2004年度私的日本ミステリベスト10


1. 斎藤純『銀輪の覇者』(早川書房 ハヤカワ・ミステリワールド)

 実力派の作家が魅力的な題材と出会い、爽やかな冒険小説を書き上げてくれた。

2. 翔田寛『消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)

 やや地味かもしれないが、読み終わってしばらくたっても心にしみじみ残る本格ミステリとして、高く評価されるべき一冊である。

3. 法月綸太郎『生首に聞いてみろ』(角川書店)

 端正に書かれた、完成度の高い本格ミステリかつハードボイルド。ただハードボイルド慣れした人なら、結末まで予想がつくんじゃないかな。

4. 香納諒一『あの夏、風の街に消えた』(角川書店)

 作者4年ぶりの長編は、ちょっとほろ苦い青春ストーリー。サービス精神旺盛なストーリー展開はちょっと暴走気味だが、スリル満点の冒険物語である。

5. 芦辺拓『紅楼夢の殺人』(文芸春秋 本格ミステリ・マスターズ)

 中国奇書『紅楼夢』を舞台に繰り広げられる連続殺人。こういう形の本格ミステリがあったのかと、非常に感心した。もうちょっとわかりやすく書いてもらいたかったが。

6. 石持浅海『水の迷宮』(カッパ・ノベルス)

 過去二作と同様、論理と物語を重視した高レベルな作品だが、たまには別路線の話も読んでみたい。

7. 加賀美雅之『監獄島』上下(光文社 カッパ・ノベルス)

 予定調和の世界から一歩も抜け出していないのが気に掛かるが、壮大なスケールでの本格ミステリは読み応え有り。

8. 逢坂剛『銀弾の森 禿鷹III』(文藝春秋)

 好評シリーズ第三弾。筆はますます快調、禿鷹の行動は奇妙なことばかり。

9. 伯方雪日『誰もわたしを倒せない』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)

 日本で初めてプロレスを扱った本格ミステリ。プロレスファンとしての偏愛かもしれないが、ベストに入れたい。

10. 笹本稜平『グリズリー』(徳間書店)

 うーん、力の向け方を間違えた作品だと思っているんだけどね。今年は他に入れる作品が思いつかない(読んでいない)ので、不満ながらもベスト入り。


 伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)は去年の作品だからここに入れられない。まだ『剣と薔薇の夏』も『降臨の群れ』も『パンドラ・アイランド』も読んでいない。読みたいと思っている『THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ』と『愚か者死すべし』、『不夜城III』は買ってもいない。今年は積ん読を減らすように頑張っていた事もあって、あまり新刊を読んでいないということもあるが、ちょっと不本意である。まあ、ネット上ではほとんど話題に上がっていなかった『銀輪の覇者』が「このミス」で5位になったというのは嬉しかった。

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