求刑無期懲役、判決有期懲役以下 2025年


 2025年に地裁、高裁、最高裁で求刑無期懲役に対し、有期懲役・無罪・差戻しの判決(決定)が出た事件のリストです。目的は、無期懲役判決との差を見るためですが、特に何かを考察しようというわけではありません。あくまで参考です。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。

What's New! 2月20日、福岡高裁は洲崎秀輝被告の一審懲役30年判決(求刑無期懲役)に対する被告側控訴を棄却した。


【最新判決】

氏名 洲崎秀輝(56)
逮捕 2014年10月1日
殺害人数 1名
罪状 殺人、銃刀法違反、組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)
事件概要  特定危険指定暴力団「工藤会」系組幹部の洲崎秀輝被告は、他の被告と共謀して以下の事件を起こした。
  • 〈自治総連合会長宅銃撃事件〉
     2010年3月15日午後11時13分ごろ、北九州市小倉南区で、工藤会の新事務所開設に反対して暴力団追放運動に取り組む自治総連合会長宅の勝手口から男性2人が拳銃を6発撃ち、寝室にいた会長(当時75)とその妻(当時75)夫婦を殺害しようとした。夫婦にけがはなかった。(殺人未遂、銃刀法違反) 洲崎被告は実行犯を担った。
  • 〈建設会社会長殺人事件〉
     2011年11月26日午後9時過ぎ、北九州市小倉北区で、型枠工事会社会長の男性(当時72)の自宅前路上で拳銃を2発撃ち、うち1発を首に命中させて失血死させた。(殺人、銃刀法違反) 洲崎被告は送迎役を担った。
     会長は同市周辺の型枠工事業者で作る団体の会長を務めるとともに、暴力団排除活動をしていた。
  • 〈飲食店経営者女性他刺傷事件〉
     2012年9月7日午前0時58分、北九州市小倉北区のマンション敷地内駐車場で、男がタクシーで帰宅したスナック経営の女性(当時35)に殺意を持って持っていた刃物で複数回切りつけ、女性の左顔面を切りつけ、臀部を1回突き刺して約4か月の重傷を負わせた。さらに男は、女性を助けようとしたタクシー運転手の男性(当時40)を殺意を持って切り付け、首や左手などに重傷を負わせた。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)) 洲崎被告は見張り役を担った。
     女性は2006年ごろに別のスナックを経営を始めたところ、田中組組長であった菊池被告から要求を受け、みかじめ料として月5万円を支払ったり、菊池被告に誕生日プレゼントなどを渡していた。2010年2月から飲食店ビルBの3Fで別のスナックの経営を始めるにあたり、知人である別の工藤会系暴力団の組員に組員を一切入れないよう依頼し、みかじめ料を支払った。そして田中組にはみかじめ料の支払いを止め、田中組組員の来店を断った。また菊池被告が直接来た時も退席を促すような接客をさせた。
     被害者の女性は、標章ビル放火事件で標章などに赤スプレーを吹き付けられている。
  • 〈飲食店経営会社役員男性刺傷事件〉
     2012年9月26日午前0時38分、北九州市小倉北区のマンション敷地内で、帰宅した飲食店経営会社役員の男性(当時54)の腰などを刃物で3回刺し、左臀部や右大腿部に重傷を負わせた。(傷害) 洲崎被告は送迎役を担った。
     男性は福岡県暴力団排除条例の改正に基づき、福岡県が2012年8月から始めた繁華街からの暴力団排除を目的に、暴力団排除特別強化地域で営業する飲食店等に「暴力団員立入禁止」等と記載知れた所定の標章を店に掲示していた。男性の兄は暴力団追放運動を実施していた会の副会長であり、標章制度を推進する活動を行っていた。男性は転居し、店から標章を外した。
  • 〈看護師刺傷事件〉 ※本事件では無罪判決が確定。
     2013年1月28日午後7時4分頃、福岡市博多区の歩道で、黒いニット帽にサングラスをかけた男が、北九州市小倉北区の美容整形医院から帰宅中だった看護師の女性(当時45)を後方から殺意を持って刃物で数回切り付け、顔などに重傷を負わせた。(組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)) 洲崎被告は見張り役を担った。
     被害者が勤務していた美容整形医院で下腹部の手術を受けた野村被告が、術後の経過や被害者の対応に不満や怒りを抱いての犯行。
 2014年10月1日、看護師刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で逮捕。2015年2月16日、歯科医師刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で再逮捕。2017年1月19日、建設会社会長殺人事件の殺人他容疑で再逮捕。6月2日、飲食店経営者女性他刺傷事件の組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)容疑で再逮捕。
裁判所 福岡高裁 平塚浩司裁判長(判決文を書いたのは市川太志裁判長で、平塚裁判長が代読した可能性がある)
求刑 無期懲役
判決 2025年2月20日 懲役30年(被告側控訴棄却)
裁判焦点  被告側は4つの事件について「事実誤認がある」などと主張し控訴した。
 判決で裁判長は4つの事件のうちの1つである〈建設会社会長殺人事件〉について、被告が実行犯を乗せたバイクの運転手をしたと認定した一審の判決について、核心部分の信用性は保たれると指摘した。その上で4つの事件でいずれも共謀を認めた。
備考  工藤会の組員が関係した事件のうち、福岡県警が2014年9月11日に開始した「頂上作戦」以後、主に死刑や無期懲役判決を受けた受刑者、被告人(一部例外除く)が関与した事件の一覧ならびに判決結果については、【工藤會関与事件】を参照のこと。

 2024年1月18日、福岡地裁で求刑無期懲役に対し一審懲役30年判決。被告側は上告した。

【2025年 これまでの求刑無期懲役に対する有期懲役、無罪判決】

氏名 山田悠太郎(25)
逮捕 2022年3月9日
殺害人数 1名
罪状 住居侵入、建造物侵入、窃盗、詐欺他
事件概要  2022年3月8日午後7時13分~9時30分、浜松市の無職男性(当時79)方で、同居する孫であり静岡県警の元警察官で無職、山田悠太郎被告が男性、美容師である男性の妻(当時76)、近所に住む会社員の長兄(当時26)をハンマーで多数回殴るなどして殺害した。
 自宅兼美容室になっており、母屋に男性夫婦と40代の息子、別棟に美容師の娘夫婦と孫の山田被告が住んでいた。山田被告は2018年に県警の警察官になったが、虐待によるフラッシュバックの症状が出るようになり、1年後に警察官をやめている。事件当時は殺害された兄と山田被告の双子の兄を含め8人いた。
 同日午後9時35分ごろ、双子の兄が110番通報。警察官が駆けつけたところ、3人が倒れており、いずれも死亡が確認された。静岡県警は9日、祖父に対する殺人容疑で山田被告を逮捕した。
 静岡地検浜松支部は4月28日から鑑定留置を実施。2023年3月3日、殺人罪で起訴した。
裁判所 静岡地裁浜松支部 来司直美裁判長
求刑 無期懲役
判決 2025年1月15日 懲役30年
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点  2024年10月31日の初公判で、山田被告は「違います。僕は自分が人を殺した自覚がないですし、殺した記憶もないです」と起訴内容を否認した。
 検察側は冒頭陳述で、犯行時に責任能力が著しく減退していたとは言えないと指摘。被告の動機についてかつて家族から受けていたDVなどが背景にある述べ、凶器を事前に準備するなど「強固な殺意に基づく、執拗で残虐な犯行だ」と非難した。
 弁護側は、目撃者がいないことなどから、別人による犯行の可能性は否定できないと指摘。仮に山田被告による犯行だとしても家族から虐待をうけた影響で心神喪失状態にあり、「『ボーイ』という別人格で犯行に及んでおり、コントロールできなかった」として無罪を主張した。
 公判では被告の凄惨な生い立ちが明らかになり、中学生の頃まで長兄から尿をかけられたり飲まされたりしていたほか性暴力を受け、父親からは暴力を振るわれていただけでなく、目の前で母親に暴行を加える姿を何度も見せられ、祖父母からは「金をあげるから母親に暴力を振るってほしい」と依頼されていた。
 11月6日の公判で、事件当時現場にいた被告の父親が証言。父親は「被告に結束バンドで両手をきつく縛られた。被告の手に鉄のハンマーが見え、自分も助からないと思った」と語った。一方で、身動きが取れずずっと下を向いていたため、3人が殺害された状況は「分からない」と述べた。
 12日の弁護側の被告人質問で、山田被告は小学校低学年から中学2年まで父親と殺害された兄から日常的に殴られるなどの虐待を受けていたと話し、警察を退職してからは虐待を受けたトラウマから、自分の中に2人の別人格が出てきたと主張した。
 13日の弁護側の被告人質問で、山田被告は改めて「犯行の記憶はない」と話した一方、犯行についてはボウイという別人格から、「3人を殺したのは父親だと言われたが、その後、別人格のボウイから自ら殺したと説明された」と主張した。また、凶器のハンマーについても用意した記憶がなく、祖父母と兄が血を流して倒れているのを見て「パニックになった」と述べた。
 14日の検察側の被告人質問で、山田被告は別人格の「ボウイ」について、「威圧的で人をコントロールしようとする特性があった」と説明。「自分のことを神だと思っていると思う」と証言した。また被告が「ボウイ」として検察官の取り調べを受けた際の調書が読み上げられ、「ボウイ」は自身について「被告の願望で、被告の歪んだ部分から生み出された」と説明。犯行については、「悪魔である祖父母と父・兄を殺害し、悪魔払いの儀式を考えていた」としていて、「自分が殺したという事実で被告がショックを受けていて、考えが間違っていたと思ったが後悔はない」などと、供述していたことが明かされた。
 18日は被告の「犯人性」について検察側と弁護側による中間論告と弁論が行われた。検察側は「自宅にいた家族以外の犯行は考えられず凶器の金づちに被告の血液が付着していた」と指摘。「被告は虐待体験に恨みや怒りを持ち、動機を持っていた」と主張した。一方弁護側は「家族には矯正を求めるにとどまっていた」と虐待体験は動機につながらないと強調。さらに「当時家にいた家族は誰も犯行を目撃していない」「被告の自白や供述、家族の証言は信用性に欠ける」として第三者による犯行の可能性が残ると示した。
 21日、被告人質問が行われた。山田被告は犯行を行ったとしている別人格の「ボウイ」が、虐待を行っていた家族について、「事件から2年以上前には『儀式をする』『仮面を剥がす』『痛みをわからせる』などと数カ月に渡り話していたものの、事件の1年以上には言わなくなった」と語った。また「ボウイ」について、「優しく接する場面もあり、事件前は自分を守ろうとしてくれていると感じていたが、今は危険だと思うので消すことしか考えていない」と証言した。
 22日、被告の精神状態を鑑定した2人の医師が出廷。検察側の証人として出廷した医師は、犯行を行ったとする別人格の「ボウイ」について、「本人以外の誰でもなく、本人の思考に基づいて行動している」と指摘。「解離性同一性障害の影響は、犯行の記憶を思い出しにくくさせるに留まり、犯行の意思決定には関わっていない」と語った。一方、弁護側の証人として出廷した医師は「主人格は3人を殺害した記憶がなく、犯行は残忍な思考をもつボウイに交代して行われた」と指摘。主人格はボウイの行動を統制することができなかったとして、「解離性同一性障害の著しい影響を受けていた」と証言した。
 25日は検察側、弁護側それぞれの証人となっている被告の精神状態を鑑定した2人の医師への反対尋問が行われた。まず、「責任能力がある」とする検察側証人の医師は、被告について「事件以前からうそをつき、人を操ろうとする特徴があった」と強調。供述が変化していることなどから「被告は自分の病気・解離性同一性傷害を利用している」と指摘した。一方、「責任能力はない」とする弁護側証人の医師は、「ボウイと主人格の記憶が混在しているため、供述がズレるのは仕方ない」と証言。ボウイと主人格は明らかにパーソナリティが異なる存在だとして「責任はボウイにある」と話した。
 26日は裁判官らによる被告人質問が行われ、山田被告は精神状態を鑑定した2人の医師について証言。検察側の医師は「自分の持つ感覚からズレていた」とし弁護側の医師は「自分の体験とズレがない」と語りました。また亡くなった3人には「責任を感じている」と述べた。
 12月4日の公判で、亡くなった被告の兄の妻が「被害者参加制度」を利用して証言。「あの日から私と息子の時間は止まったままです。1日も忘れることはありません。被告人は別人格がいると言って許されて普通の生活をしていく。命の価値はなんなのか、3人もの命を身勝手に奪ったのだから、それに見合った罪を受け、償うべきです」と語った。
 同日の論告求刑で検察側は、3人に連続して犯行に及んでいることから、「被告の主張する人格の入れ替わりはなかった」などと指摘。弁護側証人の医師の認識を「SF、オカルト的で現在の精神医学界の主流に反する」と切り捨てた。凶器を準備したことや血の付いた犯行着衣を洗い、計画性が高く、責任能力が著しく減退していたとは言えないと指摘。凶器を事前に準備しており「強固な殺意に基づく執拗かつ残虐な犯行だ」と非難した。一方、幼少期から虐待を受けるなど特異な家庭環境が動機につながっており「一定の酌むべき事情がある」として無期懲役を求刑した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「残虐な一連の犯行は、被告の平素の性格と異なることなどから『ボウイ』という別人格が行ったものとしか考えられない。犯行は別の人格が行ったもので被告は自らの行動をコントロールできなかった」犯行で、計画性もなかったなどと主張し、無罪を訴えた。検察側証人の医師の鑑定については「前提条件に問題があり、公正さを欠くため信用できない」とした。無罪となれば、被告を入院させて治療すると訴えた。また、仮に有罪であっても減軽されるべきと主張した。
 来司直美裁判長は判決で、「犯行態様等からすれば、被害者らに対して強い怨恨や憤怒の情を抱いた犯人による犯行とみるのが自然で、被害者らの家族以外の第三者が3人を殺害した犯人である可能性は低い。被告が犯人であることを示す直接証拠がないことを踏まえても、被告が本件各犯行をした犯人であることは間違いない」と断定。そして、「犯行当日も3回の解離に関わらず客観的に見れば全体として一貫した行動が取れており連続性が保たれていること」「残虐な態様であるとはいえ異常とまでは認められないこと」「被告は日頃やさしい性格と評価されていたものの怒りの感情や攻撃的な性向も併せ持っていたこと」を理由に、犯行時の被告について「解離性同一症により解離した状態にあったことにより強い憤怒の感情にとらわれ、殺害を思いとどまろうとする感情との間に葛藤が生じにくくなり、後先を考えて行動を制御する能力が低下していたとは認められるものの著しいものではなかった」として「完全責任能力があったと認められる。弁護人の心神喪失または心神耗弱の主張は理由がない」と結論付けた。
 他方で「子供時代に被害者らと父親から性的虐待も含む身体的・心理的虐待を受け、母親による助けも受けられなかったことが原因で複雑性心的外傷後ストレス症と解離性同一症を発症し、心身の不調に苦しみ、恨みや絶望、怒りの感情から犯行に及んだものであって、被害者らの被告に対する虐待行為や不遇な家庭環境が動機の形成に影響していた」との見解を示し、解離性同一症で解離した状態にあったことにより責任能力が相当程度減退していたと認められることから「結果の重大性、犯行態様の残虐さの反面、動機に同情できる点があり、責任非難の程度が相応に軽減される。無期懲役刑に処すべき事案とまでは言い難い」と述べた。
 その上で、被告が比較的若年であり前科前歴がないことから「出所後に環境を整え、病気と向き合い適切な治療を受ければ更生する余地があることなどの事情も考慮した」と結んだ。
備考 被告側は控訴した。

氏名 吉田将豪(41)
逮捕 2022年2月24日
殺害人数 2名
罪状 逮捕監禁、強盗傷人、脅迫、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、殺人
事件概要  元指定暴力団住吉会系組幹部の吉田将豪被告は仲間3人と共謀し、2013年7月14日午後8時20分ごろ、逗子市内の地下道で酒に酔ってトラブルになった面識のない稲川会系組員の男性(当時30)の胸をナイフで刺すなどして殺害した。吉田被告と同行していて止めに入った住吉会系暴力団組員の男性(当時28)にも小腸損傷などのけがを負わせた(注:この件については無罪判決)。
 県警は目撃者の証言や近くの防犯カメラの映像などから9月25日、吉田被告ら3人を殺人容疑で逮捕した。うち1人は止めに入って刺された男性である。30日、さらに1人を逮捕した。しかし横浜地検は12月24日、男性4人を不起訴とした。
 横浜第一検察審査会は目撃証言などから2015年4月16日付で、吉田将豪被告を不起訴とした横浜地検の処分について不当と議決した。他の3人の不起訴は相当だと判断した。
 横浜地検は2016年3月23日、吉田将豪被告を再び不起訴処分にし、発表した。

 吉田将豪被告は仲間と共謀し、2014年3月14日、松戸市の路上で同市に住む暴力団幹部の男性(当時35)の頭を金属バットで複数回殴打して車で連れ去り、同市の建物などで拉致・暴行して死亡させた。さらに遺体を茨城県内の山林に遺棄した。
 同日午後10時22分、「ケンカしているような声がする」と、近隣住民らから110番があった。翌15日には、男性の母親が松戸署に行方不明届を出した。路上には男性の血痕が残っており、県警は男性が何らかのトラブルに巻き込まれたとみて捜査したが難航した。
 吉田将豪被告は2020年4月には、松戸市の路上で別の男性(当時41)に金属バットで殴るなどの暴行を加えて同市内の家屋に監禁して金品を奪い、全治約2週間のけがを負わせた。

 松戸市の事件で2021年5月に有力な情報ががもたらされた県警は、関係者への聴取などから遺棄現場を絞り込み、2021年から茨城県内の山林を捜索。2022年2月4日に白骨化した遺体を発見、DNA型鑑定で男性と判明した。県警は2022年2月24日、吉田被告ら7人を殺人と逮捕監禁致傷容疑で逮捕した。死体遺棄罪は、公訴時効(3年)が成立している。その後2人が逮捕された。
 千葉地検は3月16日、逮捕監禁致死と生命身体加害略取の罪で吉田将豪被告ら男6人を起訴した。地検は「殺意を認定できなかった」としている。1人は逮捕監禁致死ほう助罪などで起訴した。他の男2人は処分保留とした。

 逗子事件で直後は「覚えていない」などと供述していた仲間が吉田被告の関与を認めたため、奈川県警は2023年6月21日、その場にいて重傷を負った暴力団組員に対する殺人未遂容疑で吉田将豪被告を逮捕した。横浜地検は7月12日、吉田将豪被告を殺人、殺人未遂罪で横浜地裁に起訴した。
裁判所 千葉地裁 新井紅亜礼裁判長
求刑 無期懲役
判決 2025年1月24日 懲役28年
裁判焦点  裁判員裁判。
 2024年9月27日の初公判で、吉田将豪被告は起訴内容を否認した。
 検察側は逗子市の事件についての冒頭陳述を行った。吉田被告は、別の組の男性と地下道で口論になり、携帯するナイフで胸などを何度も刺して死なせたと主張し、自分の組に所属し仲裁に入った男性も刺してけがを負わせたと指摘した。吉田被告が事件後、凶器のナイフや事件時に着ていた衣服の処分を知人に依頼したと主張。知人はそれらを焼却したが、ナイフの柄部分のみを保管しており、別の知人が2023年、神奈川県警に柄を提出したと説明した。
 弁護側は事件当時は現場に複数人がいたため、暗い地下道では誰が被害者を刺したか特定できないと反論。一度不起訴になった事件で起訴されるのは「極めて異例だ」と主張し、目撃者らの証言の信用性を争う方針を示した。
 10月8日の公判で検察側は松戸市の事件の冒頭陳述を行った。吉田被告は2014年の事件で、所属していた暴力団の兄貴分だった男性に金銭がらみの不満を抱いて犯行を計画したと説明。共犯者らを勧誘して犯行の準備をさせ、遺体の処理方法を指示したなどとして、事件の首謀者の一人だったと主張した。検察側はまた、2020年の事件でも主導的な役割を果たしたと述べた。
 弁護側は冒頭陳述で、2014年の事件で吉田被告は共犯者の暴力団幹部の手助けをしたにすぎず、「ほう助犯」にとどまると反論。2020年の事件でも、他の共犯者に対して指示をする立場ではなかったと主張した。
 判決で新井裁判長は、松戸市の事件については「金銭的な不満から、同じ暴力団組織の上位者である被害者を引退させようと、苛烈な暴行を加えて拉致監禁して死亡させた」とし、「粗暴かつ危険」と断じた。被告が犯行の全ての過程に関与し、重要な役割を果たしたとして、弁護側が主張していたほう助犯ではなく、共犯関係が成立すると判断した。
 2014~21年に松戸市などで起きた別の3事件についても逮捕監禁致死罪などを認定した。
 逗子市の殺人事件に関して、殺人罪についての新証言は「客観的事実に整合している」として被告が殺害したと認めた。そして「現場にいた人物で被害者に致命傷を負わせたのは吉田被告の他にいない」と指摘。逃げた被害者を追いかけ、複数回刺して心臓を貫通する致命傷を負わせた点に言及し、「強固な殺意に基づく執拗かつ残忍な犯行」と非難した。組員1人の負傷については客観的な証拠が乏しく証言が不自然に変遷するなどしており、被害者らの供述に整合性がないとして「犯行を認めるには合理的な疑いが残る」として無罪とした。
備考  共犯者の判決は以下である。
 自称鉄筋工、I・J被告は2022年8月1日、千葉地裁(安藤範樹裁判長)で懲役7年6月判決(求刑懲役8年)。以後は不明。
 逮捕監禁致死幇助罪等に問われた自称塗装業、O・T被告は2022年11月10日、千葉地裁(守下実裁判長)で懲役3年6月判決(求刑懲役4年)。以後は不明。
 住吉会系組員、A・D被告は2022年12月16日、千葉地裁(松本圭史裁判長)で懲役13年判決(求刑懲役18年)。以後は不明。
 鉄筋工、O・Y被告は2022年12月16日、千葉地裁(松本圭史裁判長)で懲役12年判決(求刑懲役15年)。以後は不明。
 塗装工、K・J被告は2022年12月16日、千葉地裁(松本圭史裁判長)で懲役7年(逮捕監禁致死等、求刑懲役8年)+懲役6年6月判決(強盗傷人等、求刑懲役7年)。
 住吉会系組員、K・M被告は2023年12月14日、千葉地裁(松本圭史裁判長)で懲役10年判決(求刑懲役14年)。2024年6月28日、東京高裁(島田一裁判長)で控訴棄却判決。以後は不明。

 被告側は即日控訴した。


※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。

【参考資料】新聞記事各種

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