『お笑いスター誕生!!』 名鑑【そ】


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名 前
象さんのポット
初出場
 1983年5月14日(第3期グランプリシリーズ)
実 績
 7週勝ち抜き、銀賞獲得。
 サバイバルシリーズ1回戦負け。
 第1回オープントーナメントサバイバルシリーズ2回戦進出。
 第3回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦負け。
 第4回オープントーナメントサバイバルシリーズ2回戦進出。
 第5回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦負け。
 第6回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦負け。
 第7回オープントーナメントサバイバルシリーズ第4位。
ジャンル
 漫才。
プロフィール
 としゆき:本名佐藤利行。1961年9月10日生。
 ひとし:本名宮野一志。1962年8月30日生。
 ともに横浜映画放送専門学院出身。
アマチュア挑戦。
ネ タ
 わざと咬み合わないことで生み出すシュールな笑いが売り物。道端の立ち話のような漫才でした。
(1週目合格 No.160 1983年5月14日放送)

ひとし「ところで動物好きですか?」
としゆき「好きですよ。僕は子供の頃から猫が好きで、よく食べました」
ひとし「んー」
としゆき「ところで動物好きですか」
ひとし「好きですよ。僕は子供の頃から象さんが好きで、よく食べました」
としゆき「へー」
としゆき「道を歩いているとさ、面白い事ってたくさんあるよね」
ひとし「ありますね」
としゆき「この前なんかね、横浜駅の西口にダイヤモンド地下街ってあって、あそこの入り口のところに、人がボーっと立っている」
ひとし「うん」
としゆき「おかしいな、何かあるんじゃないかなと思ったんだけど、俺ダイヤモンド地下街の方に買い物があったんで買い物をして一時間くらい経って戻ってきても、まだボーっと立っているんだよね」
ひとし「うーん」
としゆき「おかしいな、何かあるんじゃないかなと思ったんだけど、俺ステーションビルの方に買い物があったんで買い物をして一時間くらい経って戻ってきても、まだボーっと立っているんだよね」
ひとし「うーん」
としゆき「何だ、おかしい、きっと何かあるんじゃないかなと思ってその人のところへ行ってコンコンって叩いたらね、棒でした」
ひとし「……俺にも同じような体験がある」
としゆき「うん」
ひとし「おかしいな、何かあるんじゃないかなと思ったんだけど、俺ダイヤモンド地下街の方に買い物があったんで買い物をして一時間くらいして帰ってきても、まだボーっと立っている」
としゆき「うん」
ひとし「おかしいな、何かあるんじゃないかなと思ったんだけど、俺ステーションビルの方に買い物があったんで買い物をして一時間くらいして帰ってきても、まだボーっと立っている」
としゆき「うん」
ひとし「おかしい、これは何かあるんじゃないかなと思って、その人の肩をとんとんと叩きましたら、消えちゃいました」
としゆき「幻だったんだね」
としゆき「この前ね、国鉄のある駅にいたんです。ここでは名前を伏せるけれど、駅のホームのところで中年のサラリーマン風のおじさんが、真っ青な顔をして立っている。しかも拝んでるんだよ。自殺でもするんじゃないかな、って思ってたんだけどね。案の定、足下に遺書まで置いてあった。そこへ電車がやってきました。危ない、飛び込むと思って、思わず目を伏せてしまいました」
ひとし「どうしました」
としゆき「電車はピーッと通り過ぎたんですが、おじさんは立っていました」
ひとし「助かったんですね」
としゆき「そう思った次の瞬間、おじさん、懐からドスを取り出して、うぉーって切腹し始めたんですよね。ホーム中は大騒ぎ。飛び出してきたのは駅長さん。わーお客様、大変だ、大変だ、介錯しなくちゃいけないな、って介錯していましたけれどね」
ひとし「いい駅長さんですね」
ひとし「この前僕もね、国鉄のとある駅にいたんです。ここでは名前を伏せるけれど、駅のホームのところで中年のサラリーマン風のおじさんが、拝んで立っている。自殺でもするんじゃないかな、って思っていたら、足下に遺書まで置いてある。そこへ電車がピーってやってきた。危ない、と思って思わず目を伏せた。電車が行き過ぎて目を開けたら案の定、そこには肉片が散らばっていましたけれどね」
としゆき「メルヘンだね」(この辺で中尾ミエ、大笑い)
ひとし「他に何か面白いことありましたか」
としゆき「この前ね、野球の試合をやったんだよ。草野球。9回裏ツーアウト満塁、ぼくらが後攻でね、4点差で負けていたんだけど、バッターは4番の強打者。打ったんだよね。高めのコースを。レフトオーバーの奥深くまで突っ込んだ」
ひとし「じゃあランニングホームランで同点じゃないですか」
としゆき「誰もがそう思ったんだよね。でもね、運が悪かった。サードコーチをやっていたやつが、昔は凄くうまかったんだけど、ある日交通事故で右腕なくしちゃってね、代わりの腕、なんていうの」
ひとし「義手」
としゆき「そう、義手つけてんだよ。ランナーが走って回れ、回れ、回れ。2塁ランナーも回れ、回れ、回れ。1塁ランナーも回れ、回れ、回れ。あと一人で同点だ、って4番のバッターがサードベースに来たとき、コーチの腕がすぽっと抜けちゃってね」
ひとし「じゃぁマジンガーZのロケットパンチといっしょですね」
としゆき「その抜けた腕がものすごいスピードで、4番バッターに当たっちゃったんですよね。バッターはその場でノックアウト。ボールが帰ってきてあえなくタッチアウト。おしくも同点ならず、1点差で涙を呑んだんだけどね」
ひとし「野球っていうのは、筋書きのないドラマだね」
ひとし「野球っていえばね。うちの近所にも凄い人がいましたね。『巨人の星』が大好きで星一徹に憧れているおやじさんなんですけれどね、三歳の子どもに毎日毎日大リーグボール養成ギブスを着せて特訓させていたんだけどね、その特訓の甲斐あってか、その三歳になる子供、成長が止まっちゃいましたけれどね」
としゆき「厳しいお父さんだね。野球って言えばね、僕も高校の頃野球部だった。思い出に残っているのは、夏になると甲子園の夏の大会があるじゃない、県予選とかさ。野球のことしか考えなかった」
ひとし「俺も同じ経験がある。俺も高校の頃、柔道部だった。だから夏になると、高校野球のことしか考えなかった」
としゆき「野球が好きだったんだね」
としゆき「野球部のキャッチャーが道を歩いているとね、マンションのベランダとかさ、赤ちゃんが一人で遊んでいるじゃない」
ひとし「あれ、危ないんですよね」
としゆき「そうしたらさ、赤ちゃんが落っこってきちゃったんですよね」
ひとし「じゃあ、やばいじゃないですか」
としゆき「さすがキャッチャー、普段鍛えてるじゃないですか。落っこってきた赤ちゃんをつかんだんだよね」
ひとし「じゃあ助かった」
としゆき「ところがそこはキャッチャーの悲しい条件反射。盗塁したランナーを刺すがごとく。取った赤ちゃんをまた投げちゃったんだよね」
ひとし「じゃあやばいじゃないですか」
としゆき「ところがその赤ちゃんは、天性の運の持ち主と言っても過言ではないね。前から歩いてきたのは同じや休部のセカンド。キャッチャーが何か投げたな、と思ったら赤ちゃんをパッとつかんだんだよね」
ひとし「それじゃぁ赤ちゃんは助かったんですね」
としゆき「そう思ったんだよね。ところがそこは悲しいセカンドの条件反射。赤ちゃんをつかんだ瞬間、『タッチ!』って言って赤ちゃんを地面に叩きつけちゃったんだよね」
ひとし「ミネラ~ル麦茶(CMのフレーズ)」
としゆき「人間、辛抱だね」
二人「ジャンジャン」

 ニューヨークで、火事になったアパートの3階から投げられた赤ちゃんを草野球のキャッチャーが受け止めて助けたというニュースを見ました。それを見てこの象さんのポットのネタを思い出しました。20年経過してマンザイのネタが事実になろうとは……
(2週目合格 No.161 1983年5月21日放送)

としゆき「そういうわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「僕なんかもね、こうしているうちに1週目を勝ち抜いてしまったんですけれどね、勝つが負けるの始まりなんだよね」
ひとし「それは沢庵和尚の言った言葉ですね」
としゆき「学がある! それでね、僕らなんかね、はっきり言って実力なんかなんもない」
ひとし「そうですね」
としゆき「はっきり言って、2週目のネタなんか、なかなかないんですよね」
ひとし「そうですね」
としゆき「僕は夜遅くまで一生懸命考えました。12時、1時、2時過ぎころまでかな。ネタ考えていたらさぁ、寝た」
ひとし「(沈黙の後)そういうことってあるよな。(沈黙の後)ところで子供のころ、どういう悪さをしました?」
としゆき「思い出に残っているのがね、小学校の掃除の時間。掃除をさぼってね、箒をバット、ぞうきんをボールにしてよく野球をやりましたね」
ひとし「やりましたね」
としゆき「僕はある日、教室でやっててすごい弾丸ライナーを打ってしまって廊下まで飛ばしてしまって、何か知らないけれど廊下にある火事の時消防に知らせるやつ」
ひとし「非常ベル」
としゆき「非常ベルにあたっちゃって、ベルがリンリン鳴っちゃったんだよね」
ひとし「消防車が来ちゃうじゃないですか」
としゆき「やばいと思って、消防車来たら俺怒られちゃうじゃん。ちょうど学校の真ん前に公衆電話があったんで、そこまで思いっきり走って行って、119番したんだ。もしもし、消防署ですか。今のは嘘で、本当は小学校じゃ火事じゃないんですよ。消防車が来たら僕が怒られてしまいますよって涙ながらに訴えたらね、子供のことだから消防署も信用してくれた。よかったって、ガチャッと切って校舎の方を見上げるとおかしいんだよね。煙がもくもく上がってる。火事じゃないかな、と思ってみていたら炎が舞い上がって完全に火事。でもね、全然全然消防車が来る気配がないんだよね。消防署は何やってんのかな、と思って見ていたら、小学校は全焼しちゃったけどね」
ひとし「(沈黙の後)情景が目に浮かぶね」
ひとし「(笑いが収まった後)俺も小さいころよくやった。箒をバット、ぞうきんをボールにして野球を。ある日、教室でやったら弾丸ライナーを打って廊下まで飛び出し、廊下にある丸い非常ベル。あれに当たって、ベルがリンリンリンリン鳴っちゃった。やべえな、消防車が来て火事になっていなかったら俺が怒られちゃうな、って自分で火つけちゃったら余計怒られちゃったけれどね」
としゆき「うん」
ひとし「(沈黙と笑いの後)そういえば子供のころね、小さい動物に親しんだよね」
としゆき「そうですね」
ひとし「僕なんかね、子供のころ野原に行ってね、○○さんをとるのが好きだったのね。○○さんというのは面白い動物でね、尻尾をもいでももいでも生えてくる。僕はね、幼心にね、そうだな、動物ってのはこんなもんじゃないのかな、って思ってね。うちの犬のしっぽをね、長物持って行ってえいって切ったんだよね。いつ尻尾が生えてくるのかな、って思ってみていたら、血がどんどんどんどん出て、そんで終わり」
としゆき「俺にも同じ体験がある。俺も小さいころ、野原でミミズをとるのが大好きでね、ミミズってのは胴体を真っ二つにしても両方とも生きている。動物ってこんなもんじゃないのかなって思って、うちのネコ。うちの猫の胴体を真っ二つにしたら、死んじゃったんだよね」
としゆき「そう考えると、ミミズって偉大だね。最近面白いことありました?」
ひとし「面白いこと、ありました。この間道を歩いていたらね、松田聖子が道を歩いている。あれって思っていたら、後ろからアンドレ・ザ・ジャイアントが追っかけてくる。何が始まるのかなって思ってみていたら、いきなりアンドレ・ザ・ジャイアントが松田聖子を犯し始めたんだよね。やばいなあっと思ってみていたら、空からUFOが下りてきてね、宇宙人が松田聖子を助け出した。不思議だなあ、こんな不思議なことがあっていいのかな、夢じゃないのかなって思っていたら、夢だったけれどね」
としゆき「いい夢だね」
ひとし「うん。他に面白いことありました?」
としゆき「この前ね、友達みんなとね、飲みに行ったんだよね、とあるナイトパブ。友達5、6人と飲みに行ってね、職業についての話になったんだよね。いろんな職業の話になったんだけど、思わず口滑らして、サラリーマンってつまらない職業じゃない、ってだよね、って言っちゃったら、隣で飲んでいたサラリーマン風のおっさんが、『バカヤロー、この野郎。サラリーマンがつまらない職業だと』って絡んでくるからさ、やばいこと嫌だったから、『そんなことありませんよ、サラリーマンだっていい職業ですよね、最高ですよね』って言ったら、このおじさんが『バカヤロー、サラリーマンなんかつまんない職業なんだよー、俺なんかサラ金でな』って僕の膝で泣き崩れてきたんだよね。この人は生活に疲れているんだなって思ったんだけど、やっぱ人に迷惑をかけるのはよくないなあって思って、僕はウイスキーのボトルをつかんでその人の頭にエーイッてその人の頭に思いっきり落としたんだよね。そうしたらね、ウイスキーのボトルはきれいに真っ二つに割れちゃったんだけどね、そのおじさんは僕の膝元でまだしつこく泣いていたんだ」
ひとし「サラリーマンってのは、頭が固いんですね」
ひとし「僕もね、この前友達5、6人ととあるナイトパブへ飲みに行ったんですよね。職業の話になって、でもサラリーマンってつまんねえ職業だよなって言ったら、隣に言ったおっさんが『小僧、今何言った。サラリーマンがつまんない職業だと』っていうから『いやいや、そんなことありませんよ。サラリーマンだって立派な職業ですよ』と言うと『ば『バカヤロー、サラリーマンなんてつまんない職業なんだよぉ、うぉぅ、うぉぅ』って僕の膝で泣き崩れるんですよね。あんまりに可愛そうだったけれど、近くにあったウイスキーのボトルでね、おじさんの頭を思いっきりひっぱたいたらね、そのおじさんの頭はね、見事真っ二つ。血がどんどん噴出して周り中大騒ぎ。救急車が来て、そのおじさんは救急車に連れ去られていってしまったんですよね。僕はその救急車を見送りながら、大粒の涙を一滴流しました」
としゆき「君って意外と、おセンチなんだね」
二人「ジャンジャン」
(3週目合格 No.162 1983年5月28日放送)

としゆき「そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
ひとし「ところで、好きな言葉はありますか?」
としゆき「好きな言葉ですか。僕なんてね、やっぱり日本人ですから、日本語が好きです」
ひとし「うん」
としゆき「ところで、好きな言葉はありますか?」
ひとし「ありますよ。僕なんか、小さな頃から英語が凄く得意だったから、根性という言葉が好きです」
としゆき「今からさ、青春を振り返るとさ、なかなかいい先生に出会ったものですね」
ひとし「そうですね」
としゆき「僕なんかね、中学校の担任の先生、S先生って名前にしとこうかな」
ひとし「うん」
としゆき「S先生はすごくスポーツ熱心なんだよね。女子バレー部の顧問をやっていたの。放課後、夜遅くまで練習やって、夏は夏休み合宿やって、冬は冬休み合宿やって、春は春休み合宿やって、一年中一生懸命練習してね、うちの女子バレー部を絶対日本一にしてやるとかいってね、一生懸命練習しすぎたかどうだか知らないけれどね、生徒を三人も妊娠させてしまったということが、あったけどね」
ひとし「(長い間のあと)先生の仕事というのは、聖職(生殖)ですからね」
ひとし「今から、青春を振り返るとさ、悲しい出来事もたくさんありましたね。僕が一番悲しかったのは高校のときの卒業式。体育館で式が終わって、元のクラスに戻って担任の先生を囲んで、みんなで歌を歌うんですね。(「贈る言葉」で)暮れなずむ街の(ビシバシ)、光と影の中(ビシバシ)~ビシバシっていうのはもちろん先生を殴る音ですよ。すると先生は、その日の卒業式の空と全く同じ色の痣を体中にたくさん作って、目に大粒の涙を浮かべていたことを思い出しますね」
としゆき「別れに涙は付き物だね」
としゆき「うちの近所に女子高校生が住んでいたんだよね。名前がさくらちゃんとかゆりこちゃんとかすみれちゃんとか花の名前が付いていた可愛い子なんだけど、ちょっと肥り気味でいつも悩んでいた。昔は変ななんとかこんにゃくとか変な食い物を食べても痩せられない。ジョギングをやっても痩せられない。ボディビルをやっても痩せられない。最近新しい方法として取り入れたのがエアロビクスダンシング。二階の部屋で一生懸命やっていたんだけど、ある日誤ってね、机の門に足を引っかけちゃってね、二階の窓を越えちゃって地面に叩き付けられちゃったんだよね。頭を強く打って、植物人間になっちゃんだけど、今では綺麗に痩せてますよ」
ひとし「人間、なせばなるんですね」
ひとし「肥り気味っていえばね、僕の高校の野球部の一人がちょっと肥り気味だったんですね。ある日監督から、そんなに太ったんならレギュラーになれないぞって言われてしまったんだよね。そこで一念発起。その日から絶食を始めたんですね。1週間経ち、2週間経ち、とうとう、野球ができないくらい痩せてしまったんだよね」
としゆき「それでどうしたんです?」
ひとし「彼は今、野球部でバットとして活躍しているんですけれどね」
としゆき「人というのは、意外な才能があるものだよね」
ひとし「動物が人間を助けるエピソードというのはたくさんありますよね。僕の近所に、貧しいおじいさんが一人で暮らしていた。ある日河原から一匹の子犬を拾って、ポチという名前を付けたんですね。するとポチが、おじいさんの家の裏庭で鳴くんです、ここ掘れワンワンって。そこでおじいさんは掘りました。2mくらい掘ったところから、大判小判がザックザック。おじいさんは大金持ちになったんだよね。ところがその日から、幸運を運んだその子犬のポチはどこかに消えてしまったんですね」
としゆき「保健所連れて行かれちゃったんだね」
としゆき「やっぱね、動物が人間を助けるエピソードというのはたくさんありますよね。僕の近所に、貧しいおじいさんが一人で暮らしていた。ある日河原から一匹の子犬を拾って、ポチという名前を付けたんですね。するとポチが、おじいさんの家の裏庭で鳴くんです、。そこでおじいさんは一生懸命掘りました。大判小判がザックザック。おじいさんは大判小判を資本にして会社を設立しました。会社は大繁盛してね、おじいさんは大邸宅を創ったんだよね。その大邸宅にはおじいさんとポチの、一人と一匹暮らし。そしたらね、大邸宅の庭の真ん中でポチがここ掘れワンワンって鳴くんです。そこでおじいさんは一生懸命掘ってね、今度は石油でも出るんじゃないかなって思ったんだけど、1m掘っても、2m掘っても、3m掘っても、何も出ないんです。不思議に思ったおじいさんは穴の底から、おーいポチ、今度は何も出ないぞって言ったらね。ポチが穴の底をみながらね、馬鹿やろー、これで財産は全部俺のものだぞって言ってね、犬かきをしてね、そのおじいさんを埋めちゃったんだって」
ひとし「感動的な話だね」
としゆき「終わりです」
(4週目合格 No.163 1983年6月4日放送)

としゆき「そういったわけで象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「この間、釣りに行ったの、釣りに」
ひとし「ええ」
としゆき「山の中にある池なんだけどね、そこはね、2メートルを超す鯉が、池の主がいるという、有名な池だったんだよ」
ひとし「おう」
としゆき「そこで釣りをやっていたらね、隣で釣りをやっていた少年がね、足場が悪いからね、足を滑らせて池の中に落っこっちゃったんだよね。どんどんどんどんね、真ん中の方に流されていってしまう。真ん中の方に居るのは池の主の住処って噂になってたからね。僕はやばいと思った。早くおいでこっち戻ってきなさいよって言ったら、その子供がねえ、僕、泳げないんだよ。え、それじゃあ俺と同じだなって感心して見ていたらね、ぶくぶくぶく沈んじゃった」
ひとし「情景が眼に浮かぶね」
ひとし「この前ね、俺もとある山の中の池に釣りに行ったんですけどね。そこの池は沼の主、2m以上ある鯉がいるということで有名なところなんですけどね。僕が釣っているとね、あっちの方からね、村の青年団五六人がね、肩の上に子供を担いでこっちに走ってやってくるんですよね。何をするのかな?と思ったら、そのね、肩に担いていた子供、いきなり池の中に捨てちゃった。あれおかしいなあと思った。隣の釣り人がぼくに向かって言いました。若者よ、あれがこの村に伝わるからの風習なんだよ。そうかああやって子供を鍛えるんだなって僕が思ったその瞬間、沼から、大きな鯉が出てきてぱっくり、その子を食べちゃいました」
としゆき「生贄だったんだね」
としゆき「この前ね、僕はね、寝てるとね、夜中ね、お父さんが僕の枕元に立ってね、言うんですよね。お前にはな、俺の血が流れているんだって。何言ってんのかな?と思ってるとしつこくね、お前には俺の血が流れているんだって。うるせぇなと思ったら、またすぐ、お前には俺の血が流れるって言う。うるせえ、このじじいって起きたらね、僕の額をね、血が流れてるんだよね。よく見るとね、うちのお父さんね、僕の顔に鼻血をぼたぼたぼたぼた落としていた」
ひとし「スパルタ教育ですね」
ひとし「この前僕が寝てるとね、枕元にうちの親父が立って言うんです。お前に俺の血が流れている。なんだなと思って、お前には俺の血が流れている。なんだなと思って、お前に俺の血が流れている。うるせえなって言った瞬間、うちの親父、僕の首筋に噛みついて血を吸っていましたけどね」
としゆき「そういうのを、スキンシップというんだね」
としゆき「この前、俺、最近読書もしてないなと思ってね、本屋さん行ってね。僕は自然主義の小説が好きだったから、島崎藤村の本を買ってきて、さあ、うちに帰って机にむかって読もうと思った瞬間にね、題名が読めない。うん、なんて本だっけなあと思って。確か、新潮文庫の百冊の中に入っていたぞってずっと考えたらね。一週間ぐらい経ってね、題名思い出したの。島崎藤村の破戒って読むんだって。やったと思い出したと思って、嬉しくなって机叩いちゃったらね、机が壊れちゃった」
ひとし「もったいないことしたね」
ひとし「この前ね、読書しようと思ってね。本屋で島崎藤村の本を買ってきて、家に帰って机に向かってさあ読もうと思ったら題名が分からない。なんて読むんだっけな?何て読むんだっけな。机にむかって一時間ぐらい考えて、やっとわかった。わかった、これは島崎藤村の破戒って読むんじゃないかよって思って、思い切り机を叩いたらね。手骨折しちゃいました」
としゆき「読書と言うのは骨が折れるんだね」
としゆき「この前ね、俺ね。庭でね、芝刈ってたの、お昼頃に。芝刈り機で芝刈ってたらね、なんか隣の若奥さんが赤ちゃん抱いてね。ちょっとね。そこに魚屋さんが来たの、車で来る業種の魚屋さんがさ。ちょっとこの赤ちゃん、ちょっと子守してくれるって言うからね。僕はね、引き受けたんだよ。それでね、あやしていた。高い、高い、高いってやると笑うんだよ。かわいいねって、高い、高い、高い、高いって何回もしたらね、手滑らせて地面に落っことしちゃったんだよ。やばいな、ギャーギャー泣きわめいちゃった。ヤバいと思ってさッと拾ってね、また高い、高いってね。今度はね、笑わない。今度ね、高い高い高い、って振っちゃったら、余計泣いちゃったんだよね。やばいな。どうしようかな。そうだ。もう一回落とせば泣き止むんじゃないかなと思って。パッと手を離したらね、芝刈り機の角に思い切りぶつけてしまったね。余計泣いちゃった。」
ひとし「元気がいい子ですね」
ひとし「この前の日曜日ね。僕は壁に向かって、一人でキャッチボールしてるとね。隣の若奥さんが手に子供を抱いてやって来てね。ちょっと買い物に行くんだけど、子守してくれるかなって言うから、いいですよ任せてください。僕が子守をすることになったんですよね。高い高いってね、笑って可愛い。高いかわいいなと思って、高い、高い、高いってやったら手滑らせてコンクリートの地面に落っことしちゃったんですよね。わんわんわんわん泣いちゃって。やばいなこれは機嫌を取り戻さなきゃいけないと思って、もう一回高い、高い、高いってやったら、今度は泣き止まない。高い高い高いってやっても、泣きやまない。高い高い高い、やってもやっても泣き止まないんですよね。どうすれば泣き止むのかなと思って。あ、そうか。もう一回地面に落とせば泣き止むかもしれないと思って、高い高い高いってやってね、パッと手を放してコンクリートの地面に落っことしてね。まだ泣いてるんですよね。なんだこいつはよ、って思って思い切り踏みつけたら、泣き止みました」
としゆき「親のしつけがいいんだね」
二人「じゃんじゃん」

「頭から嘘の塊のような話になっているから、着いていけなくなっている。たまには本当のような話を入れないと」「片方が話をした後、片方がまた同じような話をしている。喋りすぎ。簡素化できるところは簡素化しないと」「ブラックユーモアなんだろうけれど、もっとナンセンスな話をしてもいいと思う」好評な意見は聞かれなかったので落ちたかと思ったら、合格。しかし「来週は頑張ってください」という厳しいコメント。
 この週は唄子・啓介ではなくててんや・わんやが審査員だったから、合格できたのだと思う。京唄子はただでさえ残酷なネタは嫌いなのに、この週はそのようなネタばかりだった。
(5週目再挑戦合格 No.180 1983年10月1日放送)

としゆき「そういったわけで象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「象さんのポット、今日は趣向を変えて、劇団を作っちゃった」
ひとし「そうなんですね」
としゆき「たった2人だけなんだけどね。今日はお芝居をやってみたいと思う。お芝居をやっていいかな?」
ひとし「いいたま」(これは受けなかった)
としゆき「象さんのポット劇団、第1回公演の第1話は出逢いです」

二人左右に離れ、歩いてくる。
としゆき「よぉ!(と片手を上げる)」
ひとし「え?(と首をひねる)」
としゆき「久しぶりだな」
ひとし「え?(と首をひねる)」
としゆき「僕だよ、僕」
ひとし「え?(と首をひねる)」
としゆき「思い出してくれないかな」
ひとし「え?(と首をひねる)」
としゆき「僕だよ」
ひとし「え?(と首をひねる)」
としゆき「あの小さいころ、一緒に遊んだだろう」
ひとし「え?(と首をひねる)」
としゆき「君のうちの(指折り数えて)三軒隣に住んでいた僕だよ」
ひとし「ああ、僕か。金や優は元気か」
としゆき「うん、今みんな、焼肉屋さんをやっているよ」
二人「じゃんじゃん」(どこが受けるところなのか、わからなかった)

としゆき「そういったわけだ第2話は、ミュージカルなんだよね」
ひとし「そうなんだよね」
としゆき「森のくまさん」
(歌いだす)
としゆき「ある日」
ひとし「ある日」
としゆき「森の中」
ひとし「森の中」
としゆき「熊さんに」
ひとし「熊さんに」
としゆき「出会った」
ひとし「出会った」
二人「花咲く森の中、熊さんに出会った」
としゆき「ある日花咲く森の中で、私は熊さんに出会いました」
としゆき「おーい、熊さん」
ひとし「なんだい、八つぁん」
二人「じゃんじゃん」
としゆき「熊さんと八つぁんの、心温まる物語でした」
ひとし「二人の人物像が浮き彫りにされた作品でしたね」
としゆき「そう、ミュージカルって本当に素敵だね」
ひとし「はい」

としゆき「そういったわけで第3話は、SFなんだよね」
ひとし「そうなんです」
としゆき「SFファンタジー、未知との遭遇です」
としゆき「今日は星空の綺麗な晩。二人の男が星を見ながら話をしています」
としゆき「よお、大将」
ひとし「よお、親方」
としゆき「今日は星の綺麗な晩だね」
ひとし「そうだね」
としゆき「あっ、あの光る物体は何だ。もしかしたら、あれはUFOじゃないか」
ひとし「いやいや、そんなはずはないよ」
としゆき「そうだよな。そんなことを言うのはガキか、木曜スペシャルのスタッフぐらいだよな。やっぱあれは、飛行機だね」
ひとし「いやいや、あれは蛍だよ」
としゆき「いや、あれは飛行機だよ」
ひとし「蛍だよ」
としゆき「そんな小さなものじゃない。あれは飛行機だよ」
ひとし「そんな大きなものじゃない。あれは蛍だよ」
としゆき「あれは飛行機の警戒灯だよ」
ひとし「いやいや、あれは蛍のお尻だよ」
としゆき「飛行機だね」
ひとし「蛍だよ」
としゆき「飛行機だい」
ひとし「蛍だい」
としゆき「見ろ、あの光る物体がこちらへやってくるぞ。危ない、伏せるんだ」
二人で身を伏せる。
としゆき「ほらね、やっぱり飛行機だったろ」
ひとし「でも、運転していたのは蛍だよ」
としゆき「これでよかったんだね。いったい何がこれでよかったんだかわからないけれど」
ひとし「そうだね」
としゆき「素敵だね」
ひとし「そうだね」

としゆき「続いて第4話。何とサスペンス」
ひとし「サスペンスだね。ちょっと心臓の弱い方は、下を向いていた方がいいね」
としゆき「第4話、サスペンス、終わりなき戦いです」
としゆき「私は今日、永年捜していた、親の仇と巡り合うことができます。今日は親の仇と決闘の日なんです。あ、そこへ親の仇がやって来ましたよ」
としゆき「待っていたぞ」
ひとし「ははは」
としゆき「親の仇め」
ひとし「ははは」
としゆき「いざ、尋常に勝負しろ」
ひとし「ははは、(突然しゃがみこんで)お腹が痛い」
としゆき「何だ貴様」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「勝負しろ」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「仮病を使って決闘を休む気だな」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「本当に痛いのか」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「仕方ないなあ。武士の情けだ。ちょっと見せてみろ」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「右手を出してみろ」
ひとし「はい」
としゆき「えい」
ひとし「何をするんだ」
としゆき「この剃刀で、お前の右手を切っちゃうんだよ」
ひとし「バカなことはやめなさい(と左手で相手の頭をたたく)」
ひとし「あっ、相手の頭をたたいた瞬間に、お腹が痛いのが治っちゃった」
としゆき「頭が痛い」
ひとし「どうしたんだ」
としゆき「頭が痛い」
ひとし「困ったな」
としゆき「頭が痛い」
ひとし「うーん、こんな勝負の付け方は好きじゃないんだが、今すぐ楽にしてやろう。右手を出しなさい」
としゆき「(右手を出す)」
ひとし「ジャンジャジャーン」
としゆき「どうするんです」
ひとし「手相を見るんだ。ごしごしごしごし」
としゆき「何をしているんです」
ひとし「ははは、この消しゴムで、お前の生命線を全部消してやったんだ」
としゆき「そんなことできるわけないだろう(と相手の腹を殴る)」
ひとし「(しゃがみこむ)」
としゆき「あっ、お腹を殴った瞬間に、頭が痛いのが治ったぞ。よし、勝負だ」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「えっ(と大げさに驚く)」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「何だ貴様」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「仮病を使って決闘を休む気だな」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「本当にお腹が痛いのか」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「仕方ないなあ。武士の情けだ。ちょっと見せてみろ」
ひとし「お腹が痛い」
としゆき「右手を出してみろ」
ひとし「はい」
としゆき「えい」
ひとし「何をするんだ」
としゆき「この剃刀で、お前の右手を切っちゃうんだよ」
ひとし「バカなことはやめなさい(と左手で相手の頭をたたく)」
ひとし「あっ、相手の頭をたたいた瞬間に、お腹が痛いのが治っちゃった」
としゆき「頭が痛い。こうしてこの激しい戦いは、果てしなく続いたのでした」
二人「じゃんじゃん」

としゆき「どうですか、やってみての感想は」
ひとし「いやあ、たった二人の人数。この小さい空間を使って、象さんのポットでしかできない、協調性と調和性を、そういったものが浮き彫りにされた作品でしたね」
としゆき「なかなか哲学的だね」
ひとし「でも本当は、顔が真っ赤になるぐらい恥ずかしかったです」
としゆき「同感だね。他に何かありますか」
ひとし「テレビを見ているちびっ子。これは象さんのポットだからできることであって、みんなは危険だから絶対にまねしないでくださいね」
としゆき「お父さん、お母さん、御指導よろしくお願いいたします」
二人「そういったわけで、じゃんじゃん」

 UFOのネタ、『爆笑王誕生』でもやってました。
 観客の反応はイマイチだったと記憶してますが、私は大好きなネタで、面白かったし懐かしかった。
(6週目合格 No.181 1983年10月8日放送)

としゆき「そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「この前ね、事故見ちゃった、事故」
ひとし「うん」
としゆき「交通事故なんだけどね。トラックがね、飛び出してきた小学校二、三年生ぐらいの男の子にね、はねられてました」
ひとし「そういったことってあるよな」(ここで爆笑)
ひとし「僕の友達の三沢君、この夏海に行ったまま、帰ってこなくなっちゃったんです」
としゆき「行方不明?」
ひとし「そう、その状態が1週間ぐらい続いた後、沖合100mぐらいのところでぷかぷか浮かんでいるところを、漁船の人たちが発見しましたけれどね」
としゆき「沈んでなくてよかったね」
(笑いは最初こそ少なったが、間を長くとるうちに少しずつ増えていく)
ひとし「ところで、学生時代に思い出ありますか」
としゆき「そうねえ、いい先生に出会ったね。僕が学校からの帰り道、道の真ん中に一匹の蛙が立ちはだかるんだよね」
ひとし「うん」
としゆき「僕は蛙が大嫌いだった」
ひとし「ほぉー」
としゆき「怖いなー、どうしよう、帰れなくなっちゃった。すると僕の肩をトントンと叩く人がいる」
ひとし「うん」
としゆき「振り返ってみると、そこには僕の担任の河野先生が立っていたんだよね」
ひとし「うーん」
としゆき「お前こんなところで何をやっているんだ。早く家に帰って勉強しなさいって言われたから、僕はこの蛙が怖くて帰れないんですよー、と言ったら、バカヤローと僕の顔面をいきなり殴った」
ひとし「ほぉー」
としゆき「こんな蛙のどこが怖いんだ、と言って蛙を掴むと、パンツの中に入れちゃったんだよね。そうして気をつけをすると、ひんやりして気持ちいいと言って空を見上げ、肩で風を切って学校の方へ駆けていったんだよね」
ひとし「うーん」
としゆき「僕はその先生の背中に、「男」という字を見ましたけれどね」
ひとし「江戸っ子だったんだね」
としゆき「やっぱり高校時代って、想い出ありますか」
ひとし「ありますよ。僕の学校の帰り道、道の真ん中に一匹の蛇が立ちはだかるんです。僕は蛇が大嫌いでした。そこに佇んでいると、僕の背中をトントンとたたく人がいます」
としゆき「へぇ」
ひとし「パッと振り返ると、そこに担任の高橋先生が立っていました。先生、僕はこの蛇が怖くて前に薦めないんです、というとバカヤローと言って僕の顔を殴りました。蛇なんてのはな、蛇なんてのはなあ、と言いますと蛇を掴んで、口の中に入れ始めたんです」
としゆき「(びっくりした顔)」
ひとし「怖いと思うから怖いんだ、わかったか、というとおもむろにお尻を抑え、ふっ、ケツから蛇が出てきそうだぜ(ここで間、会場笑)、と照れ笑いを浮かべ、校舎へ帰っていったんです。僕はその先生の背中に、「闘魂」の「闘」の字を見ましたけれどね」
としゆき「ただものじゃない」
ひとし「他に何か学生時代に思いでありますか」
としゆき「あるんだよね。また高校時代の帰り道ね、またね、蛙が道の真ん中に立ちはだかったんだよね。僕はもうその時、蛙は怖くなかった。この蛙は何かな、と思ったんです。アマガエルかな、トノサマガエルかな、ニホンアカガエル、ヒキガエル、もしかしらこれはメスが卵を産んだ後オスがメスの背中に卵をのせ卵を変えるピパかな、と考えた」
ひとし「だけどピパというのは南アメリカ産なんだよね」
としゆき「そう、だからこんなところにいるはずがない。おかしいなあと思ってしまったんです。そうして悩んでいると、立ちすくんでいるところに肩をポンポンと叩く人がいるんです」
ひとし「ほう」
としゆき「振り返ってみると、そこには僕の担任の河野先生が立っていたんだよね」 ひとし「うーん」
としゆき「お前こんなところで何をやっているんだ。早く家に帰って勉強しなさいって言われたから、僕はこの蛙が何か悩んでいるんです、と言ったら、バカヤローと僕の顔面をいきなり殴った」
ひとし「おう」
としゆき「蛙なんか、こうすればいいんだ。そう言って先生は大きな石を持ってきて、蛙の上に落としました。蛙は見事に潰れて、口から内臓を吐き出したんですよね。それを先生は、アパッチ野球部の○○のようにがっちりと受け止めて、いいか、お前も苦しい時、哀しいときがあるだろう。そんなときはこれを見て、先生のことを思い出すんだ、と内臓を僕に手渡したんです」
ひとし「うーん」
としゆき「とっても生臭かったです。そして、肩で風を切って学校の方へ駆けていったんだよね」
ひとし「うーん」
としゆき「僕はその先生の背中に、「信頼」の「信」という字を見ましたけれどね」
ひとし「江戸っ子だったんだね」
としゆき「やっぱり他に思い出あったんですか」
ひとし「あります。僕の高校の帰り道、道の真ん中にまた一匹の蛇が立ちはだかるんです。この蛇は何かな、僕はもうその時、蛇は怖くなかった。この蛇は何かな。青大将、縞蛇、ひょっとするとゴームじゃないかな」
としゆき「ゴームというのは、水曜スペシャルで、あの川口浩さんが捜しに行く、フィリピンの幻の蛇じゃないですか」
ひとし「その通りなんです。すると、肩をポンポンと叩く人がいるんです。振り返ってみると、そこには担任の高橋先生がいました。先生、僕はこの蛇が何か迷っているんです。バカヤロー、この蛇はマムシじゃないか、と僕を殴ろうとした瞬間、マムシに咬まれてしまいました。のたうちまわりながら僕に向かって言ったんです。いいか早く立派になって、先生を安心させてくれ。右腕からぽたぽた血を流し、校舎に帰っていく先生。僕はその先生の背中に、「死亡」の「死」の字を見ましたけれどね」
としゆき「とっても、ヘビーな話だね」
二人「チャンチャン」

 京唄子は、私たちが笑わなくても、後ろの人たちが笑っている、時代が変わっているな、との感想。ちょっと残忍なところがあったね(京唄子はこの手のネタがあまり好きでない)と苦笑い。間はいいと、絶賛。今の若い人に共鳴される笑いと赤塚。逆にお客に感謝しないと、二人の笑いをわかろうと必死になっていると鳳。
 台本さえよければすごくいいので、台本をがんばってほしいと言われて合格。
(7週目合格 No.182 1983年10月15日放送)

としゆき「そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「出てきてそうそういうのもなんだけど、象さんのポットという名前に飽きちゃった」
ひとし「この名前飽きちゃったね」
としゆき「ここで、飛躍を期すために改名してみようと思っている」
ひとし「いいですね。シャネルズがラッツ&スターに名前を変えて飛躍したように、僕たちも飛躍しよう」
としゆき「幾つか考えたんだけど、ここで発表しちゃってね、一番受けた名前に改名しようか」
ひとし「いいですね。やってみようか」
としゆき「そういったわけで、最初はこれです。タイガーの」
ひとし「ジャーです」
としゆき「飛躍がないね」
ひとし「二番煎じですね」
としゆき「じゃあ、もう1個、飛躍を期して、犬印の」
ひとし「妊婦帯です」
としゆき「飛躍したけどね」
ひとし「わけわからないですね」
としゆき「こういうのはどうかな。亀屋万年堂のナボナは(途中咬んでしまう)」
ひとし「お菓子のホームラン王です」
としゆき「ちょっととちっちゃいました」
ひとし「とちらなきゃ面白かったんですけれどね」
としゅき「どっちにしても長いな」
ひとし「そうですね」
としゆき「どっちにしても、こういうのはコンビらしくない。コンビらしい名前があるじゃないですか。なんとか兄弟とか」
ひとし「考えましたね、二つほど」
としゆき「そういったわけで、ライト」
ひとし「兄弟です」
としゆき「似合わないな」
ひとし「似合わいませんね」
としゆき「もう1個の兄弟シリーズ」
ひとし「はい」
としゆき「こんにちは、僕たちが、曾我」
ひとし「兄弟です」
としゆき「畏れ多いね」
ひとし「申し訳ないですね」
としゆき「こういったのはどうかな。普段の生活で気を付けているようなことをコンビ名にしてしまう」
ひとし「一つだけ考えました」
としゆき「こんにちは、戸締まり用心」
ひとし「火の用心です」
としゆき「発想は良かったんだけどね」
ひとし「マイナーですね」
としゆき「ほら、コンビ名というとシンプルにね、苗字名前、苗字名前というのがあるじゃん。横山やすし・西川きよしとか」
ひとし「これは漫才界の偉大なる先輩、獅子てんや・瀬戸わんや師匠をちょっと変えて作ったんだよね」
としゆき「受けるかな」
ひとし「これで受けなかったら、ぼくは腹を切ります」
としゆき「その言葉の裏にある自身、どんなものでしょう」
ひとし「うん」
としゆき「こんにちは僕たちが、獅子十六と」
ひとし「瀬戸の花嫁です」
としゆき「実は最初から変える気なんかないんですけれどね」
ひとし「僕は象さんのポットという名前が大好きなんです」
としゆき「僕も大好きですよー」
としゆき「そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「や、なんだかんだ言って秋だね」
ひとし「そうですね」
としゆき「でもね、この秋もすぐ終わって冬が来るよ。また春が来て、次に夏が来て、そしてまた秋が来るんだ」
ひとし「そう、秋が終わると冬。冬が終わると春。春が終わると夏。夏が終わると、また秋が来るんですよね」
としゆき「でもね秋は涼しいけれど、続いて寒い冬が来て、そして暖かい春が来て、そして暑い夏が来て、暑くてやだなあと思うと、また秋が来るんだよね」
ひとし「そう、秋が終わると冬。冬が終わると春。春が終わると夏。夏が終わると、また秋が来るんですよね」
としゆき「こういう風に何回も言っていると、聞いている方も飽きが来るんですね」
ひとし「そう、飽きが終わると冬。冬が終わると春。春が終わると夏。夏が終わると、また秋が来るんですよね」
としゆき「いいかげんにしなさい」
二人「ジャンジャン」と礼をするも、
としゆき「と、ここで終わるのと思うでしょうが」
ひとし「新生象さんのポットはジャンジャンからまた新しいネタが始まる、画期的な漫才方法を取り入れたんですね」
としゆき「一回終わって、また始まる。終わっちゃって、始まる。そう、まるで輪廻ですね」
ひとし「輪廻ですね。仏教用語。ついに象さんのポットも宗教的になってきましたね」
ひとし「ところで最近、面白いことありましたか」
としゆき「あります。この前ね、駅前を歩いていると変なおばあさんが立っている。通りがかる人、一人一人にお辞儀をしているんだよね」
ひとし「うん」
としゆき「礼儀正しいおばあさんだな、と思ったんだけど、気になっておばあさんに聞きました。あなた、何者なんですか」
ひとし「ほー」
としゆき「すると、おばあさんは答えました。私は、一人一人にお辞儀をするのが好きなおばあさんなんです」
ひとし「うーん、落ちに工夫が無い」
としゆき「ごもっとも。わざと、わざと。つまんないことを言って、君のところで盛り上げる。コントラストの問題。俺は根っこ。根っこになって、君のところで花を咲かせてみせる。あるだろ。松本が盗塁すると、バッターは空振りをする。手を抜いているわけじゃないんだよ」
ひとし「花を咲かせてみせましょう。最後のところからもう一回お願いします」 としゆき「すると、おばあさんは答えました。私は、一人一人にお辞儀をするのが好きなおばあさんなんです」
ひとし「うーん。俺にも同じような体験がある。この前ね、駅前を歩いていると変なおばあさんが立っている。よく見ると、僕のおばあさんに似ている。だけどおかしいな、僕のおばあさんは青森にいるはず。おかしいな、そう思って近づいて見て見ると、僕のおばあさんにそっくりなおばあさんでした」
としゆき「全然花が咲かないだろ」
二人「ジャンジャン」

 名前の件はすごく面白かった。最後は尻すぼみだったが、間もよかった。その前は言うことなし。最後にもう一つ強烈なものがほしかった。最後にジャンジャン、と言った後、これで終わるでしょうが、本当に終わりです、とか。
 苦労しているんです、ととしゆきが言うと京唄子は「あれで苦労しているの?」と突っ込む。
 最後を除くと、確かに面白かった。
(8週目不合格 No.183 1983年10月22日放送)

としゆき「そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
としゆき「(二人で上を見上げて)いい天気ですね」
ひとし「あれ、ライトだよ」
としゆき「なんだかんだ言っても8週目まで来ちゃった」
ひとし「そうですね」
としゆき「ネタ考えたら大変なんでね、最近毎日考えている。考えるのはお風呂。お風呂で湯船につかって考えていたら、タイルの上にゴキブリさんがいた。寒いから、こんなところに出てくるのかと思ってみていたら、ゴキブリさんの背中が寂しそうに見えるんだよね。ゴキブリさんて嫌われ者でしょう。古くから地球上にいるのにね。寒いだろうと思ってゴキブリさんをそっと手に取り、胸に抱いて湯船につかったんだよね。温まったかな、と思って手を放すと、ゴキブリさんはこうやって(と手をバタバタさせる)浮かんじゃってるの」
ひとし「心臓が弱かったんだね」
としゆき「なんかさ、人生の中で怖い体験をしたことがありますか」
ひとし「ありますよ」
としゆき「僕も色々あるんだけどね、今日はさ、僕らがいろいろ体験した恐ろしいことの数々を話したいと思います。象さんのポットがお送りする、世にも奇妙な」
ひとし「物語」
としゆき「そう、あれは小雨の降る夜でした。僕は車を運転していたんです。するとある町へさしかかりました。そこは、髪の長い女の幽霊が出ると噂がありました。僕が車を運転していると、ちょうど目の前にやはり髪の長い女が現れたんです。僕はどっしんと急ブレーキをかけたんです。すると頭をごっつんとハンドルに当ててしまいました。僕は痛いな、と思いながらも恐る恐る顔を上げると、そこには女の人の姿がなかったんです。僕は恐る恐るどっしんとアクセルを踏み、後ろを見ると女の人が大の字で倒れていたんです」
ひとし「ひき逃げだったんだね」
ひとし「そう、僕は一人で寝ていると、妙に胸騒ぎがするんです。怖いなと思っていると、窓から生暖かい風がヒュー、ヒュー。お寺の鐘の音がゴーン、ゴーン。鳴りやんだかなと思ったらまたゴーン、ゴーン。鳴りやんだかなと思ったらまたゴーン、ゴーン。鐘の音は朝まで鳴り続けました。僕はうるさくて、朝まで眠れませんでした」
としゆき「迷惑な寺だね」
としゆき「そう、僕は福島県のある地方へ旅をしたんです。辺鄙なところで道に迷ったんです。夜になってしまいました。困ったな、野宿しようかなと思ったら、一軒だけ民家があったんです。そこに泊めてもらうことにしました。そこはおばあさんが一人暮らしでした。こんな人里離れたところにおばあさんが一人暮らしなんておかしいなと思ったけれど、泊めてもらいました。真夜中寝ていると、変な音で目が覚めました。シューシューという音が隣からしました。何かなと思って恐る恐る隣の部屋をのぞいてみると、怖い形相をしたおばあさんが、庖丁を研いでいました。僕は恐ろしくて、朝まで眠ることができませんでした」
ひとし「働き者のおばあさんだね」
ひとし「そう、夜遅く僕が読書をしていると、胸騒ぎがするんです。生暖かい風がヒュー。時計の鐘の音がボーン。すると、窓の外を子供が横切っていきました。へんだな。おかしい。こんな夜に。しかもここは二階だ。おそるおそる窓から覗いてみると、するとそこには、月明かりを浴びた子供が、3mの竹馬に乗って遊んでいました」
としゆき「不良だね」
としゆき「そう、これは僕が今までの人生の中で一番恐ろしい体験だったといっても過言ではありません、といっても過言ではありません。僕はある雪山登山に行ったんです。吹雪に見舞われてしまったんですよね。困ったな、天は僕を見放したかと思ったら、そうじゃありませんでした。どこからともなく、髪の長い色の白いきれいな女の人が現れて、うちに泊まっていきなさいと言ったんです。僕は思わず、やったぜ赤ちゃんと思いました」
ひとし「それをいうなら、やったぜベイビーじゃないかな」
としゆき「翻訳したんだけどね」
ひとし「はい」
としゆき「そうしたら、その女の人はなんとね、雪女だったんですよね。怖いなと思ったけれど、きれいだからいいやと思って着いて行っちゃったんだよね。雪女の家って凄い山の中にあってね、小屋なんだよね。その小屋の周りにこーんなに大きい足跡がいっぱいあった。これはなんですかと聞くと、うちの旦那の足跡ですって。ひょっとして雪女の旦那って、僕は思いました」
ひとし「だいたい想像が付きます。けど、なんだったんですか」
としゆき「霜焼けで足をこーんなにふくらました旦那さんがいました」
ひとし「…………」
(呆れたように立ちつくす。ずーっと立ちつくす。いつもより長い間。観客からも笑い声。そこでとしゆきが堂々と耳打ち。観客、大笑い)
ひとし「肩すかしだね」
二人「ちゃんちゃん」

 最後は忘れたのと問われ、あまりにも笑い声があったのでセリフを発する機会を失ったと答えた。それだけ間が持てる、耳打ちができる度胸があると誉められたが、講評では一つ一つの落ちが弱かった、一つ一つ決めてほしいということで不合格。

 確かに途中は今一つのところもあったけれど、最後の大受けを考えたら、合格でもよかったと思う。
(サバイバルシリーズ1回戦 74点× No.188 1983年11月26日放送)

 過去ネタをつなぎ合わせたもの。
 ぼーっと立っている人の話。
 学生時代の思い出、中学生のころ、理科室に呼ばれてミカンの話。
 高校の進路の話、進路指導係、ポケットから蛇を取り出す。
 高校野球の話。キャッチャーが赤ん坊を助ける。
(第1回オープントーナメントサバイバル1回戦 84点〇 No.196 1984年2月4日放送)

「今回は有名なCMについて考察してみたい」
「まず最初はこれです」
「ナボナはお菓子の」
「ホームラン王です」
「これは王選手だからいいんだよね」
「王選手がホームランを打って、ベースを一周して最後にナボナを受け取り、お菓子のホームラン王」
「これが他の選手だったら違うね。例えば土井選手だったら」
「ナボナはお菓子の」
「送りバントです」
「地味だよね」
「これじゃ売れないね」
「間違っても広岡選手とかは使えないね」
「そうだね」
「ナボナはお菓子の」
「三遊間をゴロで抜ける当たりがない守りです」
「何を言っているかわからないね」
「次はこのCM。パンシロンで」
「パンパンパン」
「これはパンパンパンって三回言っているからいいんだよね」
「その通りですね。ここは三回じゃなきゃいけない」
「例えば、パンシロンで」
「パン」
「間が抜けていますね」
「そうですね」

 この後の考察は、「ハヤシも」「あるでよ」、「鳩屋は」……
 「のさ言葉」。
 「こんにちは、象さんのポットでせ」とか「…象さんのポットでそ」とかえんえん続けて最後に「象さんのポットでした」で終わるのがあったと思います(落ちたけど)。
第5回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦 80点× No.266 1985年6月15日放送)

としゆき「そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
ひとしが頭を上げたのだが、としゆきは頭を下げたままなので、ひとしはまた頭を下げる。
ようやくとしゆきが頭を上げたが、ひとしは頭を下げたままなので、としゆきはまた頭を下げる。
ひとしが頭を上げたが、としゆきは頭を下げたままなので、ひとしはまた頭を下げる。
としゆきが頭を上げたが、ひとしは頭を下げたままなので、としゆきはまた頭を下げる。
ようやく二人がそろって頭を上げる。
二人は無言のまま、いきなりじゃんけんをする。
負けたとしゆきが、再び頭を下げる。
ひとしは馬飛びをする。
ひとしがとしゆきの横に並び、としゆきは頭を上げる。

としゆき「すっかり無駄なことをしちゃったな」
ひとし「そうだね」
としゆき「でもね、人間って、無駄なことをしがちだけどね。最近無駄なことをしていますか?」
ひとし「落ちても落ちても、こうやってサバイバルシリーズに出て、性懲りもなくこうやって漫才をやっている事かな」
としゆき「(しばらく無言の後)いくら頑張っても84点」
ひとし「79点のときも多いね」
としゅき「人間、無意味なことをしがちだけどね、無意味なことをやっていますか」
ひとし「生きている事かな」
としゆき「俺達、嫌われ者だからね」

としゆき「この間、道を歩いているとね、ものすごく小さい人が歩いているんだよね」
ひとし「身長はどのくらいですか」
としゆき「身長はね、ほとんどない!(絶叫)」
ひとし「そういう人がいるんですか、世の中に」
としゆき「いるんです。その人が私の目の前から消えちゃったんだよね。その人ね、アリの巣に落っこっちゃったんだよね」
ひとし「で、その人どうなりましたか」
としゆき「今はですね、女王アリの知恵袋だってさ」
ひとし「(しばらく黙った後で)飛躍しすぎですね」
「人生って、大変だよなー……」
「そうそう、『人生楽ありゃ苦もあるさ』ってね……」
「『涙の後には虹も出る』」
「…………」
「…………」
「……涙の後に虹の出る奴はいないけどね」
(第7回オープントーナメントサバイバル準決勝Bブロック 91点○ No.316 1986年6月28日放送)

紙テープが数本舞う中、登場。としゆき、ステージに落ちた紙テープをまたぐように登場。
としゆき「壁に耳あり、障子に目あり」
ひとし「古くからの言い伝えだね」
としゆき「でも、そんな家があったら怖いね」
ひとし「いや、そんなことはないよ」
としゆき「何言ってんだ? そんな家があった怖いだろう、当然」
ひとし「いや、そんなことないって」
としゆき「そんな家があったら、不気味だろ」
ひとし「そんなことないって」
としゆき「そんな家があったらなあ、見てみたいよ」
ひとし「じゃあ僕んち着てごらん」
(少しの間)
としゆき「そんなこと言って、俺を驚かせたって無理だよ」
ひとし「いや、別にそういうわけじゃないけどさ」
としゆき「自慢してるんだよ」
ひとし「そんな訳じゃないよ」
としゆき「そりゃ君んちは立派だよ。壁に耳があって、障子に目があるかもしれないよ。でも俺はそんなことでね、君にコンプレックスは持たないな。(大きな間)ぼくんちの犬だってすごいんだぜ」
ひとし「どんな風にすごいんだよ」
としゆき「夫婦喧嘩は犬も食わぬ、って言うだろう」
ひとし「古くからの言い伝えだね」
としゆき「でもうちの犬って、隣の家の夫婦喧嘩、食べちゃったんだぜ」
ひとし「ちゃんとエサあげた方がいいね」
(大きな間)
としゆき「まあ、気まぐれな犬なんだよね」
ひとし「そういうのもいるからね」
としゆき「やあ、俺もね。最近、日本語で不思議な言葉あるんだよね」
ひとし「どんな言葉?」
としゆき「踏んだり蹴ったり」
ひとし「ありますね」
としゆき「いやー、この前、さんざんだったんだな、踏んだり蹴ったりだなって言ってさ、ひどい目にあったときに使う」
ひとし「そうだね」
としゆき「でもあれ、おかしいと思わない? (振りをしながら)あれ、踏んだり蹴ったりだろう」
ひとし「うん」
としゆき「すかっとするじゃん、そんなことやったら。踏んだり蹴ったりじゃあさ、ひどい目に遭わせる方だろ。あれが踏まれたり、蹴られたりだったら、あー、これひどい目にあったなって感じするけどさ、なんであれが踏んだり蹴ったりで、ひどい目に遭ったことなんだろうな」
ひとし「君は勉強不足」
としゆき「えっ」
ひとし「あれはね、あの言葉は正式な言葉じゃないの」
としゆき「そう」
ひとし「あれにはね、ちょっと省略された部分がある」
としゆき「ということは、なんか成句があって、その中に踏んだり蹴ったり、ってその一部だってこと?」
ひとし「そう。あれの正式な言葉は」
としゆき「ほう」
ひとし「うんこ、踏んだり蹴ったり」
としゆき「いやー、勉強になったな」
ひとし「まあ、教育って大事だからね」
としゆき「やっぱりね、あれだね、何て言うか。本当ね。私はなんでこんなひどい目に遭ってしまわなきゃいけないのかっていう時あるよね」
ひとし「そうだね」
としゆき「人生一寸先は闇」
ひとし「うん」
としゆき「この間ね、鼻が詰まって鼻をかんだらね、歯が折れちゃったんだよね」
ひとし「いや、この間俺もさ、鼻が詰まったんで、鼻の中に指入れて中の物を取ろうかなとしたら取れない」
としゆき「ほう」
ひとし「あれーって思って、また取ろうとしたら、だんだん奥に入っちゃう」
としゆき「はあ」
ひとし「あれーって思ったら、また奥に入っちゃう」
としゆき「はあ」
ひとし「あれーって思って、だんだん指を奥に入れちゃったらさ」
としゆき「うん」
ひとし「左眼、目で押しちゃった」
としゆき「左眼で押しちゃった? そこはね」
ひとし「うん」
としゆき「左眼ね、指で押しちゃったじゃないかな」
ひとし「まあ、私も準決勝だってことで多少、上がったんだね」
(大きな間)
としゆき「あ、いけね」
(大きな間)
ひとし「どうしたんだよ」
としゆき「忘れちゃった俺」
ひとし「何が」
としゆき「あれ、あれ、あれ」
ひとし「やばいなあ」
としゆき「申し遅れました。そういったわけで、象さんの」
ひとし「ポットです」
(少しの間)
としゆき「いやあ、この間電車で座ってたらね、子供が来てね。隣に座るんだけどさ」
ひとし「ほう」
としゆき「子供、こうやってさ、正座して窓の外見ることあるじゃん」
ひとし「そういうことありますね」
としゆき「で、靴を脱げばいいんだけどさ、靴を履いたままでのったからさ。シートとか、ズボン汚れちゃうからさ、ダメだ、子供、靴、ちゃんと脱げ、って言ったの」
ひとし「うん」
としゆき「そしたらね。靴を脱いだんだよ」
ひとし「素直だね」
としゆき「そしたらね、靴下まで脱いじゃったの」
ひとし「靴下も汚れてるからじゃないかな」
としゆき「気が利く子だなあ、思ったらね、Tシャツまで脱いじゃったの」
ひとし「それはね、やっぱり、Tシャツも汚れてたんじゃないかな」
としゆき「凄い気が利く子だなあ、って思ってたら、ズボンまで脱いじゃったの」
ひとし「その子神経質でさ、ズボンも脱いだんだよ」
としゆき「そう思って、パンツいっちょになっちゃっただろ」
ひとし「ほう」
としゆき「ひょっとしてパンツまで脱いじゃうんじゃないかなって思ってたらね」
ひとし「うん」
としゆき「やっぱり子供にも羞恥心つーものあるんだな」
ひとし「うん」
としゆき「パンツはしっかり履いてね、おちんちんだけ出してました」
ひとし「ワンポイントだね」

 カプセルから出て点数を待っている間、としゆきはあくびをしていたので、中尾ミエに突っ込まれた。
 準決勝Aブロックに比べ皆の点数が低く、審査員からも厳しい言葉が多かった。その中で「進歩した」と評価。「(点数の低い)ちゃらんぽらんの後で得をした」とも言われたが、「ひょうひょうとしていい味が出てきた」と評価。1回戦負けの多かった象さんのポットがついに決勝進出ということで盛り上がった。新聞のラテ欄にも「大番狂わせ」と書かれた。
(第7回オープントーナメントサバイバル決勝 87点4位 No.317 1986年7月5日放送)

 二人、ゆっくり登場。ひとし、おもむろにマイクにかかっている紙テープを外す。
としゆき「ワン、ツー、ワン、ツー、スリー、フォー。(ひとし、ステップを踏んで踊る)線路は続くよ~」
二人「どこまでも~(なぜかトーンが下がる)」
としゆき「(としゆき、ステップを踏んで踊る)野を超え、山超え~」
二人「谷超えて~(またトーンが下がる)」
としゆき「素晴らしい、タップダンス。そして綺麗なハーモニーを、お届けしようと思ったのが間違いでした」
ひとし「大きな失敗だったね」
としゆき「一応決勝戦ってね、唄歌ったり、コーラスを入れたり、踊りを踊ったりするのがなんかね、パターンになっちゃったね」
ひとし「そう、踊りとか、歌とか、小技を見せて、好印象を与えて、いい得点もらおうとするのが、前三組(松竹梅、ウッチャンナンチャン、キャラバン。ちなみに象さんのポットは決勝戦のトリだった)(客席から苦笑と拍手。審査員席の京唄子、全然笑わず)嫌いだな、僕は」
としゆき「(ひとしの肩に手を当てながら)そんなこと言うなよ。人は人、我は我」
ひとし「うん」
としゆき「歌唄ったっていいじゃないか。踊りを踊ったって、いいじゃないか。でもね、バケツを叩くのは、許せないな(一組前のキャラバンが見せたネタ)」
ひとし「ま、僕も、それが一番許せなかった」
としゆき「大体ね、そんな三組出してもね、扱いが違う」
ひとし「僕たち、違います。見てください(カメラ、得点ボードに移る)。四番手、象さんのポット、トリを務めます」
としゆき「トリと言ったらもうね、紅白歌合戦だったら、森進一さんとか、ちょっと前じゃ、美空ひばりさん」
ひとし「そう」
としゆき「東京六大学だったら」
ひとし「早慶戦」
としゆき「プロ野球だったら」
ひとし「日本シリーズ」
としゆき「大相撲だったら」
ひとし「千秋楽結びの一番」
としゆき「マラソンだったら」
ひとし「びりっけつ」
としゆき「まあそういったけどね、栄光の決勝戦。私たちはトリをね、栄光の座をつかんだんだ」
ひとし「そう、じゃんけんで」
としゆき「じゃんけん強けりゃいいけどね」
ひとし「そうだね」
としゆき「なにしろ決勝戦だね」
ひとし「そうだね」
としゆき「最初で最後かもしれないね」
ひとし「まあ多分そうだろうね。いやでも、決勝戦のプレッシャーかなんかな。今朝、ものすごい怖い夢を見た」
としゆき「え?」
ひとし「ウッチャンナンチャンとキャラバンと松竹梅のみんながさ、手に包丁やナイフや斧を持って僕を追っかけてくるんでね」
としゆき「え?」
ひとし「だからね、やめてくれ、百万円なんて、君たちにあげるよ。なのに追っかけてくるから逃げて、逃げて、逃げて、逃げていくと僕の前に一つのドアが現れてね」
としゆき「はあ」
ひとし「このドアの向こうに行かなければ僕は殺されてしまう、僕が思いっきりドアを蹴飛ばしてもね、びくともしないんでね。思いっきりドアに体当たりしても、びくともしない。どうしよう、どうしよう、どうしようと思ってもう一回蹴飛ばしてもびくともしない」
としゆき「はあ」
ひとし「このままじゃ殺されてしまう。どうしよう、と思うとドアにとある一つの文字を見つけ、僕はすごいびっくりしてしまったでね」
としゆき「そこには、なんという文字があったんです?」
ひとし「引」
としゆき「親切だね」
ひとし「うん」
としゆき「実はね、僕も今日、恐ろしい夢を見ちゃったんだ」
ひとし「どんな夢?」
としゆき「決勝戦でね、ネタをやるとぼこんぼこん受けてね、やったやった、優勝だ。やったやった、百万円だなあ、なんて得点発表になって。中尾ミエさんが、さあ、得点発表です。ダダダダダ」
ひとし「どうなった」
としゆき「10点で止まっちゃった」
ひとし「と言うことは、審査員頭一人1点」
としゆき「これ以上の最低点はないんだよね」
ひとし「ほう」
としゆき「他の三組はね、ダダダダダ、全員100点。中尾ミエさんがね、やりました、三組優勝です、ビリは象さんのポットだけ。そういったわけで、象さんのポット、二百万円払ってくださいって言うんだよね」
ひとし「正夢かもね」
としゆき「一日一善、僕は心掛けているんだよね」
ひとし「まあでも、一日一膳じゃ体持たないよね」
としゆき「(驚いた顔)」
ひとし「いや、一日一膳じゃ体に良くないよ」
としゆき「ひょっとしてさ、とてもつまんない、ボケをしているんじゃないの」
ひとし「一日一杯の茶碗じゃ、体持たないよ」
としゆき「なんでこんなとこまできて、つまんないこと言うんだよ。俺はね、一日一善の一膳はね、バケツで食うんだよ」
ひとし「ニッポン一の大ボケ野郎」
としゆき「ありがとう。もちろんね、一日一善の一善はね、一日一回いいことやろうという意味なんだけどね。この前も、車の激しい道路」
ひとし「ほう」
としゆき「おばあさんがね、横断歩道渡れないで、立ち往生しているんだよね」
ひとし「うん」
としゆき「僕はおばあさんに言った」
ひとし「うん」
としゆき「僕がおばあさんをおんぶして、渡らせてあげます」
ひとし「うん」
としゆき「いやいや、結構です、というところ、僕はいいんですよ、っておんぶして、横断歩道、渡っちゃったんだよ」
ひとし「君って好青年だね」
としゆき「そんなことないよ」
ひとし「絶対君って好青年だよ」
としゆき「そんなことないよ」
ひとし「いや、絶対君って好青年だよ」
としゆき「そんなことないよ」
ひとし「いや、絶対君って好青年だよ」
としゆき「だって、信号赤だったんだよ」
ひとし「積極的だね」
二人「ジャンジャン」
客席、拍手。
としゆき「とね、ここで終わると思うでしょ」
ひとし「まあ、このジャンジャンって言ったからってね、みんながみんな僕たちの漫才が終わってしまう、ってのは、現代の教育に間違いがあると思います」
としゆき「そういったわけで、夏!」
ひとし「そうだね」
としゆき「夏だからね、俺ね、一足先に南の島に行ってきちゃった」
ひとし「いいね」
としゆき「夜ね。海の近くの砂浜歩いていたの。三人ぐらいの少年がね、ウミガメを棒でつついているの。いじめているんだよね」
ひとし「ほう」
としゆき「ホラホラホラ。こののろまな亀、この野郎、この野郎。俺ね、頭来ちゃって。馬鹿野郎、少年たち。なんでそんなことするんだ。動物はそんないじめちゃいけないよ」
ひとし「うん」
としゆき「私がね、この亀を500円で買ってやろうじゃないかってね、言ったんだよ」
ひとし「浦島太郎みたいだね」
としゆき「そうしてね、私はね、亀を持って帰った。剥製にして、3万円で売っちゃった」
ひとし「実業家だね」
二人「ジャンジャン」
(客席、拍手)
ひとし「と、ここで終わると思うでしょうが」
としゆき「本当に終わるんです」
ひとし「もう得点、入れちゃったかもね」
そのまま、去っていく。


 総評で京唄子は「象さんのポット、よく頑張った。最後で二人でボソッとしゃべって、あれだけにぎやかなコントの後に、二人だけがぼそぼそしゃべるのは、非常に難しい」と褒めた。
(第4回紅白対抗団体戦 93点 No.324 1986年8月30日放送)

出囃子が流れる中、着流し+扇子、さらに紙吹雪を舞って登場
としゆき「ということで白組の勝利のために、ご陽気にまいりましょう」
ひとし「いってみましょうか」
(二人、歌い出す)
としゆき「地球の上に朝が来る それっ」
ひとし「アンアンアン アアアアアアンヤーヤーアン」
としゆき「アンアンアン」
ひとし「アンアンアン」
としゆき「アンアンアン」
ひとし「アンアンアン」
としゆき「アンアンアン」
ひとし「アンアンアン (高音で)アーアーアー(としゆき、拍手を要請)アーアー」
としゆき「ちゃっきりちゃっきりちゃっきな」
ひとし「ちゃっきり娘が」
としゆき「そういったわけで、像さんの」
ひとし・としゆき「(ハモリながら)ポーットでーすー」
としゆき「そういったわけで、こけおどしはこれで終わりです」
ひとし「はい」
二人、着流しを脱ぐと、いつもの服装になる。
としゆき「いやあ、ほんとですね。衣装さんも、これだけのために用意させられて怒っているでしょうね」
ひとし「さっぱりしましょう」
としゆき「そういったわけで、この格好にこの雪駄」
黒子が脱いだ衣装を持っていく。
としゆき「裏方さんも大変ですね」
ひとし「扇子も捨てた方がいいんじゃないかな」
としゆき「オレはもう、扇子を捨てる。意味が分かりませんね」
黒子、ふたたび扇子を持っていく。
としゆき「ところでさ、なぞなぞ好き?」
ひとし「突然だったね。いや、だけどぼくはなぞなぞ凄く得意ですよ」
としゆき「だから? だから何だっつんだよ」
ひとし「そこでだから何だってんだよって言ったら、話が進んでいかないだろ。なぞなぞ得意ですかって聞いたんだから、僕のなぞなぞ答えてくれよってそういう風に言わないと、話が進んでいかないでしょ」
としゆき「あっ、そっか。じゃあ問題です。今日がもし木曜日だったら、明日は、何曜日でしょう」
ひとし「(長い間のあと)金曜日?」
としゆき「ピンポーン、すごいなー。天才、天才、やった、やった、凄いなー、ビックリしちゃった。知能指数500。そういったわけでね、がんばりましょうね。ぱーっと盛り上げていこう、さあ、いきましょう」
ひとし「ちょっと待ってくれよ」
としゆき「は?」
ひとし「オレをバカにしてるのか」
としゆき「そんなことないよ。さあ、今日も白組の勝利のために頑張って」
ひとし「ちょっと待ってくれよ。ホントにバカにしてるのか」
としゆき「そうだよ。さあ、頑張って、いきましょう、」
ひとし「待って、くれよ」
としゆき「わかった、しょうがないな、はい(と胸ポケットからガムを出す)」
ひとし「ロッテのガム。オレは待って、くれといったんだ、ロッテくれっていってない」
としゆき「あ、ロッテのガム捨てたな。それ、ひ、ロッテ」
ひとし「おれ、おちょくってんだろ」
としゆき「(ズボンの右ポケットから板チョコレートを出す。チョコレートを振りながら『マンボNo.5』のリズムで)タッタララッタ、タッタララッタ、タッタララッタ、タッタララッタ、タッタララッタ、タララ、タララッ」
ひとし「ウー!」
としゆき「(チョコレートをしまい、ズボンの左ポケットからせんべいを出して食べる)」
ひとし「なんでそこでせんべいを食うんだよ。そこでチョコレートを食えばな、おちょくってんだろ、チョコ食ってんだろって、ちょっと苦しいけれどな、ギャグになる。ちょっと苦しいけれどギャグになる。そこでせんべい食ったらな、なんにもないじゃない。そこでせんべい食ったら、オレがここにいる意味がないじゃめえか。ここでオレが存在する意味がない、オレがここに存在するという意味がな、崩壊してしまうんだよ」
としゆき「ほうかい」
としゆき「じゃあさ、ここでチョコレートを食えばな、あ、これギャグになるなっと思ったんだけど、せんべい食いたかったの。オレね、ギャグのために、自分のやりたいことやめるってのはやめた。いま、したいことをしようっ、したいことをしないとしぼんじゃうからな。だから日本信販、入ってんだ」
ひとし「わがままだよ」
としゆき「はっ?」
ひとし「本当、わがままなやつだよ」
としゆき「えっ?」
ひとし「お前、本当にわがままだよ」
としゆき「なんか耳を疑っちゃうな。そうか、君は僕の息子なんだな。わがまま、マイマザーということだな。なるほどな、わが息子」
ひとし「いつからそんなつまんないやつになったの。わがままって、オレが言っているわがままっていうのはね(ポケットから紙と鉛筆を取り出す)こういう字を書くわがままだよ」
としゆき「そうか、こういうわがままだったのか。って、これ平仮名だよ」
ひとし・としゆき「ジャンジャン」

 内海好江師匠に「自分の芸人人生、これで良かったのかと考えました」と言わしめた秀作です。
(『宝島』から)
ひとし「うちのオジサンね。朝から晩まで身を粉にして働いてんのに全然お金無いんだよね。ビンボウ暇なしだね」
としゆき「ビンボウ暇なしって事はないよ」
ひとし「どうして?」
としゆき「暇が無いって事は働いているんだから、お金が入ってくるんだよ」
ひとし「でも本当にお金ないぜ」
としゆき「本当に?」
ひとし「うん」
としゆき「君のオジサンいったい何やっているの?」
ひとし「奴隷」
としゆき「……」
 確か、登場時に七色(五色ぐらい? とにかく派手)の着物を着て紙テープを散らしながら登場し「明るさが足りなかったから」か「これで明るさの審査項目は埋まったな」とか言っていたと思います。
エピソード
 専門学校生と紹介されていました。
感 想
 一歩間違えるとただの会話になってしまう。面白いときとつまらないときの落差がちょっと激しかったです。
CM、テレビ、映画
 NTVの深夜にきたろう、小林克也司会で放送していた『爆笑王誕生』というお笑いスタ誕と同型式の番組に、チャレンジャーとして出演していた記憶があります。きたろうさんが「いや~、まだやってくれてたんだね」ってとても喜んでいました。
 石井聡互監督の映画で『エンジェル・ダスト』という作品があるのですが、冒頭のシーンに佐藤さんが出ているような気がするんです。カルト宗教を題材にした作品で、オ○ムの一連の事件を予見したと話題になったりしたのですが。通勤電車の中で若い女性が自然発火して焼死してしまい、それを目撃するサラリーマン役が佐藤さんに見えたのですが、なにしろ象さんのポット自体を新鮮な思いで見てから早や20年、佐藤さんのルックスの記憶に自信が有りません。
 今村昌平の映画学校の出身だと言うから、まんざら有り得なくも無いかなと思いまして。
 既に出た話題かもしれませんが、クレジットを見ても判りません(小さい役ですし)。ご存知の方がいらしたらお教えください。
 表題の映画、『エンジェル・ダスト』ですが、象さんのポットは確かに二人揃って出演しているようです。
 この映画は、漫画家の花くまゆうさく氏がエキストラ出演しており、氏の単行本「サルすくい」にそのシーンが出ています。
 花くま氏と象さんのポットのふたりは同じシーンで映っています。
 また花くま氏も象さんのポットのファンだったようです。
 象さんのポットの出ていたキンチョー(正式には大日本除虫菊って社名なんですよね、確か)のCMを思い出しました。
 2回位しか見なかったと思うのですが、場面設定は町工場より少し大きい位の中小企業の社員食堂と思しきところ、グレーの作業服姿の宮野さんが数人の仲間と掴み合いのケンカをしています。
 台詞は憶えていませんが、青春ドラマっぽい熱い言葉が発せられたあと、カメラが引きテーブルに腰掛けラーメンのドンブリを前にした佐藤さんのバストショットになります。
 そのラーメンの中にはゴキブリが。。。。
 お箸でそのゴキブリを摘み上げた佐藤さんが、激するでもなく平坦な口調で食堂のおばあさんに訴えます。
佐藤「おばちゃん、これ……」
おばあさん「なにいってんの、若い人は何でも食べなきゃダメ!」(と言って肩を叩く)
 ボー然とする佐藤さん……ってな感じのCMでした。
 ちなみに、食堂のおばあさんは原泉さんが演じてました。
 日曜日の22:30~の30分枠で欽ちゃんのクイズ番組やたけしさんのトーク番組をやってた時間帯だったと思うのですが。
 ラーメンにリアルなゴキブリってのがまずかったのか、光よりも速く打ち切られていたような。
 商品は憶えてませんが、当然コックローチあたりでしょうね。
 僕のほかにも、このCM見た記憶のある方いらっしゃいますでしょうか。
(雑誌『カジノフォーリー』5号より)
 象さんのポットのグラビアページにはキンチョーのCM「コックローチS」に二人が、同「ダニキンチョール」にはとしゆきが出演しているという記述があります。
その後・現在
 解散しました。
 一部の人には、『ウリナリ』で南原と堀部が演じた「父さんのコップ」の元ネタであると説明した方がわかりやすいでしょう。
 ミニコミの『啓蒙天国通信』14号に解散情報が。明治大学でのイベント「天皇制とその周辺」(93年12月11日)の記事に追記するかたちで載っていました。解散はその後だと思われます。あと、これも同誌で見たのですが。象さんのポットには弟子がいて名前は何と関東労務層です。
 イカ天に出場した突然ダンボールがかねてからお二人のファンという事もあり、92年にジョイントライブが行われた。そこで象さんのポットは名曲「隣のイスラム」を歌った。(『啓蒙天国通信』より)
 解散というより、活動休止というように、当時マネージャーさんから伺いましたが、時期としてはやはり、94年の前半だったと思います。
 活動休止前に本を出しています。
 『超日常体験報告』(出版研)
 活動休止後に宮野一志さんが本を出しています。
 『競馬の王道』(出版研)
 (2002年 正月番組)深夜、爆笑問題が出ていたNTVの特番(ひきこもりセブンとかいうコーナー)で、象さんのポットのどちらかが出て、素人の悩み相談にのっていたという話を聞きました。芸名は漢字ばかりの、東京…云々っていってたそうです。人づてなのでわからないことが多いんですが、どなたか御覧になった方いますか?ちなみにお笑いスタ誕のVTRで紹介され、爆笑田中と草野球をしたことがあるとか言ってたそうです。
 日本電脳穿隊サイトは、石仏さんや象さんのポットの時生今日人さん(としゆき)がWeb上で作品を展開するサイトです。ショート映像やシナリオ等があります。らしさ、爆発。
 象さんのポットの時生今日人さん(としゆき)のボイスブログ。http://www.voiceblog.jp/tokiovoice/
 2010年9月15日発売のDVD『プロインタビュアー吉田豪の元○○な人々 vol.1』(ポニーキャニオン)には、加護亜依、TAIJIとともに「元伝説の芸人・象さんのポット」の時生今日人さんのインタビュー、当時のマル秘ネタ帳や、現役時代のネタ、最近の作品などの映像が収録されている。関西テレビ深夜に放映された番組のDVD化。
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名 前
ソフィア
初出場
 1984年9月(第3回オープントーナメントサバイバルシリーズ
実 績
 第3回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦負け。
 第4回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦負け。
 第5回オープントーナメントサバイバルシリーズ2回戦進出。
 第6回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦負け。
ジャンル
 漫才。
プロフィール
 ひろみとゆかのコンビ。京都出身。出演時は、コンビ結成1年。
ネ タ
第5回オープントーナメントサバイバルシリーズ1回戦 88点〇 No.263 1985年5月25日放送)

 結婚できるかどうか、どういう結婚像を描いているかというネタ。女性漫才コンビならよくあるネタで、あまり面白くなかった。
第5回オープントーナメントサバイバルシリーズ2回戦 点数不明× No.267 1985年6月22日放送)

 どうすれば京女に見えるか?のネタ。
「大文字カットをすればいい」
「大文字カット?」
「頭に「大」の時のそり込みを入れて、ろうそくを立てる」
「無理や」
「じゃあ、こうする」(と頭をくしゃくしゃにする)
「なんやそれ」
「嵐山」

 その後、引っ越しした10F建ての9Fまで行くエレベータの話、そして1人がエレベータガールになって乗ったはいいが、上に行ったり下に行ったり右に行ったり下に行ったり。
エピソード
 最初の時は、「ひろみ・ゆか」という名前だった。名前は、女優のソフィア・ローレンから取っている。
 『お笑いスタ誕』の後、『テレビ演芸』でも3週くらい勝ちぬいていましたが、ダチョウ倶楽部に破れてえらく泣いていたのを覚えています。
 あのころは、ややこしかったです。非吉本(松竹か?)からはソフィア(ひろみ・ゆか)。吉本からは、ひろみ・ゆかが。
 どっちが先だったのか、よくわかりませんがややこしかったです。
 シャクレのゆかがいる、ソフィアの方が売れたように思います。
感 想
 普通の漫才。突出したものがなかった。
受賞歴
 1986年 第7回ABC漫才・落語新人コンクール審査員奨励賞
その後・現在
 シンデレラエキスプレスのHPの「渡辺日記」によると、ソフィアのどちらかは現在(2007年)、上沼恵美子のマネージャーをしているそうです(たぶん「般若」のほう?)。
 上沼恵美子さんのマネージャーはおそらく、ゆかさんの方です。中川ゆかさんという名前だったので。2020年5月に病気療養で20年以上務めていたマネージャーを辞めたとのことです。
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