メフィスト賞

メフィスト賞



【メフィスト賞】
 メフィスト賞は、講談社が主催する公募文学新人賞。対象となるジャンルは『エンタテインメント作品(ミステリー、ファンタジー、SF、伝奇など)』。特に応募期間があるわけではないため、受賞時期、刊行時期はばらばらである。講談社の文芸雑誌『メフィスト』の編集者が、下読みを介さず直接作品を読んだ上で選考を行っている。賞金はなく、印税のみ支払われる。また、シャーロック・ホームズ像が進呈される。
 1994年5月、京極夏彦が講談社に原稿が持ち込み、9月にデビューしてヒットしたことを受け、1995年8月、『メフィスト』誌上で原稿が募集された。そのうちの1作である森博嗣の作品(後の『冷たい密室と博士たち』)に興味を持った編集者がコンタクトを取り、1996年、既に執筆を終えていた『すべてがFになる』が第1回受賞作となるとともに、この賞がメフィスト賞と名付けられた。
 2014年4月、講談社BOX新人賞と統合された。
(Wikipediaより一部引用)

刊行 受賞作 感想
第1回 1996年4月 森博嗣『すべてがFになる』  理系ミステリの祖となった作品。そのくせして、物語を読ませるコツが入っているから、ページをめくる手はどんどん進む。「F」ってそういうことか、と知らされた時は驚いた。色々な意味で、日本のミステリに新しい流れを持ち込んだ作品の一つだと思う。
第2回 1996年9月 清涼院流水『コズミック 世紀末探偵神話』  これほど壮大なホラ話は初めてである。出てくる死者が60人以上、しかもほとんど密室。ここまで話が大きくなると、数多くの矛盾はどうでもよくなる。冗談がわかる人にしかお薦めしないが、私は好み。
第3回 1997年9月 蘇部健一『六枚のとんかつ』  保険調査員が遭遇した15の難事件を収録した短編集。カバーに書かれているとおりの「アホバカ・トリック」満載のユーモアミステリ。はっきり言ってこれは「やったもん勝ち」。「しおかぜ」や「丸の内線」みたいなスマートな作品を期待しよう。いくら反則が5カウントまで許されていると言っても、毎回じゃファンも逃げてしまう。
第4回 1998年2月 乾くるみ『Jの神話』  これを最後まで読み終えた感想は、「何これ?」。「神」と「悪魔」を語るにはちょっと薄っぺらい。「悪魔」というものを表層的なものでしかとらえていない。「愛」というものに関してもちょっと勘違いしているような気がする。それでも「妖しさ」を産み出そうという努力は買えるし、次作を読もうという気になる。
第5回 1998年2月 浦賀和宏『記憶の果て THE END OF MEMORY』  途中で出てくる主人公や友人の台詞がどうも青臭い。子供が大人に向かって放つ屁理屈そのものなのだ。もっとも、こういう風に感じてしまうのは、自分が年を取ってしまったからか。それとも社会のシステムにどっぷりと浸かってしまったからか。そんなことを思いつつも途中までは面白く読めた。これは過去探しのミステリなのかなと。ところが違った。これは小説ではない。ただの独白だ。
第6回 1998年2月 積木鏡介『歪んだ創世記』  殺されたはずの3人がにこやかに朝食を取る。さあ、これはいったいどんなトリックなのかと期待させたところで出てきた×××。はい、ここでこの小説は終わりです。はっきり言って滅茶苦茶です。別に作者がどのような手法を取ろうと勝手ですが、これは反則以前の問題です。
第7回 1998年8月 新堂冬樹『血塗られた神話』  メフィスト賞には珍しい、ストレートなハードボイルド。金融業界の描写は上手いんだけれども、他の部分があまりにも定型過ぎる。別に型を外せというつもりはないけれど、昔の公式を使うにしてもちょっとストレート。もうちょっと変化球を混ぜないと……。
第8回 1998年8月 浅暮三文『ダブ(エ)ストン街道』 未読
第9回 1998年12月 高田崇史『QED 百人一首の呪』  百人一首が好きな人にはたまらないんでしょうねえ。なんか学術レポートを読まされている気分になりました。もう少し小説部分と絡んでくれると面白かったと思うんですが。興味がない人でも引っ張り込むほどの腕を新人に求めるのはちょっと辛いかな。廻りではかなり評判が良いんですが、私は駄目ですね。
第10回 1999年2月 中島望『Kの流儀 フルコンタクト・ゲーム』  登場人物が皆高校生であることに違和感があるのだが、その一点を除けばエンタテイメントとして一流の格闘アクション小説。極端な暴力描写は苦手なのだが、それでも一気に読み終えた。この手の小説は、一歩間違えると登場人物がゲームキャラクタと変わらないという描写になってしまいがち。他のキャラクターはそうだが、主人公は淡い恋のやり取りによって、なんとか無機質な登場人物から一歩抜け出た存在になっており、読者の救いにもなっている。
第11回 1999年3月 高里椎奈『銀の檻を溶かして』  ヤングアダルト系の設定、登場人物であり、事件は二の次。いかにもシリーズを続けますよ、というキャラクターの作り方は、読んでいても感情移入できない。好きな人は好きなんだろうが、新人なのにシリーズ化を前提としているような小説の書き方は個人的に好きになれない。事件そのものも強引というか、無理矢理解決にもっていっている。まあ、薬屋探偵という設定ではあるが、ミステリとして評価するほどの作品ではないだろう。
第12回 1999年7月 霧舎巧『ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ』  著者は本格推理小説ファンのために書いたと著者の言葉で述べているが、これは本格推理小説ファンではなく、「新本格推理小説ファン」のために書いた作品と訂正した方がよいようだ。この作品のよいところでもあり、悪いところでもあるのだが、過去の新本格の影響が強すぎる。無理気味でかつバレバレに近いトリックはまだよい。ラストの冗長さについてもまだ許せる。しかし、登場人物の緊迫感のなさはこの作品の減点部分だろう。
第13回 1999年8月 殊能将之『ハサミ男』  使い古されたパターンでも組み合わせと見せ方でこうも面白くなるかといういい見本。サイコものだが書き方は非常にソフトなので誰でも楽しめるだろう。むしろ本格ファンの方が喜ぶかもしれない。文章もまずまずなので次作が非常に楽しみ。
第14回 2000年4月 古処誠二『UNKNOWN』  謎は至ってシンプル。別に難しいトリックを使っているわけでもない。しかし、犯人を追いつめていく課程が実に良い。一つ一つ、疑問点を追い、あらゆる可能性を排除していく。「どうやって」の部分はやや反則という気もしないではないが、「誰が」という点では十分な本格。しかし、この小説の面白いところは「なぜ」の部分。自衛隊という部隊を十分に生かし切った設定、動機。そこが素晴らしい。自衛隊の描写がリアルなため、動機、そして謎の部分がより面白く、そしてミステリとしての深みが出ている。傑作。
第15回 2000年5月 氷川透『真っ暗な夜明け』  とても読みやすく、出だしの雰囲気がいかにも本格らしかったので、期待して読んでみたのだが、終わってみると釈然としないものが残る。物語や思考の展開がやや独りよがり。終わらせ方もプツッと切った感じ。出だしからのストーリーとエピローグを見ると、物語の世界観が全然一致しないと思うのは私だけだろうか。作りはしっかりとした本格だったのに、なにか勿体ない。
第16回 2000年6月 黒田研二『ウェディング・ドレス』  また例の手法が取られていることには辟易したが、それでも最後まで楽しめた。見え見えの部分はあるが、伏線の張り方も悪くはない。あのバカトリックは、逆に感心した。本編の映像の方の趣向だけで充分面白いミステリに仕上がったのにと思うと、非常に残念。文章も読みやすいし、次作も期待できそう。ただ、過去の作家とは異なる何かが見えなかった。過去にあった新本格のエッセンスで書かれた作品。もう一つ、何かほしいね。
第17回 2000年9月 古泉迦十『火蛾』  語り手と聞き手だけの閉ざされた空間の物語。本格らしい展開がなされながらも、どちらかといえば、禅問答に近く、理解し難い部分が多い。この世界に入る資格を、どうも私は持ち合わせていないようだ。けれど、この世界だからこその解決なんだと思うし、この舞台を設定した必然性は感じられた。
第18回 2000年12月 石崎幸二『日曜日の沈黙』  これは面白い! とはいえ、面白がるのはひねくれた本格ファンだけかもしれない。探偵役?の石崎と同じく探偵役?のミリア、ユリとのやり取りは、本格ファンなら、激怒するか、何を今更と思うか、そうだよなとニヤッと笑うか。本格のお約束を全て小馬鹿にしているのだ。ただ、本格嫌いにとってはこの作品、馬鹿馬鹿しいの一言で片づけるかもしれない。そういう危険性は高い。けれど私はこの作品を断固支持したい。
第19回 2001年3月 舞城王太郎『煙か土か食い物 Smoke, Soil or Sacrifices』  文章から迫ってくる迫力は凄い。句点の少ない文章。カタカナ英語と体言止めの多用。主語も述語も関係ない思考の羅列。それでいて、不思議に読みやすいのだから驚き。ともかく圧倒されることは間違いない。では内容はというと、暴力と自分勝手な思考、そしてご都合主義な推理と展開。いくらでも文句の付けようがあるのだが、それすらも許さない強烈な主張がある。
第20回 2001年6月 秋月涼介『月長石の魔犬』  サイコホラーものだが、読んでいても怖さは全くなく、言葉足らずな表現が物足りないだけ。何の意味もない読みにくい名前の登場人物たちが鬱陶しいし、短い章ごとに視点が切り替わるのも非常に読みづらい。犯人の設定も無理があるし、伏線も何もないから結末を聞かされて唖然とするだけ。読んでいて、悪口ばかり思い浮かんでくる。駄作。
第21回 2001年7月 佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』  うん、わけがわからない。主要登場人物が全て壊れているミステリは始めてでないだろうか。よくこういう小説を出版できたものだ、と感心してしまうが、メフィスト賞ならこれも有りか。ご都合よすぎるぐらいの設定、独りよがりの文体には辟易するが、文章そのものは意外と読みやすい。それに、小説の中から得体の知れないパワーを感じさせる。見え見えではあるが、ミステリらしい仕掛けも用意してはある。
第22回 2001年9月 津村巧『DOOMSDAY―審判の夜―』 未読
第23回 2002年2月 西尾維新『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』  あまりにも個性的すぎる登場人物。孤島の館で発生する密室首なし殺人事件。舞台や登場人物はエキセントリックすぎる内容ではあるが、密室と首なし死体の謎はスタンダードすぎて、あまり面白くない。しかも添え物でしかない。登場人物たちがいかにも裏と過去がありそうな設定の描き方をしている割に全く描かずに読者に押し付けているところは、昔の同人誌に近い趣がある。いかにも続きがありますよ、的な描き方は公募新人賞には不利だと思うのだが、メフィスト賞なら何でもありか。つまらなかったが。
第24回 2002年3月 北山猛邦『『クロック城』殺人事件』  様々な装飾が、クロック城という舞台や登場人物を成り立たせるためだけのものでしかなく、読み終わってみて大いに失望。トリックや絵はインパクトこそあるものの、本格ミステリ慣れした人なら予想がつくものでしかない。残念ながら作者が力を入れたのは、本格ミステリの部分ではなくて、終末世界の方だった。そのせいか、犯人の謎解きよりもその後のドタバタの方が筆は快調にみえる。
第25回 2002年6月 日月恩『それでも、警官は微笑(わら)う』  事件は犯行を犯す一方の視点も交えて話され、刑事たちが徐々に核心に近づいていくところを楽しむことができる。ただ、奇抜な展開があるわけでもないので、警察小説が苦手な人にはちょっときついものがあるだろう。個人的には読みごたえがあって楽しかった。大した寄り道もせずに核心に近づいていくところが、いかにも警察小説のテンプレートだよなと思いながらも。
第26回 2002年9月 石黒耀『死都日本』  狂言回しの動きはどうかと思うが、噴火が起きてからの描写は見事なぐらいリアル。実際に起きる可能性があるかと思うと、より恐怖が増してくる。それでも暗くなるだけの作品にならない書き方が巧い。一言で言えば、感心する一冊。ここまで調べ上げて、かつ専門的な言葉も取り入れながら、エンターテイメントとして書き上げた筆力には脱帽した。
第27回 2003年1月 生垣真太郎『フレームアウト』  文章そのものは悪くないし、映画に関する蘊蓄も適度に配置されている。ただ、とても読みづらい。映画やミステリに対する愛情が全く見えてこない。人工的な世界を産み出すために、人工的な言葉を連ねているだけである。作者の感情や芸が見えてこない小説に、読者が愛情を寄せることはない。
第28回 2003年3月 関田涙『蜜の森の凍える女神』  雪の山荘で、しかも“探偵ゲーム”という舞台、さらにエキセントリックな女子高校生探偵という設定なのに、事件もトリックも悪い意味で現実的。無理に難しい言葉を使う理由もわからないし、“余り新しくない仕掛け”も不必要。伏線も見え見えだし、だいたいこの条件なら、動機は無視しても犯人を特定できない方が不思議。警察が一番最初に考えそうな犯人像だと思うのだが。
第29回 2003年4月 小路幸也『空を見上げる古い歌を口ずさむ』 未読
第30回 2004年4月 矢野龍王『極限推理コロシアム』  いつ自分が殺されるかもしれないというのに、何の対策も立てようともせず、ただおとなしく殺されるだけ。これでは物語からの緊迫感が全く伝わってこない。そもそも推理ゲームと名付けられているのに、推理そのものが皆無というのもおかしな話。推理するデータはほとんど与えられないので、推理しようがない。一番呆れたのは解決。どうやって結末まで持っていき、推理するのだろうかと思ったら、これですか。これのどこが推理なの? いやはや、とんだいっぱい食わせ物だった。
第31回 2004年6月 辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』 未読
第32回 2005年3月 真梨幸子『孤虫症』  いやあ、読んでいる間は不快感だらけ。とにかく我慢して読むしかない。そこから先は意外な展開が待ってはいるものの、結局は後味の悪い終わり方。とことん、読者を嫌にさせる小説である。ここまでひどい(誉め言葉)小説も珍しい。こういうものが好きな人にはたまらないのだろうな、とは思ってしまうが、私は嫌いだ。ただ、人をここまで不快にさせるだけの筆力はある小説である。
第33回 2005年12月 森山赳志『黙過の代償』 未読
第34回 2006年6月 岡崎隼人『少女は踊る暗い腹の中踊る』  出てくる事件のいずれもが不快感を誘うものばかり。登場人物たちもまた、頭のいかれた人たちばかり。異様な事件を引き起こす人は、どこか壊れた心を持っているものが多いが、本書ではそんな人物たちばかりが登場し、まとも(何を持ってまともというかはさておき)な人物は登場しない。いわば、壊れた人たちばかりで繰り広げられるノワールである。荒削りで、感情の暴走をそのまま文章にしたような作品だが、意気込みは買いたい。
第35回 2007年1月 古野まほろ『天帝のはしたなき果実』  文章は下手だし、読みにくいし、意味があるとは思えないペダンティックな表現にうんざり。作者の場合ただ放り投げて無理矢理飾り立てているだけの装飾過多。しかも多すぎて作品が支えきれず、倒れ掛かるような状態。200頁を過ぎてようやく殺人事件が起きるけれど、登場人物は皆冷静。最後に殺人事件が起き、そして繰り広げられるわけのわからない展開。ええっと、どこに褒める要素があるのだろうか。これがシリーズ化されるのだから、不思議としか言いようがない。
第36回 2007年4月 深水黎一郎『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』  本格ミステリで残された「最後のトリック」とも言える「読者が犯人だ」に挑んだ作品。ある意味、こういうやり方があったのか、とは思ったけれど、厳密に言えば読者が殺人の実行者、というわけでは無いので、肩すかしを食らった感が強い。これで小説が面白ければ、まだ救いがあったのだが、はっきり言ってつまらない。メフィスト賞以外だったら、誰も見向きもしなかったはず。
第37回 2008年1月 汀こるもの『パラダイス・クローズド THANATOS』  登場人物の細かい背景があまり語られないまま物語が進むのには参った。そのくせ、主人公たちのキャラクターが濃くて、アンバランス。本格ミステリのセオリーを逆手にとった展開。動機もトリックも無視した解決。作者いったい何をやりたかったんだろう。まあ、今までにない解決方法という気がするけれど、インパクトに欠けているのは残念。キャラクターに頼りすぎて、迫力のある文章が書けていないせいだろう。
第38回 2008年1月 輪渡颯介『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』  最初のうちは話があちらこちらに飛ぶため、物語の焦点がどことなくぼけてしまい、作者が何を言いたいのかさっぱりわからなかったが、中盤からは次々に斬られる闇討ちの仲間たちの謎を追う展開になって、ようやく面白さを感じた。事件の謎は、大したことがなかった。もっと怪談部分に特化すべきではなかっただろうか。自分としては、事件そのものよりも、左門が語る事件とは関係ない怪談話の方が面白かった。
第39回 2008年5月 二郎遊真『マネーロード』 未読
第40回 2009年1月 望月守宮『無貌伝 双児の子ら』 未読
第41回 2009年8月 赤星香一郎『虫とりのうた』  未解明の部分が多いし、呪文はしょぼいし、作者が一体何をやりたかったのか、最後までわからないまま読み終わってしまった。登場人物のいずれもが自分勝手すぎるし、全く共感できないというのもどうかと思う。なぜホラー大賞に送らなかったのかと読む前は思ったが、これではとてもじゃないが最終候補作にすら残れない。
第42回 2009年12月 白河三兎『プールの底に眠る』  物語は主人公の一人称で進むのだが、この主人公による自己陶酔に浸っている感情が鬱陶しい。読んでいてイライラしたのは私だけではないはずだ。一応殺人未遂事件も起きるのだが、はっきり言って本筋ではない。セミとイルカの、真夏の7日間だけの恋愛、だけでよかったんじゃないだろうか。変な要素はいらなかったと思う。何とも評価しにくい一冊だったが、自分の趣味には合わないことだけはよくわかった。
第43回 2010年2月 天祢涼『キョウカンカク』  いかにも次の作品がありますよ、といったエキセントリックな探偵を配置するあたりはあざとさを感じるが、探偵の持つ能力が事件の謎に絡んでくるのだから、逆に言えば本格ミステリにもこういう手法を使えばまだまだ色々なパターンを生み出すことはできる、という可能性を見出したところが勝利か。わざとらしさが無くなれば、もう少し読める作品にはなるだろう。
第44回 2010年6月 丸山天寿『琅邪の鬼』  舞台は始皇帝時代の中国。これだけ謎と活劇がてんこ盛りになった作品も珍しい。それでいて、この重みの無さは何だろう。この軽さは読みやすさにつながっているとは思うが、それにしても時代性があるとはいえ、大事なことがどんどんスルーされて物語が進むというのもどうかと思わせるが、活劇なら仕方のないことか。サービス旺盛すぎるが、娯楽と徹して読む分にはこの軽さも悪くない。
第45回 2010年6月 高田大介『図書館の魔女』 未読
第46回 2012年2月 北夏輝『恋都の狐さん』  メフィスト賞にしては珍しい恋愛小説。てっきり人外の妖怪とでも恋愛に陥るのかと思ったが、単にある事情で狐の面をかぶり続ける青年に、生まれてから今まで彼氏ゼロの真面目な大学生が恋した、というだけの話。恋愛物を書くのなら、もうちょっと心の動きを丁寧に描くべき。そもそもなぜ恋心を抱くようになったのか、さっぱりわからない。作者はまだまだ勉強が足りない。
第47回 2013年4月 周木律『眼球堂の殺人 ~The Book~』  天才建築家が建てた奇妙な建物、眼球堂に集まる各界の"天才"たち。不可能連続殺人事件。閉じ込められた山の中の館。いつか見た、昔懐かしの本格ミステリである。何も今時こんなミステリを書く必要もないだろうに。しかもトリックは、いつか見たことがあるようなものの組み合わせ。ページを無駄に使っているとしか思えない蘊蓄の数々。"天才"と言われる割に天才ぶりを発揮できない登場人物たち。なんか、新本格の悪いところ(逆にそこがいいという人もいるだろうが)を寄せ集めたような作品。
第48回 2013年5月 近本洋一『愛の徴(しるし) ―天国の方角―』 未読
第49回 2014年5月 風森章羽『渦巻く回廊の鎮魂曲(レクイエム) 霊媒探偵アーネスト』  作者が自分で考えたというよりも、編集者が売れるように売れるようにと色を付けていったような内容だ。もっとも、大して面白いとも思わなかったが。茶番としか思えないようなトリックに、霊媒探偵の名が泣く主人公。売れそうな要素をあちらこちらから引っ張ってきて、結局破綻しているという状況で、何を楽しめというのだろう。
第50回 2014年9月 早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』  「前代未聞」かどうかは知らないが、ここまで堂々とタイトル当てを表題に持ってきたのは初めてではないか。テンポもよいし、短いしで、快調にページは進むのだが、事件とトリック自体はつまらないもの。アイディア一発物としてみれば、完成度は高い作品。バカバカしいけれど。
第51回 2015年1月 井上真偽『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)  名探偵が解決したはずの事件を、別の登場人物がもう一度解き明かすという設定。勿体ない使い方をしているが、面白い。ただ、数理論理学の部分は固すぎて、読み切れなかった。推理の部分よりも、主人公を巡る人間関係の方が面白かったな。オチは見え見えだったが、結構面白く読めた。これがデビュー作なら、十分合格点だろう。
第52回 2017年4月 宮西真冬『誰かが見ている』 未読


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