『殺人者はそこにいる』、『殺ったのはおまえだ』に続く、「新潮45」編集部編ノンフィクションシリーズ第三弾。
なぜ殺人は起きるのか。なぜ事件は起きたのか。回避する術はなかったのか。副題に「引き寄せた炎、必然の9事件」とあるが、私は必然とは思わない。いつまでたっても殺人は繰り返される。それを回避すべるにはプライバシーを侵さない範囲で事件の全容を公開し、議論すべきだろう。新聞や週刊誌では、センセーショナル部分しか追いかけず、裁判では裁くことのみが優先され、事件の全てが明らかになることはない。少年事件ならなおさらだ。
本書で書かれている9つの事件でも、何らかの術はあったかと思われる。殺人という愚挙を繰り返させないためにも、我々は知る必要がある。
事件の全容を知るためには、全ての関係者から詳しく聞く必要がある。「日野「不倫放火」殺人事件」は、加害者の供述ばかりが表に出ているが、本書では被害者の母親(不倫相手の妻)からの詳しい話が載っている。事件を別の角度から見ることは、隠された別の姿が浮かび上がってくる。
目次は以下。
第一部 業火はすべての愛憎を覆い尽くす
焔の中で夫と暮らした女の「その十年」―日野「不倫放火」殺人事件 中尾幸司
「普通の二十四歳」カップルは心中したのか―塩尻「人気AV女優」怪死事件 駒村吉重
無抵抗の女に火を放った「三十男」の興味―三島「女子大生」焼殺事件 上條昌史
第二部 その縁が奈落へと手引きする
当局をも巻きこんだ「隣人」の不気味な息遣い―宇都宮「散弾銃」主婦射殺事件 中尾幸司
田園広がる風景を疾走した「青き性」―大分「十五歳少年」一家殺傷事件 駒村吉重
「くそババァ」と罵られ馬乗りになった老婆の涙―札幌「歯科医」嫁惨殺事件 深井一誠
第三部 欲情を煽る女は自らの身を焼く
「赤いバスケットの女」、化粧の下の貌−稚内「冷凍庫」夫絞殺事件 上條昌史
母を想うピンサロ嬢は「虐待日記」を綴った−さいたま「実娘拷問」殺害事件 宇野津光緒
姉を電動ノコギリで刻んだ妹が「選んだ女」−青梅「姉妹」バラバラ殺人事件 村山望
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