藤原宰太郎『名探偵に挑戦 第5集』


藤原宰太郎 『名探偵に挑戦 第5集 交通ミステリー博覧会にようこそ』
(KKベストセラーズ ワニ文庫)




『名探偵に挑戦 第5集』


 『名探偵に挑戦 第5集 交通ミステリー博覧会にようこそ』

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 発行:KKベストセラーズ ワニ文庫

 発売:1995年7月5日初版

 定価:476円(ただし、初版時)




 『名探偵に挑戦』シリーズも、これが五冊目になりますが、今回はちょっと趣向を変えて、交通機関、つまり乗り物を利用したトリックばかりを集めてみました。
 世界で最初の推理小説は、アメリカの詩人E・A・ポーが一八四一年に発表した『モルグ街の殺人』です。アメリカで鉄道がはじめて開通してから、わずか十年後のことです。まだ大陸横断鉄道はできていませんでした。
 名探偵シャーロック・ホームズが活躍したころは、鉄道はかなり普及していましたが、まだ、辻馬車が全盛の時代でした。ガス灯の明かりが夜霧にかすむロンドン市内を、ホームズは辻馬車に乗って捜査に出かけます。怪盗アルセーヌ・ルパンになると、すでに自動車を持っています。彼は風防メガネをかけて、オープンカーを乗りまわして神出鬼没に活躍します。
 さらに時代がくだって、名探偵エルキュール・ポワロになると、飛行機が登場します。旅客機の中でおきた怪事件の謎を、彼は灰色の脳細胞をフル回転させて、みごとに解決します。
 このように推理小説の歴史は、そのまま乗り物の歴史でもあります。交通機関の急速な発達とともに、ミステリーも多彩になったのです。馬車から汽車、豪華客船、自動車、飛行機へと、新しい乗り物が開発されるたびに、ミステリー作家は創作意欲をかきたてられ、新奇なトリックをつぎつぎに生み出してきたのです。
 本書では、そんな奇抜なトリックを盛りだくさんに集めました。いわば交通ミステリーの博物館です。それもただトリックを紹介するだけでなく、読者のみなさんも謎ときにに挑戦できるように、クイズ形式にしました。そのため、あまり専門的な知識を使ったトリックは、残念ながら省略せざるをえませんでした。とにかく、ミステリーの愛読者ばかりでなく、乗り物マニアや、旅行の好きな人たちにも、十分に満足していただけるものと自負しています。

(「乗り物とミステリーには切っても切れない縁がある★まえがき」より)


【目 次】
 1 カー・ミステリーに挑戦
 2 航空ミステリーに挑戦
 3 鉄道ミステリーに挑戦
 4 海洋ミステリーに挑戦
 5 その他の交通ミステリーに挑戦
  ほかにそれぞれのミステリー、トリックに関連したコラムがある。


 「名探偵に挑戦」シリーズ第5作は、交通ミステリーもの。藤原宰太郎おなじみのテーマである。過去に『推理ゲーム トリックを見破れ』、『乗り物トリック』、『おもしろ推理パズルPART.2』で扱っている。収録されている問題も、一応新作はあるが、ほぼ似通ったものばかりである。
 ただ、過去の三冊にはない特徴がある。それが「5 その他の交通ミステリーに挑戦」である。今までの三冊は、1〜4までしかなかったが、本作では初めて「その他の交通ミステリー」が登場する。収録されている問題は過去の推理クイズ本で載せたものの再録が多いが、かねてからやってみたかったテーマを達成できたことには満足しているだろう。
 収録されているコラムでは、最新のミステリに用いられているトリックも結構書かれている。常にトリックを追い求めるその姿には感動する。
 残念ながら本作で「名探偵に挑戦」シリーズは終了し、ワニ文庫では新たに「名探偵の事件簿」シリーズが登場するが、中身はほとんど変わらない。

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