『
著者:小森豪人
(小森豪人(こもりごうじん):1944年大阪府生まれ。関西学院大学卒業。CFディレクター、ディスクジョッキーを経て作家活動にはいる。クイズ本など著書は多い。本名馬場祥弘名義で作詞作曲も行っている。推理クイズ集出版後は推理作家としても活動。作品に「武蔵野線殺人事件」「哀しみ日本海・殺人旅情」などがある)
二見書房 WAi-WAi文庫
発売:1993年1月25日初版
定価:466円(初版時 税抜き)
第一作『あなたは名探偵』が好評で、おかげさまで第二作目『
究極のエンターテインメントである「ミステリークイズ」をふたたび執筆できたといううれしさは、他の何にもたとえようがありません。が、それと同時に、
<トリック構成において、あるいはストーリー展開において、実はとんでもないミスをしでかしているのではないか?>
という恐怖感にもかられます。
実際、楽屋話をしますと、“ささやかな日常のさりげないミステリー”をテーマにした、これら五十五の作品にも、その完成にはさまざまなドラマがありました。これらの作品はいずれもフィクションであり、登場人物や会社名などすべては現実のものではありませんが、そのいくつかは、この本のリアリティーを増すため現実事件にヒントを得ました。
その事件第一報の新聞記事だけを読んで、それから自分の頭のなかで「ああしよう……いや、こうしよう……」とトリックを考えたり、ストーリー展開を考えたりするわけです。そして徹夜で原稿を書いて、編集者に渡します。ところが、一週間とか一ヶ月とかたつと、現実の事件が私がフィクションで書いたのとまったくそっくりおなじに展開している。――そんなときは、喜びよりはむしろ、そら恐ろしくなって、記事の続報を読むとびっしょりと冷や汗をかいてしまいます。
また、執筆している途中で登場人物の名前や性格、そして犯罪動機や人間葛藤といったディテールがごちゃまぜになって(無理もありません。彼らはわずか十五分前にはこの世に生存せず、作者の都合によって急遽誕生したのですから)、途中でドラスティックに変身することがあります。つまり作品の途中で、トランプの総替えとおなじことを作者の私がしてしまったのです。
そこで彼ら登場人物が反乱を起こし、厳重な編集者のチェックをくぐり抜け、完成されたこの本に“チョンボ”という形で堂々登場するかもしれないのです。この反乱分子が現れれば、いかな八十五冊の本を書いた私でさえ、お手上げです。
そこでお願いですが、それを発見された読者諸氏は、編集部気付でお手紙をください。いつか、それら反乱分子の荒ぶれた心を慰める機会をもちたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
さて、とりとめもないおしゃべりをして遅くなりましたが、この本には“日のあたる作家・小森豪人”の陰に、“本当の生みの親”ともいうべき人物がいます。それは、編集の煩わしさを一手に引き受けてくださった編集工房TOMATOの岩本道子氏です。指定されたとおりの原稿量を書かず、おまけに指定された項目と別のものを書いたり……と、こんな作家によくつきあっていただきました。岩本氏がいたから第二作めができたと、深く感謝しております。
校了を終えたいまの率直な気持ちは、「ふっー、疲れたぁー」です。だが、これがまた一ヶ月もたつと、またまた書きたくなってくるのですから、本当にミステリークイズの魅力にはそら恐ろしいものがあります。でも、それがあるからこそ、こうして読者のみなさまともお知り合いになれたのです。そこで、第三作でもお目にかかれることを祈って、筆を置きます。どうか愉しんでください。
【目 次】
第1章 真犯人は誰だ?
第2章 トリックを暴け!
第3章 残されたメッセージの謎
第4章 殺人事件の謎を解け!
第5章 現場百回でホシをあげろ!
第6章 世にも奇妙な事件に挑戦
第一作『あなたは名探偵』が好評だったらしい作者の推理クイズ集二冊目。第一作があまりにもトホホな出来だったのでどうなることかと思ったら、もっとひどかった。
第一問からして、クイズとはとてもいえない情けなさである。こんなもの、どうやって解けばいいのだろう。
問題のいくつかで消去法を使ったものがあるが、その消去方法にも独善的な推理が用いられいるもの(たとえばQ6、7など)が多く、解決編を見て腹が立つものも多い。
第一作と同様、実在人物がすぐに分かるような名前の人物が出てくるのにも問題があるだろう。テレビキャスター有賀いずみ、同性愛好者有森裕子、美貌の人妻加美千香子、「ねるとんバス」の石橋輝昭や木梨政武、名古屋の有名な呪術師織田摩道……訴えられてもおかしくはない。
引用のミスもある。いくらなんでも「ガラスの仮面」がレディスコミックと分類しているのは情けない。
第一作は過去の推理クイズからトリックを流用したものが多いため、まだクイズとして見ることができたが、本作はとてもじゃないが、クイズとして成り立たないものが多い。作者の独善的な解決にあきれかえる読者も多いだろう。
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