持田尚『推理・名探偵パズラー』


持田尚 『推理・名探偵パズラー』
(日本文芸社)




『推理・名探偵パズラー』


 『推理・名探偵パズラー』
  世界の名探偵が君の推理に挑戦!

 著者:持田尚

 発行:日本文芸社

 発売:1976年11月10日初版

 定価:600円(初版当時)




 いまでは古典となっているポーの作品やシャーロック・ホームズもの、ルパンもの以来、これまで、どれほどの数のミステリーが書かれてきたかといえば、それは気の遠くなるほどの数になります。ミステリーを読むたびに感心するのは、何千人という作家たちが、どんなに多くのトリックや意外性をもった構想の新しい作品を考え出してきたかということです。それは、本当に頭脳の一大オリンピックといってよいでしょう。われわれは、オリンピックの選手たちの、とても真似のできない競技ぶりに舌を巻くと同時に、そのすばらしさに酔いしれてしまいますが、すぐれたミステリーを読むときにも同じような気になるのはミステリー・ファンなら誰しもでしょう。
 さて、では、これらのすぐれた作家たちが、どんなトリックや物語の意外性で読者を楽しませてくれているか――いわく「密室もの」「アリバイ・トリック」「心理トリック」「どんでん返し」等々。その多くの趣向の代表例を一冊の本にまとめて紹介してみようというのがこの本の狙いです。さきにもいったように、ミステリー作品は世界中に何万篇とあるわけですから、この本に紹介するのは本の九牛の一毛にすぎません。また、長い作品のうちからもっとも大事なポイントだけをとって紹介するために、作品の面白さを十分に味わっていただくうえではある程度の弱点もあるのは止むをえません。しかし、この本の中に選んだ作品は、どれも世界のミステリー作品の中で指折りの名作とか歴史的なものばかりですから、この本一冊で、ミステリーの面白さをかなり味わっていただけるという自信はあります。どうか、みなさんも、この本で、自分がミステリー作家やホームズやメグレ警部ばりの名探偵になったつもりで、作品のカギに挑戦してください。
 なお、この本は、同好の友人たちと一緒に読み、自分は何題の正解が出せるかを競っていただけるのも面白いと思います。

(「まえがき」より引用)



 全部で31問。外国作品から29問、日本作品から2問(仁木悦子と斉藤栄)である。各問題には点数がつけられているため、相手と競うことも可能である。
「まえがき」にもあるとおり、過去の名作からトリックの趣向を抜き出してクイズにした一冊。日本文芸社からは似たような作品としてすでに山村正夫『トリック・ゲーム』が出ており、そちらと取り扱ってる作品が多数被っているのには理解に苦しむ。
 トリックを分類しているわけでもなく、また藤原宰太郎のようにトリックの部分に注目して抽出しているわけでもない。結末部分をダイジェストにして書いているから、ヒントを書くことで補助しているとはいえ、内容がわかりにくいものになっている。またクイズのタイトルや登場人物も本編と全く同じであるから、ネタばれ度という点ではかなり高い。
 作者である持田尚はペンネームのようで、この作品以外の著作は見あたらないが、それにしてもひどい出来である。日本文芸社の推理クイズもので、この作品は増販された様子がないが、それも当然といえる中身である。

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