二宮佳景編 『推理試験』(荒地出版社)



『推理試験』  『推理試験』
<あなたの推理力をテストする80題>

 編者:二宮佳景
(本名上村隆一。1920年生まれ。鮎川信夫名義で詩人、評論家として活動し、戦後の詩壇で一貫して重要人物とされる。二宮佳景名義で翻訳も行った)

 発行:荒地出版社 B6版ビニール美装

 発売:1959年4月20日初版

 定価:220圓(初版時)


 近年の推理小説の流行はめざましい。テレビ・ラジオも、謎解きやスリラー番組が目白押しの状態だ。おかげで、欧米人に好まれた「推理」がようやくわが国の家庭にも浸潤してきた。
 推理の本家本元ともいうべき欧米人の、掌編やテスト問題を、適宣再編集して一冊にまとめたのが、この「推理試験」である。いわば推理小説のエッセンスであり、家庭や職場で一同が推理力を競ってうち興ずるのにきわめてふさわしい。
 推理好みの人にはもとより広く一般に、新らしい魅力をもった知的遊戯を提供するものとして、多大の歓迎を受けるに相違ない。

中島河太郎(裏表紙折り返しより)


 本書については、中島河太郎の解説が全てを言い尽くしているといっても過言ではない。『続推理試験』の著者であるオースティン・リプレイがアメリカの新聞紙上で執筆した「Minute Mysteries」からまとめたのか、それとも著書から丸々1冊訳したのかは不明だが、いずれにせよその旨は記載されていない。海外の掌編、テスト問題を集めた推理クイズであり、主要探偵役にフォード教授、警察からの相棒役にケリー警部を配している。一部のクイズには引用した作品の作者、タイトル名が付記されている。書かれていないクイズについては、オースティン・リプレイが執筆したものと思われる。他作家の作品を引用したクイズについては、おそらく引用した作品の探偵たちが登場人物になっていると思われるが、フォード教授が探偵役になっているものもある。
 後に藤原宰太郎や加納一朗が作った推理クイズの原型がここにある。このクイズの元ネタを探せにも多数収録しているが、有名な推理クイズの元ネタは、ここに収録されている問題が多い。そういう意味でも推理クイズの祖ともいえる貴重な一冊である。
 なお、巻末の解決編は密封されている。裏表紙には採点表があり、1問15点で1,200点満点。800点以上取れば名探偵の素質が十分にあるとある。この採点表形式も、後の推理クイズに広く使用されたものである。また巻末には、推理用のメモを書くことができる<読者の解答>と書かれた白紙ページがある。

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