藤原宰太郎『推理狂謎の事件簿 Part.(2)』


藤原宰太郎 『推理狂謎の事件簿 Part.(2)』
(青春出版社 青春BEST文庫)




『推理狂謎の事件簿 Part.(2)』


 『推理狂謎の事件簿 Part.(2) 殺人トリック海外旅行篇

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 発行:青春出版社 青春BEST文庫

 発売:1991年11月5日

 定価:447円(初版時)

 カバーイラスト:北見隆
 本文イラスト:楢喜八




 推理小説を読む楽しみの一つは、その作品の舞台になった土地を紙上で観光旅行できることだ。そこがめずらしい外国であればあるほど、エキゾチックな旅情をかきたてられて、事件の謎の渦中に巻き込まれる。

「世界一周ミステリー・ツアーへようこそ!−まえがき」より

 クイズの名探偵役は海外ツアーの添乗員。海外ミステリー好きで、アルバイトで旅費を貯めては名作ミステリーの舞台になった土地ばかりを放浪しており、その途中で旅行代理店の人に目を掛けられ、ツアーコンダクターにならないかと誘われた、という設定である。なぜかいく先々で、厄介な事件にぶつかる運命にあることから“推理狂”というニックネームを付けられている。
 本書では、70数ヶ国を旅して、ぶつかった事件の中から60問選んだ集めたものである。「どれもみな、あわただしい旅行中に謎をといたので、いささか独断的な推理もあるかもしれないが、旅行ミステリーの愛好家にすこしでも満足していただければ幸いである」と結んでいる。

 藤原宰太郎、お得意の設定である。『名探偵世界一周』(立風書房)、『おもしろ推理パズル』(光文社文庫)でも同じ設定が使われており、本書の1年後には『名探偵に挑戦 第4集 世界一周ミステリー紀行』(ワニ文庫)も出版されている。
 当然のことながら、収録されている問題も似通っている。File2の「不思議な弾丸」、“向かいのビルの屋上から射殺されたのに、弾丸は上へ向かって貫通していた”、というクイズは、先の著書に全て収録されている。“飛行機の高度が3000m以下になったら爆発する爆弾を仕掛けられたが、助かった”というクイズも同様である。まあ、出版社が変われば問題なし、という考え方だろう。ただ、ツアコンという設定は、この本が最初。現代を象徴する設定といえなくもない。
 笑えるのは、珍しく“独断的な推理”などと書いているところか。推理クイズの場合、頁が限られている関係、複数の回答が予想される問題でも一つの答しか出されていないというケースがあるのは事実である。仕方のないことだが、ここで開き直られても困るのだが。

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