つかった小川の水深や水流を考慮すると、大人が1人で溺れるようなものではないとして自殺や事故死の可能性はなく、何者かに溺死あるいは窒息死させられたと主張。また、遺体は服がめくれあがった状態で発見されたことなどを指摘し、女性は「殺された」として事件性を主張した。女性の車のハンドルから喜納被告のDNA型が検出されており、同被告が女性を暴行した上で殺害したと指摘した。なお、直接証拠や被告の自白がないため、状況証拠を積み重ねて立証すると述べた。一方弁護側は、女性がどうやって小川までたどりついたのか、いつ、どのような原因で亡くなったのかなど何も分かっておらず、検察側の主張について「推測や想像に過ぎない」と訴えた。さらに事件当時、女性がプライベートで悩みを抱えていた様子もあったなどとして自殺や事故死の可能性を指摘。そして「被告は女性と同じ新発田市内に住んでいただけ。近い時間帯、場所にいたことがあっても、同じような人はたくさんいる。事件性に疑問が残り、事件だったとしても直接証拠はなくDNA鑑定にも問題があり、被告は犯人ではない」と無罪を主張した。
 18日の第2回公判で、女性の遺体が見つかった当時の元県警本部捜査一課の捜査員が出廷。現場に臨場した捜査員は遺体が見つかった際、「直感として殺人の可能性が高かった」と証言。弁護側の質問で車が見つかった際の対応について、「事故、運転手については行方不明事案として対応した。年度末で科学捜査研究所の予算が足りず、DNA鑑定などがすぐにできなかった」と話した。また元新発田警察署の捜査員は、発見現場の小川でマネキンなどを使った水没実験を行ったところ、「着衣が水の流れで乱れることはなく、人がかなり力を入れないとめくれ上がることはなかった」と証言した。
 19日の第3回公判で、女性の司法解剖を行った医師が出廷。女性の遺体の状態や車の損傷の程度から事故死は考えられず、生前の健康状態や解剖の結果から、病死も考えられないと指摘。さらに、遺体が見つかった小川にいるものと同じ種類の微生物が女性の内臓から検出されたとして、「小川の水を吸引して死亡した可能性がある」と証言。また頭蓋骨の一部には、一般的に窒息したときに見られる出血が見られ、窒息死の可能性も捨てきれないと話した。弁護側から自殺か他殺かを断定できるのかと問われると「解剖所見だけでは判断できない」と述べ、顔と首の一部が白骨化していたことから、首を締められた痕なども確認できなかったと証言。解剖医の経験や客観的な証拠を考慮して他殺だと判断したと述べた。
 20日の第4回公判で、弁護側の証人として法医学者が出廷。この事件に関する司法解剖の資料などから死因について「溺死の可能性が高いと考えられるが頸部圧迫や鼻口閉塞も完全に否定できないとして結果的に死因の種類は不詳」と証言。また、他殺かどうかの判断についても「死因がはっきり分からない以上、不詳」と説明した。さらに女性が竹やぶに入った可能性の1つとして、冬に脱輪した車から被害者が彷徨い低体温症になったことやアルコールを摂取して車を運転した可能性も考えられるとした。そして誤って川に転落し、脳しんとうが起きて溺れたなど事故の可能性もあるとの見解も示した。一方、検察からの自殺の可能性についての質問に対しては女性の車や遺体の見つかった状況などから「自殺の可能性は低い」とした。
 21日の第5回公判で、喜納被告の犯人性について冒頭陳述が行われた。検察側は「女性の車のハンドルから女性と喜納被告の混合したDNA型が検出された。重要な証拠だ」と主張。喜納被告は事件前に女性と面識がなく、ハンドルに触れたのは「事件当日の1月15日以外にない」とした。第三者のDNA型が検出されたことについては、女性の車をレッカー移動する際に業者が素手でハンドルに触れていたため「第三者のDNA型が出るのは自然」と反論した。さらに喜納被告の事件当時の行動について、女性の通勤経路付近で同僚とはぐれた上、女性の車と遺体が見つかった山林近くで散歩中の近隣住民から声を掛けられ、近くの民家で別の住民にタクシーを呼んでもらい帰宅したと説明した。また、女性のスマートフォンの地図アプリに喜納被告の自宅付近を検索した形跡が残っていたことも挙げ、「これらの状況証拠から犯人は喜納被告だ」と訴えた。
 弁護側は「女性の車から喜納被告固有のDNAが検出されたわけではなく、混合DNA型では個人を特定したことにはならない」と反論。さらに、事件当時行われたDNA鑑定を現時点で科学的に検証することができないとし、第三者のものである可能性や、県警が別の事件の捜査で使用した喜納被告のDNA資料が混入した可能性を指摘した。また、仮に喜納被告が女性を殺害したならば、その直後に遺体発見現場付近で近隣住民にタクシーを手配してもらうのは不可解だとし、事件から時間が経過していることから住民の証言も検証が必要だと主張。「喜納被告は女性の死に関与しておらず、無罪だ」と訴えた。
 24日の第6回公判で、2014年にDNA鑑定を行った県警科学捜査研究所の鑑定人らへの証人尋問が行われた。検察側から当時行ったDNA型鑑定について尋ねられると「ハンドルから検出された13か所のDNA型の検査結果は被告と女性のDNA潟が混合している」と述べた。また、男性のみが持つY染色体を調べるYファイラー検査も行い、その結果「DNA型のすべての箇所が被告と一致した」と証言した。弁護側は、鑑定結果の一部に不明な点があると主張さらに、"Yファイラー検査は個人を特定する制度が他の検査よりも劣る"との弁護側の指摘に対し、元職員は同意した。また弁護側の尋問に対し、鑑定人は汚染を防ぐクリーンルームで検査を複数回実施したと証言、「試料を保管中に喜納被告のDNA型が混入する可能性はなく、結果は正しい」と答えた。また2019年に再鑑定した別の鑑定人も証言台に立った。2019年の再鑑定では、喜納被告と会社員女性以外のDNA型も検出されている。佐藤裁判長に第三者のDNA型が検出された点を問われると、「結果の解釈は困難だが、喜納被告と女性のDNA型は検出されている。2014年の結果との矛盾はない」と答えた。
 25日の第7回公判で、検察側証人の玉木敬二・京都大教授(法医学)は鑑定結果について「被害者と喜納被告の混合型と全く一致する。第3者の混入は否定しないがわずかだ」と主張。県警科学捜査研究所の鑑定方法は「独自の基準で国際的に見ても厳しく信用できる」と述べた。弁護側証人の本田克也・筑波大名誉教授(同)はDNAの採取方法や採取量の問題点を指摘。「混合試料かつ微量でのDNA鑑定は難しい。鑑定に使われた試料や機械は古く、結果はできすぎで意図的なものを感じる」とした。
 26日の第8回公判で、検察側証人として被害女性や喜納被告の勤務先の同僚らが出廷した。被害女性が勤務していた製菓会社の同僚は「仕事に真面目、一生懸命だった。無断欠勤や遅刻もなかった」と女性について証言し、最後に会ったのは事件前日でその時の様子を「(山形県に)帰省し、成人式が楽しかったと話していた」と語った。さらに「犯人がいるならできる限りの重たい刑を望みます」と涙声で訴えた。喜納被告を雇っていた建設会社社長の男性は「どこにでもいるような普通の人。初日に遅刻した以外は真面目だった」と印象を語った。事件が起きた日は親睦を深めるため喜納被告と同僚ら4人を飲みに行かせたと説明。「喜納被告を雇わなければ新発田市で事件は起きなかったと、ものすごく後悔している。こんな残酷なことができる人間がいるのか」と述べた。事件当日に喜納被告と飲酒をしていた同僚の男性も出廷し、午前0時半ごろから飲み始め、午前3時過ぎ、二軒目に向かう途中で喜納被告がいなくなったと証言。電話をすると喜納被告は「コンビニでトイレをしていた」と答え、直後に道端で姿を見かけたものの二軒目の店に現れず、約16時間後の午後7時過ぎ、仕事のため喜納被告を自宅まで迎えに行った際には「具合が悪く歩いて帰った」と話していたと説明した。その日の被告の服装について、「つなぎに黒の編み上げの靴」と証言した。一方、弁護側が同日夜の被告の様子を問うと「変わったことはなかった」と話した。
 27日の第9回公判で、遺体発見現場近くに住む女性が証人として出廷。女性は事件当日午前9時過ぎ、犬の散歩に出かけたところ近所では見かけない男に会い声をかけたと証言している。検察側から男との会話の内容を尋ねられると「車を落としたから仲間を呼びたい。公衆電話はどこかと聞かれた」と証言した。またその時の男の服装について、「つなぎに黒の編み上げの靴」と証言した。一方、弁護側から会話をした男の名前を聞いたか尋ねられると「名前は聞いていない」と答えた。
 31日の第10回公判で、事件現場の新発田市本間新田で客を乗せたタクシー運転手が出廷。事件当日、配車の連絡を受けて同市本間新田の公民館へ向かったと証言。「途中で『おーい』と手を振る男がいたので「せきもと」と名乗る予約客か確認して午前10時半ごろに乗せ、約15分後に当時被告が住んでいたアパート近くにある諏訪町のコンビニで降ろした。本間新田で配車は何十年もなかったので印象に残っている」と述べた。検察側が客の特徴について尋ねると、タクシー運転手は短髪・細身の男性でグレーのつなぎを着てスニーカーをはいていたと証言した。弁護側がタクシーに乗せた男性は喜納被告だったのかと尋ねると、「顔は覚えていない」と話した。
 同日午後、喜納被告が立ち寄ったコンビニの店員への証人尋問が行われた。被告は当時同居していた妻の好きだったタバコ2つとライターを購入し、アパートに帰宅。お詫びとして妻に、タバコを渡していた。
 11月1日の第11回公判で、被害者の女性の母親らが出廷。母親は喜納被告に対し「正直に話してほしいし、死刑を求めます」と訴えた。また「娘は真面目で慎重な性格。仕事を(同年)2月末に辞めて地元で調理学校に通いたいと言っていた」と証言。「ナンパについて行ったり、知らない人を車に乗せたりするような性格では絶対にない」と証言した。姉は「妹とは仲が良かった。『山形に帰って来たら一緒に住もうね』と話していた」と語り、「私の人生では欠けてはならない存在だった。なぜ妹だったのか、なぜ殺さないといけなかったのか」と訴えた。
 同日、被告の元妻は証人尋問で、同居していた事件当時の喜納被告について「私が朝、仕事に出掛けるまでに帰って来ない日が一度だけあった」とし、相談をした友人との通話記録から同年1月15日だったと証言した。この日は午前8時ごろに喜納被告から「同僚の家で飲んでいた。同僚が起きたら送ってもらう」と電話があり、自分が仕事を終えて午後に帰宅すると喜納被告がいたと述べた。さらに、喜納被告が2015年の新潟地裁での裁判員裁判で「出所を待ちたい」と証言した時の心境について、「当時は周りがすべて怖くて支えが喜納被告しかなく、依存していた」と述べた。  2日の第12回公判で、被告人質問が行われた。弁護側は、女性が行方不明になった同年1月15日の行動について質問。喜納被告は「(前日の)夜から朝まで仕事をしていたと思う」と答えた。公判では、元同僚が午前3時ごろまで喜納被告と飲酒していたが二軒目に移動中にいなくなったと証言しており、食い違いを指摘されると「他の人が言うならそうだと思う」と述べた。さらに女性の死亡には「全くかかわっていない」とし、連れ去りなどについても「記憶にない。そのようなことをしていれば少しでも記憶に残っているはずだ」と述べた。
 続いて検察側が、女性の車から女性と喜納被告の混合DNA型が検出されたことについて説明を求めると、喜納被告は「女性と面識はなく、車を運転したこともない。なぜハンドルにDNA型が付着していたのか全くわからない」と説明。また、喜納被告が服役中、母親に宛てた手紙に関し、「反省が見られず読むのが嫌になった。読まずに燃やしている」と母親が話していることを検察官から伝えられると、喜納被告は「今初めて知った」と驚いた様子だった。
 また遺族の弁護士から受け止めを問われた喜納被告は、「気持ちは分かるが自分(が犯人)でないので申し上げられることはない」と述べた。
 7日の論告求刑公判で、被害者参加制度で遺族代理人の弁護士が意見を述べ、DNA型鑑定などで喜納被告の関与は明確と主張。喜納被告から反省や謝罪の言葉は一切なく「極刑を科すのが相当だ」と訴えた。
 検察側は論告で、女性の死因は溺死もしくは窒息死で、確定的殺意を持って殺害した事件であると主張。遺体発見現場近くに放置された女性の車のハンドルから、女性と喜納被告の混ざったDNA型が検出されたこと、事件当日の女性の通勤時間、経路近くに被告がいたこと、などを挙げ、犯人性の根拠とした。量刑については、被告が本件の約5カ月前から、4人の女性に同種のわいせつ略取、強姦致死などの犯行に及んでいたことに触れ、二重処罰は許されないとしながらも犯行に至る重要な経緯として考慮することは許されると主張。最高裁が死刑判断の基準として9項目を挙げた「永山基準」(1983年)に照らしつつ、「被害者が1人だから結果が軽いとは言えない」と指摘。喜納被告が7年半にわたって服役して矯正教育を受けたにもかかわらず、別の女性に対する強姦致死事件などを起こした点も踏まえ、死刑求刑を決めたとした。
 弁護側は最終弁論で、本件は事故などによる溺死の可能性が高いと主張。また強制わいせつの被害があったということも間違いないとは言えず、着衣の乱れも動物などの影響の可能性を示唆。また「付着物から検出された混合DNA型には3人分のDNAが含まれている可能性がある」などと強調。8年前の出来事で喜納被告の記憶や証人出廷した目撃者の証言も「曖昧だ」と主張した。そして被告が犯人であることが間違いないとは言えない、として無罪を主張した。
 最終意見陳述で喜納尚吾被告は、「最初の罪状認否でも言った通りこの件にまったく関係していません。分かることは何もありません」と述べた。
 判決で佐藤裁判長は、主文を後回しにして判決理由から読み始めた。
 争点となった「事件性」について、佐藤裁判長は「現場の水深は浅く、事故であれば被害者がケガを負っているはずだが、目立った外傷がなく、自殺を決意した人が選ぶ場所ではないので、自殺や事故により窒息死したことも認められない。弁護側の主張は抽象的な可能性のみで無理がある。被害者に殺意を持って、顔面を水面に水没、または鼻と口を圧迫して窒息死させたことは、取り調べられた証拠によって、証拠十分である」として、事件性を認めた。さらに「犯人性」について、「女性の車から検出された混合DNAは、仮に3人目のDNAが含まれていたとしても少量であり、喜納被告と女性のDNAが混合したと考えて矛盾はない」とするとともに、遺体発見現場付近で男を目撃した人が18枚の写真から喜納被告を指し示せた点などから、目撃証言による信憑性は高いと判断し、喜納被告が犯人だとした。そして「(すでに無期懲役が確定した)事件が発生してから間もない時期の犯行で、常習性が非常に高い」とするとともに、「女性をわいせつ目的で略取して、被害を与えた女性を殺害までしている。本件の犯行は極めて悪質。殺人の点についても動機や犯行自体は不明なものの、被害者の落ち度は全くない中での犯行であり、酌量の余地はない。犯行への関与を否認するなど、反省の情が見られない」と断罪した。そして量刑について、「類似の判例をみるとほとんどが無期懲役となっている。死刑を選択されたものは犯行の悪質さが抜きん出ているため、同じように論ずることはできない」として無期懲役を言い渡した。
 裁判長は最後に喜納被告に対して「強い非難の気持ちを持っている遺族の気持ちを真摯に受け止めてほしい」と語りかけた。
備 考
 喜納尚吾被告は沖縄県石垣市出身。那覇市の風俗店で働いているとき、寝たばこをごまかそうとカーテンに火を付け、現住建造物等放火未遂などの罪で懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を受けた。執行猶予中の2004年、石垣市の団地の駐輪場で女性を襲い、強姦致傷などの罪で懲役5年の実刑判決。執行猶予を取り消され、29歳までの約7年半を刑務所で過ごした。
 出所後は仙台市内で風俗店の運転手として働いた後、各地を転々とし、結婚後の2013年7月に新発田市に転居していた。
 2013年11月、新発田市内の路上でパート女性(当時22)を刃物で脅し車で連れ去って強姦し、顔を殴るなどして死亡させた強姦致死事件や、同8~12月にも別の女性3人に対する強姦や強姦未遂事件で2014年5月9日に逮捕。2015年12月10日、新潟地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2016年11月11日、東京高裁で被告側控訴棄却。2018年3月8日、被告側上告棄却、確定。
 他に2013年9月21日、新発田市内の駐車場で車両4台が燃える火災があり、うち1台から同市の女性(当時24)が遺体で見つかった事件についても喜納被告の関与が疑われた。

氏 名
足立朱美(48)
逮 捕
 2018年6月20日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、名誉毀損、器物損壊
事件概要
 水道工事会社社長の足立朱美被告は2018年1月20日、堺市中区の父親(当時67)が住む事務所兼住宅で、糖尿病を患う父親と母親に睡眠薬が入った甘酒を飲ませたのちに父親へインスリンを多量に投与し、父親は低血糖状態で病院に運ばれた。父親は25日に退院したが、足立被告は25日午後4時40分から26日午前10時10分ごろまでの間、再び父親と母親に睡眠薬が入った甘酒を飲ませたのちに父親へ多量のインスリン製剤を投与した。父親は再び低血糖状態で病院に救急搬送され、脳死状態で入院した。父親は6月28日、低血糖脳症で死亡した。
 足立被告は3月27日午後3時~6時、父の事務所兼住宅の2階別室で、母親(当時67)に睡眠導入剤を混ぜた抹茶オーレを飲ませて眠らせた。そして呼び出していた別の建築会社社長の弟(当時44)を睡眠薬で眠らせ、トイレのタンクの上で練炭を燃焼させて一酸化炭素中毒により殺害した。
 同日午後7時頃、足立被告から電話で「弟がいない」と告げられた弟の妻(当時37)が実家へ駆け付けたところ、2階の居間で、意識がもうろうとしている母親を発見。体を揺さぶったが、ろれつが回らず、話せない状態だった。そして倒れている弟を発見。病院に搬送されたが、同日夜に死亡が確認された。
 足立被告は弟の妻に、パソコンで書かれた遺書が見つかったと手渡した。「遺書」には1月に倒れた父親について、弟がインスリンを投与したため意識不明になったという趣旨の記述や、弟が父と姉のために金策に走り回ったが失敗したことを苦に自殺したように装った文面だった。しかし文章の特徴などが異なっていた。さらに足立被告の住宅ローンを父親が肩代わりしたことについて、弟が嫉妬したとの趣旨の記述があったが、弟はその事実を知らなかった。母親はこの話を弟が知らないことを警察に証言している。さらに弟はリゾートホテルの会員権を購入して家族で行く準備をしており、自殺の動機がなかった。弟はパソコンで手紙を書いたことがない、と妻は不自然さを指摘し、警察に他殺だと強く訴えた。
 大阪府警は当初自殺とみて司法解剖しなかったが、トイレには接着剤で目張りがされていたものの接着剤の容器は別の部屋から見つかり、トイレタンクの上には鍋に入った状態で練炭があったが火を付ける道具はトイレ内にないなどの不審点があった。大阪府警は事件性が明白な場合に裁判所の令状を取って行う司法解剖ではなく、死亡翌日、明らかな事件性がなくても家族の同意を得なくても警察の判断だけで行える死因・身元調査法に基づく「新法解剖」を実施し、弟の体内から睡眠薬の成分を検出した。足立被告が処方された睡眠薬と成分が一致し、立件に向けた捜査が始まった。
 死亡から1カ月後の4月27日から5月中旬にかけ、弟の自宅ガレージにある車や自転車に赤い塗料が吹き付けられ、近所には弟の妻を中傷するビラが入った封筒もまかれた。ビラにはフリーライターが取材した体裁で「自殺に追い込み、まんまと社長の座を手に入れた」などと、会社を妻や同社幹部が乗っ取ったと中傷する内容。逆に足立被告については「お姉様が犯人の可能性はない」「(犯人扱いには)皆憤る」などと関与が否定されていた。弟宅の周辺の防犯カメラ映像には足立被告と似た女が写っていた。
 妻から相談を受けた府警は5月24日、中傷ビラに絡む名誉棄損容疑などで足立被告宅や関係先を捜索。塗料の吹き付けに使ったとみられるスプレー缶や、封筒に入った中傷ビラなどが見つかった。さらに足立被告のパソコンやプリンタを押収。解析で弟の遺書を作成した痕跡が確認された。また文書が作成された時刻に弟が別の場所にいたことも判明した。プリンタでビラを印刷した痕跡も見つかった。スマートフォンの検索履歴にも練炭自殺の方法や「インスリン」「低血糖」などを検索していた内容があった。

 水道工事会社は足立被告の父親が1974年に創業。2012年に跡を継ぐはずの弟が別の建築会社を設立し、足立被告が2015年ごろに父の後を継いだ。互いに取引関係にあり、仕事上でも多くの接点があったが、2人は会社の継承を巡ってトラブルになっていた。足立被告は経営の苦悩をブログに記載。2014年9月には、後を継がなかった弟を「弟は挫折を知らず甘い」などと批判していた。だが、弟の会社は業績が好調なのに対し、足立被告の会社の売上高は2年間で半減し、2016年12月期は約1,000万円の赤字だった。父親時代の負債も残っていた。

 6月20日、大阪府警は足立朱美被告を、弟への殺人容疑で逮捕した。7月11日、大阪地検は足立被告を殺人罪で起訴した。7月23日、大阪府警は名誉毀損と器物損壊の疑いで足立被告を再逮捕した。10月17日、大阪府警は父親の殺人と殺人未遂容疑で足立被告を再逮捕した。父親の遺体から足立被告が処方された睡眠薬と同じ成分が検出された。11月7日、大阪地検は父親への殺人罪で足立被告を追起訴した。
裁判所
 大阪地裁 坂口裕俊裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2022年11月29日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年8月22日の初公判で、足立朱美被告は「特に何も申し上げることはございません」と述べ、坂口裕俊裁判長の「黙秘か」との質問にも同じ言葉を繰り返した。弁護人は「起訴事実のすべてを争います」と述べた。
 冒頭陳述で検察側は、父親は糖尿病治療でインスリンを常用しており、足立被告が事故に見せかけようと考えたと指摘。弟が父親の体調急変について、足立被告の関与を疑っていたと述べ、発覚を恐れた足立被告は弟名義の遺書を自ら用意し、練炭自殺に見せかけた事件を計画したと主張した。さらに、一連の犯行を疑った弟の妻らについても足立被告が「中傷する文書を撒いたり、車などにスプレーを吹きかけ汚損した」とも主張した。
 弁護側は、検察側が死刑を求刑する可能性もある事件だと強調し、間違いないと考えられる場合でなければ有罪とすることはできないと訴えた。
 続いて父親の死因についての審理に入った。父親は事件前からステージ4の大腸がんを患っていたことが明らかにされた。父親は大腸がんを手術で切除したが、のちに肺や肝臓に転移が見つかった。強い副作用に苦しんだ父親が抗がん剤治療の中止を望み、放射線治療を行なっていたものの、がんは広がりつつあった。検察側は、父親が半年から1年の余命があり、犯行がなければ6月には死亡していなかったと訴えた。一方の弁護側は、父親の死亡とインスリン投与との因果関係を否定。父親は3月ごろには一時回復しており、亡くなった直接の原因はがんの悪化だったと反論した。
 8月25日までの公判では、父親の主治医や、法医学医、腫瘍内科医らが証人出廷。検察側の証人である主治医と法医学医は「インスリン投与による低血糖脳症が死因」、弁護側の証人である腫瘍内科医は「がんが死因」との見解を示した。父親が事件前に余命宣告を受けていたかどうかについて、主治医は具体的な話ができないまま父親が意識不明になったと証言するも、母親は2017年9月に治療はもう無理なので余生を楽しんでほしいという言い方をされたと証言するとともに、父親は延命治療を望んでいなかったと述べた。
 9月2日の第5回公判で父親の死因をめぐる中間論告・弁論が行われた。検察側は、足立被告が父親に多量のインスリンを投与したため、父親は低血糖脳症を発症して寝たきりとなり、がんの適切な治療を受けられなくなったと指摘。「栄養の摂取が困難になり、誤嚥性肺炎を発症して衰弱し、死亡した」として、インスリンの投与に伴う殺人事件だと主張した。弁護側は中間弁論で、父親の状態は改善していたとし、誤嚥性肺炎による衰弱を否定し「家族が栄養の減量を希望し、父親が延命治療を望まなかった」とし、がんによる病死だと反論した。
 12日の第6回公判から、父親の死亡に関する事件性、足立被告の犯人性の審理が始まった。検察側は冒頭陳述で、父親殺害を裏付ける直接的な動機について「被告が黙秘しており、明らかにならない」と説明した。その上で、被告がインスリンを投与したとされるころに「インスリン 大量摂取」「低血糖 死亡」などとインターネットで検索していたことなどを挙げ、「(間接的な)事実を積み重ねることで、犯人だと証明できる」と述べた。父親の毛髪からは睡眠薬の成分が検出されたとした。
 弁護側は「起訴状の全てが間違いないと証明しなければ有罪にはできない」と指摘。仮に足立被告がインスリンを投与したとしても、父親が使っていた2種類のうち、どちらをどれだけ投与したかを立証する必要があると主張した。また、足立被告は末期がんの父親のため健康食品や漢方薬を買っていたことや、搬送後に被告が希望した気管挿管の処置によって父親の容体が安定したことなどを挙げ、父親を殺害する動機もないと述べ、犯人性を否定した。そして「被告以外が注射した可能性がないか検討する必要がある」と述べた。
 10月3日、弟の事件に対する事件性や足立被告の犯人性についての審理が始まった。検察側は冒頭陳述で、足立被告は、弟が父親にインスリンを投与したと見せかけるため、パソコンで弟の遺書を偽造し、自殺を装って弟を殺害したと主張。練炭を購入したのは、足立被告だったと述べた。さらに弟から検出された睡眠薬の成分は被告が処方されていたものと同一だったとして、「用意周到な犯行」と指弾した。
 弁護側は無罪を主張。弟の身長は、被告の156cmを上回る170cmだとし「被告が、1人で弟をトイレまで運び、練炭を置いて死亡させることができるのか」などと複数の疑問点を指摘。「間違いなく事実と言えるかどうか慎重に考えてほしい」と訴えた。
 10月17日の公判で、二つの事件に対する足立被告の犯人性についての中間論告と弁論が行われた。検察側は、父親が救急搬送される前、一緒にいた足立被告がネットで「インスリン注射部位」などと何度も検索していたと指摘。長年、自分でインスリンを注射していた父親が、過失で過剰投与したとは考えられないとし、足立被告がインスリンを投与して殺害したと主張した。また、弟の死亡を巡り、実家のパソコンから弟の遺書の作成履歴が見つかったが、作成された時間帯や、足立被告のスマホの位置情報の履歴などから、弟ではなく、足立被告が作成したものだと主張。弟の臓器が保存されたホルマリン液から、足立被告に処方された睡眠薬の成分が検出されたうえ、練炭は足立被告の名義でネット注文されていたとし「弟を眠らせ、自殺に見せかけて殺害した」と述べた。
 弁護側は中間弁論で、「インスリン注射部位」などの検索について、なぜ検索したのかや、検索して何を認識したのかまでは分からないと指摘。検索履歴に「殺す」という言葉が一切ない点を挙げ「死ぬまでの経過を心配して調べた可能性もある」と述べた。また、弟の遺書の作成履歴があった4日間のうち、足立被告の位置情報の履歴と合致するのは3日間だけであり、位置情報だけでは足立被告が作成したと立証できていないと指摘。遺書作成は被告ではなく、第三者がパソコンを遠隔操作した可能性を挙げた。また、足立被告が弟に睡眠薬を飲ませたとする根拠は乏しく、第三者が足立被告の名義を使って練炭を買った可能性もあるとし、犯人性を否定した。
 その後の公判では、弟の妻らに対する名誉棄損などについて審理された。
 11月7日の論告で検察側は、実家で起きたいずれの事件も犯行が可能だったのは、足立被告だけと指摘。事件に用いられた睡眠薬と同じ成分の薬が足立被告に処方されていたほか、事件前後にスマートフォンなどで「低血糖」「一酸化炭素中毒」などと検索していたことも踏まえ、「用意周到な犯行で、強い殺意があった」と指弾した。動機について検察側は、 「父親死後に銀行から預金が引き出された」などとし、金銭が動機である可能性が高いとした。そして「事前に道具を購入するなど高い計画性を持っていた。父の殺害から約2か月後、自分が怪しまれないように弟を犯人に仕立てあげて殺害し、人の生命を尊重する気持ちを持たず極めて強く非難されなければならない」などと指摘し、死刑を求刑した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「父親の死亡とインスリン投与の因果関係や殺害の動機が立証されていない。父親が亡くなったのは末期がんの影響で、被告はインスリンを投与しておらず、殺害動機はない」と強調。また眠らせた弟を被告がトイレまで運ぶのは困難だとし、殺害した証拠はないと訴え、両方の事件について無罪を主張。裁判員に、「被告人が間違いなく犯人と言えるのか慎重な判断が必要」と訴えた。また、「例え足立被告が犯人だとしても、過去の事件の洗礼と比べると計画性や残虐性などは認められず、生命の軽視の度合いは著しく高いとは言えず、死刑は妥当でない」と主張した。
 足立被告は初公判の罪状認否後はすべて黙秘していたため、被告人質問は行われていない。最終意見陳述で足立被告は裁判官に意見を問われるも、「特に申し上げることはございません」とだけ述べた。
 判決で坂口裁判長は、まず父親の事件について言及。父親が低血糖脳症によって誤嚥性肺炎を引き起こし、摂取する栄養量の低下につながったとして、救急搬送された際の血糖値や意識障害の状況などを踏まえ、インスリンの過剰投与と死亡との因果関係を認め、弁護側の主張を退けた。そして父親が低血糖状態になった際、一緒にいたのは母親と被告だけだったと指摘。被告は携帯電話で「低血糖死亡」と何度も検索していたことなどから、インスリンを投与したのは被告だと判断した。父親が低血糖状態になった後も長時間放置しており、殺害の意図もあったと認めた。
 続いて弟の事件について言及。事件前、被告宅に練炭が配送されていたことや、弟の遺体から被告に処方された睡眠薬の成分が検出されたことなどから、被告による殺害と認定。事務所のパソコンの使用履歴などから弟名義の遺書は被告が実家のパソコンで作成したもので、1か月前から嘘の遺書を準備し、練炭自殺を装って殺害したとした。
 そのうえで動機について触れるとともに量刑を検討。弟の殺害は「足立被告が関わっていると疑っている弟に父親殺害の罪をなすりつける目的で、生命軽視の程度は大きく、悪質さは他の死刑判決事案と比べても遜色ない。当時中高生の子供たちの成長を見届けることもできずに亡くなった無念さは察するに余りある」と指弾した一方、父親を殺害した動機は不明だとし「突出した悪質性があるとは言えない」と判断。「遺族である母親が極刑を望んでいないなど、死刑の選択が真にやむを得ないとまでは言えない」と結論づけた。
備 考
 足立朱美被告は郵便局に勤務する夫、子供らと暮らしていたが、金銭問題でトラブルが絶えず、離婚問題が浮上。子供の親権をどちらが有するか、夫婦間で揉めていた。2006年8月、足立被告は夫の定期に大麻を隠し、夫が仕事に出て行くと、匿名で「大麻を持っている男が駅にいる」と警察に通報。警察が駆け付けた。このとき、事情をよく知らない女友達に夫の細かな特徴を伝えて『自分は顔を知られているので代わりに警察に突き出してほしい』と依頼。通報で駅にやってきた警察を女友達に誘導させ、夫を捕まえさせた。しかし、夫は大麻の所持を否認。女友達に警察が詳しく事情を聴くと頼まれたと供述し、足立被告の自作自演が発覚し、足立被告は大麻取締法違反(所持)容疑で書類送検された。足立被告と夫はその直後、離婚している。

 検察・被告側は控訴した。




※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。

※高裁判決
 内藤昌弘被告(2022年3月23日、一審無期懲役判決)は、2022年10月21日に東京高裁で被告側控訴が棄却されている。詳細が不明なのでここに記す。



【参考資料】
 新聞記事各種



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