山村正夫編『推理ゲーム』
(双葉社 FUTABA-BOOkS)
『推理ゲーム』
あなたもAクラス探偵だ!
編者:山村正夫
1931年生。愛知県出身。1949年「二重密室の謎」でデビュー。以後、多くのミステリを手がける。『湯殿山麓呪い村』で角川小説賞を受賞、映画化もされた。元日本推理作家協会理事長。1999年没。
発行:双葉社 FUTABA-BOOkS
発売:1975年3月10日初版
定価:600円
一時、テレビやラジオで、犯人あてのミステリー番組が、すこぶる視聴者の人気を博したことがあった。「素人ラジオ探偵局」「私だけが知っている」「あなたは名探偵」などがそれである。読者の中にも多分、そうしたゲーム・ドラマのファンだった方は、大勢いらっしゃるに違いない。最近はちょっと企画が途絶えているようだが、そのかわり出版界では相変わらず推理クイズ形式のものがはやっていて、書店へ行くとその主の本がやたらと目につく。おそらくそういう状態は、今後も長く続くことだろう。
その人気の秘密はほかでもない。謎の論理的な解明には爽快感を伴うので、現代人の頭脳のリクリエーションやストレスの解消に、大いに役立っているからだと思う。
(中略)
ただ同じゲーム推理小説でも、五十枚、百枚という枚数を使った短篇や中篇と、ショートショート的な短い枚数のものでは、若干狙いに相違がないではない。前者はトリッキーであることや予想外の結末などを何よりも重要視するが、後者はあくまで謎解きそのものを、読者にエンジョイしてもらうのが目的だからである。その意味では小説的要素より、パズル性の方が強くなるのはやむを得ないだろう。そのかわり一冊にまとめた場合、後者の方が読者により多くの出題と取り組んでもらうことができる。
私の知っている限り、犯人あての中短篇を収録したアンソロジーはすでに何冊も出ているが、専門作家のそうした作品をまとめたものは、まだ一冊もない。そこで本書は、現在第一線で活躍している推理作家のゲーム推理小説の中から、特にパズル的な短いものばかりを選んで編んでみた。短いといっても諸家の個性がそれぞれに滲み出ていて興味深いし、バラエティーに富み趣向を凝らした内容のもの揃いで、これまでに出ているほかの同種の推理クイズ本とは、較べものにならないほど、コクに違いがあるはずだと自負している。
読者がこれを読んで、知的遊戯の楽しさを、いままで以上に満喫していただければ幸いである。
(山村正夫「智的遊戯の楽しみ」より引用)
【目 次】
愛欲+トリック選 |
くたばれ高利貸し |
菊村到 |
殺し屋は三枚目 |
笹沢左保 |
見えない手 |
土屋隆夫 |
月夜の時計 |
仁木悦子 |
性的犯罪 |
藤村正太 |
闇の欠陥 |
森村誠一 |
憎悪+トリック選 |
魚眠荘殺人事件 |
鮎川哲也 |
ドンファンの結婚 |
石沢英太郎 |
貨車引込線 |
樹下太郎 |
猫と靴下 |
西東登 |
高速道路の殺人 |
草野唯雄 |
干潟の小屋 |
多岐川恭 |
命の恩人 |
夏樹静子 |
扉の向うの死体 |
西村京太郎 |
ポルノ+トリック選 |
隣室の怪 |
大谷羊太郎 |
血牡丹OL |
井口泰子 |
SM女優の死 |
斎藤栄 |
情欲の帆走 |
高橋康邦 |
悪夢のアルバム |
山村正夫 |
幻想+トリック選 |
初夢の騎士 |
海渡栄祐 |
土曜日に死んだ女 |
佐野洋 |
夢の完全犯罪 |
都筑道夫 |
22人の作家が各1問ずつ、ショートショートの長さで書かれた犯人当て小説を書いている。その多くは、文藝春秋『漫画讀本』で1960年代に連載されたものの中から選ばれたと思われる。後に『ホシは誰だ?』に収録された作品と同じものもある。また、『推理教室』に収録されていた作品もある。エロチック系は、数ヶ月後に『おとなの推理あそび』としてまとめられる作家つながりによるものだろう。
編者である山村正夫は前書きにあたる「智的遊戯の楽しみ」で大風呂敷を広げているが、「専門作家のそうした作品をまとめたもの」は『推理教室』等があるし、かつてのテレビ番組に出題されたものを小説風にまとめた『素人探偵局』『あなたは挑戦者』等も同様の趣向である。この本に価値があるとすれば、なかなか一冊にまとめられることのなかった作品を一冊にまとめたことぐらいか。
収録された作家を見ると、人気作家から新進作家まで色々。多分、手持ちの作品の中からストックを出したのだろう。それなりの作品はそろっているし、その多くは専門的知識を必要としないから、犯人当てをじっくりと楽しむことはできる。
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