求刑無期懲役、判決有期懲役 2024年





 2024年に地裁、高裁、最高裁で求刑無期懲役に対し、有期懲役・無罪・差し戻しの判決(決定)が出た事件のリストです。目的は、無期懲役判決との差を見るためですが、特に何かを考察しようというわけではありません。あくまで参考です。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。

What's New! 4月17日、東京高裁は元少年被告の一審懲役27年判決(求刑無期懲役)に対する被告側控訴を棄却した。




【最新判決】

氏 名
元少年(27)
逮 捕
 2020年11月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、窃盗、風営法違反、傷害、窃盗未遂、犯人隠避教唆、道交法違反、過失運転致傷
事件概要
 茨城県ひたちなか市の無職の元少年(事件当時19)は、水戸市の解体業、内田潤被告は共謀。2016年2月1日午前3時から同5時45分ごろまでの間、城里町の資材置き場で積まれていた銅線などを盗むためトラックに載せていた際、敷地内に住む銅線やアルミを扱う古物商の男性(当時77)に見つかったため、男性の頭や顔を殴り、首を両手で締め、顔や両手首に粘着テープを巻き付けるなどして死亡させ、銅線など約6トン(計108万円相当)を奪った。
 内田被告は当時1人で解体業を営んでおり、男性とは資材の売買といった取引を通じた面識があった。元少年は、内田被告の下で働いていたことがあった。
 1日朝、男性の妻が男性の遺体を発見した。
 県警は2020年10月、内田被告ら2人が男性殺害の数時間前に水戸市内の建設会社からコンテナ1台(約6万円相当)を盗んだとして窃盗容疑で逮捕。盗んだコンテナが男性殺害後の敷地内に残されていたことから、捜査本部は慎重に裏付けを進めた。
 捜査本部は11月9日、別の事件で服役中だった内田被告と、別の事件の傷害罪などで公判中だった元少年を強盗殺人の容疑で逮捕。水戸地検は2人を強盗致死罪で起訴した。同地検は罪名変更の理由を明らかにしていないが、殺意の認定が困難と判断したとみられる。元少年は逮捕時に成人だったため、20歳未満が対象の少年法ではなく、成人と同じ刑事訴訟法の手続きが適用されて裁判員裁判で審理される。
裁判所
 東京高裁 安東章裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2024年4月17日 懲役27年(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告側は強盗致死に関して無罪を主張したが、裁判長はすべて退けた。
備 考
 内田潤被告は2022年2月16日、水戸地裁(小川賢司裁判長)の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し、一審懲役30年判決。判決は、被害者の首を両手で絞め、顔などに粘着テープを巻き付けるなど、「死因となった暴行を加えたのは共犯者」と認定した。2023年8月30日、東京高裁で一審破棄、懲役28年判決。地裁判決後、遺族に1千万円を弁償した点などを考慮した。2023年11月29日、被告側上告棄却、確定。

 2022年12月14日、水戸地裁で求刑無期懲役に対し、一審懲役27年判決。



【2024年 これまでの有期懲役、無罪判決】

氏 名
洲崎秀輝(55)
逮 捕
 2014年10月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反、組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)
事件概要
 特定危険指定暴力団「工藤会」系組幹部の洲崎秀輝被告は、他の被告と共謀して以下の事件を起こした。
  • <自治総連合会長宅銃撃事件>
     2010年3月15日午後11時13分ごろ、北九州市小倉南区で、工藤会の新事務所開設に反対して暴力団追放運動に取り組む自治総連合会長宅の勝手口から男性2人が拳銃を6発撃ち、寝室にいた会長(当時75)とその妻(当時75)夫婦を殺害しようとした。夫婦にけがはなかった。(殺人未遂、銃刀法違反) 洲崎被告は実行犯を担った。
  • <建設会社会長殺人事件>
     2011年11月26日午後9時過ぎ、北九州市小倉北区で、型枠工事会社会長の男性(当時72)の自宅前路上で拳銃を2発撃ち、うち1発を首に命中させて失血死させた。(殺人、銃刀法違反) 洲崎被告は送迎役を担った。
     会長は同市周辺の型枠工事業者で作る団体の会長を務めるとともに、暴力団排除活動をしていた。
  • <飲食店経営者女性他刺傷事件>
     2012年9月7日午前0時58分、北九州市小倉北区のマンション敷地内駐車場で、男がタクシーで帰宅したスナック経営の女性(当時35)に殺意を持って持っていた刃物で複数回切りつけ、女性の左顔面を切りつけ、臀部を1回突き刺して約4か月の重傷を負わせた。さらに男は、女性を助けようとしたタクシー運転手の男性(当時40)を殺意を持って切り付け、首や左手などに重傷を負わせた。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)) 洲崎被告は見張り役を担った。
     女性は2006年ごろに別のスナックを経営を始めたところ、田中組組長であった菊池被告から要求を受け、みかじめ料として月5万円を支払ったり、菊池被告に誕生日プレゼントなどを渡していた。2010年2月から飲食店ビルBの3Fで別のスナックの経営を始めるにあたり、知人である別の工藤会系暴力団の組員に組員を一切入れないよう依頼し、みかじめ料を支払った。そして田中組にはみかじめ料の支払いを止め、田中組組員の来店を断った。また菊池被告が直接来た時も退席を促すような接客をさせた。
     被害者の女性は、標章ビル放火事件で標章などに赤スプレーを吹き付けられている。
  • <飲食店経営会社役員男性刺傷事件>
     2012年9月26日午前0時38分、北九州市小倉北区のマンション敷地内で、帰宅した飲食店経営会社役員の男性(当時54)の腰などを刃物で3回刺し、左臀部や右大腿部に重傷を負わせた。(傷害) 洲崎被告は送迎役を担った。
     男性は福岡県暴力団排除条例の改正に基づき、福岡県が2012年8月から始めた繁華街からの暴力団排除を目的に、暴力団排除特別強化地域で営業する飲食店等に「暴力団員立入禁止」等と記載知れた所定の標章を店に掲示していた。男性の兄は暴力団追放運動を実施していた会の副会長であり、標章制度を推進する活動を行っていた。男性は転居し、店から標章を外した。
  • <看護師刺傷事件> ※本事件では無罪判決
     2013年1月28日午後7時4分頃、福岡市博多区の歩道で、黒いニット帽にサングラスをかけた男が、北九州市小倉北区の美容整形医院から帰宅中だった看護師の女性(当時45)を後方から殺意を持って刃物で数回切り付け、顔などに重傷を負わせた。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)) 洲崎被告は見張り役を担った。
     被害者が勤務していた美容整形医院で下腹部の手術を受けた野村被告が、術後の経過や被害者の対応に不満や怒りを抱いての犯行。
 2014年10月1日、看護師刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で逮捕。2015年2月16日、歯科医師刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で再逮捕。2017年1月19日、建設会社会長殺人事件の殺人他容疑で再逮捕。6月2日、飲食店経営者女性他刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で再逮捕。
裁判所
 福岡地裁 伊藤寛樹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2024年1月18日 懲役30年
裁判焦点
 裁判員裁判の対象から除外された。
 2021年7月19日、「自治総連合会長宅銃撃事件」の初公判で、洲崎秀輝被告は起訴内容について「黙秘します」などと述べ、弁護側は争う姿勢を示した。初公判では瓜田太被告、中西正雄被告と共同であり、両被告も黙秘した。
 検察側は冒頭陳述で、瓜田被告が銃撃準備の指示や被害者の行動確認をし、中西被告が銃撃して、洲崎被告が運転するバイクで逃走したと指摘した。
 事件では同会関係者8人が起訴され4人が既に有罪判決を受けたが、その1人で同会を離脱した元組員が3被告も絡んだ事件の指示や状況を供述しており、その信用性が主な争点。瓜田、洲崎両被告の弁護人は冒頭陳述で「元組員の供述には問題があり(証拠として)採用できない」と主張し、中西被告の弁護人も「元組員の証言は信用できず中西被告は事件に関与していない」と無罪を訴えた。
 その後分離された。

 新たに瓜田太被告、IT被告、洲崎秀輝被告との共同審理となった。
 2022年1月17日の初公判で、3被告は全ての起訴事実について争うと、起訴事実を否認した。
 検察側は冒頭陳述で、各事件の動機について、野村被告が看護師に不満を持っていたことや、暴力団排除に取り組む市民らへの見せしめが目的だったと主張した。
 その後、洲崎被告は分離された。
 2023年7月20日の公判における論告で検察側は、一連の事件が工藤会の意に沿わない市民への見せしめや組織の利益維持などが目的だったと主張。洲崎被告は射殺事件では実行犯の送迎役、自治総連合会長宅銃撃事件では実行役を務めるなど重要な役割を担ったとして、「市民が標的となる事件を2度と発生させないためにも、厳罰をもって臨み、犯行が割に合わないことを知らしめる必要がある。生涯にわたって償いの日々を送らせるほかない」と述べた。
 10月19日の最終弁論で、弁護側は「射殺事件では、被告は何が起きるか分からないまま実行犯をバイクに乗せただけだ」と主張した。その上で「実行犯には殺意はない。また、被告は実質的な連絡をしてないことから、共謀は認められない」と述べ、5つの事件すべてで無罪を主張した。
 判決で伊藤裁判長は、工藤会のほかの組員の供述から洲崎被告が実行犯を乗せたバイクの運転手をしたことを認定するなど、4つの事件について洲崎被告の関与を認定。しかし<看護師刺傷事件>では洲崎被告が当日、野村被告の自宅の警護にあたっていたことから「被告に任務の分担があったとの認識には至らない」として、無罪とした。そして「拳銃発射や刃物によって6人に被害がおよび、うち1人は死亡した悪質な犯行。被告は実行犯またはその補佐役などとして積極的に関与した。組織的、計画的に行われた悪質な犯行への関与を繰り返していた」と指摘した。
備 考
 




※最高裁ですと本当は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。


【参考資料】
 新聞記事各種

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