藤原宰太郎『名探偵のテクニック』


藤原宰太郎『名探偵のテクニック』
(秋田書店 カラー版ジュニア入門百科 ゴールド版)




『名探偵のテクニック』  『名探偵のテクニック』
  犯罪捜査のすべて

 著者:藤原宰太郎
 (藤原宰太郎:推理クイズ作家として数々の著書を執筆)

 秋田書店 カラー版ジュニア入門百科26 ゴールド版

 発売:1973年12月10日初版

 定価:390円(初版時)





 秋田書店から、『探偵トリック入門』(カラー版ジュニア入門百科9)と、『名探偵クイズ』(カラー版ジュニア入門百科17)を出版したところ、さいわい、たいへんな好評をうけて、小・中学生の熱心な読者から、たくさんのおたよりをもらいました。そのほとんどは、名探偵になるには、どんな勉強をしたらよいかという質問でした。
 残念ながら、まだ日本には、警官を養成する警察学校以外に、<探偵学>を教えてくれる学校や、教科書はありません。警視庁の名刑事さんだって、はじめは巡査として就職し、パトロールや交番勤務をしながら、次第に捜査のコツをおぼえて、やっと刑事になれたのです。
 しかし、それでは、きみたちの希望は満足できないと思います。そこで、わたしは、これ一冊で名探偵になれるトラの巻を書いてみました。それが本署です。
 科学捜査の解説は、すこしむずかしいかもしれませんが、現代は科学の時代です。昔のようにカンにだけたよっていては、とうてい一流の探偵にはなれません。科学に強い探偵こそ、新しい時代の新しい名探偵です。
 この本と、前の『探偵トリック入門』、『名探偵クイズ』を合わせて読んでくれたら、きみはシャーロック・ホームズや明智小五郎に負けない、りっぱな探偵になれますよ。
 では、きみの活躍を祈る!

(「著者のことば」より引用)

=もくじ=
第一部・名探偵のテクニック
 (一)名探偵になるために
 (二)効果的な尾行術
 (三)効果的な張り込み術
 (四)効果的な変装術

第二部・科学捜査のテクニック
 (一)指紋をさがせ!
 (二)足跡を追え!
 (三)モンタージュ写真
 (四)血液型のなぞ
 (五)走る凶器
 (六)ライフル・マーク
 (七)ポリグラフ(ウソ発見器)
 (八)死体は語る
 (九)脅迫状のなぞ
 (十)誘かい犯人を追え!

第三部 世界の一流探偵社と警察
 (一)ピンカートン探偵社
 (二)FBI(アメリカ連邦捜査局)
 (三)世界の警察

第四部 名探偵合格テスト

 他に科学捜査の新兵器として、電解研磨器、ソナグラフ(声紋の鑑定)、赤外線写真が紹介されている。


 『探偵トリック入門』、『名探偵クイズ』、『名探偵のテクニック』からなる秋田書店推理クイズ三部作(私が勝手にこう名付けたのだが)の1冊。『探偵トリック入門』、が主にトリックの紹介、『名探偵クイズ』が主に内外の名探偵の紹介をしているのに対し、本署では尾行・変装などの名探偵術や科学捜査の紹介が中心になっている。この三部作はテーマが絞られて書いており、クイズと紹介文のバランスも取れている。子供向けの名探偵ものとしては良質な作品集である。
 私はカバー付きのみのものしか見たことがなかったが、ゴールド版は箱入りである。表紙も大きく異なる。カバーのみのバージョンは『名探偵クイズ大全科』に紹介している。

 名探偵というとホームズや明智小五郎のような切れ味鋭い名探偵をすぐに思い浮かべるだろうが、ここで語られている名探偵のテクニックは、もっと地味な面である。尾行、張り込みなどは日本の私立探偵が日常的に行っているものである。派手な面ばかりではなく、地味な、しかし基本とも言えるテクニックを紹介するあたり、良心的といえる。推理を支えるのも、地味な捜査と、証拠を見つけだす科学技術があるからである。
 ただテクニックなどの紹介が主となったため、クイズが他の本と比べて少なくなってしまっているのは、やや残念なところか。また、肝心の第四部、名探偵合格テストの問題が、前の部の問題よりも易しくなっているというのはちょっと問題である。

 いずれにせよ、藤原宰太郎の少年向け推理クイズ本は、秋田書店から出された三部作が基調となっており、この前後に出された学習雑誌の付録や、後の推理クイズ本なども、この三部作から引用されたものが多い。

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