江戸川乱歩推理文庫(講談社)



【江戸川乱歩】
(後日記載)

【江戸川乱歩推理文庫】
 乱歩推理文庫の第1回配本は1987年9月。このときの配本に入っていたチラシに書かれていた宣伝文句は以下である。

ゾッ・ポケッタブル

胸の中で、乱歩がふふふ
乱歩の殺意を、手のひらに。

特長1 少年探偵団シリーズを含め、乱歩の全業績網羅!
特長2 読みやすい9ポイントの大きな活字!
特長3 新発見の評論・エッセイも初収録!
特長4 全巻に、乱歩賞作家を中心とした「乱歩と私」収録!
特長5 少年推理小説には、なつかしいさし絵を再現!
特長6 全巻に、中島河太郎氏(推理作家協会理事長)による解題つき!


 ここで、この「特長」とやらに一言触れたい。

 確かに少年探偵団シリーズが全部収録されている乱歩全集は初めてだが、さすがに幼年物は「赤いカブトムシ」以外収録されていない。その後『創元推理9』に「怪人と少年探偵」が収録されたが、幼年物は基本的に少年物の焼き直しと言った方が早いようだ。「赤いカブトムシ」もかなり読むのに辛かった作品だったが、「怪人と少年探偵」は更に辛かった。収録されたとしても多分ほとんど読まれないだろう。
 また、全業績網羅とあるが、耽綺社同人(土師清二・長谷川伸・国枝史郎・小酒井不木・江戸川乱歩・平山蘆江)による合作は未収録。連作小説の方にも一部未収録作品がある。こちらの方は春陽文庫の合作探偵小説シリーズの方に詳しい。
 『探偵小説四十年』などに収録されるべき写真関係もほとんど収録されていない。このあたりは文庫本の形を取ったことによる弊害である。『探偵小説四十年』も復刻本が出たので、そちらを参照した方がよい。
「乱歩と私」は新たに書き下ろされたものもあるが、講談社で出た江戸川乱歩全集より転載されたものもある。
 装画は全巻、人気イラストレーターである天野喜孝が担当した。
 以上色々文句も含めて書いてみたが、乱歩が書いた小説・評論・エッセイを知るにはほぼ文句のない収録であろう。特に少年物はタイトルを含めて当時の「少年倶楽部」「少年」「少女クラブ」等に書かれた形と同じ形になっているのは非常に嬉しい。

 この乱歩全集、第1回配本が7冊、第2回以降は月5冊の配本予定だったが、第4回から月3冊に変わる。同時に、第4回配本から収録作品が変更になった。当初、予定されていた配本は以下である。

44巻 名探偵ルコック(原作 ガボリオ)
45巻 鉄仮面(原作 ボアゴベー)
46巻 黄金虫(原作 ポー)
47巻 新宝島
64巻 海外探偵小説作家と作品1
65巻 海外探偵小説作家と作品2

 第4巻配本に入っているチラシの中で今の形に改編されている。しかし、しおりにある全集案内の方が直ったのは第10回配本からである。

 ここで出てくる「名探偵ルコック」「鉄仮面」「黄金虫」は原作者が書かれているとおり翻訳物。もっとも、これらを訳したのは乱歩ではないらしい(この辺は47巻『海外探偵小説作家と作品3』で中島河太郎が詳しく書いている)。だから配本から削除したと思える。ちなみに乱歩が実際に訳したのはクィーンの「黒い家」(原題「神の灯」)とカーの「魔の森の家」の2編のみらしい。この2編は47巻『海外探偵小説作家と作品3』に収録されているので、現在創元推理文庫で出ているVersionと比べてほしい。

 別巻で出ていた『貼雑年譜(はりまぜねんぷ)』は昭和16年頃に乱歩が自伝的資料を修正したもので、門外不出の資料だった。かねてから順序もなくスクラップ・ブックに張り付けておいた印刷物などを年代順に整理し、補充したものである。といっても単なるスクラップブックだけでなく、平井家系譜、住居移転図ならびに見取り図、日記や写真、手紙、生原稿などありとあらゆるものを集めた労書である。もちろんこれはモノクロ複製本である。また、メモ書き等がないとの理由で、昭和15年までのものである。
 こちらは後に復刻本が東京創元社から完全予約制で出版された。

 江戸川乱歩の全集は過去に何度もまとめられている。生前は平凡社全13巻(戦前)、春陽堂全16巻、光文社全23巻、桃源社全18巻、没後は講談社で全15巻、増訂版が全25巻、そしてこの乱歩推理文庫全集である。さらに平成に入り、2003年7月からは光文社文庫にて江戸川乱歩全集全30巻が出版された。こちらは小説が大人物・少年ものを問わずに執筆順にまとめられ、初出誌や初刊本との比較検討も行われている。まだ今まで収録されていなかった幼年物や発見されたものも収録されている。


巻数
タイトル
初版
乱歩と私
収録作
第1巻
二銭銅貨
1987/9/25
日影丈吉
「二銭銅貨」「一枚の切符」「恐ろしき錯誤」「二廃人」「双生児」「D坂の殺人事件」「心理試験」「黒手組」「赤い部屋」
第2巻
屋根裏の散歩者
1987/11/6
森村誠一
「算盤が恋を語る話」「日記帳」「幽霊」「盗難」「白昼夢」「指環」「夢遊病者の死」「屋根裏の散歩者」「百面相役者」「一人二役」「火縄銃」「人間椅子」「疑惑」「接吻」
第3巻
湖畔亭事件
1988/3/8
佐野洋
「闇に蠢く」「湖畔亭事件」
第4巻
パノラマ島奇談
1987/9/25
多岐川恭
「パノラマ島奇談」「一寸法師」
第5巻
陰獣
1987/12/8
和久峻三
「踊る一寸法師」「毒草」「覆面の舞踏者」「灰神楽」「火星の運河」「モノグラム」「お勢登場」「人でなしの恋」「鏡地獄」「木馬は廻る」「陰獣」
第6巻
1988/6/8
海渡英祐
「芋虫」「押絵と旅する男」「虫」「何者」
第7巻
孤島の鬼
1987/9/25
栗本薫
「孤島の鬼」
第8巻
蜘蛛男
1987/11/6
日下圭介
「蜘蛛男」
第9巻
猟奇の果
1988/10/8
綾辻行人
「猟奇の果」
第10巻
魔術師
1988/1/8
中井英夫
「魔術師」
第11巻
黄金仮面
1987/9/25
星新一
「黄金仮面」
第12巻
吸血鬼
1988/12/8
阿刀田高
「吸血鬼」
第13巻
盲獣
1988/8/8
新章文子
「盲獣」「目羅博士」「恐怖王」
第14巻
白髪鬼
1989/1/9
陳舜臣
「白髪鬼」「地獄風景」「鬼」
第15巻
幼虫
1989/2/8
坂本光一
「妖虫」「悪霊」
第16巻
黒蜥蜴
1987/9/25
戸板康二
「黒蜥蜴」「石榴」
第17巻
人間豹
1988/7/8
高橋克彦
「人間豹」
第18巻
緑衣の鬼
1989/4/10
皆川博子
「緑衣の鬼」
第19巻
大暗室
1988/4/8
黒川博之
「大暗室」
第20巻
幽霊塔
1988/3/8
橋本治
「幽霊塔」
第21巻
悪魔の紋章
1988/11/8
内田康夫
「悪魔の紋章」
第22巻
暗黒星
1988/9/8
伴野朗
「暗黒星」「地獄の道化師」
第23巻
幽鬼の塔
1989/5/8
天野喜孝
「幽鬼の塔」「断崖」「凶器」
第24巻
偉大なる夢
1989/3/8
光瀬龍
「偉大なる夢」
第25巻
三角館の恐怖
1989/1/9
加堂秀三
「三角館の恐怖」
第26巻
化人幻戯
1987/11/6
小林久三
「化人幻戯」
第27巻
影男
1988/5/6
森雅裕
「影男」
第28巻
堀越捜査第一課長殿
1989/2/8
新保博久
「月と手袋」「防空壕」「堀越捜査第一課長殿」「妻に失恋した男」「ぺてん師と空気男」「指」
第29巻
十字路
1988/2/8
西村京太郎
「十字路」
第30巻
畸形の天女
1989/4/10
尾崎秀樹
「畸形の天女(連作の一)」江戸川乱歩 (連作の二)大下宇陀児 (連作の三)角田喜久男 (連作の四)木々高太郎
「五階の窓(合作の一)」「江川蘭子(発端)」「殺人迷路(第5回)」「黒い虹(合作の一(発端))」「女妖(前編)」「悪霊物語(第1回(発端編))」「大江戸怪物団(箱根山中の妖怪)」「二人の探偵小説家(未完小説)」
第31巻
怪人二十面相/少年探偵団
1987/9/25
安部譲二
「怪人二十面相」「少年探偵団」
第32巻
妖怪博士/青銅の魔人
1987/11/6
斉藤栄
「妖怪博士」「青銅の魔人」
第33巻
虎の牙/透明怪人
1987/12/8
中野翠
「虎の牙」「透明怪人」
第34巻
怪奇四十面相/宇宙怪人
1988/1/8
田中芳樹
「怪奇四十面相」「宇宙怪人」
第35巻
鉄塔の怪人/海底の魔術師
1988/2/8
内藤陳
「鉄塔の怪人」「海底の魔術師」
第36巻
灰色の巨人/魔法博士
1988/3/8
鳥井加南子
「灰色の巨人」「魔法博士」
第37巻
黄金豹/妖人ゴング
1988/4/8
竹本健治
「黄金豹」「妖人ゴング」
第38巻
魔法人形/サーカスの怪人
1988/5/6
中津文彦
「魔法人形」「サーカスの怪人」
第39巻
奇面城の秘密/夜光人間
1988/6/8
菊池秀行
「奇面城の秘密」「夜光人間」
第40巻
塔上の奇術師/鉄人Q
1988/7/8
岡嶋二人
「塔上の奇術師」「鉄人Q」
第41巻
仮面の恐怖王/電人M
1988/8/8
大谷羊太郎
「仮面の恐怖王」「電人M」
第42巻
おれは二十面相だ/妖星人R
1988/9/8
石井敏広
「おれは二十面相だ」「妖星人R」「探偵少年」「天空の魔人」
第43巻
超人ニコラ/大金塊
1988/10/8
山村美紗
「超人ニコラ」「大金塊」
第44巻
新宝島
1988/11/8
泡坂妻夫
「新宝島」「知恵の一太郎」「赤いカブトムシ」
第45巻
海外探偵小説作家と作品1
1988/12/8
荒巻義雄
「海外探偵小説作家と作品1」
第46巻
海外探偵小説作家と作品2
1989/1/9
石川喬司
「海外探偵小説作家と作品2」
第47巻
海外探偵小説作家と作品3
1989/2/8
難波弘之
「海外探偵小説作家と作品3」
第48巻
悪人志願
1988/11/8
高柳芳夫
「悪人志願」
第49巻
鬼の言葉
1988/10/8
島田荘司
「鬼の言葉」「幻影の城主」
第50巻
探偵小説の謎
1988/9/8
藤本泉
「随筆 探偵小説」「探偵小説の謎」
第51巻
幻影城
1987/11/6
山崎洋子
「幻影城」
第52巻
続・幻影城
1988/8/8
梶龍雄
「続・幻影城」
第53巻
探偵小説四十年1
1987/12/8
井沢元彦
「探偵小説四十年1」
第54巻
探偵小説四十年2
1988/2/8
長井彬
「探偵小説四十年2」
第55巻
探偵小説四十年3
1988/3/8
山村正夫
「探偵小説四十年3」
第56巻
探偵小説四十年4
1988/4/8
東野圭吾
「探偵小説四十年4」
第57巻
わが夢と真実
1988/12/8
横尾忠則
「わが夢と真実」「欺瞞系譜」「探偵小説トリック分類表」(「類別トリック集成」の原型となる乱歩自筆の稿本)
第58巻
乱歩随想
1989/3/8
戸川安宣
(未完随筆)
第59巻
奇譚/獏の言葉
1988/5/6
川村二郎
「奇譚」は作家になる前に乱歩が学生時代に書いた読書覚え書きの手製本を印影版で収録した自家本。「獏の言葉」は未完随筆。
第60巻
うつし世は夢
1987/9/25
渡辺啓助
(未完随筆)
第61巻
蔵の中から
1988/1/8
戸川昌子
(未完評論)
第62巻
幻影城通信
1988/6/8
小峰元
(未完評論)
第63巻
子不語随筆
1988/7/8
森真沙子
(未完評論)
第64巻
書簡 対談 座談
1989/4/10
平井隆太郎
書簡 対談 座談
第65巻
乱歩年譜著作目録集成
1989/5/8
中島河太郎
「江戸川乱歩年譜」「江戸川乱歩著作目録」(「江戸川乱歩作品と著作年度別目録」「追記(探偵作家クラブ会報)」「江戸川乱歩既刊随筆評論集目録」)
別 巻
貼雑年譜
1989/7/25


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