藤原宰太郎『世界の偉人は名探偵』


藤原宰太郎 『世界の偉人は名探偵 びっくり推理ゲーム』
(KKベストセラーズ)




『世界の偉人は名探偵』 『世界の偉人は名探偵』


 『世界の偉人は名探偵 びっくり推理ゲーム

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 発行:KKベストセラーズ ワニの本

 発売:1975年1月5日初版

 定価:600円

 イラスト:ならきはち、村松真澄、壇一発、下島哲朗




 歴史にその名を残したほどの人物なら、たとえ悪名だったにせよ、生涯に一度は、なにか事件にまきこまれて、推理の才をふるったことにあるにちがいない。
(中略)
 架空の名探偵シャーロック・ホームズが、今もなお世界じゅうの人気者になっているのは、その特異な性格と異常な才能による。その点では、実在の異人たちだって、けっして引けを取らない。どれもみな強烈な個性と特殊な才能の持ち主であるから、名探偵になれる素質があるわけだ。その異人たちが、いざ難事件にぶつかったとき、どんな推理の切れ味を見せるか。まことに興味深い。そこで、本書では、45人の名士たちに登場してもらって、一問ずつ、難事件を解決するお手並みを紹介した。
(中略)
 なおトリック問題は、若干、暗号スパイ研究家の獅騎一郎氏に協力していただいた。謝意を表したい。

(「まえがきにかえて」より引用)


 まえがきにあるとおり、ガリレオ、ダ・ビンチ、アル・カポネ、アンネ・フランクなど45人の偉人を紹介し、その後推理クイズで偉人たちのお手並みを拝見する構成になっている。
 推理クイズ自体はミステリで使用されたトリックを移植したものがほとんどであり、一部オリジナルと思われる問題、そして推理というより一般知識を必要とするクイズが混じっている。
 歴史上の偉人を探偵役に据えるというミステリは結構多い。ただ、このように複数の偉人たちを登場させる手法は、まえがきにもある通り、シオドー・マシスンの『名探偵群像』(創元推理文庫)から取ったものと思われる。
 いずれにしても通常の推理クイズに偉人を絡めさせただけではあるが、シャンポリオン、ニジンスキー、ガロア、アイヒマンなど、あまり知られていない偉人たちも取り上げ、その数奇な生涯を簡単に紹介するという部分で、通常の推理クイズ本より知的な面白さを与えてくれる本に仕上がっている。

 この本は2バージョンの装丁があり、左側は1975年1月5日初版時。右側は1975年10月1日17版時のものである。短期間で装丁が変更した理由は不明である。
 本書もそれなりに売れたらしいが、前作『世界の名探偵50人』と異なり、ベストセラーにはならなかったとのこと。

【収録されている偉人】
 ガリレオ・ガリレイ、レオナルド・ダ・ビンチ、アル・カポネ、アンネ・フランク、ニュートン、チャップリン、シャンポリオン、フロイト、エジソン、マタ・ハリ、夏目漱石、パブロフ、ニジンスキー、ベル、コナン・ドイル、サド侯爵、ワット、宮本武蔵、キャプテン・キッド、スコット、ノーベル、ナポレオン、清少納言、ゴッホ、ガロア、マリリン・モンロー、アイヒマン、ネロ、ルーズベルト、ベートーベン、アベベ、リンカーン、マリー・アントワネット、ワイアット・アープ、ピンカートン、写楽、ヒトラー、レーニン、ロレンス、クレオパトラ、勝海舟、シュバイツアー、ヘレン・ケラー、キュリー夫人、大岡越前守

 経緯については『藤原宰太郎探偵小説選』(論創ミステリ叢書113)よりより引用しました。有難うございました。

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