【犯罪の世界を漂う】を立ち上げた理由
「犯罪者」という人々に興味を持ったのは、佐木隆三『殺人百科』(徳間書店)を読んでからです。ミステリには昔から興味がありましたが、実際の事件にはあまり興味がありませんでした。ニュースや新聞を読んで、「非道い事件が起きたな」とか「こんな犯人、許せない」などと勝手なことを周りと喋り、そのまま忘れるだけだったのです。
『殺人百科』を読んでから、「なぜ人を殺すのだろう」「なぜこんな事をする前に周りに相談しなかったのだろう」などと思うようになり、それからは詳細に新聞を読むようになりました。が、それだけでした。特に意識が変わったわけでもありません。「犯罪」について、人よりちょっと興味があるかなといった程度でした。ですから、1993年に死刑が再開されたときについては何も覚えていません。
死刑問題について興味を持ったのは、村野薫『戦後死刑囚列伝』(洋泉社)を読んでからです。たまたま古本屋で購入したこの本によって、私は「死刑」に興味を持つようになりました。
「死刑」という刑については、「何人も殺せば当然だ」という程度の意識しかありませんでした。しかし、そんな単純なものではなかったのです。「死刑囚」もまた一人の人間でした。そしてそこには人生というドラマがありました。そんな「死刑囚」についてもっと知りたいと思い、「死刑」について書かれている本を探すようになりました。と同時に、「死刑」という刑罰についてあまりにも無知であった自分に気付きました。
色々と探しているうちに見つけたのが、インパクト出版会編『年報・死刑廃止96 「オウムに死刑を」にどう応えるか』(インパクト出版会)です。この本で、現在の日本における「死刑」制度の一面がわかりました(ここであえて“一面”と書いたのは、死刑制度賛成論者の意見がほとんどなかったからです)。そしてますます、「死刑」という刑罰について考えるようになりました。
「死刑には賛成か、反対か」と聞かれたら、私は「死刑に賛成である」と答えます。しかし、現在の日本における死刑制度そのものが全て正しいとは思っていませんし、改善する余地があると思っています。また、死刑という刑そのものが本当に必要なのか、といった点に100%肯くことができない状態です。
私はもっと「死刑問題」について色々と勉強しようと思いました。死刑・犯罪文献を考察するに挙げた文献を読み、悩んでおります。上記に挙げたように、私は死刑賛成論者ではありますが、自分にとって納得いくものかと問われると、まだまだ迷いがあります。
現在は、死刑や犯罪を取り扱った優秀なサイトがたくさんあります。ただこのHPを立ち上げた頃、「死刑問題」についてリアルタイムに取り上げているサイトはほとんどありませんでした。素人の私には、自分の考えを発表する場もありません。だから、このサイトを立ち上げることにしました。そして広く意見を求めようと思ったわけです。
そしてもう一つ、よく死刑反対論の根拠の一つに「冤罪」が取り上げられます。「冤罪」と「死刑問題」は別物であるというのが私の考えでありますが、「冤罪」で死刑判決を受けた方々がいらっしゃるのはご存じのことと思います。また、現在、死刑判決を受けている方の中にも「無罪」を叫んでいる方がいらっしゃいます。「死刑問題」を考える上で、「冤罪」についても考えていこうと思っています。
「死刑に関するニュース」はその名の通り、ニュースをまとめたものです。死刑に関する現在の流れを追うことは必要であると判断したことと、日々のニュースに埋もれてしまうことを懸念し、このコーナーを作りました。国内だけではなく、海外についても発見することができた記事は取り上げていきます。
また、裁判等の場で被害者遺族が「死刑(もしくは極刑)にしてほしい」「死刑ではなく、一生償ってほしい」などといった声をあげた記事についても、できる限り取り上げていく予定です。
「死刑確定囚リスト」は3年4ヶ月ぶりに死刑が再開された1993年3月26日時点で執行されていなかった、そして以降に死刑が確定した確定囚のリストです。「死刑問題」に興味がない限り、現在確定している死刑囚が何人いるか、把握できないと思います。また、このリストの中に現在の死刑制度の問題はいくつも隠されていることに気付かれるでしょう。たとえば、確定囚によって審理のスピードが異なる、執行の順序が不明等。死刑確定囚を通して、死刑問題を考えていきたいと思います。
同様の意味で、一審、二審で死刑判決を受けて上訴中の被告についても、「最高裁係属中の死刑事件リスト」「高裁係属中の死刑事件リスト」で取り上げていきます。
死刑という刑の一等下は無期懲役になります。ランクとしてはたった一つですが、生か死かという点では大きな差があります。無期懲役という刑についても、着目する必要があると考え、2003年度からは「無期懲役判決リスト」を1年毎に作成しています。特に死刑を求刑され、無期懲役判決が出た被告については、「求刑死刑・判決無期懲役」を作成し、比較していきたいと思っています。
「死刑執行・判決推移」は戦後の死刑執行者数の推移を表にしたものです。近年の死刑判決数も載せています。こちらも死刑問題について考えるのに必要な資料と判断しました。
「死刑・犯罪文献を考察する」は、死刑・犯罪について書かれた本の紹介、感想です。このホームページの参考文献でもあります。世の中に出回っている本の全てを紹介することは不可能ですが、出来るだけ多くの本を取り上げていこうと思っています。
「ノンフィクションで見る戦後犯罪史」は戦後の日本犯罪史及びその犯罪についてのノンフィクション作品の紹介です。死刑問題について考えるためには、どのような事件であったかを調べる必要があります。そのため、犯罪史を纏めるとともに、事件を取り上げたノンフィクション作品を紹介することにより、事件の全貌を知ろうと考えたものです。
2000年1月に立ち上げたこのHPは、2002年7月に一応の形となりました。完成するということは永遠にないでしょうが、できるだけ充実させていこうと思います。
未熟者の私であります。おかしな点、不備な点、そして問題がある点がございましたら、ぜひともご教授下さい。よろしくお願いします。
(2002年7月1日記 2008年4月4日修正)
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