山村正夫 『ぼくらの探偵大学4 名探偵事典』(朝日ソノラマ ぼくらのもの知り百科)



『ぼくらの探偵大学4 名探偵事典』  『ぼくらの探偵大学4 名探偵事典』

 著者:山村正夫

1931年生。愛知県出身。1949年「二重密室の謎」でデビュー。以後、多くのミステリを手がける。『湯殿山麓呪い村』で角川小説賞を受賞、映画化もされた。元日本推理作家協会理事長。1999年没。
 発行:朝日ソノラマ ぼくらのもの知り百科

 発売:1974年8月28日初版

 定価:450円(初版時)




(前略)
 ところで、「探偵大学」のシリーズも、本書で4冊目を迎える。早いもんじゃな。まったく……。
 そこで、今回は、愛読者のきみたちチビッ子名探偵に、わがはいのとっておきのプレゼントを、贈りたいと思うんじゃ。
 すでにきみたちに読んでもらった3冊のテキストの本は、いずれもトリックの特クンやクイズを中心にしたものじゃったな。
 しかし、いくらトリックの知識ばかり通じても、それだけではミステリー通の優秀なチビッ子名探偵とはいえんぞ。きみたちだって、トリック以外に、知りたいことは山ほどあるじゃろうが。
 たとえば、外国や日本の名探偵といわれる人間には、どんな人物がいるか?
 むかしの捕り物は、どうやっておこなわれたか?
 あるいは、現代の科学捜査の最新兵器には、どんなものがあるか?
 どうじゃね? そのどれもこれもが、きみたちの知りたいことばかりじゃないかな。
 この本は、きみたちのそうした疑問になんでも答える、いわば――ミステリー百科事典とでもいうべきものなんじゃよ。これさえ読めば、ミステリーに関する知識はすべておまかせ。なにからなにまでバッチリわかる、ためになる本というわけなんじゃ。したがって、トリックについての全コースをマスターした探偵大学の卒業生しょくんはもちろんのこと、はじめて本書を読むチビッ子探偵にだって、さだめし途中でやめられないほど、おもしろがってもらえるのは受け合いじゃと思うよ。
(中略)
 それでは、わがはいの心からのプレゼントを、たっぷりと楽しんでくれたまえ。そして、読みおわったら、ぜひきみたちのえんりょのない感想を、編集部あてにドンドコ送ってやってよ――待ってるぞ。
 ほな、サイナラ、サイナラ、サイナラ……。
(「チビッ子名探偵へのプレゼント」より引用)


【目 次】
 第1章 名探偵のプロフィル(外国編)
 第2章 名探偵のプロフィル(日本編)
 第3章 江戸時代の捕り物
 第4章 現代の犯罪捜査
 第5章 科学捜査の知識

 『ぼくらの探偵大学』『続・ぼくらの探偵大学』『ぼくらの探偵大学3 7つの怪事件』に続く第四弾。ここまで出るということは、それなりに売れたということでいいのだろうか。最も本書は部数が少なかったらしく、古本屋などでもめったに見たことがない。
 第1章で紹介されているのはオーギュスト・デュパン、ルコック、シャーロック・ホームズ、ソーンダイク博士、ジョゼフ・ルレタビーユ、隅の老人、ブラウン神父、フレンチ警部、アルセーヌ・ルパン、エルキュール・ポワロ、フィロ・バンス、エラリー・クィーン、ドルリー・レーン、フェル博士とメリベル卿、メグレ警部、ペリー・メイスン、マープル。
 第2章で紹介されているのは明智小五郎、金田一耕助、神津恭介、三河町の半七、銭形平次、人形佐七、むっつり右門、若さま侍。
 クイズもネタが尽きれば、次は名探偵だよね、というわけじゃないだろうが、推理クイズ本なら王道のパターンではある。どうせなら名探偵にまつわるトリックのクイズを出せばよかったのに、とは思うのだが、ネタバレを避けたか。それでも、名探偵の最後に関するネタバレを堂々としており、それはちと問題。
 それ以上に気になっているのが、名探偵のセレクトや、名探偵の特徴のあげ方とかが、『名探偵クイズ』『世界の名探偵50人』に近いんだよな……。さすがにルコックを取り上げているのはあまりないけれど。
 科学捜査などをみると、時代を感じますね。当然と言えばそれまでなんだけど。
 ということで、出版当時ならではのセレクトを楽しめる一冊。古いと言ってしまえばそれまで。コレクター以外には薦めません。

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