まぬけな金庫破り


【問題】

 盗賊団のボスであるリカは、幻の50カラットのダイヤ「クレオパトラの涙」をG公爵未亡人が持っていることを突き止めた。早速計画を立てて盗みに入ろうとしたが、あいにく風邪をひいてダウンしてしまった。そこで、部下であるジョーとハニーのコンビにダイヤを盗ませることにした。
 しかし体調の悪いリカは、具体的な計画を考えることができなかった。そこで、宝石が未亡人の住む田舎の一軒家にある金庫にあることだけを伝え、あとは任せることにした。
 調べたところ未亡人の家は山奥にあり、周りに建物は何もないから誰にも見られずに忍び込める。しかも未亡人は入院中で、メイドたちも一緒に病院にいるため、誰もいない。金庫のダイヤルを開ける技術を持っていないジョーとハニーは、酸素切断機と酸素ボンベを持って屋敷に忍び込んだ。
 ジョーが酸素切断機で金庫の扉を焼き切り始めた。高熱の炎で、扉は真っ赤になり、ドロドロと解け始めた。そしてついに、ぽっかり丸い穴が開いた。
 ハニーは穴から金庫をのぞき込んだ。だが、中にダイヤはなかった。いや、何もなかった。あったのは、ひとつまみの灰だけであった。
 二人は金庫に隠し部屋があるのではないかと思って色々調べたが、そのような細工は何一つなかった。もしかしたらと思って他の部屋にある別の金庫かと思って調べてみたが、金庫はまったくなかった。あきらめて二人は、リカのもとへ戻った。
 リカはまだ体調が悪く横になっていたが、二人の報告を聞いて跳ね起きた。
「金庫にダイヤがなかったですって。あなたたちはどうやって金庫を開けたの」
「酸素切断機を使いました。あれだと音があまり出ないので……」
「馬鹿じゃないの。誰もいないんだから、なんで電気ドリルを使わないのよ!」
  さて、ジョーとハニーはどんな失敗をしたのだろうか。そしてダイヤはどこへ行ったのだろうか。

【解答】

※解答部分は、反転させて見てください。

 金庫にあったひとつまみの灰が、「クレオパトラの涙」だった。
 ダイヤは炭や石炭と同じ炭素で、しかも純粋な結晶である。850度を超えると、燃えてしまうのだ。
 三度切断機は2,000度の炎を出すので、金庫の扉を焼き切った時、炎の高熱でダイヤは燃えてしまったのである。

【覚書】

 藤原宰太郎の推理クイズにはよく出てくるが、加納一朗の推理クイズにもあるので、海外の推理クイズに或るものだと思っていました。
 元ネタはB・A・ヤングの短編「科学」です。とはいえ、B・A・ヤングって誰ですか?


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