藤原宰太郎『探偵トリック入門』


藤原宰太郎『探偵トリック入門』
(秋田書店 カラー版ジュニア入門百科 ゴールド版)




『探偵トリック入門』  『探偵トリック入門』
  きみも名探偵になれる

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 秋田書店 カラー版ジュニア入門百科 ゴールド版

 発売:1971年10月10日初版

 定価:390円(1973年3月30日 9版時)





 アメリカの作家エドガー・アラン・ポーが、1841年に、世界で最初の探偵小説「モルグ街の殺人」を発表してから、これまで世界じゅうの推理作家が知恵をしぼって、完全犯罪や、密室殺人などの奇抜なトリックを考えだして、たくさんの傑作を書いてきました。
 推理小説ファンなら、きっと、これら古今東西の名作をぜんぶ読んでみたいと思うにちがいありません。しかし、残念ながら、きみたちには学校の勉強があるので、とても全作品を読むことはできないと思います。
 そこで、私は、たくさんの傑作の中から、とくにおもしろくて奇想天外なトリックを選びだして、絵入りのクイズにしました。難問、珍問、奇問……いろいろとりそろえてあり、テレビ時代にふさわしい絵で見る探偵トリックの百科ミニ全書といってもいいでしょう。
 これ一冊読めば、きみは、シャーロック・ホームズに負けない名探偵、推理小説のベテランになれますよ。
 さて、何問みごと解けるか、脳細胞をよくマッサージして、このナゾ解き探偵クイズに挑戦してください。半分以上正解できたら、きみは探偵の天才です。警視庁捜査一課か、FBI(アメリカ連邦捜査局)から、多額の契約金でスカウトにくるかもしれません。
 最後に、すてきなアイデアで、この本を編集してくださった有山修さんに心から感謝します。

(「著者のことば」より引用)

=もくじ=
第一章・密室トリック入門
第二章・犯人さがし入門
第三章・凶器さがし入門
第四章・偽装トリック入門
第五章・アリバイくずし入門
第六章・殺人トリック入門
第七章・奇妙なトリック入門


 『探偵トリック入門』、『名探偵クイズ』、『名探偵のテクニック』からなる秋田書店推理クイズ三部作(私が勝手にこう名付けたのだが)の1冊。『名探偵クイズ』が主に内外の名探偵を紹介、『名探偵のテクニック』が尾行・変装などの主に名探偵術や科学捜査の紹介をしているのに対し、本書では主に推理小説のトリックの紹介が中心になっている。この三部作はテーマが絞られて書いており、クイズと紹介文のバランスも取れている。子供向けの名探偵ものとしては良質な作品集である。
 私はカバー付きのみのものしか見たことがなかったが、ゴールド版は箱入りである。表紙も異なる。カバーのみのバージョンは『名探偵クイズ大全科』に紹介している。

 「トリックをあばくこつ」という形で、各章ごとにトリックの簡単な紹介や分類を試みている。子供向けにわかりやすく書かれており、入門書としては最適だろう。ここに紹介されるトリックの主なものは、確かに古今東西の推理小説から選びだされたものではあるが、絵入りにしたり、シチュエーションを変えたりしているので、少なくともネタばらしという範疇には入らないものと思われる。

 とはいえ、「著者のことば」は、ちょっと大げさである。

 クイズ自体は、『推理力テスト集』と重なるものが多い。多分、『推理力テスト集』から引き出して、絵や文章を子供向けに改めたものと思われる。

 本書はよく売れ、秋田書店でも珍しいベストセラーになったとのこと。その後、児童向けに海外ミステリをリライトした「世界の名作全集」を秋田書店より依頼され、藤原から中島河太郎、山村正夫に連絡。中島が監修となって全16冊が出版された。

 ベストセラーの経緯については『藤原宰太郎探偵小説選』(論創ミステリ叢書113)よりより引用しました。有難うございました。

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