小森豪人『真犯人は誰だ?』


小森豪人『真犯人は誰だ?』
(二見書房 WAi-WAi文庫)




『真犯人は誰だ?』 『真犯人は誰だ?』

 著者:小森豪人
 (小森豪人(こもりごうじん):1944年大阪府生まれ。関西学院大学卒業。CFディレクター、ディスクジョッキーを経て作家活動にはいる。クイズ本など著書は多い。本名馬場祥弘名義で作詞作曲も行っている。推理クイズ集出版後は推理作家としても活動。作品に「武蔵野線殺人事件」「哀しみ日本海・殺人旅情」などがある)

 二見書房 WAi-WAi文庫

 発売:1994年3月25日初版

 定価:476円(初版時 税抜き)





 一口にミステリーといいますが、長編と短編では、その作り方がかなり違います。おそらく、読者の好みも、違うのではないでしょうか。
 長編のミステリーならば、まずなんといっても、キャラクターの存在でしょう。ポアロなくして、アガサ・クリスティーの本があれだけ売れたかどうかは疑問です。
 それから、長編のミステリーでは、作品の舞台も重要な決め手となります。現在、日本で売れている長編ミステリーのほとんどが、珍しい名所旧跡を舞台にしています。つまり、そのミステリーを読むことで、“お得”な気分になれるからです。
 ところで、短編ミステリーの場合を考えてみると、その魅力のすべては、トリックのおもしろさにかかっているのではないでしょうか。
 短編を書いてみて、長編を書いてみて、そしてまた短編を書いてみたとき、トリックの作品を支配するその力の大きさに、驚かされます。つまり長編ならば、たいしたことのないトリックでも、それらをいくつか積み重ねることで、もっともらしい筋立てができてくるのです。
 ところが、短編ミステリーの場合は、ストーリーが短い分だけ、トリックのもつインパクトは強いのです。ちゃちなトリックでは、すぐ見破られてしまいます。
 この場合のトリックとは、アリバイ崩し、犯人探し、謎解き、ダイイング・メッセージなど、すべてが含まれます。
 これら新鮮で、あっと驚くトリックをたくさん提供することによって、短編ミステリーでは、“お得”な気分になれるのではないでしょうか。
 ある人にいわせると、五十編以上載っていてこの値段だから、この短編ミステリーは一編当たり十円以下で、読めた気がし、“お得”だそうです。そういわれたとき、私は、「してやったり」と思いました。狙いどおりだったからです。
 さて、「あなたは名探偵」「犯人(ホシ)をあげろ!」(いずれも二見文庫)につづいて、この「真犯人は誰だ?」で、私の書いた“推理クイズ”シリーズも三冊になりました。さいわい、いずれも好評です。
 そして、このシリーズがきっかけとなって、一九九四年の四月から主婦の友文化センターで、「ミステリーを書こう」という講座ができ、講師を引き受けることとなりました。首都圏の方で、ミステリー創作に興味をお持ちの方は、受講ください。直接、ご指導できると思います。
「ミステリーを書く作業は、お百姓のようなものだ」
 と、いった人がいます。雨が降っても、天気のよい日でも、毎日机に向かってコツコツ書いていくからです。そして、この短編ミステリーは、まるで日めくりカレンダーのように、ひとつひとつ書きあげてきました。
 いま校了を終えて、読者の皆さまがどんなふうに楽しんで読んでいただけるのか、期待に胸を膨らませております。そして、このシリーズがまだまだつづき、次回も皆さまのお目にかかれることを、楽しみにしております。
 なお最後に、これらの作品はいずれもフィクションであり、登場人物や会社名などすべは現実のものではありません。また同時に、全作品はすべてオリジナルであり、他の作品を参考にしていないことを附記しておきます。

(「はじめに」より)


【目 次】
 第1章 事件現場に残された謎
 第2章 アリバイ工作の謎
 第3章 頭脳的トリックの謎
 第4章 交錯する容疑者の謎
 第5章 ダイイング・メッセージの謎


 本当に「あなたは名探偵」「犯人(ホシ)をあげろ!」が好評だったのかどうかは分からないが、まさかの三冊目。大言壮語な「まえがき」にはあきれるが、まあ自作を売るためなんだから目をつぶるしかないか。
 第二作「犯人(ホシ)をあげろ!」では「全作品はすべてオリジナルであり、他の作品を参考にしていないことを附記しておきます」と書かれていなかった。確かにオリジナルのものが多く、そしてクイズの体をなしていないものが多かった。本作では第一作「あなたは名探偵」と同様、「全作品はすべてオリジナルであり、他の作品を参考にしていないことを附記しておきます」と書かれている。そして第一作と同じように、一問目から他の作品からトリックを流用した問題が載っている。読者を馬鹿にしているとしか思えない。しかもトリック流用問題がほとんどなのだから洒落にならない。Q2の問題なんて、有名な短編を借用していることが見え見えなのに、ぬけぬけとオリジナルと言い張るその神経が分からない。
 第一、二作と同様、実在人物がすぐに分かるような名前の人物が出てくる。よくもまあここまで名前を借りていながらオリジナルといえるものだ。

 小森豪人は3作の推理クイズ集を出しているがここで言い切ろう。いずれも駄作である。推理クイズそのものも問題だが、クイズを作るその姿勢にも問題がある。トリック流用だけなら多くの推理クイズ作家が行っていることだが、それをオリジナルと言い切るその姿勢に問題があるのだ。しかもオリジナルの問題となると、クイズとはとてもいえないお粗末なものばかり。続編が出なくてホッとする。


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