藤原宰太郎『おもしろ推理パズルPART.2』


藤原宰太郎 『おもしろ推理パズルPART.2 交通ミステリー博物館』
(光文社文庫)




『おもしろ推理パズルPART.2』


 『おもしろ推理パズルPART.2 交通ミステリー博物館』

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 発行:光文社文庫

 発売:1987年7月20日

 定価:420円(初版時)




 推理小説には、密室トリック、アリバイ・トリック、凶器トリックなど、いろんな種類の謎があります。推理作家にとって、この世にあるものすべてがトリックのネタになるといっても過言ではありません。一本の万年筆、一つの腕時計からでも、奇抜なトリックを思いつくことができます。
 これら無数にあるトリックの中から、とくに交通機関、つまり乗り物に関するトリックばかりを集めてみました。しかし、それだけでも一冊の本には全部がおさまりきれないので、列車、船、自動車、飛行機の四つのテーマに限定しました。これ以外の乗り物、たとえば自転車やエレベーター、ロープウェーなどを利用した面白いトリックもありますが、残念ながら、今回は割愛せざるを得ませんでした。
 世界で最初の推理小説は、アメリカの詩人エドガー・アラン・ポーが一八四一年に発表した『モルグ街の殺人』です。アメリカで鉄道がはじめて開通してから、わずか十年後のことです。まだ大陸横断鉄道はできていませんでした。
 名探偵シャーロック・ホームズが活躍したころは、鉄道はかなり普及していましたが、まだ、辻馬車が全盛の時代です。ガス灯の光が夜霧にかすむロンドン市内を、ホームズは辻馬車に乗って捜査に出かけます。怪盗紳士アルセーヌ・ルパンになると、すでに自動車を持っています。彼は風防メガネをかけて、オープンカーを乗りまわして神出鬼没に活躍します。さらに時代がくだって、名探偵エルキュール・ポワロになると、飛行機が登場します。旅客機の中でおきた怪事件の謎を、彼はみごとに解決します。
 このように推理小説の歴史は、そのまま乗り物の歴史でもあります。交通機関の急速な発達と軌を同じくして、ミステリーは隆盛になってきたのです。
 推理小説の第一期黄金時代は、ちょうど鉄道の全盛期でもあったので、鉄道ミステリーの名作がたくさん生まれました。また定期航路の客船を舞台にした傑作も多数あります。当時の交通機関の花形は汽車と豪華船だったからです。
 第二次大戦後に、推理小説が再び盛んになって、第二の黄金時代を迎えたのも、自動車のめざましい普及と、航空網の飛躍的な発達とが決して無縁ではありません。新しい乗り物が開発されるたびに、ミステリー作家は創作意欲をかきたてられ、それに挑戦して、新奇なトリックをつぎつぎに生み出してきたのです。そのメカニズムとスピードが推理小説の世界を多彩にしたのです。
 これまでにも、鉄道ミステリーや航空ミステリーの短編をここに集めたアンソロジーは何冊か出版されていますが、たった一冊の中に、これだけ盛りだくさんにトリックを集めたのは、本書がはじめてだと自負しています。これこそ交通ミステリーの博物館です。
 しかも、ただトリックを紹介するだけでなく、読者のみなさんがその謎に挑戦すれば、いっそう興味がますだろうと考えて、クイズ形式にしました。ですから、あまり専門的な知識をつかったトリックは、残念ながら、省略せざるをえませんでした。また交通機関は日進月歩に改良されますので、あまり古い装備をつかったトリックも、現代の読者には理解しにくいと思って省きました。
 ともあれ、推理小説の愛読者ばかりでなく、乗り物マニアや旅行の好きな人たちにも、じゅうぶんに満足していただけるものと期待しています。

(「まえがき」より)


【目 次】
 第1章 航空トリック作戦
 第2章 カー・トリック作戦
 第3章 海洋トリック作戦
 第4章 鉄道トリック作戦
  ほかにそれぞれのミステリー、トリックに関連したコラムがある。

 前作『おもしろ推理パズル』が好評だったのか、Part2という形で出版された一冊。以後、半年おきにパズルシリーズが出版されることになり、藤原宰太郎の夢であったトリック百科事典のさわりのような、テーマ別(トリック別)の推理クイズ集ができあがることになる。
 中身の方であるが、問題やコラムがいくつか入れ替わっているものの、「まえがき」も含めてほとんどは『推理ゲーム トリックを見破れと』同じ内容である。ほかに記載する内容はない。

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